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異世界転移のバツバツさん  作者: カボチャ
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ここから始まりここで終わります

「くふっ! くひ! ひひひ! どーーーっじゃきたのぉ!!! ちからくらべはわしらの勝ちじゃ! さんっざデカいむねかおしおってからにぃ!!!」


「……いや、みなみの。貴様がほこるのは可笑おかしかろう? 私をくだしたは銀色のヤツ、そこのながれのチビじゃあないか。」


「ひひ! 銀色ノマはわしの客分きゃくぶんじゃ。つまりわしらの一員であり、彼奴あやつったはわしらのちよ。さーぁさぁさぁハラか!? キモか!? きたかしらのケジメばせい!!!」



 ヤクザか。みなみの親分褐色(かっしょく)はだと、きたの親分黒衣(こくい)のそれと、クモとバッタとをじろじろ見る。何処どこがとはえて言うでもないが……。まぁ、うん。勝てんわなぁ。ふへ。れるへんわらい。


 顔面がんめんにクモのりがさった。






 さて、さき一騎いっきち。それが終わってどれだけって、お天道てんとうさまのどこを知るでも無いが、とりあえず非常にごちゃついていた。地下の不明ふめいだい空洞くうどうで。位置いちは道中ややもどり、おそれるとべきをびない程度、ちょっときもしたりして。おでこにいた穴をで、ってつぶしたカボチャのたねの、お茶をすすって一息つく。『心臓しんぞうじゃー!』『心臓しんぞうかー。』ケジメ案件あんけんアステカ仕草しぐさ動脈どうみゃく損壊そんかい聞きたくねぇなぁ。


 とまれ(ともあれ)、ごちゃついているのである。お湯呑ゆのみも一つクピりやる。まずは化生けしょうむすめらが居て、南の四体よんたい北の五体ごたいそろってスーパーかしましい。ちなみに四肢しし胴体どうたい欠落けつらく部位ぶいは、マガグモの糸でぐるぐる巻きに、粘性ねんせいってくっ付けていた。破損はそん現在げんざい進行形しんこうけい身体からだつくりがすげーざつ。まー、人様ひとさまを言えた義理ぎりじゃあ無いが。クピり。一方いっぽうそちら反対はんたいほかの皆さんも全員います。ます。ごちゃつき以下いかりゃく



「魔王様! 無事ぶじで! 無事ぶじであらせられますか!!?」


「……む? ……うむ。……みなみの、辺境へんきょうはくじょうちゃんかぃ。化け物どもは……、おまえ、どうした?」


退しりぞけました! このサタナチアの指揮しきもと陛下へいかをおすくもうしたのです! ですので何卒なにとぞ! 辺境へんきょうはくりょうとこのわたくしを、何卒なにとぞ! 何卒なにとぞ! 何卒なにとぞ! 是非ぜひに今後ともご贔屓ひいきへぶっはぁ!!?」


「やっかましいっ!!! この非常ひじょうに! おばあ様がお疲れだろうが!!!」



 しかしりゃくでもまぁそうましく、口角こうかくあわ蛮族ばんぞくむすめ、あっちもあっちでドかれドき。『フレルティ、ババァをとしりとめんでね!』もとむすめさんがぴしゃりとめた。矍鑠かくしゃくとしてらっしゃるなぁ。とはいえとてとて(とてもとても)理不尽だけど。あとはオーク、ゴブリンのやとわれむすめ地上うえとのつなぎで魔将ましょうの女性、以上いじょうデーモン一式(いっしき)である。へい不在ふざい。私にくっ付いてきたおひとだけ。なんでって? そりゃあうえまで行ったので。


 喧々諤々(けんけんがくがく)丁々発止(ちょうちょうはっし)。すったもんだがあったんですよ、さっきあのまえも、あとも。具体ぐたいてきには直後ちょくご短期たんきてき滞在たいざい場所ばしょ。それを下にとどまるか、上にもどるかで若干じゃっかんめた。此処ここ本能ほんのう危険きけんである。しかし意識いしきの無い老人ろうじんを、迂闊うかつで動かして平気へいきなものか、しかもダンジョン縦横たてよこに。と、いうか化け物(コイツら)地上ちじょういとけねぇし。そうというわけで暫定ざんていあん。私がうえまで行きましたのだ、ひれ尻尾しっぽをべちべちしつつ。


