仕切り屋ノマちゃん
「んーふーふーふーふーふーふーふー、んーふーふーふーふーーふふーー♪」
どうも、最近はお料理に凝り始めたノマちゃんです。新たな趣味に目覚めたと言いたいところではあるものの、まあなんの事は無い。こちとら借金を抱えているも同然の身であるからして、返済の為にと色々仕事を振ってもらっただけの話である。
しかしまあ、ゼリグとキティーの金銭管理があれほど杜撰だとは思わなんだ。少なくともこの1年、独立独歩でやってきたのであろうからして、そこそこちゃんと出来ているのだろうと思っていたのが蓋を開ければあの有様。二人揃ってどんぶり勘定も良いところであった。
言ってやりたい事は色々あったが、まあよい。これはこれで事務屋の腕の見せ所というもの。状況把握にはさんざっぱら苦労をさせられたが、家計簿にまとめて現状をわかりやすく数字で突き付けてやれば二人ともしゅんと大人しくなってしまったものである。うふふ、それ見た事か、考えなしに大枚をはたくからこんな明日をも知れぬ状況を招くのだ。
イキってマウントをとってやるのは気持ちよい。むはははは。と鼻高々になったのも束の間で、その日の夜にはそもそも全部お前のせいだろうがと私の鼻はべっこべこに圧し折られた。せやな。全部私のせいである、すまんかった。だからもうちょっと優しく扱って欲しい。うぼぁー。
とまあそんなことを考えつつも、朝から続けた銭勘定と書類仕事、いやさ木簡仕事をひと段落させた私は、くつくつ煮込んだスープをずびびと味見するのである。いやはや、この世界で英雄にすらなれるやもしれぬ等という初心はどこへやら、なにゆえ私はこんなところでおさんどんをしているのであろうか。
思いのほかしょっぱかったのでお水を足して、小葱っぽい香草を少々。料理の心得などありはしないが、少なくとも十年以上、動画サイトでお料理動画をおかずにコンビニ飯を食ってきたその道のプロである。任せて貰おう。さーてどんなお味になったかなっと。
うむ、実に、不味い。だが不味さの中に嬉しさがある。次はもっと美味く作れるやもしれぬという予感があるからだ。
などと食通を気取っている場合では無かった、そんな事考えたって不味いものは不味いのだ。小葱もどきの匂いが思いのほかきつく、なんかもう台無しである。またしょっぱいだの苦いだの叱られてしまいそうだ。およよよよ。
ちなみに私が今作っている物はウドンである。なんだか無性に和食が食べたくなり、小麦粉はあるのだからウドンくらいは作れないかと思ってこねこねしてみたのだ。こねこねしてびろーんと伸ばす。さながら気分は小学生の、図画工作の時間が如し。
さて問題は出汁である。これについてはお料理を受け持った当初より頭を抱えていた問題であったのだが、さすがに異世界、鰹節も昆布も無い、醤油や味噌なぞ以ての外。
で、どうしたかといえば、最近なんとなく物資の値段が上がりがちな市場で見つけたお魚の干物。これを煮込んで煮込んで出汁をとってみたのが先日の話である。これがまた意外と使えたのだ。一番出汁こそ塩気が残り過ぎていたのかしょっぱ過ぎたものの、煮込んでも煮込んでもお魚の良い味がじわりと染み出してくるのである。うーむよいぞ。よいぞ。
なお切り身の状態だったお魚の正体は依然不明。ダンクルオスティウスの干物ってなんだろうか。
この出汁は異世界人たるゼリグ達にも思いのほか好評で、定期的に料理でやらかすこの私が未だ厨房を任されているゆえんにもなったのだが、出汁が手に入ったのならウドンもいけるやろーと調子に乗った結果がこのクソマズウドンである。なんかあれだ。ベトナムのフォーみたいな匂いになった。いや別にフォーが不味いとは言わぬ。不味いのは私の腕である。
とりあえずは、小葱もどきを煮込むとこーなるのかーとがりがり石板にメモを取り、なんとか味を整えようと悪戦苦闘することしばし。どうにかこうにか、まあ食えるかなという感じになってきたと額を拭ったそのあたりで、玄関から聞こえた音に頭を上げた。
私の腹時計から察するに、昼からはそこそこ時間が立っている。まさか押し込み強盗という事もあるまいし、おそらくは買い置きの硬パンを齧りつつ金策に出かけて行った、あの二人が帰ってきたのだろう。
手元の謎スープ、もとい謎ウドンにちらりと目を落とす。自己評価では多分にぎりぎりセーフである故、今日はこいつで勘弁して貰うとしましょうか。
はふんと一つ息を吐き、前掛けを外してお出迎えの準備を整える。迎えるは赤毛と桃色、金貨千枚で私の飼い主になってしまったご主人様達である。
