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異世界転移のバツバツさん  作者: カボチャ
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凶鳥イツマデ

「ほらほらほら~~!もっと早く逃げないと~!怖~~い銀色のお化けが追いかけて来ますよ~~~!!!」



 夜の森で始まった一方的な追いかけっこはいつ終わるともなく続き、気づけば私という怪物に追い立てられたハルペイアの群れはすっかり散り散りに四散して、残っているのは眼前を飛び回るわずか十匹にも満たぬ小さな群れ。


 そうこうする内にも一匹の怪鳥が伸びた巨腕に絡め取られ、ぽーんと放り投げられて繁みに突っ込むとバキバキズデンと音を響かせながら悲鳴を上げる。


 しかしどれだけ追いかけようともこやつらの親玉と思しき存在は一向に姿を見せぬとあって、はて噂は所詮噂に過ぎず、私の心配も杞憂であったか。



 実のところ怪鳥達の背後に潜む化け物などというものは存在せず、実体の無い影を恐れていたに過ぎなかったというのであればそれもまた良し。それはそれで、私がこやつらを排除した時点で遠征軍にとっての安全を確保したことになるのであるからして問題は無い。


 問題は無いのだが、その、なんだ。しいてあげるとするならば、調子に乗って深追いをしすぎたせいで帰る方向がわからなくなった事が目下のところの大問題である。うーーむ、思い切り飛び上がって樹冠の上まで頭を出せば、あるいは彼方にあるであろう街道までを見渡せないものだろうか。


 きょろりと視線を上に向けてみたならば、目に入ってきたのは一匹の怪鳥が高度を上げて、木々の上へ上へと逃げていくその姿。そういえばこやつらは飛べる癖にこうして追い回されても夜空に向かって逃げ出さなんだが、はてさて鳥だけに鳥目であるのか、それとも樹冠の上にはこやつらが恐れるような何かが居るのか。



 そんなことをぽやりと考えたその刹那、突然に響いたくぐもった悲鳴と共に滝のように血が降って、半ば潰れた怪鳥の首が、私の眼前にぐちゃりと落ちた。何事。



「煩い!騒がしい!鬱陶しい!!!もうちっと静かに出来んのかいお前ら!おちおち休んでもいられんわい!!!」



 咄嗟に飛び跳ねる足を止め、樹冠に潜む脅威を見極めてやろうと頭上を見上げて目を細めれば、続けて響き渡ったのは甲高い少女の声。前言撤回、やはり怪鳥達の親玉とやらはいらっしゃったらしい。


 今しがた首をもがれた哀れな怪鳥の胴体が、木々の枝葉に当たって跳ねて、どすりぐしゃりと落下する。


 残った怪鳥達も動きを止めて、縋るように、恐れるように首をもたげて頭上の何某へと視線を向けるが、しかし親分の機嫌を損ねてしまった事に怯えたか、それとも私への恐れがまさったか。やがて一匹が悲鳴をあげて身を翻すと、それを皮切りに恐怖の叫びを上げる怪鳥達は地を蹴って木々を飛び跳ね、闇夜の向こうへと消えていった。



「ふん!なんじゃいあいつら、騒がしくするだけして行っちまいおってからに。……して、おぬし見慣れぬ化生じゃのう。ずいぶんとまあでっかい歪な腕をしおってからに、どこぞからの流れ者か?」



 ……どうやら所在不明の親分さん、私の存在にはとうに気づいていたらしい。頭上からの誰何の声に、ゆらりぐにゃりとのたうち蠢く銀の両腕にちらりと目をやり、ひゅるりと巻き上げると己の身体を抱きかかえるようにして小さく収める。


 くるくると身体に巻き付いたそれはさながら両翼を折り畳んだ蝙蝠のようで、ちょっと吸血鬼っぽいぞと内心こっそりご満悦であったのだが、実際に出来上がったのは荒縄で簀巻きにされた美少女であった。あるいは銀色のミノムシである。ま、まあいいや。


 それにしても相変わらず枝葉の重なり合った樹冠の先は見通しが悪い事この上なく、声の主のその姿は一向に見えてこないとあったもので、はてさてこちらの彼女は一体全体どちらにいらっしゃったものであろうか。



