3話~「未知の科学への第一歩」~
本日(2/2話)です。
ようやくこの話でSF要素が出ます!
それを決心してから行動に移すのは早かった。感情は熱しやすく冷めやすいのだが、冷めてからも決意したことは揺るがなかった。元々科学者であったことも起因しているのだろう。
未知の現象を現代の知識を用いることや新しい定義して人間のフィールドで暴く。それが研究者である。
どうやら、俺にもその心が備わっていたらしい。
そのために必要なことは……
フィールドワーク、それにつきる。
なので朝から晩までずっと近くの山にこもりがちであった。本来ならば町にでも行った方が手掛かりはあるかもしれないが、あれは馬車で何時間もかかる道である。とても五歳の子供がいける道ではない。よって、妥協策としてフィールドワークを選んだ。
実は約一か月に一回程度村に商人が来る。このような僻地にいる人たちと町との唯一の連絡線であり、村で作った作物を売ることでお金を得て、そして生活必需品を買う。
まあ、お金を使う機会がめったにないため実質は物々交換になっているのだが。今日は偶然その日であったため、山に入らず交渉してみたことがある。
「商人さん。お疲れ様です。今日も精が出ますね」
と、多少礼儀よく話しかけてみたのだがこちらを見るやすぐ商品の方へ向いてしまった。
「すみません。ちょっといいですか?」
と言っても、無反応。何度話しかけても反応してもらえないため、ボディタッチを行った。
「なんだ! こっちは忙しいんだ。要件があるなら早くいってくれ」
と、つっけんどんな態度であった。これは出直すしかないか、と思って改めようと思ったのだが彼を見ると機嫌が良さそうな時がない。
村民にも対応がいいとは言えない。これらのことから、今の段階で彼に取り入るのはあきらめた。
さて、魔法とフィールドワークがどのように関係があるのかという話だが、理由は二つあった。
一つは少なくともお祭りの時の魔法は前世の所謂自然科学に分類される。つまり、物理や化学、生物の世界と同様なのだ。聞いたことあると思うが、物理、化学、生物その他の自然科学はおおよそすべてがフィールドワークによって発見されたものである。その観点から言っても重要なことである。
もちろん、俺が挑戦する魔法は現代科学を超越したものである。そのため魔法全てが自然科学に基づくものかどうかはわからないのだが、少なくとも手掛かりとしては悪くない手法だろうと考えている。まさか貴族の方に魔法を見せてください、と頼むわけにはいかないというのもあるが。
そして、もう一つ。こちらの方が具体的なアプローチの理由になる。聞いた話だと、この付近の山は色々な植生があるのだが、中には日本では見たことがない植物がたくさん存在する。例えば、動くジャガイモなんてものもある。なんと、根を足にしてそのまま人間と同じように歩いているのだ。それは魔物扱いされてはいるが、何でもこの村ではよく出るものなので俺も慣れてしまった。
が、よくよく考えてみるとこのジャガイモがどういうシステムで動いているのか非常に気になったため聞いてみた。……のだが、父母にも、村一賢いといわれる人にも、物知りな長老にも聞いたがちんぷんかんぷんな答えであった。なんでも、神が動けるように作ったからやなんとか。
別に、神を否定する気はない。ないのだが……俺の求めている答えではなかった。
そういうものではなく、どういう物質が動くまではいかずともせめてどうやって歩いているのか、というところをただ見ただけで分かるような事実だけでなく、もっと詳しく知りたかった。
余談だがこの世界に神というか宗教は存在する。わが村では土着信仰で、あまり有名な神ではないものの山の神を信仰しているということ。実際、山に入ってお礼をしながら採取するらしい。それを守らないと、つまり山に感謝の気持ちを抱かないと天罰が下るとやら…という話である。
信じちゃいない…のだが、こういうことをしないと実害として村に冷たい目で見られる。事実、何度か忘れたことがあるが、親ににらまれ早く言え、という雰囲気でついそのようなことを言ってしまった。
そのため、ちょっとした手間でそういう面倒を省けるのであればそういうことをした方が良いのだ。
合理主義と言ってほしい。
そんなこんなでいつの間にか一年が過ぎ、六歳になっていた。いまだに発見はゼロ。その中で面白そうな植物や魔物もいたのだが、魔法に役立ちそうな生き物はいなかった。
