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異世界転移のバツバツさん  作者: カボチャ
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死出の誘いと白痴の夢

 ひゅっ。と、短く息を吸ったと同時に目を覚ました。


 眠っていたにも関わらず、まるで全力で走り続けていたかのように呼気は乱れ、左胸の中では締め付けられるような痛みが鈍く渦を巻いている。汗に濡れた衣服はぐっしょりと重く纏わりついて、ひやりと熱を奪っていく冷たいそれが、とにかく不快で仕方が無い。


 うつ伏せに寝そべっていた身体を起こし、みっともなくも涙にまみれた目元を拭う。開いたまなこに映るものは僅かに光射す暗い世界で、見上げた頭上ではみなものような白と黒が明滅を繰り返しており、まるで水底にでも来たようであるなと、未だおぼろげなる意識の中でそう思った。



 その薄暗い中にあって、こうこうと明るく輝く何かしらが一つ。目を向ければそれは久方振りにお目にかかる文明の利器で、私の両腕を広げた程度に大きなそのモニターには、小さく簡素化された幾多の建造物が映し出されている。その絵面には見覚えがあった。目指せ百万人を掛け声に、街づくりをするコンピュータ・ゲーム。かつて私も遊んだことのあるそれである。


 その向かいには小さな机と椅子が備え付けられていて、青とも緑ともつかぬ不思議な色合いの髪を揺らした少女が一人、如何にも気の抜けた感じでゆるりと深く腰掛けている。その彼女が手にした丸い物をカチカチと動かしてみせると、ゲームの画面に浮かんだ矢印もそれに合わせて端まで動き、隕石を模した災害の記号を選んでピコンと押した。


 途端、十二分な発展をみせて賑わっていた街の上に巨大な火の玉が幾つも現れ、ドカン、ドカンという効果音と共に降り注いでは、小さな建造物の群れを砕きかき混ぜて燃やしていく。街が消えていくにつれて、画面に表示された人口を示す数字もカシャカシャと激しくその値を減らしていき、やがて安っぽい爆発音がようやく鳴り止んだそれに合わせ、ゼロを表示して動きを止めた。



「……どぅも、お久しぶりでございますね、クー様。私にあの、悪趣味極まる夢をお見せになられていたのは貴方様で?」


「久しいですね、ノマ。しかし貴方自身が作り出した不穏な夢路のその責を、そうして私に求められたところで困るというものです。いえそれよりも、私のことはクーちゃんと呼びなさいと伝えていたはずですが?」


「申し訳ありませんが今はとても、そのような余興にお付き合いをさせて頂けるような、凪いだ心持ちではございませんので。」



 そう言って放つ私に向かい、振り向いた青の神と思しき彼女はつまらなさそうに目を細めると、ゲームの操作から離した手のひらをゆるりと一つ返してみせる。それに合わせてにゅるんと湧き出た一脚の椅子に、着席を促されたと見た私はえっちらおっちらと前へ歩み出ると、妙に生物的な弾力を持ったそれに深く腰掛けてお尻を預けた。ちょっと生暖かい。


 さて、ここまで何ら音沙汰の無かったところに突然のこの接触、はたして吉と出るか凶と出るか。一度は私のことを友だと言ってくれた彼女であるが、まさかそれを額面通りに受け取れるほどに甘い相手では無いだろう。とはいえ、あの邪神と近しいであろう存在が私に恩恵を与えてくれるというのであれば、今はそれに縋りたいのもまた事実。ふむ、それをどう言って回ったものか。



「まぁ、良いでしょう。貴方のことは拝見をさせて頂きました。貴方が如何にして『あなた』を形作ってきたのかも、貴方が『あなた』になってから何を成してきたのかも、私はその全てを知っています。そして勿論、いま貴方の心が滅びに怯え、救いを求めて悲鳴をあげていることも、ね。」


