14話~「魔法分析科学:自然科学と魔法は水と油なのか」~
前回のあらすじ:マキュベスが普段使う魔法と、貴族が一般的に使っている魔法。
この二つはどう違うのだろうか? 後者の方でなければ顕微鏡は作れないのだろうか?
ブクマ登録ありがとうございます。
さて、いったん場所を移しましょうか。
魔法回路による魔法をどれぐらい扱えるか、もう一度調べてみようと思っています。
そして、到達した場所は魔法の能力、正確には魔法を使う能力を計る魔道具がある教室。
今から何を行うのかというと、もう一度検査をしようと思っています。
なぜ、そんなことをするのかというと私の魔法回路を使って魔法を使う能力というのは今まで不完全でした。
正確に言えば、使えなくはありませんがこちらの方が煩雑で大変です。
最近になってようやくそこそこ扱えるようになりましたが、今もあまり慣れているとは言えません。
現に、顕微鏡の魔法もこの方法で実行していません。
しかし顕微鏡なるものを作るならば、今までの方法ではなく魔法回路を使う必要があると考えました。
そのため、ここに来たわけです。
なお、それなりに大きい道具でありかつ貴重品なので持ち帰ることは不可能です。
可能ならばイサマもどれくらいなのか調べてあげたいぐらいですが、後のお楽しみにしましょう。
ちなみに今までは魔法が使えない人がこの機械を使っても意味がない、と思われていたようですが明確に否定されました。
それは、先ほど話した意思と精神は庶民であっても持っているという事実です。
細かい話になるため、ざっくりと言います。
魔法を使うにはいくつかのプロセスがあるのですが、その途中の段階をどれだけなめらかに行えるかを測定してくれるのがこの道具です。
具体的には、口にその道具をつけて呼吸すること。
そして、魔法発現時に吐き出す。
これらが正常に行えているのか、その速さはどれくらいかを確かめるものです。
ちなみに、その機構に関して聞いてみましたが秘密だそうです。
私と同じく振興の方ですが、伝手もない以上仕方ないでしょう
仕組みを知らず納得はできないものですが、公爵家、そして王族の方が保証したため他の方も認めることになりました。
話が大きくずれましたが、要はこれで顕微鏡魔法を使う時にどう動いているのかを検査してみようということです。
とりあえず、口に付けます。そして、大きくゆっくりと息をはいてリセットします。
そのあと、大きく息を吸った後に魔法を発動させます。
全力で使って構いません。まずはいつもの魔法を発動させましょう。
この時、吐き出してはいけません。
そして、自分の中で発動できた後吐き出しましょう。
その後、魔法がどれくらいの量発動できたかというのが示されます。
これを見ると……なるほど。大体学院性の平均ぐらいの量ですね。
決して大きい値ではないですが、個人的には満足しています。
公爵や上位の貴族ですともっと大きい値を出すのですが、昔に比べればずいぶんよい値です。
なんせ、入学時は最底辺でしたので。
では、次の実験です。
顕微鏡の魔法を先ほどの方法で発動させるとどうなるか?
試してみましょう。
先ほどと同様に、吐き出してから吸い込み始めます。
全てを吸い込んだ後、頭の中で顕微鏡の魔法を想像……しようと思いましたが思いつくのはレンズそのもの。
それも、氷のレンズです。
そのあと、吐き出して計測値を見てみます。
すると、先ほど見た値よりもずっと低いものでした。
ただ魔法としては現象が一応起こる値、所謂閾値をわずかに超えている程度でした。
とりあえず、発動するだけしてみましょうか。
ゆっくり吸い込み、先ほどと同様の想像をします。その図は、先ほど示したレンズ。
そして、頭の中が多少熱くなった後に吐き出します。
「I R……l!」
適当に思いついた言葉を発したのですが、うまく発現しなかったようです。
どうやら、意志をきちんと示すことができなかったようです。
そのため、不発に終わったということでしょう。
この意思についてですが、何が正しいものかというのはよくわかっていません。
どうやら、「何となくわかる」というものや「自分の精神が教えてくれる」ということらしいです。
しかし、そのような経験はないためこのようにやってみましたが失敗しました。
この後も、いろいろと言ってみましたが一回だけ形になりそうでした。
しかしそのあとすぐに霧散してしまいました。これはやり方が悪いのでしょうか?