「おかえりなさい、ゼリグさん、キティーさん。別々に出かけられていったようですが、ご一緒だったのですね?」
「いや、キティーの奴とは帰りにたまたま一緒になっただけだよ。っていうかなんだこの変な匂い。」
「ノマちゃん、あなた節約だなんだと言っておいて、また食材を無駄にしたんじゃないでしょうね?」
ぱたぱたと玄関までお出迎えに行ったらば、初手でじろりと睨まれた。いや、たしかに匂いは少々アレなのだが、いちおう食えん事も無い仕上がりには漕ぎ着けたのだから許してほしい。ほらあれだ、異国情緒という奴である。
「あー、そのー、ご心配なく。確かに色々と少しばかり余計に使ってしまいましたが、そこらへんはこう、私の手持ちで補填しておきますので。」
「ノマちゃんの自由に出来るお金って、私があげたお小遣いだと思うのだけど?」
「最近は他にも収入を得ているのですよ。私を攫って路地裏に連れ込もうとした連中から収穫したり、あとお肉屋さんで血抜きの甘い鶏からずびゃっと血を吸い取って得た礼金とか。」
そう言いつつ、二人から帽子と外套を受け取って居間へと向かう。大人用の外套二着をえいやっと担ぎ上げれば小さな私はすっぽり埋もれ、微妙に前が見えずにふらふらしつつも、どうにかこうにかぶつかることなく衣類掛けまでたどり着く事が出来た。
「肉屋ってねえ……。ノマちゃん、まさか生肉に齧りついて血を啜ってるんじゃあ……。」
「いや違いますよ、なんですかその怪しい野生動物は。こうお肉に手を当ててですねー、手のひらからずびゃびーーって。」
そうなのである。お小遣いと食費を握り締め、ふらふらぷらぷらお買い物の為に市場を歩けば、私の敏感なお鼻が気づいてしまったのだ。血抜きに失敗したお肉がけっこうな量売られているという事に。
で、例の吸血パワーを活かして美味しいお肉に変えてあげたのだが、これが信心深い肉屋の爺様にウケた事ウケた事。五色の神の御力とはありがたやと拝まれ奉られて、ちやほやされてご機嫌の私はたっぷりとお小遣いを弾んでもらったのである。あと飴ちゃんも。
「はいはい、とりあえずは飯の用意でもしてくれよ、ノマ。出先で多少は食ってきたけど、まだちょっと食い足りねーや。」
女三人寄れば姦しい。一向に終わらぬ世間話に横で聞いていたゼリグが根をあげたようで、さっさと飯を寄越せと催促されてしまった。
うむ、二人の金策結果についても聞いてみたいところであるし、まずはお食事を用意させて頂くとしましょうか。メニューはさっきの謎ウドン。ちゃんと残さず食べてください、私も頑張ります故。むふー。
「んー。まあ食えねえことも無いけどよー、相変わらず変な飯を作るよな。お前って。」
「渡してあげたレシピ通りに作らないのよねー。ノマちゃん。どうせ大半は自爆するんだから妙な独創性を発揮しなくてもいいのに。」
「いや、キティーさんから貰ったレシピだと、煮豆と塩スープのローテーションになるんですよ。っていうかお菓子ばっかじゃないですかあのレシピ。」
炊事場の隅っこで、女三人ずるると音を立てつつウドンを囲む。一杯の掛け蕎麦ならぬ三杯のウドンであるが、この場合は一杯のほうがなんぼか良かった。一応食えん事も無いがやっぱりなんか引っ掛かる微妙なお味であることよ。うっかり突っ込んだ香草の味がやっつけきれていないのだ。
「いいじゃないの、お茶とお茶菓子でも十分お腹は膨れるものよ。それで今日の結果なんだけどねーぇ。私のほうは空振りだったわ。お兄様に仕事を回して貰うつもりが、つい黙っていられなくて喧嘩売っちゃったのよねー。はあ、おかげでしばらく顔を出しづらいわ。」
木匙で器用にくるくるとウドンを巻き取りながら、私の隣の桃色がげんなりとため息をついてみせる。
キティーは例のお兄さんを頼ってはみたものの、どうやらその結果は振るわなかったようである。私としても、お金持ちのお貴族様であるらしいキティーの実家が支援してくれるのであれば、手っ取り早く事態の解決を見ることが出来るであろうにと期待していただけに残念な事だ。
っていうか喧嘩売ったって何があったんだろうか。彼女のお兄さんとの面識は無いものの、この桃色の事である。なんぞ理不尽な理由で食って掛かってお兄さんを困らせているのでは無いかと、邪推の一つもしてしまおうというものだ。
「ノマちゃん、なにか失礼な事考えてないかしらねー?」
「イエソンナコト カンガエテマセンヨー?」
どうやら顔に出ていたようだ、危ない危ない。素知らぬ振りして誤魔化して、ずぞぞとウドンを啜って見せる。ごっふ。横のほうに入った。ごっふ!!