「それはそれは、このような老骨を気にかけて頂けるとは、お心遣い痛み入ります。これを手前から申し上げるのも不躾というものではございますが、クー様はこの哀れな私に施しを与えんが為に、今一度そのお姿を現しになられたものであると。そう、受け取らさせて頂いてもよろしいものでしょうか?」


「ふふ、あはははは。ええ、その通り、その通りですよ。私は貴方が苦しみ悶えているのを見るに見かねて、その苦痛から解き放ってあげようと思い立ち、こうして一席を設けさせて頂いたというわけなのです。ねぇ、だから、ノマ。『死なせて』あげましょうか?」



 救いなどとは程遠い、しかし確実に私を責め苛んでいた不安を払うその言葉に、知らず顔を強張らせてギシリと固まる。膝の上で組んだ手のひらのその内に、突き立てていた親指に力が入ってガリリと滑り、傷つけられた柔い皮膚が鈍く痛んだ。



「ふふふ。貴方は酷いお人だ。なにせあの悪夢の中にあって、貴方を本当に苦しめていたのは親しい他人の死などでは無いのですから。言いづらいのであれば、代わりに言って差し上げましょうか? 貴方が本当に怖かったもの、それは誰一人として生きる者の居なくなったこの地で一人、永劫の時の中に取り残される事です。だって、ねえ、そうでしょう? 不死身の吸血鬼さん。」


「……そう、ですね。そのお言葉、否定は致しません。そうです、私は怖かったのです。私の名を呼んでくれる者達が死に絶えて、そしてこんな面白みに欠ける世界はもはや不要であると、『次』が用意される事も無く放り出されてしまう。その事をこそが、私にはどうしようもなく不安で、怖かったのです。」


「おやまぁ、『次』ときましたか。そうですよねえ、貴方は己が消えてなくなるを恐れたが故に、次を求めたんですものねえ。貴方は次が欲しかった。新たな生が、新たな友が、新たな生きる地が欲しかった。そしてそれら全てを手にした上で、優れた容姿と強大な力を以って他者を見下す事の出来る、頭抜けた強者になりたかった。それが貴方の、醜い性根です。」



 それは違う、と言いたかった。自分が生まれ変わる新たな世界が、不穏に満ちたものであることは事前に伝えられていたのだ。だから私は身の安全を確保するその為に、こうして強い力を欲したのである。その事に嘘偽りは無い。しかし彼女の指摘する醜さもまた、己の心の一面であった事は確かであり、結局は何を言うでもなくただ俯いて、歯噛みをする事しか出来なかった。


 かつての生において、友人達と流行りのドラマやゲームといった他愛も無い話に興じる事は、実に楽しい時間であった。私はそこに対等な関係を求め、しかしその一方で対等である事を良しとせずに、常に己を一段上に置いた存在として扱っていたのである。恥知らずにも。


 その根拠は職業であったかもしれないし、社会的な地位であったかもしれないし、はたまたゲームの腕前であったかもしれない。しかしいずれにせよ、低く見られることを私は嫌った。人の失敗や劣っている部分を目ざとく見つけ、それを自身と比較する事でこそりこそりと悦に浸る。とはいえ、それを態度に出すほどに図々しくも無い。己を律し、卑屈にならぬ程度には傲慢である。それでよかった。



 ゆるりと右の手を持ち上げて、己の白い指先をじっと見つめる。そのタガが外れてしまったのはきっと、私がノマになった時であろう。どんな身体でも自在に作り出す事が出来ると言われた際に、私は如何なる勢力の干渉をも跳ねのけるような、強大な存在となる事を望んでしまった。


 結果的に、その選択が間違っていたとは思わない。しかしながらそれはつまり、誰からも尊重されて特別視をされたいという、願望の表れに他ならないのだ。事実として今、王国の聖女として切り札として持ち上げられたその事は、私の自尊心を素晴らしく満たしてくれている。殺そうと思えばいつでも殺せる。だからこそ、多少雑な扱いを受けようとも許せてしまう。