「……お騒がせして申し訳ございません。私はノマと申しまして、貴方の言うとおりこの地の外より参ったものでございます。宜しければお顔を見せて頂いても?」


「おう、おう、おう。ちっこい癖に礼儀正しい奴だわい。ちょいと待っとれよ、いま降りて行ってやるからのぉ。」



 樹上に潜む何某に向かって声を掛け、言ってペコリと頭を下げる。マガグモの時のように突然襲い掛かられる事も想定しないでは無かったが、この娘、先ほど見せたその暴力性に反し中々どうして意外と話せる。


 あるいはこの長ーく伸びた巨大な銀腕のその異様が、頭上の彼女との初対面にあたり良い方向に作用してくれたであろうか。どうやら彼女からは同じ化け物の同胞であると思われているようで、それならばそれで好都合。


 なんせ頭上から聞こえる声は明らかに少女のそれであり、マガグモの奴もそうであったがこうして下手に娘御の姿をとられてしまうと正直に言って痛めつけるに忍びない。言葉を交わして穏便にお引き取り願えるのであればそれに越したことは無いのであるが、さーて如何したものか。



 指の一本をにょろりと伸ばし、唇の下をスリスリ触って思いを巡らそうとしたその矢先。頭上の枝葉がぐわりと揺れて、圧し折られて降り注ぐそれらと共に姿を現したるは、なんとも面妖な少女の姿。


 その身はハルペイアを遥かに凌ぐ巨体を持った黄金色の大鷲であり、身の丈にして三メートルほどもあるだろうか。しかしてその大鷲は鳥の頭を持っておらず、スパリと切り落とした首の断面より、少女のおへそから上をニョキリと生やしたような奇怪な容貌をしていらっしゃるのだ。


 見れば彼女の腕はその肩口から翼の如く変じており、異形の少女は合わせて二対四枚の翼をバサリバサリとはためかせながら地響きを立てて地に降り立つと、金色の瞳をパチパチと瞬かせて小さな私を品定めせんと覗き込んでくる。


 一方の私はといえば咄嗟に巨腕の五指を地に突き立てて身体を固定し、巻き起こった突風にこの身を吹き飛ばされまいと足を踏ん張って耐えるばかり。ぶは、口の中になんか入った。



「ヒャヒャヒャ!悪いのぉ、如何せん仲間内の中でも一等大きなこの図体だでな、勘弁しとくれよぅ。」


「ぶぺっ!ぺっ!ぺっ!い、いえ、お構いなく。気にしておりませんので。」


「ヒャヒャ、悪い悪い。アチキの名はイツマデじゃ、槍羽根と呼ぶ者もおるがのぉ。してノマとやら、アチキたち南の者の縄張りであるこの森でなーにをギャーツクと騒いでおった?あの猿面鳥どもを追いかけ回しておったあたり、あやつらおぬしになんぞ要らんちょっかいでも出しおったか?」



 大鷲の少女はそう言って身を乗り出すと、広げた翼の先端を私に向かって差し出してきた。転がりそうになったこの身を引き起こそうとしてくれているのかそれとも握手を求められているのかまではわからぬが、いずれ友好的な態度を取ってくれている事には間違いない。


 差し出された翼の先っちょ、風切り羽根の一枚を軽く握りしめてふりふり振れば、それを見て気を良くした彼女は私の眼前までノッシノッシと歩いてくると、その巨大な翼で私の頭を覆い隠して乱雑に撫でてみせる。


 どうも子供扱いされているような気もするが、彼女と私の体格差はまさしく象と子供のそれであるのだから仕方が無い。でも、その、なんだ。ぶっちゃけ首がもげそうです。


 いや!可愛がろうと!してくれているのだろう事!それ自体は!ありがたい話ではあるんですが! あ゛!!! ヤバイ音した!!!



