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神獣さんは話がわかる? 新たな旅に出かけよう。


 本体と思しき首を刎ね落とそうとしたところ。


『ひぃっ!?』


 頓狂な声が聞こえた。ユウキは剣を振り抜くことなく、巨大蛇を通り過ぎて空中で止まる。振り向き、告げた。


「ようやく言葉を発したな。私の声は聞こえているか?」


 巨大蛇も動きを止め、四つの頭の八つの目が一緒になってぱちくりする。


『あれ? アンタ……ていうかアタシ、何やってたん?』


「封印が解けてのち、君は私たちを攻撃してきた。覚えていないのか?」


『封印……? あれ? ホントだ! 封印が解けてる! アンタがやってくれたの?』


「いや、私ではなく――」


 ユウキは事の成り行きを説明する。


『そっかあ、アタシってば寝起き悪くてさあ。いやあ、迷惑かけてごめんねー。てか封印解かれた直後に退治されるとこだったよー。危なかったなあ』


 あっはっは、と四つの首が一斉に大口を開ける。

 なんとも軽い調子の神獣だ。


『んじゃ、あらためましてご挨拶ね。アタシに名前なんてないけど、前にヒュドラって呼ばれてたから『ヒューちゃん』でよろ♪』


「いや、それでは『キューちゃん』と被ってしまう」


『ガビン! んじゃ『ドラちゃん』でいいよ』


 それはそれで前世知識から警告されたような気がしないでもないが。


「私はユウキ。こっちの剣は変身能力のあるキューちゃんだ。そして目を回してぐったりしているのはルシフェという」


『ルシフェ? どっかで聞いたような……まあいっか』


 ドラちゃんは『よろしくね』と四つの首をぺこりと下げる。


「仕方なかったとはいえ、君の首を四つも斬り落としてしまった。申し訳ない」


『あー……、うん。状況からして殺されても文句言えない感じだし、仕方ないよね!』


 四つの首は一斉に笑うも、ぴたり。


『でもこれ、どうしようかな……』


 地に落ちて石と化した首を見下ろし、どんよりとする。


「神性を宿す剣で斬ってしまったから、復元はしないのだろうか?」


 申し訳なく思いユウキが尋ねると、ドラちゃんはカラカラと笑った。


『ダイジョブダイジョブゥ! ここって地脈の質がいいし、二百年も寝れば元に戻るよ』


 すさまじく長く感じたが、長命なる神獣には気にするほどでもないのかもしれない。


 話した限り、他者を理由なく攻撃する性格ではない。

 傷を治すために二百年は眠りにつくと言う。


「君の眠りを妨げないよう、村の人たちや国のトップにも掛け合おう。それでいいかな?」


『うん、そうしてくれると助かるかな。アタシ、基本は人好きだからねー』


 ドラちゃんは『んじゃ、お休みー』と軽く言い、ズゴゴゴゴォーっと地面の中へ沈んでいった。

 最後は大穴に蓋をして、すっかり姿が見えなくなる。石化した四つの首はそのままに――。




 村に戻り、村長たちに事情を話す。

 封印ではなくただ眠りについただけと聞かされ困惑していたが、相手が『神獣』である以上はむしろ祠を建てて祀るべきだとの結論に至った。


 続けて手鏡を取り出し、マリーを呼び出す。

 彼女もたいそう驚いてはいたが、


『ユウキ様がおっしゃるのであれば、国としても眠りを妨げないよう父王様にはお伝えしますわ』


 こちらも問題はなさそうだ。

 となれば残るは――。


「はむっ、もぐもぐもぐもぐ、ごっくん……ぷはぁ!」


 食事をもりもり消し去っている自称魔王様だ。


「ルシフェ、君はこれからどうするのだ? まだ女のユ――」


「おお、男ユウキよ。よくぞ聞いてくれた! もぐもぐもぐ……」


 ごっくんと口の中を空にして、料理を運んできた女性――今回、生贄になりかけたマドレーを指差した。


「こやつめ、ワシをここで雇ってくれるそうじゃ。なかなか殊勝な女子おなごよな、うわははははっ!」


「いえその、私ではなくテオドワさんが……」


「細かいことはよいのじゃ。ともあれ――」


 ルシフェは目をらんらんと輝かせて言った。


「ここで資金をたんまり稼げば、万事憂いなくにっくき女ユウキを追えるというもの。あやつめに会ったら首を洗っておけと伝えるがよいぞ」


「……まあその、なんだ」


 いい加減、誤解を解きたいところだが、一筋縄ではいかないだろう。


「問答無用で襲いかかるのではなく、話し合いで解決してほしいところだな」


「ふはははは、なにヌルイことを言っておる? 恥辱、すすぐ。仇、討つ。魔王として当然のことじゃろうて」


「なにかのっぴきならない事情があったのかもしれないぞ? 君が眠っていたのを知らなかった可能性も十分にある」


 食い下がってみた。


「むぅ、言われてみれば偶発的な事態が重なったのやもしれぬな」


 意外にも理解を示した。


「じゃがとりあえず一発ぶちかますくらいはしてもよいじゃろ。話はそれからよ」


 でもダメだったっぽい。


(まあ、一発我慢すれば、なんとか……)


 なってほしいなあ、と淡い期待を寄せつつ、


「では、私は行く。君も達者でな」


「うむ。オマエもなー」


 こうしてユウキは再び旅立った。

 自身の秘密を探るべく、魔法国家フォルセアへ向けて。


「キュキュキュ」


 白いふわもこな不思議生物、キューちゃんと共に――。



三章はこれにて終幕。

次は魔法の国で大騒動?


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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