「あー、もう咽るなよ汚ねーなー。ほれ、顔こっちに向けろ。」
ひょいとゼリグに頭を掴まれ、差し出された布切れで顔を拭ってもらう。意外と女子力高いでは無いか、まるでお母さんのようである。でもちょっと手つきが乱暴っていうか強引っていうかぐりぐりされるっていうか、痛いんですけどちょっと。
「よし、まあこんなもんかな、っと。そんで話の続きだが、アタシのほうは儲かりそうな話に一枚噛めたぜ。まあ楽には行きそうにねーんだけどな。」
ぐりぐりからようやくぷはっと解放されて、赤くなってしまったお鼻をちょんちょん触っていたところ、ゼリグの伝える朗報を聞いて頭を上げた。おお、やったでは無いか。これで家計簿の前で毎晩ため息をつくような、倹約生活を脱する事が出来るとありがたいものである。
「おー、やったでは無いですかゼリグさん。どんなお仕事でしょうか?最近はなんだか物価が上がってきている感じもしますし、その辺の調査とか?」
「当たらずとも遠からずってやつだな。アタシらがやるのはな、その原因を退治する事さ。」
はて、なんだか物騒な話になってきた。言ってごきりと指を鳴らす、目の前の赤毛の言葉を額面通りに受け取るならば、物価上昇の原因には退治されなければならぬ何かが潜んでいる事になる。パッと頭に浮かんだのは猪であるが、はてさてそれは何者であろうか。
「へえ?よくやった、と褒めてあげたいところだけど、なんだか穏やかじゃ無さそうね?荒事の予感がするわ。」
口の周りに小葱につけて、桃色がニヤリと笑って見せる。なんだかとっても嬉しそう。やっぱり荒事大好きなんじゃなかろうかこのピンク。
「荒事も荒事さ、金払いも期待出来るがそれだけに厄介な案件でな。ノマ、そういうわけで今回はお前にも来てもらうぜ。」
「へ?私がですか?お子様なんですけど私。」
「しょうがねえだろ。この中で一番つえーのはお前なんだからよ。」
てっきり私はお留守番だとばかり思っていたところ、こいつは意外なお話である。私に出来そうな事といえばまっすぐ行ってぶん殴るくらいであるのだが、一体私は何をさせられるのだろうか。陽動とか?
「ま、これを食い終わったら詳しく説明してやるよ。侯爵家のご当主様相手に直に取り付けてきたお仕事だ、上手くいけば報酬はでかいぜ?」
そう言って、ニっと笑って恰好をつけ、スープを啜ったゼリグの奴がごふっと咽せた。恐るべし小葱。うーん、締まらないなあ……。
どうにかこうにかウドンをやっつけ、器をどかして改めて卓を囲む。すっかり備蓄の心許なくなってきたなけなしのお茶っ葉でキティーが淹れてくれた茶と、これまた彼女が実家から貰ってきたらしい焼き菓子をパクつきつつ仕事の内容を聞いてみれば、なんとまさかの化け物退治であるという。
ここ最近、食材の値上がりに在庫の不足、昼間から仕事もせずにぶらぶらしている荒くれどもが増えていることは感じていたが、その原因がまさか化け物にあったとは。
かの化け物ははぐれと呼ばれる輩であって、分を弁えず昼夜問わずに活動しては、人様や家畜を食い荒らしているそうである。なんとも迷惑極まりないことで、危険を押してでも駆除しようという話が出るも当然というものか。
化け物と聞いて頭に浮かぶは、かつて出会った蜘蛛の少女。まさかあやつではあるまいなと勘ぐってみたものの、マガグモは夜になっても宿場に入らぬ死にたがりを、なお注意深く観察してから攫って行くような用心深さを持っている、ちゃんと己の立場を弁えた良い人殺しの化け物なのだ。おそらくこの一件とは関係無かろう。
なるほど、なるほど。侯爵と言えばたしか貴族の上から二番目である。またずいぶんとお偉いさんから仕事を貰ってきたものだと思っていたが、かような輩が暴れているとくれば納得も出来ようというもの。なんせ危なっかしくて外もおちおち歩けないとくれば流通には大打撃である。市場を見ればその影響が既に出つつあることは一目瞭然、お偉方も重い腰を上げようというものだろう。
話を聞いて、外歩きが危ないのならば護衛をつければどうかとも思ったが、暇つぶしに眺めていた酒場の掲示板を思い出す限りでは、傭兵への護衛依頼というものは基本的に物盗りや野生動物を想定しているようなのだ。そもそも商隊規模の護衛でなんとかなっているのであれば、このような問題になってはいまい。
はぐれの化け物。そう聞いて、頭の中の前世知識と紐づけられたのははぐれ象である。群れと行動を共にしない極めて気性の荒いその象は、かつて冒険小説の定番悪役にもなったというくらいだ。あの蜘蛛の少女の細腕でさえ容易く人間を引き裂いたのである、いわんや気性の荒いはぐれとくれば、その危険性はどれ程のものか。
「ほへー。それで、そのはぐれを退治するのが私達のお仕事と?」
「まあ、そういうこった。ノマを巻き込んじまったのは申し訳無いが、危ねえ橋を渡ろうってえのに切り札を切らない道理も無え。せっかくこうして養ってやってるんだ、上手い事やっこさんと殴り合ってアタシらに楽をさせてくれよ?」