「んがっく!!? え、ええ、齧られるわ引っ掛かれるわで散々な目に遭いましたよ。その代わりにこうして追い散らしてやる事で十二分に仕返しはしてやりましたがね。しかしあの怪鳥達があなたの手下にあたる者共であったのならば、もしかすればご迷惑になってしまったでしょうか?」


「なぁに、別に構わん、構わん、構わんよぅ!こいつらときたらアチキの行くところ行くところついて回って、アチキを獣避けに使ったり食い残しを漁ろうとして鬱陶しい事この上ないんじゃ。まあそのかわり、アチキもこやつらが仕留めた獲物の一等美味いところだけを頂いたりもするがのお。」



 なるほど別段、このイツマデという少女が怪鳥達を操っていたというわけでも無いらしい。怪鳥達は彼女の威を借って行動を共にしているに過ぎず、その関係はさながら大魚とそのおこぼれに預かるコバンザメといった体であろうか。


 ならば昼間に私達の隊列をつけ狙ったのはハルペイア達の独断であり、彼女自身はそこまで興味を示していない可能性も期待出来なくは無いのであるが、さて。



「それでノマよ、どこから流れてきおったかは知らぬが行く宛はあるのかえ?良ければアチキの所で面倒を見てやっても構わんぞ。まあ転がり込む先はアチキの棲み処ってわけでも無いんだがのお。ヒャッヒャッヒャ!」


「いえ、私には……。」


「いや!いや!いや!遠慮することは無いぞぉちっこいの!おぬしも人間共の圧に耐えかねて流されてきた口であろう?あやつら弱っちい癖に数だけは増えおるからな。同じ化生同士、助け合うは当然の事じゃ。うんむ。」


「いえ、そうでは無くて、私にはちゃんと帰る場所がですね……。」


「アチキの仲間に蜘蛛の化生がおってな、そいつの作る巣がこれまた柔らかくて居心地良いのよ。なあに、ちょいと余所者には冷たい奴じゃが乗り込んで占拠してしまえばこっちのもんじゃ、なんならおぬし専用の寝床を作らせてやってもよいぞぅ。」



 聞いちゃいねー! いや、中々に面倒見が良いあたり彼女の同族に対する思いやりというものは伝わってくるのだが、今の私の目的は遠征軍の脅威となる化け物の排除であるのだからして、そんなに優しい言葉を掛けられても困ってしまう。


 ついでにさらりとマガグモの奴がとばっちりを受けているのはまあ、聞かなかった事にしておこうか。結構苦労してますねあの子も。というかいかん、このままだとまたお持ち帰りされてしまう。



「ヒャヒャヒャ! 友が増えるというのは良いものじゃのお。よぅしこうなればおぬしの歓迎の為に馳走を用意してやらねばならんな。ノマ、おぬし生き胆は好きかえ?」


「……と、申されますと?」


「昼間に見えたが何やら猿共がぞろぞろと移動をしておってな、今頃この先に小さな巣を作って寝こけておるはずじゃ。普段なら痛い目を見るのも癪じゃからして手は出さんところじゃが、今日はお前さんの歓迎の為に一匹二匹は攫ってやっても……あん、なんじゃその目は。」



 ……残念だが、ここいらが潮時か。私が姿を見せてしまった事で、かえって彼女の興味が遠征軍の方へ向いてしまうとはなんとも皮肉な話である。


 自分に対して好意的に接してくれる相手を突き放さざるを得ないというのは胸を締め付けられる思いだが、彼女の向けてくれる厚意は到底私の利害とも倫理とも一致しない。いま私の目に浮かんでいるだろう色は嫌悪か敵意か、それともあるいは悲しみか。


 今現在の私が人の側に軸足を置く者である以上、私に対して人懐こい笑みを向けてくれるこの少女は我が友の安全の為、排除せねばならぬ敵であるのだ。例えどんなに胸が苦しかろうとも。



「……イツマデさん、すみませんがそのお話、ご遠慮させて頂きますよ。」


「遠慮は要らんと言っておろうに。なぁにそこまで危険を冒すつもりも無い。アチキの羽根を二、三本も撃ち込んで驚かせてやってな、それに怯えて群れから離れる奴が出ようものならめっけもんじゃ。なんなら生き胆と言わず、美味い部分は全部おぬしにくれてやっても良いぞ。」


