ノマの正体
「ぬぅぅぅぅっ! おいノマぁ! しらばっくれるのも大概にせえ! このイツマデの顔に、見覚えが無いなんぞとは言わせんぞぉ!!!」
「ええい、何時までも訳の分からない事を! 我ら銀の軍勢の一員でありながらノスフェラトゥ様の意を汲む事も出来んのか! この失敗作がぁっ!!!」
一声吠えて大きく翼をはためかせ、ぐん! と上昇するアチキは袋のように巨大な口を持つ空飛ぶ怪魚の背に乗った、ノマの奴の上をとる。
ノマめ、ようやっと見つけたぞ、罰当たりの銀色娘め。先ほどから知らぬ存ぜぬを貫き通してこのアチキを謀ろうとしておるようじゃが、所詮は頭足らずの浅知恵よ。ちょいと姿形を化かしたところで、その匂いまでは誤魔化せんわ。
そもそもにして、先程からアチキの周りを鬱陶しく飛び回るコウモリ共も、地で暴れ回っておる狼共も、みな先日にあやつの見せた力の一端。この如何にも騒々しい様を創り出したのが、あのノマで無いのならなんだというのじゃ。
キィキィと小うるさい木っ端共を翼の一薙ぎで吹き飛ばし、アチキに喰らいつかんと飛び掛かってきた、もう一匹の怪魚のそのゾロリと牙の生えそろったデカい頭をゲシリと踏みつけ蹴飛ばして、見定めるは眼下の銀色。半身に気味の悪い肉色の蛇をのたうたせる、妙に背丈の伸びたノマの姿。
翼を揃えて下方に構え、胴に頭に穴を穿って滅してくれんと、既に何度目になるかもわからぬ槍羽根を真下へ向けて撃ち放つ。もはや一切の加減はせん、混沌様に対する不敬を恥じ、首を垂れて素直に詫びるのであればそれで良し。そうでないなら、いよいよ今日この場でもって、死んでいけい。
ヒュボリ! と空気を弾いて自らに襲い来る幾多の羽根を、眼下のノマはふいと見上げると怪魚の頭を叩いて叫び、大きく弧を描かせて避けようとする素振りをみせた。
が、それも束の間。あやつ何を考えおったのか、一瞬ぴくりとその動きを止めたかと思えば肉色の触手をズルリと伸ばし、鞭のようにしならせたそれで以って、アチキの槍羽根を次から次に薙ぎ払いおる。
逃した羽根にはこれでもかとコウモリ共を突っ込ませてその勢いを殺して回り、終いには自らも飛びついていってドカンと弾ける。そして晴れる血煙の中、胸から右肩にかけてぽっかりと開いた大穴の上でだらんと頭をぶら下げながら、アチキの事をジロリと忌々し気に睨め上げるのだからなんともまあ不可解なもの。
なんせこやつ、アチキが外して落ちてゆく羽根にまで、わざわざ飛びついて当たりに行きおったのじゃ。その癖己が傷つけられた事に対し、怒り心頭と言わんばかりのその顔はどういうことか。
怪訝な顔で眉を顰めるアチキの眼下で、それでも一本だけ止めきれずに残った羽根が、地上に蔓延る猿共のど真ん中に突き刺さる。
それは地に張られた布の束を吹き飛ばし、吹き荒れる風が近くにいた幼子達を激しく打ちのめして揺さぶって……そしてその様をアチキと同じく目で追ったノマの奴が、安堵のため息と共に顔の強張りを解いたのを、このアチキの目は見逃さなんだ。
なるほどなるほど、ノマの奴め。我ら化生の一員である癖をして、相も変わらず猿共の味方を気取る腹積もりであるらしい。わざわざ身を挺してまで、アチキの槍羽根が地に落ちるのを嫌ったのはそういうわけか。ふん、虫唾が走る。
「っちぃ! おい鳥女! さっきから周囲も見ずにばかすかと危険な代物をばら撒きおって! ノスフェラトゥ様からは傷つけるなかれ、殺すなかれと厳命されただろうが!? アレが人間共に当たっていたらどうしてくれる!!?」