私の事を切り札ときたか、おだてるねえ。ふはは、任せておけい、用心棒ノマちゃんの出番である。殴る蹴るならお手の物。これで私の借金返済に一歩も二歩も近づくとくればお安い御用であるからして、どうぞ構わずこき使って頂きたい。ただし運用方法が若干鉄砲玉くさいのは聞かなかったことにさせて頂く。
「とは言ってもそれだけの大仕事、まさか私達三人だけという事も無いのでしょう?そのあたりはどうなっているのかしら?」
かちゃりと茶器を置きながら、キティーが横から口を挟んだ。あら?私としては突撃一番、三人で出かけて行って件の化け物にぶちかましを決めてやるつもりであったのが、どうやらそうでも無いらしい。
「この件についてはマッドハット侯とドーマウス伯が共同であたる事になっててな、両家の私兵連中の動きにアタシらも一枚噛ませてもらうって寸法さ。子細については近いうちに使いを寄越すって話だが、まあこうしている間にもやっこさんはどこぞで暴れてやがるんだ。早けりゃ明日にも話が動くんじゃねえかな。」
「ほーん。けっこうな大人数になるのですね?私はてっきりこの三人で出かけるものとばかり思ってました。」
「まずはどこに潜んでいるかもわからねえ、件の化け物を炙り出すところからだしな。少なくとも数日は屋外で寝泊まりする事になるんだ、少人数で出かけたんじゃあ、はぐれに会う前に他の化け物連中を引き寄せちまう。」
ほほう。どうやらこいつは、多人数での大掛かりなピクニックとなるようだ。まあそれもそうか。まずはどこに居るとも知れぬ化け物を補足する必要があるのだし、その為に屋外で長期間活動するとくれば拠点要員も必要になる。
なによりゼリグの言う通り、少人数で夜間にぐーすか寝こけていては他の化け物が寄ってきかねない。多人数の利点は多様にあろうが、まず大人数で居るという事そのものが大事なのだろう。
軍隊とは移動する街であるとどこかで聞いた。そこまでとは行かぬにしろ大人数で村の如く天幕を張って過ごせば、そこに人間の新たな巣が出来たようにも見えるはずである。少なくともマガグモの奴は騙せそうだ、なんせちょっと色々足りて無さそうだし。
なるほどなるほど、うむうむと頷いていると、はて私の横からかすかな怒気が。そちらへそろりと目を向けてみればなにやらキティーの奴がむくれた顔で、テーブルを人差し指でトントンと苛立たし気に叩いているのが目に見えた。
「へー?ふーん?ほー?ドーマウスの家がねえ?お兄様ったら、私にはそんな事、一言も話してくれなかったのにねえ?そんなに私に仕事を回してあげるのが癪だったのかしらねー。」
いや、キティーさんよ、さっきお兄さんに喧嘩売って帰ってきたって自分で言うたやん。まあ、お兄さんの心情を思えば、既に何人も殺しているだろう危険な化け物に妹をけしかけるなど、看過出来ないであろう事は容易に想像出来ようというもの。あえて話を切り出さなかったというのもあながち間違いでは無いやもしれぬ。
ふしゅーと息を吐く桃色から視線を外せば、今度は赤毛と目が合った。めんどくせえから放っておけと言わんばかりのその視線に、私はしゅたりと右手を上げて了承する。兄妹喧嘩は犬も食わない、巻き込まれてはたまったもんじゃなかろうて。
ともあれ私達の方針は決まった。大目標は件のはぐれを撃破してお金をがっぽり、小目標は侯爵家の使いの者と接触して情報を得る事である。よーしやるぞと気炎を上げたいところではあるものの、まずは出来る事と言えば自宅待機。お使いさんとすれ違いになってしまっては話が進まぬ。
手元の茶器を傾けて、一口ちびりと口に含む。まとまった収入が入ればまた茶葉も買えるだろうか。なんせ喫茶こそがキティーの趣味、私が色々と雑事を任されるようになってからも、お茶淹れと茶器の手入れだけは自分でやるといって手放さなかったくらいである。
私にとっても、いつの間にやらすっかり居着いてしまったゼリグにとってもキティーは家主。家主の機嫌が悪くては居心地が悪いのだ。そしてそのご機嫌取りには茶葉が必要なのである。
そう考えてみると、なんだか大目標のさらにその裏、真なる目的はお茶っ葉の確保であるような気がしなくも無い。化け物退治で王都を救うなどと言うのは隠れ蓑。我々の真なる作戦は「お茶っ葉確保大作戦」であったのだ。うーん、締まらないなあ……。
などと益体も無い事を考えつつ、私は焼き菓子の破片をぽーんと放り、はっしと口で受け止めたのでありました。んー、あまーい。
さて、明けて翌日さっそく使いの者がやってきた。ただし想像していたものとはいささか違い、なんかもうぞろぞろとやってきたのである。その数四人。
「いや、使いの者に子細を説明させるって聞いていたのだけど、なーんでうちが打ち合わせと顔合わせの場になってるのかしらね……。」