「いいえ、あなたのそのご厚意がですね、困ると言っているのです。大変申し訳ない事にね。」


「んぅー? あれか? おぬしも必要以上に人間共に手を出せば、あやつらの死に物狂いの報復を招くだろうから大人しくしていろとでも言う口か? つまらん! つまらん! つまらんのお!!! 皆つまらん事ばっかり言いおる! そんな風に弱腰じゃから、彼奴等が棲み処を増やしてアチキらを追いやっていくのを指を咥えて見ているような破目に陥るんじゃ!!!」


「そちらの事情もお察しするところではありますが、私には私の事情があります。私を受け入れようとしてくれたイツマデさんにこのような態度を取らざるを得ない事は心苦しいのですが、あなたにはこの場から退いて頂かなければなりません。」



 身体に巻き付けていた銀腕をひゅるりとほどき、威嚇する蛇のようにくねらせながら、そのカギ爪の先端をぷりぷり怒って地団太を踏む大鷲少女の首筋へ向ける。


 想定していなかったであろう私の拒絶に彼女は一瞬ぽかんと目を見開いたが、流れる銀髪から生え伸びた大腕を引きずる私が一歩を踏み出すに至りようやくこちらの敵意を感じ取ったか、バサリと翼をはためかせると大きく飛び退って間合いを取った。



「……なんじゃ、ぬしの考えておることがさっぱりわからんなぁノマ。なぜにアチキの厚意を受け取らん? ここいら一帯はアチキ達の縄張りじゃし、北にはまた別の連中がおる。流れ者のおぬしに行く宛などそうは無いぞ?」


「今の私は、故あって人間の皆様方にお世話になっている身であるのです。そしてその彼女らに対して脅威を成す者を排除する為に、私はここに参りました。」



 よって私はあなたの敵であると、そうはっきり宣言する。未だ戸惑う様子を見せていた大鷲少女も私の線引きを聞かされた事でようやく腹を括ったと見て取れて、ぶわりと毛を逆立てながら金色の瞳を吊り上げると、小さな私を睨みつけて歯噛みした。



「……ああ、思い出したぞ。アチキの仲間が言っておったな、この近辺に化生の身で人に与する愚か者がうろちょろしておると。下手に手を出せば痛い目を見る危険な輩であるから、気を付けろとな。」


「私としては、出来ればあなたを傷つけることなく穏便に事を収めたいところではあるのですが……。どうかこの場は引き下がって頂けないでしょうか?」



 伸びた両腕をゆるゆると蠢かせつつ、ぽつりぽつりと歩みを進める。とはいえそう易々と引き下がっては貰えまい。


 新たな同胞を歓迎しようという心配りを仇で返した私に対し、如何にも自尊心の強そうなこの少女が譲ってくれるとは到底思えぬ。ましてこの身は化け物でありながら人に与する裏切り者とあって、彼女の抱く失望と怒りは如何ばかりか。悲しいなあ。



「…………つまらん。つまらん! つまらん! つまらんなあ!!! ノマぁ!!! せっかくアチキが気を利かせてやろうとしたというに! あろう事か人間なんぞに絆されおって! これは少しばかり躾けが必要じゃな!!!」


「お断りさせて頂きます。申し訳ありませんが、異邦人である私にもこの地で失いたくないと思えるものが出来ました。よってあなたには、少しばかり退いて頂きたく存じますよ……っと!!!」



 激昂して吠える少女に向かい、銀の両腕を思い切りしならせて突き出してやる。幾重にもより合わさった銀髪から伸びるその腕は木々の間を走り抜けると解けてばらけ、のたうち蠢く無数の蔦となって拡がりながら、彼女のその身を束縛せんとして襲い掛かった。


 巻き付け縛り上げて雁字搦めにし、彼女の泣きが入るまで振り回してやろうかと思っていたのだがそうは問屋が卸さぬ様子。私の放った銀の触手は巨大な両翼を振り回す少女によって呆気なく薙ぎ払われて、吹き飛び裂かれて引き千切られる。



