10話~「Battle with fate ① in outpost」~
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前回のあらすじ:魔法石、あるいは魔道具が社会にどのように及ぼすか
本日の話ですが今世の親の話をするかすぐ話を進めるか悩みましたが、話を進めることにします。
そのため、前回引っ張った内容とは少し異なります。
計画的に物語を進められず申し訳ございません。
さて、それではついに第一章前半の起承転結で言えば承の段階です。起が長すぎましたが、ここからあらすじ回収に参ります。
研究がひと段落付いたからか、今世の親について多少想いを巡らせる余裕ができた。
前提として、やはり彼らのことを本当の親と見なせない。もちろん育ててもらった恩はあるのだが、どうしても前世の親の方がお世話になっているという印象が強い。
だが、今まであまりにも不義理であったように思える。育ててもらったくせに何も恩返しをしていない。下手をすれば赤の他人と同レベル。スタンドプレーも甚だしい。
もちろん将来的に俺は帰る予定だから絆を薄くしたなど、言い訳はいくらでもしようがある。しかし、それをした瞬間に自らがどうしようもない人間になってしまう気がする。
ならば、せめて今まで世話になっただけ彼らに恩返しをすべきではないだろうか。それだけで返せるとは思っていないが遠い恩返しより、近くのお手伝い。
今のうちから多少なりともやっておかねば、彼らに失礼である。もっといえば、自己中心的な考えではあるが自らが気持ち悪い。
ここまで決意してさっそく家に帰って手伝おうとした時、村全体に大きく響く銅鑼の音が聞こえた。
何の合図を示すのかさっぱりであったが、彼らの逼迫とした表情とどこか建物に集まる姿が緊急事態であることと差しているようであった。
気のせいか背筋に溶けかけの氷が流れてきた。うすら寒さと不気味さと違和感が気持ち悪く、頭が働く前に足を全力で前に出して家へと向かう。
家の付近まで着くと、そこで出発の準備をしている女性、母親がいた。髪がぼさぼさで出かける準備をしていなかったが母の姿を確認出来て少しほっとした。非日常の中に多少なりとも日常が混ざったためだろうか。彼女も俺の姿を見た途端一目散にこっちに向かってきた。
その姿にちょっと立ち止まってしまうと俺の体に柔らかい感触が来た。
見ると、母親が抱きしめてくれていた。何が起きたのかさっぱりだったが、母が
「良かった、無事なのね! 早く避難所へ行きましょう」
と言って、焦りながらなのか俺を抱きしめながら大きな家へ連れて行こうとした。これにはさすがに恥ずかしく、
「自分で歩けるから!」
とつい声を荒らげてしまった。これに関して俺は悪くないはずである。
そう言ってようやく俺を解放してくれて、手をつなぎながら二人で走りながら向かうことになった。十歳で身長差もある親子。しかしその手は強く握られている。
色々と恥ずかしい要素が多かったが、母親の鬼気迫る表情には口を出すこともできず手を放すこともできなかった。
周りに見られていないだろうか。見ても他の人はまだ避難中であった。感情をごまかすために
「ねえ、この銅鑼は何?何か大変なことが起こるの?」
と走りながら聞くと、足をとめず表情も変えることなく教えてくれた。なんでも、この銅鑼は盗賊が襲撃したときにならすものだそう。確かに、この村はあまり防衛設備もない。当然、常駐している兵士などもいない。
なので戦える人、恐らく男勢だろうがを戦わせることになるのだろう。
ここまで聞いて、一つ疑問に感じた。
「この村って男たちが戦うの?何か戦う力があったりとかする?」
母が少々ためらった後に
「…全くないわ。精々魔法の道具が多少融通されているぐらいね」
と答えてくれた。様々な疑問が生じたがいったん後回しにして、今最も重要な疑問が生じたので聞いてみる。
「この村って、税みたいのものは納めている?」
「ええ、納めているわよ。男爵様がこの村を納めているの」
「だったら、男爵様とやらがこの村に助けに来てくれないの?それとも後から来るの?」
と聞くとここで初めて顔を大きく歪め、憎々しそうであり悔しそうになった。
「ええ…本来はね。
だけどいつも自衛しているわ。なにせ、男爵様が来るのは大体終わった後だもの。こういった戦いに加わることはないわ」
なんだそれ。こちらは税を納めているのに、助けもよこさず常駐の兵士もいない。
領主としての仕事をしていないのではないか。一般に、税を納める理由はその土地に住ませてもらっているお礼と、何か異常があった時に守ってもらうことにある。
もっといえばご貴族様の事情なんぞ知らないが、自分の領地が盗賊に襲われました、それで村がやられましたなんてなったら彼らからすれば恥ではないのか。俺の元いた世界で貴族関連の話ではそういうものだと思っていたのだが。
この世界の常識はわからない。そんなもの創作だけという可能性もある。わからないのだが……
良識がある領主なら自分の納めている村を盗賊に襲われていい気分がするだろうか。普通は、問題視するだろう。
もちろん、特殊な例があるかもしれない。例えば、この村が自治を認められているため守ってあげない分税を安くする、という場合もあるかもしれない。
だから、俺の怒りは不条理なものの可能性もあるが……
仮にそういった場合において論理的に認めざるを得ない真実だとしても、納得できるものではない。
だめだ。考えただけで胸がむかむかとする。今の状況でどうすれば良いのかさっぱりわからない。とにかく、避難所で聞いてみるしかない。
外は、当初は晴れていたにもかかわらずすでに黒い雲で覆われていた。その雲はもくもくと増えていき次第にその土地に雨が襲い掛かろうとしている。
お読みいただきありがとうございます。
承と言っておきながら今回は前振りだけでしたが、いかがでしょうか。
なろうではいきなり承から入って設定などを説明する、といった戦術をとった作品も見受けられますしそちらの方が読みやすいようには思えますが、あえて起から入りました。
この小説の場合はそっちの方が面白いかなぁと思ったからと言いますか。
さて、ここから事件が長く続きます。すでに書きあがったものを改稿してから投稿しているので、どれくらい長くなるのかあまり計算していませんが、目安としてはそれなりに続きます。
恒例の宣伝をします。毎回毎回うるさいと思うかもしれませんが、申し訳ございませんがお付き合いください。
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