「知らん! 知らん! 知らん! そんなもの、このアチキの知った事かよ! 大体にしてノマ、おぬしはどうしてそこまで猿共に肩入れをする!? 混沌様の教えに背き、彼の御方の使者であると偽ってまで、何がおぬしをそうさせるのじゃ!?」
「わからん奴だな!? それがノスフェラトゥ様のご意思であるからに決まっているだろうが! この私、踊るフルート吹きには御方から託された使命と責任があるのだ! 万が一にも死人を出して御方の期待を裏切るような事があれば、失望をされてしまうのは私なのだぞ!?」
吠えるノマは、相変わらず訳の分からん事を言ってのけると瞬く間に再生した右腕を振り上げて、再びに牙の怪魚をアチキに向かってけしかけてくる。
応じたアチキも、迫る怪魚の鼻っ面を引っ掴むとそのどてっ腹に潜り込み、放った槍羽根を至近でもって炸裂させる。さしもの怪魚も腹にしこたま大穴を開けられては堪えたか、悲し気にクォンと鳴くとヒュルヒュルと力無く落ちていき、そしてまたしても、先程の幼子達の背後にズズン! と落ちた。
ぬう、さっきからまぁ、ちぃとも話がかみ合わん。ノマの奴とは先日に短い言葉を交わしただけの付き合いではあるものの、それでもその時にはこうまで訳の分からん事を言う奴では無かったはずじゃが。
少なくとも、あやつが混沌様の使者を騙る罰当たり者であると、このアチキが見事に看破してやる事が出来る程度には意思の疎通というものが出来たのじゃ。それがどうにもこうにも、今日はあやつの考えておることがさっぱりわからぬ。
自分で言うのもまぁなんじゃが、アチキは仲間内で一等大きな図体に見合わずして、あんまり頭のほうはよろしくない。だって小難しい事はだいたいマガグモの奴が考えてくれるのじゃ、考えても解からんような事は解かる奴に投げるに限る。
で、そのマガグモよ。ほんにあやつ、ちょいと目を離した隙にどぉこに逃げおったんじゃ。あやつもあの銀色娘には酷い目に遭わされたと愚痴っておったから連れてきてやったというに、この争いの序盤も序盤、空を塞いだ邪魔っけなコウモリ共を一掃してやろうとアチキが羽根を撃ちまくっとる間に糸を垂らして、ふいっと何処かに隠れてしまいおってからに。ええい!
いや、いや、いや。待て、落ち着けアチキ。じゃがまあそれもしょうがないかもしれん。マガグモの奴は罠に嵌めて一方的に嬲る殺すはお手のものじゃが、何の仕込みも無く堂々と正面からやり合うは苦手な奴じゃ。
ノマのばらまいたであろう分身共が、空に地上に無数に蔓延るど真ん中にこうも突然放り出されれば、尻尾を巻いて逃げてしまうのもわかるというもの。無理やり連れてきたのも放り出したのもアチキじゃけれど。
ぬ~、仕方ないのぅ。たまには自分で頭を捻ってみるとするか。ええと、確かマガグモの奴は以前に何と言っておったか。「解からない事があるのであれば、解かるようになるまで細かく解していってみせい。」じゃったかな。さすれば、そのうちに何かが見えてくるようになるんじゃと。
ふむ、ならば善は急げじゃ。この踊るフルート吹きを名乗る女が本当にノマでは無いのなら、さっさとこやつを締め上げて本物の居場所を聞き出さねばならん。何故かは知らんがこれほどに大量の分身共をばら撒いておるくらいじゃ、必ずや、あやつはこの近くに潜んでおるはず。
「おぅい! おい! おい! フルート吹きとやらよぅ! ちょいとぬしに聞きたい事が出来た。アチキの質問に答えてみせい!」
「む~? なんだ、ようやく貴様もノスフェラトゥ様の配下として、我ら銀の軍勢の一員たる自覚に目覚めたか? ふっふふふ、使えない配下をも導いてみせるとはさすが私。これも御方の御威光の賜物か。」
