13話~「魔法と魔石と魔国と」~
前回のあらすじ:マキュベスは顕微鏡を作ろうとしていた。
しかし、一枚のレンズでは困難であった。
ブクマ登録ありがとうございます。
いろいろ考えましたが、まずは解明編を幕間に移すことにします。なので、とりあえずは本編を優先させます。
さて、休憩もはさんだため今までの話を少しまとめてみますか。
レンズ一枚のみの顕微鏡は観察対象に親指程度の距離まで近づかなければ機能しない。
まずは、複式顕微鏡について実験してみましょう。
先ほどと同様に凍らせたレンズを二枚用意します。
まず、一枚目を適当な場所に置きます。そして二枚目を私の目とレンズの間に置きましょう。
そして、先ほどと同様に物の光線を目でとらえます。
すると、確かに二枚のレンズによって光線がレンズを通って、一つの光線のようになっています。
しかし、距離を変えるとレンズの中に光線が入らなくなりました。
ここまではイサマに教えてもらったものと同じです。
原理自体は単純で、一枚目のレンズで作った像を二枚目のレンズでさらに拡大するといったものです。
言葉にするだけでしたら容易に見えますが、実はいろいろと面倒な問題を抱えています。
理論自体はそこまで面倒ではないですが、問題になるのはやはりレンズだったりします。
というのも、理論通りにいかないからです。
その理由は、ざっくりいえば光線がうまく集まらないというものです。
原因はレンズの形、あるいは先ほど言ったレンズそのものがぼやけてしまうからです。
つまり、氷のレンズでは限界を迎えてしまったと言えるでしょう。
何か、それこそ代替品が必要です。
とりあえず、大体となるレンズに必要な条件は二つです。
一つ目は、それ自体をどれほど小さくするか。
確かにできる限り小さい方が望ましいですが、私には扱えないほどになると意味がない。
小さいものを見ることができる魔法を使えるとは言え、限度があります。
具体的には植物の中身までは覗くことはできますが、それ以上にモノを拡大することができません。
魔法の限界というより、魔法を使う器官の問題ですがそれはさておき。
二つ目は、レンズそのものの性能。
当たり前ですが、レンズの表面がぼやけていたり変な形をしていたら物を見ることなんてできません。これらをどうするかがポイントでしょうね。
さて、今すぐに思い出した案は外部から調達すること。
すぐに思いついた候補は、例の魔国の物。
あれらは「失われた技術」とされており教会側曰く異端者の物とされていますが、実物を見ると今の魔法に近いものもいくつかある。
それらは戦利品として各貴族の家に保管されていたり、教会や王族が保存しているものもありますが、中には世に出してしまったものもあります。
その一種が魔石と言われており、今では一大勢力と言っても過言でないほどに膨れ上がっているのですがそれはともかく。
つまり、上の案で現実的な路線は魔石を用いることです。
もちろん、魔石はそのような魔法を直接再現できるほど万能ではありません。
しかし、レンズを作り出すことが間接的には可能です。
具体的にどうするかというと、自然に透明の物体は一応存在します。
それを魔石で削り取る、あるいは磨くという方法です。
ただ、この方法は非常に時間がかかってしまいます。
まず、透明の物体そのものが非常に手に入りにくいものです。
ある特定地域にしかないものであり、そこを管理しているのは私と縁がない伯爵家の方。
フィールドワークも頑なに拒まれている以上、見込みは薄いでしょう。
加えて、削り取るのも磨くのもイサマから話を聞いただけであり、その技術を知っているわけではないです。
なので、この案は「不可能ではないが実現が難しい案」になります。
魔石から物を作ることは可能とされているため、レンズそのものを作るというのもアリですが……当然その製法はわかりません。
というより、魔石からどうやって物を作るのかについてはいまだに明らかではない以上、あまり現実味がない案です。
最後の案は私が魔法でレンズを使っていることから、それと同様の物を作るという帰納的な案。
魔法と言うのは、人間の体内に流れている物から使えるとされています。
その理論を適用すれば、私から取り出してみることで魔法が何かわかる……と思いましたが、これは最終案にしましょう。
結局、どこか外部から材料を調達するのは難しいように思えます。
そうなると、自ら持っているモノからレンズを作るべきという結論に至りました。
最後の案とどう違うのか、と言うと魔法で顕微鏡のような現象を引き起こしているのだから、それと同様のことが可能であるはずという考えです。
つまり、私が魔法を使うことでレンズを作るのです。
なぜ最初からそれをやらないのか、ということですが一応私も試したことがあります。
しかし、それが成功したためしがないです。
なにもない所に魔法を作ることはもちろん、魔石を使って間接的に顕微鏡を作れないかなど試してみたのですが、うまくいかないようです。
ここで、魔法の理論について少し解説しましょう。
原理に遡ると、我々の界隈では魔法は体内にある魔力を支払うことで現象を引き起こすとされます。
正確に言えば、魔法回路という専門の器官を使わないと魔法を起こすことができないということです。
私がこの魔法を使えたのはなぜか。実は私もあまり覚えてはいません。
そういうものだからと当時は考えられていたからですし、私もそれで納得していました。
しかし、学院ではそういう曖昧なものではなくきちんと定義されていました。
原理的な授業は多くはないものの、偶然私が習った先生はそれを研究していて授業を担当していました。魔法をどのように使うのか、というのを初めて実験的に解明した先生です。
残念ながら、今は退官なさってしまいましたが……
その先生の内容をざっくりにまとめると、魔法を使うために意志が関わるとされています。
意志というのは「~~がしたい」という精神的なもの、と言われています。
では、幼いころ私が~~したいと思っていたのか、という点についてはその先生曰く無意識に思っていたところに作用した、とされています。
要は私の精神が、意思によって変動していたといえるのでしょうか。
ちなみに、詠唱をするかしないかというところも研究していました。私は詠唱せずにこの魔法を使えるようになりましたが、その理由に関しても詠唱に意志が関わっているとか。
魔法とは離れますが面白い実験結果として、何かを口にすれば多くの場合精神も口にしたものに影響されるというものがあります。
言い方を変えるなら、詠唱こそが魔法を起こす意思そのものと言えるでしょうか。
なお、私が詠唱無しでできる件について相当不思議がっていました。
そのような例はなくはないが、非常に希少でいまだに説明がつかないということらしいです。
話がずれましたが、魔法の原理は魔力を対価に払うことによって、意思を現象に変換し、この世界に映し出す。
それが原則です。当然、どんな意思も現象に変換することは不可能です。
その良い例が私の顕微鏡作成についてでしょう。
もし、上の条件が成り立つのであればここまで苦労はしていません。
……まあ、世の中にはこれが成り立つという考えの方もいらっしゃるのですが。
長くなりましたが、ここで一つ不思議に思いませんか?
魔法を発動させるのに意思、つまり詠唱が必要なのに無詠唱で発動できるという件。
意思は言葉に発しなくても良いから? それだと、意志を現実世界に影響を与えることができません。
ここから推測できる事実は、私の使っている魔法は魔法回路を使ったものではなく体内で起きている何かであること。
そして、現実世界に「物」を出すには魔法回路を使ったものが必要な可能性が高いということです。
お読みいただきありがとうございます。
構想を大きく変えたためお知らせをしようと思いますが、それは活動報告にて。近日中に公開します。
明日は投稿しようと思いますが、もしかしたら不可能かもしれません。
来週の投稿は一身上の都合により、投稿できるか不明です。
(ただ、基本的には今まで通りを順守する予定です)