そう言ってキティーが愚痴るのもわかろうと言うもの。いつの間にやら話は変わり、今日この場は件の作戦に参加する代表者達の顔合わせの場となってしまったらしい。何がどうしてこうなった。
ともあれ客人四人を客間に通し、テーブルを囲んで向かい合ったは私達を含め七人の男女。
「此度の捕り物、マッドハットの若様は現場に出ぬとか。ならば最も上席となるのは、ドーマウス家現当主様の実妹であらせられるキルエリッヒお嬢様です!お嬢様こそが女主人役として、この場をお仕切りになられるのは当然の道理!!」
「いや、だから女中ちゃん。いまの私はただのキティーであってね…………。」
鼻息荒く熱弁を振るうのは、くすんだ金髪の背丈の低いメイドさんである。身振り手振りのその度に、フリル多めのメイド服がふりふりと揺れるのは可愛らしいが、そもそもなんでメイドさんがこの場にいるのだろうか。
そしてどうやら彼女こそが、キティーの実家でもあるドーマウス家の代表者の一人であるらしい。彼女と一緒についてきたもう一人の代表者、低い背丈に太い腕、ひげもじゃを蓄えたタルのような男はといえば、開幕から飛ばしに飛ばすメイドさんの横で居心地悪げに身じろぎをしていた。
「聞き捨てなりませんね。マッドハットは侯爵家、ドーマウスは伯爵家です。家格はこちらが上なのですから、この場はこちらが取り仕切らせて頂けなければ侯爵家の沽券に関わります。あなたもそう思うでしょう?ゼリグ。」
「いや、アタシに振るなよマリベル……。っていうかなんでアンタがここにいるんだよ……。」
一方のマッドハット家の代表者、眼鏡をくいっと上げながら反論したのは、黒い髪を頭の後ろでひっつめたメイドさんである。いかにもこうメイドさんって感じの見た目がクラシカルだが、だからなんでメイドさんがこの場にいるのだろうか。
その隣でこれまた居心地悪げに身じろぎするは、長い耳と細長い体躯を持った長身の男。対面に座るタルのような男といい、その外見から察するにドワーフとエルフといったところだろうか。
犬猿の仲と聞く両者が一緒に行動するなど上手くいくのかと心配したものではあるが、二人とも頭に血の昇った女の扱いには手を焼くようで、虚ろな目でメイドさん達の発言に相槌を打つばかりである。いずれにせよ碌な状況では無い。
「はーいちゅうもーく。とりあえずはみなさん、自己紹介といきませんか?ゼリグさんとキティーさんは面識があるようですが、私は皆さんの事を何も知らないものでして。」
このままでは埒があかぬ。ぱしんと手を叩いて呼び掛けてみれば、その場全員の「なんだこのチビ?」という視線が私に集まった。悲しい。
「そ、それもそうじゃな。あー、儂はドーマウスの旦那に雇われている傭兵団「火炎獅子」の……。」
「こほん、失礼いたしました。わたくしはドーマウス家にお仕えし、客間女中を仰せつかっておりますシャリイと申します。この度はキルエリッヒお嬢様が同行されると聞き、お嬢様の身の安全の為お仕えさせて頂くべくこうして参った次第であります。あとこっちはうちで雇っている傭兵の団長さんです。」
ちょっと食い気味どころじゃ無いんですけど。台詞半分くらい食われてドワーフの団長さん固まっちゃったんですけど。っていうかだからなんで要人警護にメイドさんが出張ってくるんだろうか。ファンタジーなメイドさんはアサシン兼任な事が多い気がするが、まさかこの子もその手合いじゃああるまいな。
「お、俺はマッドハット家の食客として雇われている、傭兵団「鷲獅子」の……。」
「私はマッドハット侯爵家に雇われております、家政婦のマリベルと申します。この度は本件の見届け人として同行させて頂く事となりました。あとこっちはうちで雇っている傭兵団の団長です。」
あんたもかい。直前の惨状にも関わらず勇気を出したというに、エルフの団長さん涙目である。「あ、姉御ぉ、そりゃあねえぜ。」と頬がひくついているでは無いか。南無。
こっそり両手を合わせていると、隣に腰掛けたゼリグが身を乗り出した。今度はこちらの手番であるようだ。
「あー、今度はこっちだな。傭兵ゼリグだ、よろしく頼む。火炎獅子と鷲獅子の旦那らにとっちゃあ、「隻腕」と名乗れば通りが良いと思うがね。」
途端、団長二人の目の色が変わった。先ほどまでは隣のメイドさん達に引きつつも、こちらに対しては値踏みするようなものを感じさせたその視線が、一目置いたものに変わったのである。
どうやらゼリグは中々の有名人であるようだ、私としても鼻が高い。というか二つ名なんて持っていたなら教えてくれれば良いのに、カッコいいでは無いか。今度「隻腕」殿と呼んでやろう。
「傭兵キティーよ、白の神にお仕えする神職でもあるわ。得意にしているのは癒しの奇跡。とりあえず死んでなければ腕でも脚でもくっ付けてあげるから、遠慮なく頼って頂戴な。」
「お嬢様!そんな、お嬢様がお手を煩わせずとも、わたくし達など薬草を貼って添え木をしておけば十分でございますので!!」