 私はゼリグを、キティーを、失ってしまった友の代わり達をかつて以上に、明確に自分よりも下として捉えている。その事に対する自覚はあったが、しかし驕り高ぶって他者を見下すもまた人の性。それを正そうとは思わなかったし、また正せるとも思わない。まさに醜い性根であるとはよくぞ言ったもので、そうである以上は口にされてしまったその言葉に対し、言って返そうという気にはなれなかった。



「だから、ねえ。不安でしょう? 悲しいでしょう? 恥を晒して生き続けるのは苦しいでしょう? ほぅら、私の手をお取りなさい。私が、貴方を楽にして差し上げます。苦しみも、悲しみも、不安も無い事象の地平のその彼方へと、貴方の意識を消し去ってあげましょう。」



 私の真向かいでクスクスと笑いながら語る彼女の声は、いつの間にか少女のそれでは無くなっていた。その声質は甲高い少女のそれから成年となり、成年から老婆となって、やがて重い低音で以って脳を揺さぶる奇怪な代物へと変わっていく。


 その歪な変化に併せるように、クーと名乗った少女の姿はぐじゅりと溶け落ちて形を無くし、崩壊と構築を繰り返しながら高く高く、見上げる程にまで伸び上がってみせたのだ。見る間に枝分かれして頭上を覆っていく青黒いそれは、まるで樹木の成長を早送りにしたようでありながらも不気味な脈動を繰り返し、己が常世の存在では無いことをこれ以上無いまでに主張している。


 彼女の背後にあったモニターがガシャリと倒れて火花を散らし、噴き上げた煙ごと長い触腕に飲み込まれて姿を消した。水面のような天の明滅はすっかりと覆い隠されて、周囲にはズルズルと這い回る巨大な触手が茨の如くにはびこっており、もはや澄んだ水底のようだと思ったあの静けさは見る影も無い。



「異邦人ノマよ、恐れる事はありません。私は貴方の味方です。私はただ、貴方に救済を与えて差し上げたいだけなのです。彼の者に魂を縛られ、玩具として扱われるその屈辱から、解き放ってあげたいだけなのです。」


「……一つ、お聞かせ願いたい事があります。貴方は何故、私にそのような申し出をしてくれるのでしょうか? 仮に私が貴方の手を取ったとて、それでそちらが得ることの出来る利というものが、私には思い当たりません。」


「ふふふふふ、利ならありますとも。私はね、退屈をしているのです。ここにいる私はみなもから顔を覗かせた、指先の一片のようなものに過ぎません。しかしそれでも、アイツの甘言に乗せられてこの地へと囚われてしまったこの無聊を、慰めたいと思う程度には自由な意思を持っているのですよ。わかりますか?」


「……いえ、生憎と私の精神は未だ人のそれでございますので、貴方のような超越した存在のご意思というものは少々ばかり、推し量りかねます。何故に私が消え去ることが、貴方の退屈を紛らわせるそれに繋がるのでしょう?」


「簡単な事ですよ。貴方の精神が去ったその肉の器を、新たな供物として私が受け取って進ぜようというのです。楽しみですねえ、受肉するのは久方振りです。なぁに、心配をする事はありません。貴方が臆していた非道も悪逆も、すべての後事はこの私が引き受けて差し上げましょう。貴方はただ、手放してしまえば良いのです。」



 私の頭上で花開いた、丸く大きな赤い瞳がその横長の瞳孔をぐにゃりと歪めながら、そう囁く。なんともまあ、とんでもない提案をしてくれたものだとは思ったが、しかし即決でお断りをさせて頂くには少々ばかりの躊躇があった。


 消えてなくなるのは恐ろしい。しかし滅びた荒野に一人取り残されて、死にたいと思ってもそれすら叶わずに彷徨い続ける事の、そのおぞましさたるや如何ばかりか。考えてもみれば、とうに一度は朽ち果ててしまったこの身である。ならばここで全てを捨てて逃げだしてしまったところで、それは正しき輪廻の中に戻るだけの話であって、なんら咎められるような謂れも無い。


