表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/92

12話~「武器は理論と数式と自分の頭と想い」~

前回のあらすじ:ヴァネッタ公爵夫人を退け、ハリー公爵に注意喚起した。

なんとかこちらのウソがばれなかった。


ブクマ登録、そしてポイント評価ありがとうございます。

久しぶりに理論の回です。難解な部分もあるため、読むのがつらい方はこの話は飛ばしても構いません。

伏線もこの話は特にないので。

 さて、あの談話ならぬ狸の化かし合いと勝負どころが終わりました。

本当はこんな感じで研究やら人に教えることやら没頭したいのですが、貴族であるから仕方ないですね。


 ようやく気が休める自らの研究室にたどり着きました。

私も一応学院の研究者の端くれなので、研究室をもらっています。

恐らく授業を担当しろというお達しが来るでしょう。


 本来は学院に研究室を持つ方は授業を担当せねばなりません。

一般教養が中心とはいえ最先端の内容もいくつかあります。その分野を授業するには研究が中心でない先生では厳しいから、と言われています。


 他にも、研究費は自費ではなく学院側から出してもらっています。

なので、其れの見返りとして授業しろということも理由ですね。


 なお私はかなりの好待遇でして、授業を担当するより研究してほしいという扱いでした。

私の魔法及び研究成果が高く評価されているから、と自己分析していますがそれはともかく。


 話を戻しましょう。

顕微鏡作成の件についてです。一応、仕組みと道具自体はそろっていますが……とりあえずやってみましょう。


 まずは水を凍らせてレンズにします。

この前と同様に物体をレンズ越しで見ると、結果は同様でした。

次に、私の腕の距離ぐらいまで伸ばします。そこで結果を見ると……予想通りダメですね。


 どうやらぼけてしまいきちんと見えません。さらに言えば見える物体は小さくなっている。

先ほどと同様に近づけると、ぼやけなくなり物体が大きく見えます。

これだとあまり望ましくないですね。


 というのも、これだとあまりきちんと物を見ることができません。

私のモノと同じ精度というのは無茶かもしれませんが、せめて植物のことを研究できるぐらいにしましょう。イサマのためです。


 とりあえず、方法を変えましょう。私の魔法を発動させ、いつものように小さなものが大きく見えるようにします。

……不便なので、名前を付けましょうか。イサマから名前を借りて顕微鏡モードとでも呼びます。


 さて、このモードにしましたがやはり彼の言う光線は見えない。では、少し見るものを変えましょう。

そうして、彼に教わった光線を見る魔法を発動させます。

するといきなり目がちかちかして頭が爆発しそうになり、焦って切りました。


 ええ、忘れていました。ここにたくさんのものがあることに。

多くの物が見えているのなら、それから大量の光線が出るに決まっているということに。

落ち着いて、一つの物の光線のみを見るようにすると成功しました。


 私の目の魔法は小さいものを大きく見る、という効果もありますが本質的ではありません。

正確には、こういった光線の軌道も見ることができます。

イサマが聞くと、なぜそんなことをできるかと聞かれましたが私にもわかりません。


 そして、イサマに習った通り光は全方向に放出しています。

まあ、この状態だと他のものが見えない状態で、しかもそれなりに頭を酷使している状態なので長続きできないのですが。


 さて、この状態で実験を行いましょう。不必要な段階もあったので、その時は魔法を切りますが。

まず、光線が私の目にある程度届いています。その途中にレンズを設置します。

そして、どのように広がるかを観察します。


 ……ふむ。結果的にイサマの言っていることが正しかったですね。

とりあえず、この実験について考察しましょう。

さて、この光線の軌道を見るとやはり変な方向を向いています。


 レンズをずらしてみますが、動きすぎてしまいますね。

なので、道具を用います。具体的には、私と同じ振興の方が作ったものですがその大きな特徴は小さくしか動かせないこと。


 ちなみに、振興というのはとりあえず私みたいな研究に特化したような能力を持った人のことです。

