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異世界転移のバツバツさん  作者: カボチャ
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ドキドキご質問タイム

「んふふふー、ノマちゃん来てくれたのねぇ。ささ、どーぞ、入って入ってー。」



 来てくれたも何も、私はゼリグの小脇に手荷物よろしく抱えられて運搬されておるのだ。逃げられようはずも無し。解せぬ。


恨めし気な目で、私を抱える赤毛のマッチョをじとりと睨め上げたが、視線の先の赤毛ときたらどこ吹く風である。なんでまた、目の前で手をわきわきさせる桃色女の魔窟へ放り込まれなければならぬのか。




そもそもの始まりは今朝がたの事であった。


先日の深酒が祟り、日が高くなっても起き上がる気にならず惰眠を貪っていた私は、唐突に寝具ごとひっくり返された。


かろうじて、ずり落ちそうな足を寝台にひっかけ、頭を床につけて逆さになったまま、下手人である赤毛の女に抗議の視線を送ったのだが、ものの見事に無視をされるとひょいと抱え上げられる。


「朝も早うからなんでしょう。私はまだ眠いのです、ゼリグさん。」


「とっくにお日様は昇っちまってるよ。出かけるから支度しな、ノマ。」


「昨日から着の身着のまま、支度するものなどありはしません。そも、支度をしろというなら降ろしてもらえませんかね。」


「出かける先は昨日の桃色のところだよ。一緒に酒飲んで騒いでたろ?言ったら逃げると思ってな。」



マジか。先日の桃色女、キティーは面白い奴ではあったが、傍から見るから面白いのだ。あまりお近づきになりたいとは思えない。なんか怖いし。


「いえ、私は先日の深酒のせいで体調が悪いものでして、辞退させて頂きます。」


「そっか、具合が悪いなら、このままあいつの家まで運んで行ってやるよ。遠慮すんな。」


手足を振り回してじたばたと暴れてみたが、放してくれそうにもないので、小脇に抱え込まれたまま手足をだらりと投げ出して大人しく運ばれる事にした。



どなどなどーなーどーなー。あ、おやっさん。今日も血痕の掃除ご苦労様です。出かけてきますね。




私達が滞在していた世紀末酒場は、街の外縁部に位置している。ゼリグは中心部へと向かっているようで、周囲の街並みもスラムのごとき有様から、中産階級っぽいそこそこの街並みへと次第に移り変わっていった。


不意にゼリグが足を止める。なんぞやと周囲を見渡すとそこは甘味処であるようで、果物の甘い匂いが通りにまで漂ってきていた。


「ノマ、お前さ、甘いもの好きだったっけか。」


「買い食いですか?今日は朝食も摂っていませんし、ぜひ頂きたいところですね。」


ゼリグが銀髪の手荷物を小脇に抱えたまま店内に入る。カランと音がして若い男が出迎えてくれたが、ぷらぷらと揺れる私を見て固まってしまった。うん、できれば何も突っ込まないで欲しい。


店内には果物の乗った焼き菓子が並び、奥には飲食の出来るスペースも設けられているようだ。昨晩の酒場の惨状とはうってかわって、身なりの良い人々が茶を楽しんでいる様子が窺えた。


「高そうなお店です。大丈夫なんですか?」


「アタシもこんな所初めてだよ。まあ、金ならあるさ。気にすんな。」


そう言って、彼女は焼き菓子を何品か選んで包んでもらうと、恭しく差し出された店員の手にややぎこちなく銀貨を手渡した。まあ、ゼリグは菓子というより肉と酒って感じである。そのイメージの通り、こんなお上品な店には不慣れであるようだ。お会計を済ませてカランカランと店を出た。