 こーれがまた大変だった。ゴギーのじょうちゃんにくらったどく、それが身体ボディから中々(なかなか)抜けず、あっちこっちげて崩壊ほうかいするのだ。そのたび身体ボディ増設ぞうせつする。サルのあたまやしたり、タヌキのどうやしたり、トラの手足てあしっぽのヘビと、なんせ再生さいせいかないもので。ともあれそんな図体ずうたい使う。せっせと戻って小道こみちまる。ごり押し最強さいきょうどすこい! をする。げる。やす。地上ちじょうかおすスゴイ・キマイラ。



 したら(そしたら)うえも大変だった。かえりみてみればデーモン兵と、魔王まおう到着の私たち。不幸にもった小競こぜい。ダーク・お昼ご飯未遂事件(みすいじけん)魔王まおうじょうマッハ攻略こうりゃくをして、バッタ軍団のよこやりを受け、王都上空おうとじょうくうスーパー蝗害(こうがい)大戦たいせんまつり。大変ご迷惑めいわくをお掛けしました! で、そこまでは一応いちおうよいのである。よくねぇけど。ゴギーのじょうちゃんが敗北はいぼくかまし、統制とうせいいたバッタの群れは、雲散うんさんすで霧消むしょうでありましたので。


 あとはった方々(ほうぼう)自然しぜんなかの、淘汰とうたあつなかで減っていくはず。そうなって下さいお願いします。ただし指揮官しきかんだけはねばったらしい。大猿おおざるのような猩々(しょうじょう)バッタ、孤軍こぐん奮闘ふんとう玉砕ぎょくさいあと、微妙にちょびっとかじられてるし。別に美味おいしくはなかったようだ。んで。そうということになるとである。地上ちじょうに残ったのは化け物(ぐみ)と、クラキさんはじめ人形(ぐみ)と、フルートちゃん及びぎん軍勢ぐんぜい。そして王都おうと防衛ぼうえいの兵士たち。


 どうでしょう。おかりいただけましたでしょうか。横の連携(コンセンサスゥ)のコの字もねぇのが。兵士へいし諸兄しょけいならび一般いっぱん市民しみん蛮族ばんぞくみなさんの御目おめからすれば、化け物同士(どうし)なわ合戦がっせん。それが終わっただけのはなしである。あとに残るは化け物と、バケモンみたいな人形にんぎょうたちと、ほぼほぼバケモンの銀の軍勢(うちの子ら)。ついでに中央都心(としん)広場ひろば、くそデカクラゲもぶち立ってるし。魔王城くらいでけぇヤツ。最早もはやどうとはみなまで言うまい。



 当然とうぜん第三者だいさんしゃさま視点してんにおいて、なんか国家存亡こっかそんぼう危機ききである。すげぇめたくそ唐突に。至急、られる迎撃げいげき指揮しき魔将ましょうの皆さん中核ちゅうかくとした、臨時りんじ編成へんせい決死けっし部隊! それがクラゲにぶち当たる。物理的にこうカチンとなって、化生娘けしょうむすめらがきばく。加えて『無断むだん勝手かってをするな!』、フルートちゃん及び軍勢ぐんぜいたちも、そうと介入かいにゅうしシッチャカメッチャカ。これを平易へいいあらわそう。オール怪獣かいじゅう総進撃そうしんげきと。


 あっちでドカン! こっちでドカン! やり羽根はねがばらまかれ、デーモン兵たちが奮戦ふんせんし、ぎんのコウモリその他がって、光る、回る、巨大クラゲがフィーバー状態。カオス。家々(いえいえ)を壊すながだま、バッタの死骸しがいけて、一般市民が家財かざいかかえ、一族いちぞく郎党ろうとう大脱出だいだっしゅつこう自衛隊じえいたいは助けにこない。そこにかおすスゴイ・キマイラ。帰りてえ。人形娘にんぎょうむすめらの修理済しゅうりずみ、クラキさんぐみ傍観ぼうかん見つけ。るべちべち。