純粋に形やどういう仕組みで活動しているのか、という点が面白そうであっただけで前世でもそのような生物はいたからである。ただ、飽きることも全くなかったのだが。
さて、今日も山に観察をと思っていつの山に登ろうとすると、俺と同じくらいの子供から1.5倍ほどの身長の人が一緒になって遊んでいる。そして、
「おーい、イサマ。今日こそ一緒に遊ぼうぜ」
と誘われたのだが、断ってしまった。
彼らがやっているのは何か植物を巻いた石でやる前世のサッカー。あまり頑丈ではないブーツのため、普通石を蹴ったら痛いのだがなぜか採取で得た植物を石に巻くとあまり痛くなくなる。
その効力を活かしてサッカーを行っている。どうやら、今日は植物を巻くところから始めているそうだ。……まあ楽しそうではあるものの、今はフィールドワークがやりたい。そう、頭が未知への探求が求めているのだ。と、言い訳をして首を横に振ってから今日も祈りながら山に入っていった。
そして、偶然ながらようやく一つ手掛かりを見つけた。
いつも入っている山に入る。ここは、俺が見たことがない生態系が多く、観察するだけでも飽きさせない。ある時、俺の不注意でよくわからない花を踏んでしまった。
その結果茎が折れてしまったのだが……
それを視認した瞬間なんと踏んだ時俺の靴から火が吹いたのだ。俺の靴が轟轟と燃え始めたので、急いで靴を脱ぎ棄て土をかぶせることで鎮火させた。
落ち着いてからその後茎を見ると小さく炎をふいていた。最初は、茎にも着火しているのか…と思ったが、どうやら折れた茎の先端のみが着火しており、それ以外の部分は燃えていなかった。
その光景が非常に神秘的で、あたかも生き物の理に触れている気分になっていく。
ずっと観察しているうちにその炎はどんどん小さくなり、最終的に茎から炎が出ることが無くなってしまった。この光景を見て、あることが俺の頭によぎった。
そう、俺が希望の灯をともし始めたあの光景、ご貴族様が魔法を使用した姿を俺は思い出した。
それから、この花が魔法を連想するまではすぐであった。
一年たって、ようやく自分の研究の方針が定まった。そう、これから魔法という現象をこの花をモデルにして解明していくことになった。
まずはこの花がどのように炎を出すか、の実験……所謂比較を行うことからだった。
魔法のしくみなぞさっぱりわからなかったため、その花を根っこまで引っこ抜くことにした。
しかし、そこから炎が出ることはない。
その際に、草のいろいろな部分にそれなりに長い時間触れたのだが、根っこに俺の手が触れた瞬間……
俺の手の中から何かがどんどん不可逆的に抜き取られる感触があった。それは液体っぽくもあったが、どこか固体っぽくもあった。そして、その植物がどんどん熱を帯びてきて、いつの間にか手に持つことさえ不可能なほど熱くなってしまった。
気味が悪くてその植物をつい遠くへ投げ飛ばした。結果的にその選択をして正解であった。
俺が放り投げた瞬間……その植物が発火した。
それが飛び火して、他の草や先ほどの植物にも連鎖して燃え始めている。
まずい。このままだと山火事になると直感的に分かってしまった。
急いで周りの土を掘って炎へかぶせる。なんでも、炎が燃える条件は燃えるための素材、酸素、そして熱が必要とされる。
土をかぶせたのは熱を奪うという効果も期待できるが、酸素源を減らすことを目的としたのだ。
もちろん、異世界に地球の物理が有効なのかはわからないが、とっさにそれが思いついただけだ。がむしゃらに土をかぶせていくと、ようやく火が収まった。ほっと一息をつきながら、頭を冷やそうと深呼吸する。
恐らくなのだが、この異世界にも地球の物理は有効なのだろう。全部ではないにしろ、一部では適用できるはずである。そもそも、よく考えると俺が地面に足をつけるのも重力が作用するから、である。
また、今更だが親の姿を見てもほとんど前世のころのヒト族と同じ姿である。
当たり前と思うかもしれないが、十分特徴的なものである。進化というのは環境によるものであるから、そういう意味ではこの異世界と前世の環境はすべてが同じでないにしろ、似ているところは多々あるのかもしれない。
そう結論付けたのだが、これを決めたせいで後々に痛い目を見る。
お読みいただきありがとうございました。
え?SFじゃない?
まあ、SFっぽさはありませんが…きちんと魔法もどのような現象かこのような話の展開で定義するので、許してください。
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