「食べていかないんですね。良い雰囲気のお店でしたのに。」


「キティーの奴を待たせてるからな。あんまり待たせるとうるせーんだわ。」


「それもそうですね、人を待たせて食事を楽しむなど失礼な話でした。すみません。」


「ま、あいつも何か用意してるだろうしな、菓子なら後ですぐ食えるさ。それよりな、ノマ。」


「なんでしょうか。降ろしてくれるんですか?」


「いや、そうじゃねーんだけどさ。お前の体、やっぱり、ずっと、冷たいままなんだな。」



言われてすこし、どきりとした。




 話は冒頭に戻る。てっきりどこかで待ち合わせでもしているのかと思ったが、行先はキティーの自宅であったらしい。羽振りが良さそうとはいえ傭兵の身、集合住宅の一室かと思えば、なんとまさかの一軒家であった。


「んふふー。家を出るときにですねぇ、お父様がプレゼントしてくれたんですよぉ。」


「手切れ金の間違いでは無いのですか?」


「お、ノマちゃん意外と言いますねぇ?」



客間に通されると、控えめながら品の良い調度品と、クロスの敷かれたテーブルに一揃えの椅子が目に入った。酒場の樽板テーブルとは大違いである。


奥では湯が沸かされているようで、湯気がしゅんしゅんと音を立て、茶葉の良い香りがこちらまで伝わってきた。


「うへ。おいキティー、おまえ喫茶の趣味なんてあったのかよ。いくらすんだこれ。」


「あらぁ?お嫌なら飲まなくてもいいんですよー。私はノマちゃんと二人で楽しみますからー。」


「いいや貰うさ。高いものは美味いって相場が決まってるからな。」


ゼリグがどかりと椅子に座る。おい、高そうな品なんだからもっと丁寧に扱え。私も座っても良いものかときょろきょろしていると、キティーと目が合った。


「んふ、ノマちゃんも座っちゃっていいわよー。今、お茶とお菓子を出しますからねー。」


「では、失礼させて頂きます。」



席に着いて待っていると、茶菓子の載った3段重ねの皿が用意され、お茶が入れられ、あれよあれよという間に場が整えられた。んーむ、見事なものだ。こうしていると、目の前の桃色がまるで洗練された淑女のように見えてくる。嫁の行先には困らないだろう。


と、一瞬見惚れたが、よく考えたらこいつは昨夜の桃色暴力シスターであった。見れば、白い法衣には洗い落としきれていない赤い染みがほんのりと見える。しかも昨日の返り血とは場所が違う。もしかしてこいつの服、みんなこんな状態なのか。


ふるふると頭を振って、先ほどの幻想を追い出した。危ない危ない。食虫植物みたいな女である。


「ああ、そうだ。行きに買ってきたんだよ。これも乗せちまうからな。」


ゼリグが、先ほど買ってきた果物の載った焼き菓子を、3段重ねの最上段に載せていく。元々載っていた砂糖菓子と合わさってぎゅうぎゅう詰めで、端っこが皿から飛び出した。キティーがこめかみに手をあてる。


「ゼリグ……あなたね、もうちょっと雰囲気を味わうって事を覚えてくれないかしらね。」


「ま、硬い事言うなよ。ノマ、好きに食っていいからな。」


「そーですよぉ、ノマちゃん。好きなだけ食べちゃっていいですからねー。今のうちにね。」



何か言い方が引っかかったが、言われずとも私の目は菓子に釘付けである。目の前の皿には上段から、皿からはみ出た焼き菓子と砂糖菓子、スコーンのような焼き菓子、チーズの挟まれた白パンと並んでいるが、さて何から手をつけたものか。


ここでぴーんと閃いた。これが私の知っているものと同じであるならば、確か下段から手に取っていくのがマナーであったはずである。とすれば、まずは白パンからか。


ゼリグが上段の焼き菓子を手に取った。続けて私は下段の白パンを手に取ると、すでに菓子をパクつき始めているゼリグに向き直って得意げに笑みを浮かべて見せる。どやぁ。


「あらぁ?ノマちゃん、知ってるのね?」


「はい。その、合ってますよね?」


「ええ、合ってるわ。ふーん、へぇー。知ってるのね。」


何か言いたげな視線を受け流して白パンにかぶりつく。こちらに来てから、コチコチの黒パンでは無い、やわらかなパンなど初めてだ。さすがに前世で食べ慣れたものと同じとはいかず、若干ぼそぼそとしていたが、それでも大分マシである。