応じぬのであればこやつが猿共を庇おうとしておるのを逆手にとって、地上を羽根で滅多打ちにしてくれると脅してやろうかとも思ったが、思いのほかあっさりと首を縦に振った女は大口怪魚の背に乗ったまま、スルスルと空を飛んでアチキの元へと昇ってくる。
先程まで激しくやり合っていたにも関わらず、意外にもあっさりと進んだ事の次第に少々ばかり面食らうが……。じゃがまぁ話が早いのであればこれ幸いよ。アチキも登ってきたフルート吹きに向かって一つ羽ばたきながら高度を下げて、互いに顔を合わせて向かい合った。
うーむうむ。しかしどうにもこやつ、先程から銀の軍勢という言葉を用いて、このアチキを自分達の括りの中に入れようとしておるのはどういう事じゃ。はて、銀は銀色。先日にやり合ったコウモリも狼も、いま目の前にいるこやつらもそれと同じ、鈍く輝くノマの色。
ぬぬぬ? もしやこやつの正体は銀のコウモリ共と同じ、ノマの奴の分身か? ならばこやつが匂いを同じくしておるのもまあ、納得がいくというものじゃが。ふむ。
「さぁて、もう化かすのは無しじゃ、腹を割って話そうかいフルート吹きよ。では聞かせい、おぬしの正体は先日にアチキとやり合った、あのノマか?」
「あん? なんだ貴様。さては私と同じくノスフェラトゥ様にお知恵を与えて頂いた癖をして、その恩寵を持て余して混乱しているのだな?」
「いや、質問に答えぃよ。そもそもさっきから、そのノスフェラトゥとやらは何者じゃ。」
「ふふん。うむうむ、まったく仕方のない奴め、答えて進ぜようでは無いか。これも銀の軍勢筆頭にして、ノスフェラトゥ様からの信任厚き、この私の役目であるだろうからな。」
「聞けや。」
仏頂面のアチキの前で、口角をあげた得意げな顔でもって何度も頷く銀の女。なにやら微妙に腹の立つ振る舞いをしてくれるが、まあ良いわ。事ここに至っては、こやつが姿を変えたノマであるという線は概ね無いものと考えても良いじゃろう。
混沌様の使者を騙るあの馬鹿が、ついに天罰を降されて気が触れたという可能性も無いわけでは無かったが、そうであればもう少し動きが支離滅裂にもなろうというもの。少なくとも、わざわざ分身を用いてアチキの槍羽根から猿共を庇って回るという、一貫とした行動は取りはすまい。
さて、このフルート吹きがあの銀色娘の分身である事は、もはやほぼほぼ間違い無い。と、なればこやつの語る、ノスフェラトゥとやらの正体こそがノマじゃろうか?
「……あー。質問を変えるぞ、フルート吹きよ。おぬしの言うノスフェラトゥとやらは銀髪赤眼で、真っ赤な衣を身体に巻いたちびっこい娘子か? ちょうどおぬしを小さく縮めたような姿形で、なんとも小憎らしい生意気な顔をした、な。」
「なんだ、貴様ノスフェラトゥ様のお姿すら覚えていないのか? おそらくは後詰の為に御方に生み出された後、すぐさまこちらに向かわされたのだろうが……かと言って偉大なる御方の美貌をその目に焼き付けていないとは、まったくもって感心できんな。」
ノスフェラトゥに生み出された。その言葉に引っ掛かるものを覚えて怪訝な顔を浮かべるアチキの前で、銀の女は両の腕を組んで肩を抱き、静かにその目を閉じてみせる。
意図の解からぬその妙な動きにアチキはますます皺を深め、そしてがばりと開いた両腕で以って天を仰いだ銀の女は、手のひらでくしゃりとお天道様を握りつぶす素振りをみせて、ハハハと高らかに笑ってみせた。うぉい! なんじゃなんじゃ!?
