9話~「研究結果には社会的責任が生じる」~
イサマ編前回のあらすじ:ついに研究によってご貴族様のお祭りの魔法よりも上回る魔法の道具を作ることができた。
閑話のせいでフラグ管理失敗しました。土壇場で変なことやるからこういうことになる。そんなわけで前の閑話は一旦消して後半に回します。本当に申し訳ございません。
社会的側面の話になります。
2020年 7/22 夢についての描写を修正。
目が覚める。あたりに見えるのは闇であった。闇であれば周りは何も見えないはずだが、なぜか俺の周りは闇が見える。正確には、その場が真っ暗で何も物がないということがわかった。自らが光っているのだろうか。
確か俺は家で寝ていたはず。家はこのように何もない場所ではないから、少なくともこの場は家ではない。
であれば夢だろうか、と思って再度就寝しようと横になるが眠りにつけることはない。はてどうしたものか、と考えあぐねているときにどこかから声が響いた。
「~~~~せよ」
それはあまりにも小さくて、最初に聞いたときは耳鳴りかと思えるほど。気のせいだと思って再度横になろうとすると、
「魔法を研究せよ!」
と、今度は俺の心の中でハッキリと響いた。これには仰天して飛び起きた。
なんだろうか、今の声は。
混乱していると再度同じ言葉が響いた。最初は驚いたがそろそろ慣れてきたから逆に問いかけてみる。
「お前はなんだ!? 何が目的だ!」
「それにこたえる義理はない。ただ、お前が研究して魔法を解明出来たら褒美をやろう」
わけもわからぬことを言ってきた。現状、こいつのために魔法を研究しているわけではなく元の世界に戻るためにやっている。個人的に最も胡散臭いのは褒美とやらで、そんなこと言うものはろくなことをしない。
だから、警戒を続けているとこちらが絶対に届かないものを提示してきた。
「魔法を研究してこの世界の人に認められた時、お前の望みをかなえてやろう。
金でも、名誉でも、女でも、そして会いたい人に会わせることも可能だ」
……あまりにも、俺に突き刺さる思わせぶりなセリフだ。
俺が異世界からやってきてどのような目的で研究しているかなんて誰にも話していない。
こちらの目的がばれているのだろうか?
あまりにも非科学的だが、仮にここがよくある異世界転移ものであるとしたら……このような現象を起こす存在は大方三通りに分類される。
一つは悪魔とかそういった類。
一つは俺の中にあるスキルとかそういった類。
そして最後は、この世界の神とかという類。
しかし、どれにしても理由がわからない。
俺になぜ魔法の研究をしてほしいのか? なぜこちらの目的を見透かしているのか?
問い質そうとした瞬間、闇から光が生まれその世界が急に遠のき始めた。
そして、今度こそ家で目が覚めた。なんだろうか、あの夢は。気持ち悪いことこの上ない。
しかしそのような不快な気分は太陽の日光を浴びることで徐々にはれ始めた。あのような存在を気にする必要はないし、少なくとも現状ではあの存在と俺の目標は同じでやることは変わらない。
何よりも昨日のことの方が大切だ。思い出しただけでにやにやしていた。一人でニヤニヤしていたら気味が悪いと思われることにきづいたからから控えるようにしたが。
朝食中。魔法石についての展望を考えていた。とりあえず、一種類の実用化には成功した。であれば次の魔法、例えばゴムクサについてとまで思ってふと気が付いた。
ゴムクサに関しては、すでに実用化されている。具体的に、サッカーボールとして、である。
朝食を食べ終えて外に出てさらに考える。
サッカーボールは魔法石……おかしいから魔道具とする、の一種となるがそれを大きく騒がれていない。単純に身近なものであるから。そうなると、一つ疑問が生じる。
そもそも、ヒフキソウについて誰にも気づけなかったのだろうか。
前世のころ、どう見積もっても凡人レベルの研究しか行ってこなかった。異世界に行ったことで俺が天才になるという妄想をした時もあったが、ゴムクサによるサッカーボールを見ると少なくとも異世界人の村人と才能の面を比較しても大した差はないのではないか?
何が言いたいかというと、こういった道具化はすでに行われているのではないか。そして、ヒフキソウも実は前例があるのではないか?
しかし俺の身近を振り返っても、サッカーボール程度しか思いつかないほどに魔道具は少ない。火に関しては何か起こす道具はあるらしいがそれを使う場面を見たことがない。水ももちろん井戸を使っているし前にも言ったが電気なんてものはない。
では、なぜこんなに道具が少ないのだろうか……?もしかしたら、水道にできる草があるのかもしれない。
ここまで考えて、一つ思い出した。一度注意されたときに思いついたご貴族様の既得権益についてである。
例えば火を出す魔法が得意なご貴族様がいたとする。彼らは当然自分の魔法を使えない人ととの交渉材料……例えば金儲けなど使おうとするだろう。
使えない人にとって原始的に火を出す手間が省けるため作業効率は格段に良くなる。
もしそれを道具化できたとすると、人々はそれに金を払おうとするだろう。さらに火を出すご貴族様が少数の場合……
寡占市場が成立する。競争相手のいない商売のため、いくらでも値段を吊り上げることができてしまう。
推測に推測を重ねた考察だが道具化云々はともかくとして、少なくとも寡占市場に関しては成り立つ可能性が高いように思える。当然ながらご貴族様の数は少ない以上、既得権益は成立するだろう。
この仮説を元にして現状に当てはめる。俺が魔道具、具体的にヒフキソウを用いた魔法石を開発した。もし、村に来る商人がそれを見たらどうするか?パッと考えられる可能性は二つ。
俺の技術を盗みに来るか、それとも封殺しようと暗殺しに来るか。
俺の技術を盗みに来るのはまあいい。自慢ではないがいろいろと手順が必要かつ、すぐに再現できないような技術もある。そう簡単にまねはできないだろう。
問題は、家族や俺を脅しに来て盗みに来るか俺を殺しに来た場合だ。
我ながら調子に乗った考えだが、思考が沼にはまっていく。
仮に戦闘を仕掛けられたとしてどう対応するか。
前提として、俺は非力だ。身長もこの村の同年代と比べて小さいため、大人はおろか同年代の子供と魔法石なしで戦うとなると十中八九勝てないだろう。
よしんば魔法石があったとしても制御面ではあちらの方が上。そうなると、勝つのは難しいだろう。
……だからこそ、親もやめろと言ったのだろうか。これがすべて妄想だから現実にはならないはずだ。
ここまで思って、ふと今世の親との関係に思い至った。
お読みいただきありがとうございます。
研究に関してですが、しばらくありません。その代わりに応用についての話や心情描写、社会情勢といったところに力を入れようと思います。魔法の研究だけしてろとお思いになるかもしれませんが必要なので導入します。
もし、要望があれば研究回だけ何か印をつけようと思います。その際は感想にて申請お願いします。
で、毎度恒例のあれですが。
失敗しても、大目に見てこの小説を楽しんでやる!という寛大な読者の方がもしいらっしゃいましたら、ブクマ登録、または下の星印の評価ボタンを押していただければ幸いです。