お茶を飲んで一息つき、スコーンに砂糖菓子と手をつけ平らげていく。スコーンにそのままかじりついて味が無いのに一瞬顔をしかめたが、キティーが笑いながらクリームとジャムを差し出して、これを付けて食べるのだと教えてくれた。これは知らないのね、と言われつつ、ぺとぺととクリームとジャムを塗る。


むふー。ジャムの甘さに渋めのお茶がよく合う。ちなみにゼリグは話を聞いていなかったのか、スコーンをそのままかじって同じように渋い顔をしていた。


んーむ、ご機嫌である。前世ではこれほど甘党では無かったはずなのだが、今世では見かけのとおりに子供舌であるのか、甘いものが美味い事美味い事。ゼリグの買ってくれた焼き菓子まで平らげ、すっかり綺麗になったお皿を前にお茶を一口飲んで、けふっと息を吐いた。




「ありがとうございます。馳走になりました。」


「んふふ、お構いなく~。たくさん食べたわねぇ。」


キティーがお茶のお代わりを入れてくれた。さっきはかぱかぱと飲んでしまったので、今度はちゃんと香りを楽しもうと思う。



「さて、それじゃあ、今日の本題と参りましょうかぁ。ノマちゃん?」


茶器を前にくんかくんかと鼻を鳴らしていたが、名前を呼ばれて顔を上げた。見ればゼリグも硬い顔をしている。まあ、さすがに女三人集まって、お茶を片手に女子会をしにきたわけでも無いだろう。これからが本題というわけだ。


さて議題は何であろうか。私がこの場に連れてこられた事からいって、私絡みの話には違いあるまい。ちなみに私の身売り話であれば、この場でちゃぶ台返しをして泣きながら逃走する所存である。


茶化して平静を保とうとしたが、やはり内心穏やかでは居れぬようで、ばくばくと心臓の音が聞こえる。この摩訶不思議アンデッドボディーは、冷たく冷え切っている癖に血流はしっかり通っているらしい。


固唾を呑んで待っていると。


「それじゃあねぇ、今から私達が色々と質問するから、正直に答えて頂戴ねぇ。」



少々、拍子抜けした。はて、二人には既に自己紹介は済ませてあると記憶しているが、この期に及んで何用であろうか。


キティーが茶器をテーブルにことりと置いて、私の瞳を覗き込む。


「じゃあ、まず、ノマちゃん。ノマちゃんの名前を教えてください。」


「え……?あの、ノマですけど。」


「ノマちゃんの家名は?」


え、そういえば考えてない。いや、家を持たぬのだから家名も何もあるまい、ただのノマで通そう。


「……ありません、ただのノマです。」


「口ごもったわね。」


うう、まずかっただろうか。そんな事言われても無いものは無いのだ。もじもじしていると、今度はゼリグが口を開いた。



「ノマ、お前の生まれはどこだ?王国か?衆国か?」


「……わかりません。」


王都っていうくらいだからここが王国だよね?衆国ってどこ?



「山でアタシに拾われる前は、どこでどう暮らしていた?」


「…………わかりません。」


すいません、考えてませんでした。未設定です。



「ノマちゃんさっき、ケーキスタンドは下から取るって知ってたわよねぇ。良い暮らししてたんじゃないの?」


「けして裕福であったわけではありませんが、貧しい暮らしではありませんでした。」


前世での話ですけどね。


「そう。でもスコーンの食べ方は知らなかったのよね。どうもねえ、ノマちゃんの知識ってチグハグなのよねー。」


なにこの尋問。泣きたい。泣くぞコラァ!いやだって、インドア派の私の知識なんて大抵が本とネットとゲームの産物なのだ。実体験が伴っていないのだから、変なところだけ覚えていて細かいところは抜けているなんてざらなのである。