「その通り! この私、踊るフルート吹きは彼の御方のお姿を模して創造して頂いたのだ! しかし所詮私は紛い物、ノスフェラトゥ様の象牙の塔もかくやと言わんばかりの美しさはまさに筆舌に尽くしがたい限りであり! 銀と紅玉のちりばめられたそのお顔はあらゆる芸術家が幾千の時を費やしたとて決して辿り着けない美の境地! そしてそれだけには言うに及ばず……!!!」
今にも涎を垂らさんばかりの恍惚としたその顔に、思わず頬をヒクりと動かして身を引くアチキを全くもって気にすら留めず、銀の女は問いに対する肯定の言葉と共に、ノスフェラトゥとやらへの賞賛をこれでもかと言わんばかりに吐き出しおる。
おいおいおい、大丈夫かこやつ。確かにノスフェラトゥ、もといノマの分身であるこやつにとって、自らの本体であるあの銀色娘は特別な存在であるのかもしれんが、だからと言ってこれは些かばかり度が過ぎておる。なんというかまあ、狂信的じゃな……。
「ええい! うっさいわ! 初めて相対したその時から、口を開けばノスフェラトゥ様ノスフェラトゥ様と呪文のように唱えおって! 自分というものが無いのか!? おぬしには!?」
「む! 何を言うか、貴様だって同じだろうに! 私も貴様も、ノスフェラトゥ様が意思ある存在としてお創りになられたばかりの小さきモノ! 故に空っぽの我らの中で、創造主たる御方の存在が全てを占めるのは当然の事だろう!?」
「ぬう、そりゃあまあ、アチキも幾百年の昔に混沌様に生み出された化生の一体として、その気持ちはわからんわけでも無いが……。」
「そうだろうそうだろう! 人間共を恐れさせ、オーク共を蹴散らして追い返す! 御方から頂いたこのお役目、しくじるわけにはいかんのだ! 見事成し遂げて己の有用性を示してみせれば、きっと御方はこの私を褒めて下さるはず! その時ようやく、虚ろな私はノスフェラトゥ様にその存在価値を認められた、『私』になる事が出来るのだ!!!」
泡を飛ばして気炎を吐いて、なんだかわからぬ持論を展開するフルート吹き。コウモリや狼といった他の分身と違って、随分とまあ感情に豊かな奴じゃ。意思を持ち、喋り振る舞い創造主への畏敬を語る。まるでアチキたち化生のような…………化生?
いや、いや待て。待て待て待て。アチキは今、何を考えた? こやつが、ノマの分身であろうこの銀の女が、化生じゃと?
頭の中でカチリと何かが嵌まった音がして、そしてゾワリと背筋を駆け下った悪寒に思わず身体を震わせながら、アチキはグルリと周囲を窺い見た。
吹き飛ばしても粉微塵にしても再生を繰り返し、しつこく周りを飛び回るコウモリ達。今も地上で猿共を追いかけ回す、銀の獣。そしてフルート吹きを背に乗せて、悠々と空を漂う大口怪魚。こやつらは以前にも見た、ノマの分身と同じだと思って差し支えが無いじゃろう。ただ黙々と命令に従うだけで、その目に意思ある光は感じられぬ。
じゃが、この銀の女だけは違う。猿共の雌を下地にしたその容貌といい、他の分身と違う明確な自我といい、こやつだけは違うのじゃ。何故に今まで、アチキはそれに気づかなんだのか。
この女は、踊るフルート吹きは、ノスフェラトゥを名乗るノマの奴に生み出されたと言っておった。知恵を与えて頂いたと言っておった。その生まれはまさにアチキ達と同じであり、ならばこの女は幾百年ぶりかに世に産まれた、新たな化生の同胞という事になる。
アチキたち化生のものは、我らを創造し給うた混沌様によって生み出された。そして新たな化生であるこの女もまた、ノマの奴によって生み出された。
ならば……。ならば、あの銀色娘の正体とは……。まさか……まさかそんな…………!?