「ヒャハァ! 大口叩いた割には大したことないのぉ! アチキを退かせたいのならもっと殺す気でこんかい!!!」


「生憎と!女子供を好んで傷つけたいとは思わないものでしてね!!!」


「ぬかしおる! その妙にへりくだった癖に偉そうな態度も気に入らん! 気に入らん! 気に入らんなぁ!!!」



 大鷲少女が叫ぶに従い空気がヒュルヒュルと渦を巻き、続けて叩きつけるように振るわれた翼の翼端からヒュドリと何かが撃ち放たれる。


 それは私の腕を覆っていた銀の枝葉を掠めて引き裂き走り抜け、その衝撃で小さなこの身を弾き飛ばすとズドリと地面に突き立った。


 地に転げ、木々の根元に強かに打ち付けられてぼやける視界に入ってきたそれはヒュルリヒュルリと風を纏う大きな大きな風切り羽根で、私に身を起こさせまいと次から次に投げ放たれるその槍は、周囲一帯を滅多やたらに突き刺し薙ぎ払っては、地を弾けさせて掘り返す。



「ヒャハ! ヒャハ! ヒャハハ!!! どーじゃどーじゃあ!!! マガグモみたいな弱虫に勝ったからといってアチキを降そうなどと思い上がりも甚だしいわい! 今なら素直に謝れば許してやらんでもないぞぉ!? 同胞のよしみじゃからしてなぁ!!!」


「げほ! けほ! お、お断りします! なんせ私! きっとイツマデさんより強いものですからね!!!」


「驕るのは土に突っ込んだその顔を上げてからにせんかい! こんド阿呆がぁ!!!」


「言われなくてもぉ!!!」



 叫んで身を起こしたその拍子、至近に突き立った一発が銀糸の左腕を引き千切り、爆ぜて巻き上げられた土砂に吹き飛ばされ叩きのめされ、再び転がった私は地に突っ伏して無防備に背中を晒す。


 それでも彼女のその巨体を引きずり倒してやろうと残った右腕を振り回し、脚を狙って投げ放ったカギ爪の一発はあえなくそのおみ足に蹴り上げられてはじけ飛ぶと、ぐじゃりと踏み潰されて動きを止めた。



「……ふん、ちっこい癖に口ばかり達者でほんに可愛くない奴。アチキはぬしの事を仲間として迎え入れてやろうとしたというにのぉ。まあ断ったのはぬしの方じゃ! 悪いが恨んでくれるなよぉ!」


「……恨んだりはしませんとも。ですからイツマデさんも、出来れば私の事を恨んだり恐れたりしないでもらえると嬉しいです。例え、私が何者であろうとも。」


「ぬかせ! おぬしみたいなちっこい輩が! 無様に這いつくばって地に転げておる輩が一体何だというんじゃ! 本当に気に入らん! 気に入らん! 気に入らん奴!!!」



 大鷲少女が大きく仰け反り、裂帛の気合と共に撃ち放たれた槍羽根の一撃がうつぶせに倒れたままの私の肩口に突き刺さる。


 それは鎖骨を圧し折って肋骨を折り砕き、肺を切り裂いて内腑を潰しながら私の中身をぐちゃぐちゃに掻きまわすと、血花を咲かせながら半身を四散させて吹き飛ばした。


 骨ごと血肉を縫い付けられた為に弾き飛ばされる事すらままならず、ただその場でゲボリと血を吐いた私は痙攣しながら地に伏して……。




 そして、倒れた私の指先がゾワリと波を打って蠢きだすと、その先端がパクリと裂けて小さな小さな牙を見せ、半ば肉塊と化した私の身体に瞬く間に広がった無数の口が、無数のそれらが。


 ギィギィと、甲高い声をあげて鳴いた。



こんな化け物が襲ってくるような場所に居られるか!俺は一人で安全な場所に隠れさせてもらう!!!ってやると死にます。

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― 新着の感想 ―
広有射怪鳥事...ってこと?
[一言] よくよく考えれば、ノマちゃんが姿を自由に変えられるのってまんまニャルの権能だよね
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