実用性はあまりないですが、魔法史および科学史を見ると大抵彼らの名前ばかりというほどです。

それはともかく。


 逆の物を大きく動かす道具でしたら歴史上似たような魔法があったらしいですが、小さく動かすというのは彼の専売特許であります。


 今回はそれが非常に役立ちます。事実、彼の魔法は魔法の道具化において最も役立ったとされていますので。

その魔法が今や道具化されているのですから、便利になったものです。

一応イサマに計算の理論を習ったため、ちょっとずつ動かしていきます。


 そして、理論的に正しい位置に動かすことができました。そこからもう一度のぞきますが……

おや? やはりぼやけてしまいます。


 光線を確認します。

……思った方向に光線が動いてくれませんね。かなりごちゃごちゃとしてしまい、その結果本来届く光線よりも少なくなってしまっているのでしょうか?


 その前にイサマの理論について紹介しましょう。

今回使用しているのは中央が膨らんでいる凸レンズ。その性質として、凸レンズの軸に平行な光は焦点を通る、レンズの中心を通った光は直進する、らしいです。


 さて、上記の性質を用いると光線の交点は一意に決まるらしいです。

さらにレンズの公式という、レンズから焦点までの距離を示す焦点距離がどこか、というのを導出できるのですがそれはさておき。


 ポイントその一。実際に大きく見るにはどうしたらよいか。それは、見たい物体を焦点という場所よりもレンズの近くの場所に置けばよい。

焦点と言うのは光が集まる点。正確に言えばすべての光線が焦点を通過するわけではないですが、それはともかく。


 ではその焦点よりもレンズの近くに、見たい物体を置くとどうなるでしょう?

正解は我々の目に虚像という状態で大きく見えるようになります。

具体的にどうなるかは実際に図を書いてみるとわかりやすいかと思います。


 ではポイントその二。今回の問題です。

物を大きく見る、すなわち倍率を大きくすることはできるが、より大きくするにはどうしたらよいか。

実は、これをレンズの式と倍率の式から導出ができます。


 結論から言えば、焦点距離を小さくすればするほど倍率が大きくなります。

では、焦点距離を小さくする方法は何か。

それは、レンズ自体を小さくすればよいのです。


 なぜか、と言うのは曲率半径という概念が必要になるので一旦さておきましょう。

要は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そうなると、私の魔法もそのような感じになっているのか、と思いましたがまあその研究はともかく。


 

 さてここまで考察しましたが正直に言えば、一枚だけのレンズではイサマにとって良い顕微鏡が作れませんね。

なぜなら、見たいものとレンズを近づけなければきちんと物が見れないわけですから。


 もちろん、それでもいいと言えば良いですが……ただ、それだと近づくと危ないものを見る際に困るでしょう。いちいち私に頼まれるのも好ましくないため、できればそれなりに距離があっても使えるものにしたいです。


 休憩がてら、イサマに習ったことを思い出します。そういえば、レンズには中央が凹んでいる凹レンズもあるとか。その組み合わせを用いるとかなんとか言っていましたね。

そうなると複レンズでしょうか。


 複式についてはいまいち理解しきれていないところです。何となく理解できましたが、イサマの見せてくれたものはあまり倍率がよろしくない。結局ぼやけてしまったり小さくなります。

……そうなると、私としても作れないのですよね。


 彼自身もレンズのしくみは知っていたようですし二枚組のレンズでモノを大きく見る方法を知っていたようですが、顕微鏡自体はあまり習熟していないのかもしれません。


 まあ、物は試しです。複式も挑戦してみましょう。

お読みいただきありがとうございます。

細かいことは活動報告に載せますが、とりあえず簡潔に言うと現代と違う部分があってもそういうものと納得して頂ければと思います。


それでは、また土曜日に。(投稿が夜になるかもしれません)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