「さ、最後に一つ、聞かせてくれい。ノマは……いや、ノスフェラトゥ様とは、その……我らが神で、あらせられるのかえ…………?」
「ははははは! 無論よ! 貴様も御方にご創造して頂いたのだろう!? 我らが偉大なる創造主が神でなければなんとする!? そんな事もわからんか! この阿呆め!!!」
目の前が真っ暗になって、足元が崩れて落ちた。そんな気がした。創造主。我らが創造主、混沌様。ノマは、その混沌様と同じ権能を持っておられる。もはや、疑う余地は無い。
……終わった。
「さて、もう質問は終わりか? 鳥女。己の出自に納得がいったのなら、さっさとお前も人間共を驚かせる手伝いを……っておい! どこに行く!?」
踊るフルート吹き。いやさ、古き存在であるアチキ達とは違い、明らかに何らかの目的を持って生み出された新たな化生である使徒様の静止を振り切って、アチキは身を翻しながら力の限り、大きく翼をはためかせて一目散にその場から逃げ出した。
無礼である事は解かっておる。じゃが、自らが行ってしまった数々の非礼を思い出すに居ても立っても居られなくなり、恐怖に震えるアチキの頭にはもはや、こうして逃げ隠れて難を逃れようとする、短絡な考えしか浮かばなんだのだ。
アチキが間違っておった。ノマは、流れ者の化生なんかでは無かったのじゃ。混沌様の名を騙る、罰当たりな無礼者なんかでは無かったのじゃ……!
きっと、ノマと名乗られたのは世を忍ぶ仮初の名に違いない。その真なる御名はノスフェラトゥ。彼女こそが幾百年ぶりかにこの地へと御光臨をなされた、混沌様の化身のお姿。
それを……それをアチキは罰当たりの法螺吹きだと決めてかかって、ちゃんとお話を伺いもせずに不敬だの偽りだのと罵ったのじゃ! 阿呆め! アチキの阿呆め! 不敬なのはどちらのほうじゃ! 罰当たりなのはどちらのほうじゃ!!!
「……無作為に破壊を撒き散らす、ノスフェラトゥ様の意に沿わぬその行動。そして指揮を任されたこの私に逆らったあげくに逃亡とは……。ふん、もういい。貴様のような出来損ないは、御方の配下として相応しくないな! 大人しく縄について、御方の中へと戻ってゆけい!!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、それでもなお逃げ出さんとするアチキの足を、肉色の触手が絡めとってピンと引っ張る。そしてつんのめった事で姿勢を崩し、失速したアチキはもはや足掻く気力すら湧かぬまま、地へと向かって落ちてゆく。
使徒様は、アチキの事をノスフェラトゥ様の意を汲む事が出来ぬ、失敗作だと言っておった。そして今また、アチキをその配下として相応しくない、出来損ないであると言っておった。
失敗作……アチキは、出来損ない……。幾百年と混沌様を信仰し、祭壇を作り、供物を備え、そしてつい先ほどまで、彼の御方への不敬に対し、義憤に燃えていたこのアチキが……あ……ああ…………あああああああああああああぁっ!!?
崩れていく……! アチキの、アチキの今まで生きてきた全てが……否定されて……無くなって…………!!! 嫌じゃ! 嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!?
突然、恐ろしくなった。怖い、怖い、怖い。何が恐ろしいのかも解からぬのに、何に怯えておるのかも解からぬのに、ただただ、怖い。
狂ったように泣き叫び、狙いもつけずに槍羽根を放って暴れるも、足に絡みついた肉の蛇はますますギシリと食い込むばかりでどうにもならぬ。
そうこうする内に使徒様の乗る銀の怪魚が、アチキを一呑みにせんとその巨大な口を開けてこちらへ迫り、真っ黒な空洞が視界一杯に広がって……そして…………。
「ひっ!? ひっあっ!? ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!? 後生ですじゃ! アチキは、アチキは知らんかったのです! どうかお許し下され! お許し下され! お許し下さ…………!!?」
ぐちゃ。
A.勘違いです。