これらについては、正直あまりよくわかっていません。
唯一使える基本的な四属性魔法については、詠唱も想像も判明していました。
後は練習で魔法回路を使うことによって慣れるだけ、というものなので私も無理なく使えたのですが……
誰かに教えてもらう、と言うのも一つの案ではありますが……まあ十中八九と言ってよいほど何か対価を要求されるでしょう。
恩師に相談しても、よくわからないと言われたほどのものですから。
手さぐりになりますが、少し方法を変えてみましょう。
今までただ何となく発現したいと考えていたものを、より具体的にやってみましょう。
今回は、イサマに教わった理論に従わせてみます。こういうのは想像が大切です。
先ほども言った通り、意志または想像によって魔法という現象は応用が利くようになっています。
むしろ魔法の研究はそっちの分野が盛んだといっても良い。
そのため、彼から習った理論を使って想像することも、魔法において一種の開発と言えるでしょう。
まずは、計測器から。結果から言えば、先ほどよりも頭が熱くなってしまいましたがより良い値をたたき出しています。
次に実験を行うと、先ほど一度だけ出現した詠唱下だと私の目の前に何かの力が集まっています。
しかし、そこで物を見つめようと目を開くとその塊が霧散してしまいました。
失敗ですね。一応何度か繰り返しましたがすべて同じ結果です。
では、違う条件下で実験を行いましょう。今度はより丁寧に考えることにします。
具体的には、見たい物質を用意してそれがどのように大きくみえるようになるのか実際に想像してみることです。
すると、先ほどよりもより固まった状態で大きめの物が出てきました。
まだ詠唱をしていない状態にもかかわらず、です。
その後に成功すると考えられる詠唱をすると……やはり消えてしまいます。
ダメですね。
一旦気分を変えるために魔法回路を使わずいつもの魔法を使います。
今度はきちんと物が拡大されています。道具に肉眼では見えないようなホコリが付いています。
ちょっと思いついたことですが、先ほどの塊はなぜか大きい。
これだとたとえ複式であってもあまり倍率はよろしくないでしょう。
曖昧だからこのようになってしまった、とかでしょうか?
この路線をさらに深めてみましょう。
具体的には、さらに数学的に顕微鏡の現象をとらえるということです。
先ほどと同じように、起こしたい現象の想像をします。
今回は、その介在する物はできる限り小さくします。
どれくらい小さくて、どれくらいの距離にあればよいかを頭の中で数式を思い浮かべながら行うと……途端に頭の中に炎が生じたような感覚が起きました。
熱い。今すぐ水の中に飛び込みたいぐらいに。
急いで魔法回路を切ります。少し時間が経過すると、ようやく頭の熱が放熱されていました。
あの結果は視界に入るものすべての光線を見てしまったときと同じようなものでしょう。
要は頭に入り切る量を超えてしまったというべきです。
具体的には、レンズの公式から焦点距離がどれくらいで、どれくらい小さいと望んだ結果が取れるか、まず私とレンズの距離がどれくらいか、などなどを考えてしまったから訳が分からなくなってしまい、頭が働かなくなりました。
他の魔法の研究者はこのようなことまで考えているのでしょうか?
ただ、学院の授業のこと、そして発表から察するにこのような考え方をしているとは思いづらい。
……もしかしたらそれこそ王族の方などはこれぐらいまで厳密に考えているのかもしれませんが。
では、どのように考えているか。
現状の魔法はその現象や結果だけを取り出している傾向にはあります。
そうなると、魔法と数式は相性が悪いのか。……それもまた奇妙な結論です。
……だめですね。
迷宮に入ってしまったようです。こういう時は少し寝てみることにします。
あともう少しで再現できるように思われるのですが、その先があまりにも長いです。
お読みいただきありがとうございます。
ここの話難しいですよね。筆者としても抽象度が高くなってしまったと思っています。
魔法の原理に興味があり、推測したいという方は楽しめたかと思いますがそうでない方は「今のままだと顕微鏡は作れない」という話がこの部分のまとめです。