「クラキさん! ちょっと、クラキさーん! 見てないで!? あっちのアレをしずめれますさ! 殺傷さっしょうでなんか有るでしょほらさ!? いい感じに!!!」


「……なによ? まーた巫山戯ふざけ格好かっこうをして。混ざったらアンタ怒るでしょう?」


一緒いっしょで暴れてどーすんですか!? んもー! とりあえず拝見はいけんしますよ!!!」



 しろ裏手うらてすみっこらし、かおしポイントすぐのそば尻尾しっぽ代わりのヘビばし、人形にんぎょう使いをとっつかまえて、さかさまに振ってシャカシャカやる。『こらー! リンになにすんだ!?』ティミーじょうはじめ人形娘にんぎょうむすめけん抗議こうぎりかぶられる。サソリボディーは乗り捨てずみの。んでもいそがしいんであとね! あと! 物理ぶつりさった抗議こうぎあわせ、ダボつくそでからガシャガシャ落ちる。落ちる、一際ひときわデカいやつ。むむ?



「なんですこれ? 達磨ダルマストーブのオバケみたいな。」


変圧へんあつ。」


もらいます! クラキさんはこいつの操作そうさを!」


「は?」



 有無うむを言わさずビレの上に、ぼすん! ほうって一台いちだい一人ひとり短絡たんらくてきとはあとで聞こう。聞くのであと人形にんぎょう乗せて、繰り返すさら自壊じかい増殖ぞうしょく。アンコウボディーを下地したじとし、サルのあたまとタヌキのどうと、トラの手足てあしっぽのヘビに、メガトンウナギを増設ぞうせつどーん!!! なんだかわからないナニカになった。あとはそのまま景気けいきつけ、勢いそのまま爆走ばくそうします。うえうるさいも後々(あとあと)あとよ!!! いそがしいんでっ!!!


 しろ外縁がいえんを回り込む。ゴメンクダサイ! と咆哮ほうこうしつつ、デーモン・緊急きんきゅう野戦やせん対策たいさくしつ。なんかそれっぽいじんもメキョリといって、御免ごめんを勝手に頂きそうろう。……わざとじゃない。そのままぎんのサソリにいのししパンダ、うちの子ばっか! をばしつつ、『わたし』へ回収しクラゲのもとへ。うーん派手はであばれてやがる。羽根はねだのきりだのこおりだの、滅多めった矢鱈やたらながだまじってながだい質量しつりょうも。ホオジロザメが真横まよこに落ちた。



「ノマさまーっ! 申し訳ございません! ノマさま無断むだんの奴らの勝手かって、すぐにせい! ばい! いたしますので!!!」


「いやちょっと!? それの被害ひがいがすげーんですよ! いったんあずけてたぶんを引っ込めなさい!?」


つのきは味方みかたでございませぬっ!!!」


「そーいう問題もんだいじゃねーんです! ともあれちょっとビリっとですよ! クラキさん準備じゅんびよろしいですね!?」


「わたし電撃でんげきっていやなんだけど。」



 サメから飛び出しフルートちゃん。そこに自重じちょう! と叱責しっせき飛ばし、背中に確認かくにん合図あいずを送る。不服ふふくそうだけどたぶんヨシ! 人形にんぎょうむすめらも文句もんくは言う。あるじ仕切しきりにはしたがうごく。がっちこん! ストーブモドキが展開てんかいされた。こいつでウナギの電圧でんあつ下げて、なんかいい感じにすげー制圧せいあつするのだ。たぶん。迅速じんそく確実かくじつ丁寧ていねいに、安全あんぜん安心あんしん非殺傷ひさっしょう。私をしんじる私をしんじろ多分たぶんいけるって明日のために! 緊急発進スクランブル


 いまの私の魚体ぎょたい背中せなか背負せおった感じの増設ぞうせつ部分ぶぶん、ウナギがパリパリ帯電たいでんする。そこにストーブぶっされ、使い方ぁ!? と思いはしつつ、即断そくだん即決そっけつぶったいたり、根本ねもと飛び込んでクラゲにどぱん! 目もくらむくらい火花がった。紫電しでんしたから頭上ずじょうへと、魔王まおうじょうぐらいクソデカクラゲ、太陽をかくかさの部分。そいつが派手はでにビカビカ光り、はじけて散体さんたい滂沱ぼうだあめに、帯電たいでんしたままくにじゅうに。くにじゅうに!?


