5話~「科学は一つの道にあらず。複数の視点から見ることが進歩の第一歩」~
本日の話です。
後を引く終わり方って難しいですね……適当に文字数と話の展開で区切っていますが、後を引く要素がない。
2020年6/4日 部分的に修正
八歳になった。
一度、親に遊んでばっかりいないで手伝え、と言われた。
最初はあまり乗り気でなかったが、どうせ研究が詰まっていたのだから気晴らしと言うのもかねて手伝うことにした。
自分の仕事が終わった後、親に火を起こすのを手伝ってくれと言われた。指示を受けたのだが所謂木を用意してそれをこすることによって火を起こすという、原始的な方法であった。それが非常に面倒であったため、例の植物のヒフキソウで着火して火を起こすことにした。
親の目を離れたときに、例の草を取ってから根に手を触れる。そして、熱くなってから火を起こすよう言われた場所に投げて火を起こした。
よし、報告しようと思って振り返ると…なんと、母親がいた。
その顔は険しくこちらに鬼気迫る勢いで近づいてきて、俺に体調に変化がないかべたべたと触ってきた。むずがゆく、恥ずかしいためそれをはがすようにしたのだが、今何をしたのかさんざん根掘り葉掘り聞かれた。
最初は隠そうとしたものの、「イサマ、もしかして魔法を使おうとしているの?」と鎌をかけられた。隠したつもりだが、それで確信したのかあまりにもしつこく聞かれたため、最終的には答えてしまった。
それを聞いた途端、今までに見たことがないこわばった表情で「こんな危ないことはやめなさい!」と、大きな声で、荒らげて。
その姿が、見たことがなくてただひたすら恐ろしくてその場から脱兎のごとく抜け出すことにした。
人間、見たことがないものを見ると好奇心か恐怖が湧くものなのだが、今回は俺は恐怖しかわかなかった。
この時、彼ら二人の姿をじっと見ている人がいた。今まで横柄にしてきた人物である商人である。彼は火を出せ、と言われてよくわからない草を持ち込んだイサマが気になり観察していたのだが、先ほどの現象をメモしていた。そして、逃げ出した彼のことを追いかけたのだが結局見失ってしまった。しかし、お土産には十分だろう、ということで諦める。これで覚えがよくなると、どこか不敵な笑みが商人に浮かんでいた。
後ろを振り返ると、母親の姿はいない。息切れを起こし俺は一人腰を下ろすことにした。久しく走ったため、身体が煮だっているようであったが、しばらくして余計なことを考えられるほど落ち着いてきた。
すこしなぜあんなに怒ったのか…というと、確実に魔法関連だろう。なぜ、魔法研究をしてはならないのだろうか。
……何か事情があるのだろうか。聞いた覚えがないため、想像するしかないのだが……精々、ご貴族様の既得権益を揺るがすから、という話だろう。それを考えると、大人としての同情心と子供としての対抗心が同時にあふれてきた。
少なくとも、俺は研究をやめる気はない。もしかしたら、炎の魔法を使うことをやめろということかもしれないが、こちらも続けるつもりである。なにせ、生活を楽にするのが科学である。それを調べることは俺の前世の意識によるものである。
落ち着いた呼吸で、もっと頭を冷やしながら切り替えていく。
続けると言えど、現状では手詰まりであるため息抜きをしようと考えた。昔の科学者は、こういう風に道がふさがれているときは違うことをすることで打開策を導き出していた。それにあやからせてもらおうというわけである。
そう言う理由で石の近くでプレイしていた、今までなじみがないチームのサッカーに参加することにした。彼らも驚いていたが、遊びたいとごねたらリーダーの子の鶴の一声で混ざることができた。リーダーが所謂人当たりが良い人で良かった。
その際遊ぶときいつもよくわからない植物で巻かれた石をサッカーで用いていた。実際に蹴ってみても特に痛みはないため、つい調子に乗ってはしゃいでしまった。
そして、お昼の休憩に入る…のだが、ここで一つ疑問に思った。なぜ、石を蹴ってもいたくないのだろうか、と。その感触も石のように感じず、まるでゴムを蹴っているようであった。さらに、明らかに石の質量が変わっている。蹴っても痛くならないこと、衝撃が小さい事が不思議であった。
その実験を行うために、数日…おおよそ一週間だろうか、は材料集めとサッカーに何度も参加していた。その石がどういうものか確認するために何回も参加するのが最も早かった。
なにせ、持ち出すわけにもいかないし盗むわけにもいかないから何日も遊びながら確認することにした。
実はどこかに俺を見ているような複数人の気配を感じていたが、サッカーを続けているうちに気配を感じなくなっていた。その気配の一つがどこか見覚えがあるというとおかしいが、なじみがある気配であった。