 私は死にたいのではない。私を不安にさせ苦しませる全てのものを、ただの一息のうちに消し去って無へと帰し、楽になってしまいたいのである。ゼリグ達には申し訳無いが、私はそもそもにして存在しなかったはずの異端の存在。ここで消えても、消えて居なくなってしまっても…………いや、やはり駄目だ。それでもやはり、やはり私は……。



「…………クー様。申し訳ございませんが、謹んでお断りをさせて頂きます。先ほど貴方も仰られたとおり、私は己というものが消えて無くなってしまう事が、怖くて怖くて仕方がありません。いえ、回りくどい言い方は止めておきましょう。私は、死にたくないのです。生き続けていたいのです。例えそれが、どんなにか無様な姿であろうとも。」


「おやまぁ、欲張りであること。誰かを傷つけたくは無い。自分を傷つけたくも無い。それでいて名誉を求め、名声を求め、誰からも褒め称えられる尊き存在であり続けたい。実に生き汚くて、惨めで卑しい心根であるとは思いませんか?」


「惨めで結構。元より私自身、己が高潔な人間であるなぞとは思っておりません。貴方の評価は全く以ってその通りで、その卑しさも醜さもまた、間違いなく私の一面を成しているものなのですから。そしてそういった濁を飲み合わせる事が出来る程度には、私は老獪であるつもりです。」


「……自画自賛も甚だしい。もう少しねぇ、思い悩んでみては如何ですか。ふふ、ふっふふふ。つまらないですねえ。本当につまらない。やはり移り変わりの早い小さき者は、なんとも傲慢無礼であらせられる。あはははは。」



 無礼であるというその口振りとは裏腹に、私という矮小な存在の反抗は思いのほか、彼女にとって好意的に受け止められたらしい。おっかなびっくりの問答ではあったものの、賭けてみた甲斐はあったというところだろうか。


 なにせ、私は明らかな格下である。その格下が己の予想に反し、こうして前向きな反論を述べてみせたのだ。彼女が私のことを下に捉えているその度合いが強い程に、それは面白みのある児戯として映るであろう事は期待が出来た。まあお笑いになられる程にとは思わなかったが、そんなにも滑稽であっただろうか、私の不格好な開き直りは。うん、まあ、滑稽だわな。


 しばし嘲笑が響き渡ったその後に、頭上で怪しく光っていた大きな瞳がパカンと割れて、赤い血みどろがグチャリと落ちた。潰れた赤児のように歪なそれは、やがて目玉を生やして歯の揃った口を成し、『クーちゃん』の頭半分を形作って微笑みかける。やはり悪趣味がお好きな事で。



「ははは。それもまた良し。貴方がこの地で踊り続けると意を固めたのならば、私も今しばらくはその無様を、ゆるりと見届けさせて頂くとしましょうか。」


「はい。そうして頂けるのならば幸いです。しかしクー様、私は貴方の事を、あの無貌の神を名乗る男と同列の存在であると思っておりました。共にこの地を作り上げて人を創造し、その流転を眺めて悦に浸る、観察者の一柱であるのだと。しかし先ほどにおいて、貴方はご自身の事を『囚われた』と表現された。宜しければその何故を、どうかお聞かせ願えないものでしょうか。」



 五色の神の一柱である彼女から、積極的な協力を引き出すというのはやはり無理のある話であった。とはいえ、静観に徹するという確約を取り付けられたという成果はそれはそれで、一つの大きな前進と言えるだろう。少なくとも私が生き足掻き続ける限り、彼女が世界の滅びに手を貸す可能性は低くなってくれたのだから。


 しかし折角のこの機会、どうせならばもう少しばかり、欲をかいておきたいところである。なにせ私は未だ、神を名乗る彼女らについて無知にも等しいのだ。もしも彼女らが仲違いをしているというのであれば、その合間をついて上手く立ち回るような隙もあるやもしれぬ。