 あ、みずむすめがのびたなコレ。うえに残っていたものぐみ展開てんかいしていた銀の軍勢(わたしの一部)、まとめて硬直こうちょくし落ちてくる。地上被害ちじょうひがいのそいつの前に、軍勢連中ぐんぜいれんちゅう解体吸収かいたいきゅうしゅうほかみなさんは積み込んで、ひっくり返ったフルートちゃんも。んじゃあそうなんでお邪魔じゃましました! マジでお邪魔じゃまこのうえない。ウナギの脂肪しぼう絶縁ぜつえんたい、それで守っていた背中をのぞき、見渡みわた一帯いったい被害ひがいだい。ぶったおれ。将兵しょうへい市民しみんへだてなく。



「逃げます。」


「逃げんな!?」


「おいてくなぁ!?」



 私のビレのかげあたり、絶縁ぜつえんたいであるウナギの下で、急にひびいた知ってるこえ。オークむすめとゴブリンむすめ、サタナチアじょうやとわれ二人ふたり、どうやらしがみ付いていたらしい。いつの間に。いわく、避難ひなん誘導ゆうどうをしていたと。そしたら爆走ばくそうワタシを見つけ、こんなところで置いてけぼりは、何を言われたかわかったもんじゃ! 走って走って飛び乗った、と。なるほど。ついでに魔将ましょうの女性もいる。ブチ切れてはる。妥当だとうこわ


 『のがすか貴様きさまぁ!!! 陛下へいかとフレルティを何処いずこへやった!!?』そうと私にけんて、『だから連れてってやろうツってんですよぉ!!!』そうといきおいで私も返す。たぶんおそらく邪悪じゃあくじゃない。それも主張しゅちょうみぎ回頭かいとうし、予定よていのとおりの収容しゅうようしゃっけてついでのオマケもっけ、物理ぶつりてきしずほかみなさんの、めるまえ脱兎だっとごとく。逃走とうそう! おびまたまで。おしろ裏側うらがわ回送かいそうキマイラ。



 んで。だばだば地下ちかへ飛び込んで、キティーせい地図ちず参照さんしょうしつつ、戻ってきたからこうなんですよ。かた時間じかんもどる。おわかりですか? ちゃって。もとのおチビにちぢんだ私。ゆるしてくれとはわんけど。わりと皆さんすすまみれだし、フルートちゃんはめそめそするし。よこでドリルもぎゃりんぎゃりん。げ人形。三体さんたいじりじり私にせまる。クラキさんは? める気ねーな。ゆるせとわんといったけど!



「ああぁなんたるっ!!! このフルート吹き! ノマ様の御心みこころかなわぬなどと!!!」


「いや、さっきはまぁ言いましたけど、やれるだけのことはやりましたって。いいからおかお、おげなさい?」


「なー、なー、なー。田舎いなかむすめさぁ。さっき、あとって言ったよなー? リンとボクらに後々(あとあと)あとって、なー? 言ったよなー?」


「いや、さっきはまぁ言いましたけど、やれるだけの事ことはやったというか。ですね? ほら。ですんでそちら物騒とかね? おもらえると出来できればこうね?」


「んじゃー、オマエ。そのまえうえからってきて、ボクらにたってぜさせたヤツ。」


「はい。」


「あっちのぶんは?」


「よかろういやぁぁっ!!!」



 顔面がんめんドリル。以下いかりゃく






「……えー。それではみそぎみましたんで、こっからどうするをそろそろですね? めさせていただきたいとー。はい。そういうの思うんですけどもー。」 



 ホントにな。乱痴気らんちきさわぎの済んだあと、おでこにいた穴をで。円陣えんじんと呼べぬバラバラ程度ていどかおを突き合わせます多様たようせいぎていてまとまり無いが。王国組と人形組、蛮族組と化け物組。さらにその中で所属しょぞくだなんだ、なかしごちゃついてるし。ぐびーっ。木彫きぼりのお湯呑ゆのみべたうえしの岩のそれにく。まぁ、ともあれ実際じっさいアレで、決めるもなんも無いのである。私のはらは決まっているのだ。