「なあ、ノマ。正直に答えてほしい。」


再びゼリグが口をはさむ。今度は何だ。マジで泣くぞ。


「お前の体は、いつから冷たいままなんだ?」



……血の気が引いた。これは吸血鬼という私の正体に絡む話である。どう答えたら良いのだろう。


「最初はな、山で倒れたお前が、体力を失っているから体が冷え切っているんだと思ったよ。でもお前は衰弱している様子なんか微塵も見せずに自力で歩くし、飯も食べるし酒まで飲む。今だってな。」


ゼリグが、私の腕を掴んだ。びくりと身体が跳ねて身を縮こませる。


「茶を飲んで菓子も食った、皿も空にしちまってたいした健啖だが、やっぱりお前の体は冷たいんだよな。冷たすぎる。戦場でくたばっちまった同僚を、後で探して引きずった時な、こんな風に、物みたいに冷たかった。」


「わ、私は……その……」


「ノマ、お前は、人間なのか?」



もはや、これまでか。日本の話はさすがに荒唐無稽に過ぎるので話すわけにはいかぬであろうが、私は前世の記憶を持つ吸血鬼で、あの山の中で初めて目覚めたのだと言う事を伝えぬわけにはいかんだろう。


先日話を振った際、ゼリグは吸血鬼を化け物の類だと言っていた。しかしながら、私は血を吸う鬼であるとはいえ、人を喰らうというわけでは無いのだ。血だってまだ吸った事が無い。和解の道はあるやも知れぬ。いや、先日の一件以来、ゼリグの首筋が美味しそうに見えて仕方が無いのだが、まだ未遂である。セーフ。


ようし、もう誤魔化すのは無しだ。話せる事は全部話そう。腹は括った。


もし、剣を向けられ追い立てられたのなら、泣きながらマガグモのところに転がり込む所存である。いやマジで。だって他に知り合いもいない。



「ゼリグさん……私は……」


「あーもー。まだるっこしいわねー。」


覚悟を決めてキヨミズダイブしようとしたところに、桃色が割り込んできた。ちょっと空気読んでくれませんかね。


「やっぱり、こんな心を開いて~なんて回りくどいのは性に合わないわ。こういうのはねー、どっちが上なのか身体に教え込んで、無理やり情報を引きずり出してやるのが一番なのよ。」


何それ怖い。拷問でもする気かこの女。いや待て、待って。開いてるから。めっちゃ心全開だから。今なら解かり合えるから。


身体能力は私のほうがずっと上であろうが、気圧されてしまって動くことが出来ない。逃げる間もなく、私はキティーに担ぎ上げられた。ぷるぷるしながら、助けを求めてゼリグへ手を伸ばす。



「待ってぇ!待ってください!話します!今、全部話そうと思ってたんです!!だからゼリグさん!たっけてぇ!!」


「ノマ、わりぃな。まあ、死ぬわけじゃないんだ、犬にでも噛まれたと思って我慢してくれ。」


ブルータス、お前もか。


私のぉ!気持ちをぉ!裏切ったなぁ!!桃色女に担ぎ上げられたまま、じたばたと暴れてみるが、がっちり抱え込まれてしまって身動きが取れない。ゼリグといいこいつといい本当に女か。いや、本気で抵抗しようとすれば脱出は可能であるが、キティーを傷つけるやもしれぬ。最悪腕を引き千切ってしまいかねないのだ。


私はまだ和解の道を諦めていない。軽率に事を起こすのは憚られた。さーてどうしたら良いものか。




 ひらひらと手を振って別れを惜しむ赤毛の姿が視界から消え、客間から連れ出された私はなんだか暗い部屋にボスンと放り込まれた。灯りが灯されると、どうやらここは寝室であり、私はでっかいベッドの上に転がされているらしい。