続けてキティーが名を名乗れば、すかさず食いついたのは金髪のメイドさん。確かシャリイちゃんだったか。っていうかこの子ずっと目がギラついてて怖いんだけど。
「えーと、シャリイちゃん、だったわね。気にしないで頂戴、怪我人死人で頭数が減れば、その分私の身だって危険になるんですからね。それに貴方みたいな可愛い子が傷つこうものなら、黙ってみていられるわけが無いでしょう?」
「ああ!なんというお優しいお言葉!!このシャリイ!本家の方にそのようなお言葉をかけて頂けるなど!ドーマウスの家に拾われて今日までお仕えさせて頂いた甲斐があったというものです!!」
叫んでおよよと泣き崩れるシャリイちゃん。大丈夫かこの子。キティーが初めて名前を知った程度には初対面であるはずなのだが、なんでいきなり好感度マックスをぶち抜いて狂信入ってるんだろう。そしてそんなシャリイちゃんをひしりと抱き留めて膝に乗せ、お触りを開始する我が家のピンクは平常運転である。
まあ考えるに、おそらくこの子はキティーという個人を見ていない。この子が見ているのは「ドーマウス家のお嬢様」である故に、キティーの言葉はすなわちドーマウス家の言葉というわけである。勤め先にそこまでの忠誠心を持てるという事は空恐ろしいが、どうせ勘ぐったところで悲惨な過去しか出てこなさそうだ。黒猫ちゃん達の一件の、二の轍は踏まないのである。
などと考えているうちに、ゼリグに肘で、こつんと身体を小突かれた。ああ、忘れてた。私もか。
「えーと、ノマと申します。ゼリグさんとキティーさんのお手伝いとして同行させて頂く事になりました。至らぬ点もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。」
言ってぺこりと頭を下げる。とはいえ子供が同行するなどと、何を言われるものだろうか。恐る恐る顔を上げれば眼鏡のメイドさんにじろりと睨まれ、思わずぎくりと首を引っ込めた。
「その子が、旦那様の仰っていた例の娘ですか。たいそう特異な能力を持っていると聞いていますが、こんな子供を戦場に連れ出すなど感心しませんね?ゼリグ。」
「キルエリッヒお嬢様!このような得体の知れぬ娘に頼らずとも、わたくしがお嬢様のお世話と警護は立派に勤め上げて見せます!どうぞこのシャリイめをお使いください!!」
眼鏡のメイド、マリベルさんは眼鏡をくいっと上げつつ不満顔。子供を危険に晒す事を忌避してくれるあたり、なんとも気は強そうだが良い人なのだろう。一方桃色のお膝の上のシャリイちゃんは、何故か私に対抗心を燃やしていた。やっぱりなんかズレてませんかねこの子。ちなみにキティーのお相手をして頂けるのであれば喜んで譲りたいところである。なんせ腰に負担がかかるのだ。
「こいつはこのとおりのチンチクリンだが、神様の強い加護を受けていてな、緑の神の「身体強化」と「自己再生」の使い手だ。例の化け物と正面からやり合う破目になっちまった際は頼りになるぜ。」
ノマちゃん神様の加護マシマシである。五色の神とやらについてはキティーの家にあった書架の本にも大抵がぼかして書いてあり、今一つその正体は掴めぬものの、吸血鬼の力の隠れ蓑として使うには実に便利な設定であったので使わせて頂いている。あとはバチが当たらぬことを祈るばかり。
「この子を正面から放り込んで囮に使うとでも?私は貴方にそのような生き方を教えたつもりは無いのですがね。」
「いや、だからこいつは規格外っつーか、それが出来ちまうんだって!アンタも一度見てみりゃあわかるってマリベル!!」
「いえ、それがキルエリッヒお嬢様の身の安全に繋がるのであれば、進んでその身を捧げるべきです!見事お役目を果たした暁にはドーマウス家で雇い入れて貰えるよう口利きをしてあげますよ!!」
「シャリイちゃん、さりげなくうちのノマちゃんを引き抜こうとしないでくれるかしらね?」
女三人寄れば姦しい、五人も寄れば言わずもがな。私の扱いを巡って喧々諤々とすっかり収拾のつかなくなった場は荒れに荒れ、置いてきぼりになった団長二人が死んだ魚の目をしながら固く握手を交わしたあたりで、たまりかねた私が声を張り上げた。ええかげんにせえやお前ら。
「はーい!はいはーい!聞いてくださーい!!私の扱いを含め色々と決めなければいけない事はあるでしょうが、とりあえずはこの集まりの決定権を持った人に決めてもらうべきだと思うのです!どなたが代表者なのでしょうか!?」
手を振り上げてぶんぶんと振り回し、再度場の注目を集めれば、真っ先に口を開いたのは眼鏡のメイドのマリベルさん。
「決定権ならば私にあります。先ほど申し上げた通り、マッドハット家のほうが家格は上であり、私はそのご当主様の意を受けてこの場にやってきているのですから。」
「あ、姉御。いちおう団長はこの俺で……。」
「おだまり。」
「へい。」