このように尾行を撒くことも目的であったりする。魔法研究している場を見られるわけにはいかないため、ごまかす必要があるという事情もあったのだ。こっちに接触してこないのが不思議だったが。
山には入ったものの山菜取りだけで終わらせたため大して問題はない。
なお、しばらく親とは不穏な空気が漂っていた。父がどこか居心地悪そうであったが、俺と母の雰囲気はずっと固まっていた。何日もすると、さすがに父からお声がかかった。
「イサマ。お前何したんだ……母さん怒っているぞ」
「別に何も。ただ、お手伝いのやり方が気に入らなかったんじゃない?」
というと、父は呆れたようでため息をついていた。
「いいか。イサマ。すぐに母さんに謝るんだぞ。長くたつと謝れなくなるからな」
「なんで、俺の言い分も聞かずに謝れっていうんだよ‼」
といって、魔法の部分を除いてこちらの言い分もまくしたてた。が、父親の態度が崩れることがなかった。
「はぁ……。そりゃお前が悪い。母さんをこれ以上心配させてやるな」
といって、俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でてきて俺に態度だけ父親っぽくふるまう。ふてくされていると、父親がもっと説明してくれた。
「俺も、お前が目の届かないところで火を扱っているとなると怖いんだぞ。お前は賢いから、そんなヘマはしないと思うが、あんまり遠くへ行ってほしくないんだよ」
と、どこか恥ずかしそうに述べてくれた。そうか…そうなのか。
「だから、普段から心配させているんだからこれ以上心配かけてやんな」
その一言がきっかけで、ご飯の時。母親と相対した。どこかこちらをチロチロと流し目で見る父親と、若干驚いているっぽい、母親。意志が薄れぬうちに、声と態度に出す。
「その、心配かけてごめん!」
というと、母親もため息をついて……
「……これから、危険なことはしない?」
と聞いてくる。しかし、それには答えられない。俺の本当の父母に会うには不可欠であるから。もちろん、危険なことは避けるが魔法の研究をしないわけにはいかない。だから、無言でいると
「--はぁ。決意は固いようね。わかったわ。安全にやりなさい」
といって、折れてくれた。父親もうれしそうに笑顔を浮かべていてある意味破壊力抜群であった。ようやく我が家にも日常が戻ったのだった。
しばらくして。ようやく材料がそろった。サッカーにきっちり参加した後、モノを実験場に移した。今日はサッカーをやらずに実験をする日だ。実験の前に、一応比較のためにただの石を蹴るのだがあまりに痛くて、しばらくの間動かしただけでジンジンと痛みが伝わった。
二度とやらん。
今度は、植物を持ってくる。これは、所謂サッカーボールに巻いていた草だ。今花が咲いていないため、実験場で恐れながらもその茎を折る。が何も起こらない。
首をかしげながらも、今度は違う場所を折ってみるが何も起こらない。
はて、どうしたものか…と思いつつも、今度は俺が蹴った石を用意して、それをさっきの植物で巻いてみる。そして、もう一度弱く蹴ってみるが…硬い石のままだった。
色々と巻き方を変えてみたのだが、変わることがなかった。不思議に思い、今までに使っていた石はどのように巻かれていたかを思い出すことにした。
確か、白い根が石の表面に出るように巻かれていた。だから、白黒ができていたため、サッカーボールのような印象を抱いていた。
であるから植物の白い根をあえて表に出すように巻いてみる。そういえば、あいつらも数年前だが植物を巻いていた。その時に根を中心にしていたが…その後、しばらく時間がたってから蹴ると、ようやくあのサッカーボールのような感触が生まれた。
よし、成功した!この草を……ゴムクサとでも呼ぼう。
これも一種の魔法もどきであるが実はいくつも植物由来の魔法を見ていた。
例えば、歩いているジャガイモ。
あれも、前世の知識があるから当然わかるのだが、ジャガイモが成長するのは栄養があるからで、地上で人間のように歩く理由は根から栄養を持って行っているからと考えるには不自然である。
で、あるならば考えられるのはただ一つ。そう、あれも植物による魔法であろう。どのように補給しているかわからないが、地面に触れることで魔法の源…これを魔力とでも呼ぼう、を補給しているのである。ゴムクサやヒフキソウも同様であろう。
ここまで出来たら、次の課題。これを汎用化することはできないのだろうか?
ここまでお読みいただきありがとうございます。
さてさて。この話から地球の物理に反する現象が多くなってきます。
まさに、SFになります。ちなみに、ヒューマンドラマっぽい要素もどんどん増えます。
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