え、寝室?ベッドの上?いやいやいやいや、猛烈に悪い予感がする。これは今からでも本気で抵抗するべきか。


慌てて身を起こすが、混乱から立ち直る前に再びキティーに押し倒された。


重い。キティーが太いわけでは無いのだが、いかんせんこやつは180はたっぱのある長身だ。10歳そこそこのこの身とでは体格差がありすぎる。


お腹の上に馬乗りになられて、両腕を押さえつけられ、完全に抑え込まれてしまった。


「んふふふふ、さあーて、今からねぇ、ノマちゃんのお腹の中と心の中をぐっちゃぐちゃに掻き回して、私の質問になんでも答えてくれる良い子ちゃんにしてあげますからねぇ。」


ひぇっ。やばいやばいやばい。これはヤベーくらいにやばい。


「ああ、誤解しないで頂戴ね。私はあくまで、白の神に仕える神職として、化け物が人間に化けてるなんて可能性を見過ごすわけにはいかないの。だからこれは必要な事で、仕方の無い事なのよ。うん。」


じゃあその舌なめずりやめーや。


「それじゃあ、いっただっきまーす。」


そう言うなり、お腹の上の桃色は、私にがばりと覆い被さった。ええい、もうこんなやつ桃色じゃない、ピンクだ。淫乱ピンクである。おのれ淫ピ。



顔が一気に近づいたことで、キティーの首筋がよく見える。紅潮し、白い肌に赤みが差したそれを見て、私の胸がどくんと跳ねた。恋では無い。


美味しそうだ。若い女の生き血。あの白い喉に食らいついて啜り上げる血は、どれほど甘美であろうか。


淫ピの膝が、私の股を割って足を開かせる。ああ、やめて欲しい。いま私は柄にもなく興奮してしまっているのだ。濡れているのがばれたら恥ずかしいでは無いか。


いやいやをするようにかぶりを振っていたが、ついと顎を持ち上げられ、唇を舐められた。赤い舌が私の中に割って入り、口内を掻き回す。


ああ、良い匂いがする。ここに血の匂いが混ざれば、もっと良い香りになるだろう。もう、我慢出来そうに無い。


欲しい、欲しい、ホシイ、欲しいのだ。



思うさま、私の中を蹂躙した舌が引き抜かれ、つぅと糸を引くと、キティーは満足気に私の顔を覗き込んだ。が、途端、その顔が驚愕に変わる。


さもありなん。腕の中の無力な少女が、自分を遥かに上回る膂力で身体を押し上げたのだ。


「ノマちゃん……っ!あなたは!やっぱり!!」


「あは!あはは!あヒはははははハハハハハハ!!」


キティーが懐に手を入れる。何をしようとしているのかは知らぬが遅すぎる。所詮は人間のやる事よ。笑いが止まらぬ。自分の口が、まるで耳まで裂けたかのようだ。


目の前が真っ赤に染まる。心のどこかで、何かがおかしいと叫び声が上がったが、何、気にするものか。支配種たる私が、好きに獲物を喰らって何が悪い。



キティーを突き飛ばし、そのままがばりと覆い被さると、彼女は健気にも私の顔に肘打ちを入れて無駄な抵抗を見せた。


痒い痒い。踏みにじり、蹂躙する事の愉悦たるや、なんと心地の良いものよ。


両の腕を掴み、捻り上げて圧し折ると、鈍い音が響く。


「あぐぅっっ!ぎっ!いっ!!」


私の下で暴れる女は呻き声をあげるが、こちらを睨みつける目は力を失っていない。このまま心折れるまで嬲ってやろうかとも考えたが、あまり、そういうのは趣味では無いと思い直した。


そろそろ、楽にしてやる事としよう。



あーんと口を開いて、牙を剥き出しにする。牙が熱い、むず痒くて堪らない。


ホシイ、ホシイ、ホシイのだ。


「はぁ、ごめん、ゼリグ。後は任せたわよ。」




私は、目の前の女の白い首に、思い切り牙を突き立てた。



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