実にわかりやすい、悲しい力関係である。マッドハット側と交渉する際はとりあえずこのマリベルさんを通せば良さそうだ。ノマちゃん覚えた。
「えーい!分からず屋の眼鏡ですね!!この場にはキルエリッヒお嬢様がいらっしゃるのです!たとえマッドハット侯爵家の家格が上であろうと、名代たるお嬢様がいらっしゃる以上、この場はドーマウスの仕切りであると言っているじゃあありませんか!」
「嬢ちゃん、実際に兵どもを動かすのは俺ら団長でな……。」
「うっさい!お嬢様を蔑ろにしたと旦那様に言いつけますよ!?」
「へい。」
ドーマウス側の力関係もわかりやすいもんである。とはいえこちらはシャリイちゃんがご当主様であるところの、キティーのお兄さんの威を借る狐といった感じだが。
同じ境遇にあるもの同士で共感したか、団長二人がふっと笑い合う。いや、もうどうにでもなーれと言わんばかりに笑ってる場合じゃ無いだろう。事によってはお前らの生き死にがかかってるんだぞ。
さてどうしたものか。事の本質はドーマウスとマッドハット、両家のメンツと力関係の問題である。ここでどちらかが命令を下す側となれば、一時的とはいえ他家に首を垂れたという事実が残ってしまうのだ。マリベルさんにしてもシャリイちゃんにしても、それは到底看過出来ぬ事であろう。
とはいえ命令系統の一本化は必要である。共同作戦であるというのにやっていることがぶっ散らばってバラバラなのでは目も当てられない。団長二人は既に心の友になった感があるが、上役である女性組がこの有様ではお互いに余計な横やりを入れかねないのだ。
さーてほんとにどうしたものか。一応手として思いつくのは、両家と関係の無い第三者であるゼリグをトップに祭り上げてしまう事である。が、いくら名うての傭兵だとはいえ、両家に指揮権を手放させてしまうなどと無理筋にも程がある。はてどうやって説得したものか。
「はーい、静粛に!みなさん静粛に~~!!」
手のひらでべちんべちんとテーブルを叩き、皆の注目を集める事三度。何回同じ事やらせる気だろうか、人が話してるときは静かにしましょうと学校で習わなかったのかこんにゃろうめ。
「んじゃあこうしましょう。まずドーマウス伯爵家側の指揮権ですが、シャリイさんの言う通り、そちらのトップはキティーさんという事でお願いします。」
「いや、ノマちゃん。私に渡されたって困るんだけど?大体私はドーマウスの家とはもう関係のない……。」
「キルエリッヒお嬢様!最近はお嬢様も何かと入用だと聞いております故、先日東方から買い付けたばかりの茶葉を手土産として持参させて頂いております!!」
「まあしょうがないわね。承らさせて頂こうかしら。」
シャリイちゃんナイスアシスト。目の前に小さな壷がことりと置かれたその途端、キティーの手のひら大回転である。今度手首に油でも差しておいてあげようか。
「で、その指揮権を今度はゼリグさんに渡してあげてください。」
「はい、あげるわ。ゼリグ。」
「キルエリッヒお嬢様ぁぁぁぁああ!!?」
桃色が何かを放る仕草をすると、応えた赤毛ははその見えない何かを律義にキャッチして見せる。なんだかんだ言いつつノリが良いでは無いか。
「いや、そんな勝手な事言われてもな。大体ノマ、アタシに大人数の指揮なんてできねーぞ?」
「まあ待ってくださいな。これで話が終わりというわけではありません。」
さて今度はマッドハット側である。ふんすと気合をいれて眼鏡のメイドに向き直れば、彼女は妙なガキがこれまた妙な事をし始めたと、訳知り顔でニヤリと笑みを浮かべて見せた。
「では今度はマッドハット侯爵家側の指揮権ですが、マリベルさんが持ってらっしゃるそれ、ゼリグさんに渡して頂けませんか?」
「お嬢ちゃん。なぜ私が、貴方の提案を呑まなければいけないのか説明して頂けるかしら?」
まあ当然だろう、誰が好き好んで自分の権利を他人にくれてやるものか。だが返ってきたのは拒絶の言葉というわけでは無い。これは意外と芽があるやもしれぬ。
「マリベルさんは出来る女性とお見受けしました。ならば、このように纏まりの無い状態で危険に挑む事など愚か極まりないであろうことは、わかって頂けると思います。」
「ええ、そうね、だから私が仕切ってあげようと言っているのだけども?」
「ですが、それではドーマウスの家がマッドハットに首を垂れることになります。きっとシャリイさんは首を縦には振らないでしょう。で、あればここは妥協案というものが必要です。」
マリベルさんは何も言わない。返事の代わりに、面白そうにくつくつと笑いながら己のこめかみをトントンと叩いて見せた。続きを話せという事だろうか。
「いったん、この場の指揮権を全てゼリグさんに集めます。彼女は「隻腕」の二つ名で知られていると言うくらいですし、この一件に一枚噛む事ができたあたり、マッドハットのご当主様にも伝手を持っている様子。両傭兵団の団長さんも一目置くくらいですし、団員の皆さんも、少なくとも表立っては嫌とは言わない事でしょう。」
