6話~「意識していなければどのような結果も心に残ることはない」~
すみません。遅れました。本日の話です。
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後日。ヒフキソウについての研究を再開することにした。ゴムクサに関する研究が成功したことでモチベーションの回復、およびある程度ヒフキソウに適用できる理論を発見したことが理由である。
前に立てた仮説通り、恐らく根から魔力を運搬しているのだろう。その理由はゴムクサに基づくものである。ちなみに、どのように運んでいるかというと根の中と吸い取る先の魔力の濃度の差による勾配と勝手に考えている。
また、俺の手が根に触れて発火することから恐らく俺の手、正確には俺の体に魔力は含まれているのだろう。
今まで議論してなんだが一つ思ったことがある。それはご貴族様が使う魔法と植物の進化による現象は本当に一致することなのか、ということだ。ヒフキソウの茎から火が出る現象があまりにも神秘的かつ、見たことがない現象であったことと、ご貴族様が出した炎の現象が重なったから勝手に思っただけで本当にそうなのか、はわからない。
しかし、もし違ったとしてもかまわないと個人的には思っている。魔法を使うことに憧れはあるが、正確に言えば魔法と同じ現象を起こしたいのだ。つまり、魔法そのものでなくとも構わない。植物が同様の現象を起こせるのであれば、それを研究することによって解明してそれを一般化することの方が重要である。
現に、魔力と言ったものは俺が勝手に定義したものであるしその中身は何かしらの物質が持つエネルギーであると勝手に推測している。これは植物の現象に関して便宜上行った定義である。その差に関してはいずれ議論を行うしかない。
さて、根から魔力を得ている仮説について大きな問題がある。それは、その花が魔法もどきで咲いているとするならば、魔力とは何か、という点である。
普通の生き物の場合、根から栄養…つまり物質、を吸収している。
このことから、先ほども言った通り魔力は栄養をみなすならば物質である…と考えられるが、それだと疑問が生じる。魔力を吸い取るため、そしてそれを植物の各所に届けるためのエネルギーはどこから得ているのか。
地球の植物の場合一般には、光合成であると考えられている。つまり、光からエネルギーを得ている。では、この魔法もどきを使う植物も光合成なのか…そう考えることもできるが、普通の生物よりもエネルギーを使っている印象がある。その根拠は、花を折った場合炎が出ること。当然ながら、普通の植物は炎を出さない。
そのため、すべてのエネルギーを光合成から得ている…というのは少し強引だと考えている。
そして、この問題に疑問を感じた理由はもう一つある。俺の身体の中からも、モノが抜き取られた感じがあったのだ。例えるならば…血液が抜き取られたような感触であった。エネルギーだけであれば、身体から吸い取られるというのは間違いではないが、身体の中から何かのモノも吸い取られるというのは異常である。
考えてみてほしい。例えば、冷たい水に手を触れた場合身体から熱が吸い取られる。しかしその場合、末端から冷えていく、つまり表面から冷えるはずだ。それがエネルギーであるが、血液や成分が抜き取られるような感覚なんぞありえない。
つまり、魔法もどきを発生する条件はエネルギーとそれを発生させるための物質、その二つが必要なのである。しかし、魔力という一つのモノしか定義していない。
もちろん、魔力がその二つのものを内包しているという可能性もあるが…それは個人的には気持ち悪い。
感覚的な問題なのだが、解析的なアプローチと言うのは物事の構成要素を細かく見て、一つずつ明らかにしていく。つまり、複数の要素が一つずつ分離しようとする、と言える。
だから、このように分解しきれないと気持ち悪いのだ。
もちろん、便宜上定義しても良いのだが……先ほど言った魔力が二つのモノを内包しているという可能性を考慮すると、下手に定義すべきではないという考えも生まれる。なので、これについてもいったん保留にした。