「……そうですねぇ。私達が、アイツと共にこの地を作り上げたというのはその通りです。しかしながら、自らの意思に従ってそのような手間暇をかけたのかと問われてみれば、それには否と答えざるを得ないでしょう。」


「少なくともクー様はこの箱庭遊びについて、乗り気ではあらせられなかった、と?」


「乗り気であったのはアイツくらいなものですよ。私も、巻き込まれた他の者達も、誰が好き好んで『アレ』と関わり合いになろうなどとするものですか。しかしそれでも、手を貸さざるを得なかったのです。自らの保身の為にはね。」



 私の周囲一帯を覆っていた青黒い触手たちが、うねり、ざわめき、とぐろを巻いて、緩やかにその形を崩しながら沈んでいく。それに呼応するかのようにまた、眼前に落ちた少女の首も姿を失ってどろりと溶け落ち、目玉一つを残して机上から姿を消した。


 そろそろ、この話の席も仕舞いが近いか。まさか焦らしておられるわけでもあるまいに、良いところで話を切り上げるのは止めて頂きたいのだが。さて。



「良いですか、ノマ。この世界は所詮、白痴の夢に過ぎません。いいえ、ここだけではありません。今この瞬間にも幾多の世界が生まれては消え、原始の混沌の中心に座して眠り続ける彼の者の、その無聊を未来永劫に慰め続けているのです。彼の者の退屈を紛らわせ、夢の中に微睡み続けさせるその為に。」


「……申し訳ありません。その、仰られる事が少々ばかり、理解を致しかねる内容でして。つまり貴方がたもまた、その『彼の者』に夢という演劇を見せ続ける事を、強いられているのだという解釈で宜しいのでしょうか?」


「ふむ、演劇とは言い得て妙な表現ですね。まあ、そんなようなものです。忌々しくも。」


「……最後に一つ。仮に『彼の者』が目覚めたとなれば、この地に存在する私達はどうなってしまうのでしょう?」


「ははは。そんなもの、一言で言って終わりですよ。宇宙が潰れて無くなります。この世界も、貴方がかつてを生きた地球という星も、そして私達も。全てはその瞬間において、何もかもがお終いなのです。」


「……………………は?」



 私はきっと、間抜けな顔を晒していたのだろう。当然だ。なにせこの世界だのという話を一足に飛び越えて、突然に宇宙の終わりときたものである。正直に言って笑い飛ばしてしまいたいところであったが、彼女のような超越の存在が語るだけに、そこにはそれが事実であると確信してしまえるような響きがあった。あってしまった。


 ああ、聞くんじゃあなかった。迂闊な考えで深淵になど、やはり近づくものではなかったのだ。正にこの世は一蓮托生。世に存在している限りどのような存在であろうとも、薄氷の上からは逃れられぬ運命なのである。もうあまりの規模の大きさに呆れ果てて、なんだか笑いがこみ上げてきた。待て、待て、待て。まだ、私は狂ってはいないはずだ。まだ。



 目を虚ろにさせる私の前で、最後に残された目玉も弾け、周囲は再び水底の静けさを取り戻していく。そして再びに明滅を繰り返し始めた世界の下で、私の意識もとろりと沈み、暗い暗い深淵のその奥底へと落ちていった。


 耳に入ってくるのは最後の言葉。この世界はしばし任せる、悠久の安寧に浸ることは許されず、常に激動の荒波であり続けなければならないというその言に、私はこっそりと心の中で、言って返してやったものである。



 ええい、やるよ。やってやるよ、畜生めが。と。



ゆめはつづくよ。どこまでもつづくよ。とおく、とおく、とおくまで。

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― 新着の感想 ―
SAN値ピンチ
[良い点] あぁ、うん。自分の知ってるソレと同一なのか、限りなく似たナニカなのかはともかく、"起きてもらっちゃ困る存在ランキング"不動のNo.1さんじゃないですか… [一言] ほぼ週一更新はとても嬉し…
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