「いや、だからなノマ。アタシに兵の指揮なんて……。」
「もちろん、ゼリグさんにそんな仕切りが出来るとは思っていませんよ。というかゼリグさんが命令を下してしまっては角が立ちます。名目上でだけ頭についてもらってですね、実際は両傭兵団の団長さん達に現場を仕切って貰うのは如何でしょうか。」
うむ、我ながら中々悪くない八方好しでは無かろうか。団長二人は既に苦楽を共にした心の友である、きっと上手く回してくれることであろう。現場に口を出されないのであれば、彼らの男の面子も立とうと言うもの。ドーマウスとマッドハットの両家も対等な関係を維持し、どちらに首を垂れる事も無い。
あとは名目上とはいえゼリグが上についてくれるのを両家が飲んでくれるかなのだが、少なくともドーマウスについてはご当主様が出張ってこぬ限り、シャリイちゃんはキティーの言う事を聞くはずである。多分なんとか大丈夫。マッドハットの側については、ご当主様本人はゼリグの事を気に入っているという話であるからしてその点では彼女を立てることに問題は無かろうが、さてマリベルさんはどう出てくるか。
がーっと言い切り、ちらりとそちらを見やってみれば、マリベルさんは眼鏡をくいっと上げつつため息をついてみせた。
「子供の戯言ですね。確かに効率的かも知れませんが、貴方は人の感情というものを考慮していません。例えそれが非効率とわかっていようとも、人は何かとしがらみを抱えて生きているものなのですよ。」
「ではマリベルさんはゼリグさんの事がお嫌いであると?」
上からすぱりと言葉を被せれば、眼鏡のメイドは口をへの字に曲げて閉口してみせた。
「それを言われると苦しいですね。私としては、かつての教え子が名声を得る機会に立ち会うことはやぶさかでもありません。鷲獅子、貴方はどうですか?」
「お、俺は構いやしませんよ。ちゃんと金が貰えて、物を知らねえ奴に口を出されないってんなら大歓迎さ。なあ、火炎獅子の?」
肘でどすりと小突かれたは鷲獅子の団長さん。どうやら同意して貰えたご様子で、水を向けられた火炎獅子の団長さんも鷹揚に頷いて見せた。
シャリイちゃんもマリベルさんも、何か言いたげではあるものの、それ以上表立って反論する様子も無い。素人考えではあったがなんとか纏まってくれただろうか。私にだって本当はわかっているのだ、そもそもにして、本来部外者であるゼリグを急にトップに据えるなど無理がある。
だが無理を通せば道理は引っ込むとは良く言ったもの。意見の出し合いというのは正しい事を言う者が勝つのではない。声がでかい奴が勝つのである。シャリイちゃんはキティーがこうと決めれば逆らわぬであろうからして、あとはマリベルさんを黙らせれば私の勝ちなのだ。
そしてそのマリベルさんも、両家の足並みを揃える為の落とし所は探っていたはず。私が道化になるのであれば、これ幸いと乗ってきてくれるのはまあ期待できるところではあったのだ。なんせ言い出しっぺはマリベルさんでは無く私である。駄目なら私のせいにすりゃあいい。
「あー、なんかよくわかんねえけど、いちおうアタシが頭を張らせてもらう事になっちまったんで。まあ、その、よろしくお願いします?」
ゼリグの代表就任挨拶に、ぱちぱちぱちとまばらな拍手が飛ばされる。なんかもうこれで終わった感も無くは無いが、本題はこれからだ。件の化け物をどう追い詰めるか話し合わねばならぬ。
まあ、それについては私は素人さんも良いところであるからして、プロに任せるに越したことは無いだろう。団長二人とマリベルさんが、きっと良い案を出してくれるはずである。
それ以上余計な口を挟むことなく見守っていれば、ドワーフとエルフの団長さんが出した意見をゼリグが拾い、それにマリベルさんが修正を加えてあれよあれよと話しが進んでいくもので、これまでの私の気苦労はどこへやら。うーむさすがプロ。門外漢であるので細かい話はよくわからぬが、なんだか行けそうな気がしてきた。
ちなみにシャリイちゃんはといえば、キティーの膝の上ですっかりお人形と化していた。本家筋様に可愛がられて彼女もご機嫌、可愛い女の子を堪能出来て桃色もご機嫌である。頼むからそこで大人しくご機嫌取りをしていてくれい。
ふいー、なんだかすっかり疲れてしまった。もう私に出来る事も無いだろうし、あとは静かに見守っている事としようか。決まったら詳細を教えてください。
時々チラリと向けられる、子供らしくない事を言う十歳児への気味悪げな視線を受け流しつつ、どっかりと椅子に沈み込んだ私は、さも聞いてますよと言わんばかりの態度で静かに目を閉じたのでありました。
いや、寝てませんよ?
緑の神の加護「身体強化」……(緑)このクリーチャーはターン終了時まで+3/+3の修正を受ける。
緑の神の加護「自己再生」……(緑)このクリーチャーを再生する。