他の観点として、その魔力の源を可視化することができないかを調べたこともある。まさか自分の体を解剖するわけにはいかないから、そこら辺の土をほじくって手触りを調べてみたり、においを嗅いでみたり、耳を当てたり、終いにはなめてみたりしたがそのどれもが土という感想であった。なお、他の土について調べてみたがその違いは判らなかった。
可能性として、ここら一体の土はすべて魔力の源が含まれており比較検討ができない、何てこともある。そうなるとやはりお手上げである。今度のお祭りを待つしかない。一人で町まで行くなんて無理だ。一応、自分がいける範囲にまで足を延ばしてみてその土の品質を調べてみたがどれも同じようなものだった。
なお、あれ以降あの商人とは話ができていない。また交渉をしようと考えているのだがどうやらタイミングが悪いらしい。ただ、村長とよく話している姿は確認できたがすぐにどこかに消え去ってしまう。なので、彼に交渉も厳しいだろう。
以上から、アプローチ不可能なためこの問題は一旦置くことにした。そして、代わりに道具化を進めることにした。問題に挙げた火力だがこれは実にあっさりと解決した。
追加実験中、さらに新しい条件で実験できることを思い出した。
具体的には、根を地面に埋めたまま茎を折ることと茎の折る場所を変えることの実験、
そして根だけ地面から取り出してそれに手で触れること、この二つの実験をしていた。以前はこの実験結果についてまとめたのだが、では、この二つの条件を合わせることは?
そう、根を地面から取り出して茎を折って手に触れるという実験だ。これを何回か行うことにした。最初の実験と同様、折る場所によらず炎が出たのだがほぼ花弁の場所で折った場合、明らかに今までと反応が違った。
熱するまでの時間は同じだが、いつもより体感的でわかるほど熱い。どこか怖くなって急いで前の方へ投げた。しかし、炎が出ることはなかったのだが茎の色が茶色に変色している。
これはまずい。と直感で悟ってからはがむしゃらに後ろに走り出していた。本能が理性を上回っていたのだ。
いつもと同じ距離ぐらいまでにげたが、熱い。
本来は熱さを感じないはずだが、今回はこの距離だと足りないほどに熱くなった。急いで持ってきた水をぶっかけるが、茶色が薄まることもなく、その熱さも和らぐことがなく全て水蒸気になってしまった。その瞬間、大きな音が俺のすぐそばで破裂した。その衝撃で、俺も吹き飛ばされてしまう。
起き上がった直後。いまだに炎が発生していたため、焦って周りの土をぶっかける。周りの土を目分量でもわかるほど掘った時、ようやく火が収まった。いや、本気で焦った。見ると、周りに茎のような残骸が散らばっていた。
身体の節々が滅茶苦茶痛い。これほど焦ったのは初めてヒフキソウを使ったとき以来、と思いつつも、あの花弁だけ取り除いたときに観察できた現象の理由がようやく理解できた。と同時に、これが火力に対して使えるのではないかと思ったのだ。
思わずスキップしながら家に帰ったため親から不審がられたものの、俺の心は強く興奮をしていた。
自分で自分に無理もない、と言いたいほどだ。あれほどの火力はご貴族様も出せないだろう…さすがに、生物のように動かすといった器用なことはできないが、俺もあれだけのことができたのは夢がかなったかのようであった。
あとは安定性を考えるというだけで、実用性が生まれるのだ。これがうれしくなくてなんというのか。
ご貴族様の魔法という現象とこの現象が同じかはさておき、少なくともあの時のご貴族様よりも高いレベルの現象を起こせた、という事実だけで歓喜に震えていたのだ。もちろん、実際に起こしたい現象と直接はつながらないが、少なくとも武力手段としては十分だろう。
五歳から苦節四年。ようやく俺は自らの目標が明瞭になった気がした。
我ながら思いましたが、読み直すと論理性が甘いところが多く手直しに結構時間を使ってしまいます。
そのせいかより説明が多くなるというジレンマを抱えていますが……それはともかく。
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