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オセロニアおはなしえほん

だいてんしのおはなみ

作者: 山岸マロニィ

 ファヌエルは、てんのくにの かみさまにつかえる、だいてんしです。

 まいにち、かみさまたちの おつかいで おおいそがし。


 ファヌエルの ぶかの エスペランサたちは、そんなファヌエルを ねぎらおうと、あるけいかくを しました。




 やすみのひ。

 エスペランサたちは、ファヌエルを おはなみに さそいました。

 てんのおしろを でたさきにある こうえんでは、さくらのはなが まんかいです。

 あおぞらのした、さくらをたのしもうと、たくさんのひとたちで にぎわっています。

 

「すばらしいですね」

 うすももいろの はなびらがまいおちる なみきをあるきながら、ファヌエルは いつもと違って、えがおをうかべています。

 エスペランサたちは、うれしくなりました。





「……おや、なにをしているのでしょう?」

 すこしいったさきの、ひときわおおきな さくらのきのしたに、おおきなドラゴンが すわっています。

 あかいマットを しいたうえに、はこにはいった おいしそうなごちそうが ならんでいます。そのごちそうを、ちいさな三びきのドラゴンたちが、かぶりついていました。それをみながら、おおきなドラゴンは おさけをのんで ごまんえつです。


 ファヌエルはちかづき、

「なにをしているのですか?」

とたずねました。

「おはなみをしているのだよ」

と、おおきなドラゴンは こたえました。

「ひがしのくにでは、こうやって おはなみを たのしむのだよ」

「なるほど。めずらしい ごちそうですね。この、ピンクとしろとみどりの、くしにささったものは なんですか?」

「おだんごだよ。あまくて もちもちで おいしいよ」

 ちいさなドラゴンたちが、くちぐちに こたえました。

「おだんご、ですか……」




 それをきいて、エスペランサたちは あわてました。おはなみにさそったのに、ごちそうやおだんごを、よういしていなかったのです。


「いそいで おだんごを かってくるんだ!」


 エスペランサのひとりが、はしっていきました。けれども、こうえんのやたいは どこもうりきれでした。

「きょうは おきゃくさんがいっぱいでね。わるいね」




 なかまのところに もどり、ほうこくをすると、エスペランサたちは こまってしまいました。

「どこかに、おだんごをうっている みせはないか?」

「そうだ!」

 エスペランサのひとりが いいました。

「シュクレのおかしやさんなら、あるかもしれない」




 エスペランサたちは まっていられず、みんなでシュクレのみせへ はしりました。


「おだんごをください!」

とかけこむと、シュクレは こまったかおをしました。

「いまのおきゃくさんで ちょうど うりきれてしまったの」

 エスペランサたちは がっかりしました。


 シュクレは すこしかんがえてから いいました。

「いまから つくりましょうか。みなさんも おてつだいしてくださいね!」




 まず、おこめのこなとおさとうを ボールに いれます。

 そこに、あついおゆを すこしずついれて、へらでこねていきます。


 しっかりまざって トロトロになったら、さらしをしいた せいろにながしこみます。


「こんなトロトロから、どうやって おだんごができるんだ?」

「みていれば わかるわよっ」


 それを さらしでつつんで、二十ぷん むします。


「そしたら、ほらっ!」


 せいろの ふたをあけると、もちもちのおもちのように なっています。


「ここからが たいへんよ!がんばってね」


 せいろから とりだしたきじを、みっつにわけます。

 そのうちのひとつに きざんださくらのはな、もうひとつに よもぎのこなを ねりこみます。


「あつッ!」

「あついうちに まぜこむのが ポイントなのよ」


 シュクレは さらしをじょうずにつかって きじをねります。きじはたちまち、きれいなピンクいろに なりました。

 エスペランサたちも こうたいで、よもぎをいれたきじを こねますが、なかなかきれいに まざりません。

 そのうち、さめてきて まざらなくなって しまいました。


「だいじょうぶ、ムラになったもようも オシャレだわ」


 それを、かわいいおだんごのかたちに まるめていきます。

 ピンク、しろ、みどりとそろったら、くしにさして できあがり♪




 そのころには、そとはすっかり くらくなっていました。

「しまった!ファヌエルさまを こんなじかんまで おまたせしてしまった」

 エスペランサたちは おおあわてで、シュクレのみせを あとにしました。




 こうえんには だれひとりいません。エスペランサたちは ファヌエルのことが しんぱいになりました。


 さくらなみきのほうへ いくと、はなしごえが きこえました。

 さきほどの おおきなドラゴンと ファヌエルが たのしそうに はなしています。

「さくらは ひるまだけが きれいじゃないんだ。むしろ、よるのほうが……ほら」

 ドラゴンが うえをみました。




 さくらのえだの すきまから、おつきさまが かおをだしました。

 そのあかりに てらされて、さくらがしろく ぼんやりと ひかりだしました。

「……これはみごとです」

 ファヌエルは うっとりと みあげました。


「ファヌエルさま、おそくなって もうしわけありません」

 エスペランサたちは、おだんごのつつみを ファヌエルのまえに ひろげました。

「おそくはありませんよ。いまからが ほんとうの おはなみです」

 ファヌエルは おだんごをほおばって ニコリとしました。


 エスペランサたちと ドラゴンたちも、おだんごをてにして よざくらをみあげました。


 さくらの すきまからみえる、おだんごのかたちをした おつきさまも、いっしょに おはなみを たのしんでいるようでした。




  ──おしまい──

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