 過日かじつ約定やくじょうしたがいまして、このおくとびらさきへ行く。『機械デウス仕掛け(・エクス・)の神(マキーナ)』。遊戯ゆうぎばんであるこの惑星わくせいの、制御せいぎょの為の舞台ぶたい装置そうち。アレだけヤバげな雰囲気ふんいきだして、ハズレですっても無かろうて。つまり、いてるのかないのか。うをさせていただきたいと、えらんで欲しいたくはそちらであった。ゼリグとキティーも同様どうように。いともいなとも私は言えぬ、言うにるだけの根拠こんきょが無い。本音ほんねで言えば、一人はいやだが。



めいじる責任せきにんは取りたくない。できたら自分じぶんで選んで欲しい。そーいうかお、してるわね?」


「……ちょっとかたざまでは?」


此処ここまで引っ張ったならアナタのせいよ。大人おとなしくせきかぶりなさいな。」


「むぬー。」



 半端はんぱに広がるヒトのと、ヒトで無いから一歩いっぽんで、あゆてきた最初の一人ひとり。キティーがそうとのたまった。『ん? んだよ? そーいうハナシ?』いでゼリグも一歩いっぽんで、私のとなりとおってぎる。二人ふたり並んで『こっちがわ』。損得そんとく勘定かんじょう打算ださんき。『ノ、ノマさまー! 私も! 私もっ!』ちょっとおはなにツーンとくるぜ。あ、もちろんフルートちゃんもね。ひたって破顔はがん、にへらとわらう。



「てーかそもそも仕事しごとでさ? ひめさんからかねもらってんだろ。」


「うーん、もーちょっとひたらせてしかったっすねー。」


「へっへっへ。まぁ、べつに冒険ぼうけんきらいじゃない。」



 わしっとあたまをモシモシされる、わるかぁないね、はならす。わるくないんでどうされますと、いてまわってうおつぎたとえば、クラキのじょうちゃんとか。どうします? いってえば? そこの自主性じしゅせい尊重そんちょうで。こんなやりえとるなぁと、優柔不断ゆうじゅうふだんあしんだ。手札てふだ一枚いちまいとしちゃしい。そといとくとめそうだしさ、イラっときたからブッころがした。そういうアレは、なんだ、こまる。



「……なによ? いって言ったらいいでしょう? さっきのキティーのとおりだけれど、こんなところでつかわれて、いてかれるほうが迷惑めいわくなわけ。それがわかったら……。だから、なによ?」


「……え? あ、いえ。なんか意外いがいと……、てってするんだなって。」


「けっこうおちゃとか一緒いっしょにするわよ。」



 いつの間に。それをんですうちに、クラキさんも移動いどうこっちのがわへ。と、くればそれで意思いし決定けってい人形娘にんぎょうむすめらも追随ついづいし、あっかんべェしたりガるる! としたり、すれちがいでめっちゃ威嚇いかくをされる。なかよくしよぜ? やらかすの最近さいきんわたしがさきだが。ともあれこれで『ノマぁ! さっさとワシらにもこえけぇ!』おう、意外いがいなところでこえ。マガグモか。もう関係かんけいを無いを気取きどるかと。



「くかか! 祭壇さいだんのカタキはたせてろうた。ぬしの目的もくてきなにだか知らんが、それに付き合ってり無しよ! ほかのみなにも文句もんくは言わせん。」


「いや。言うぞ? みなみの。わたしはあすこ(あそこ)ちかづきたくない。」


「ゴギー! ぁけたもんがたわけを言うな! わしらがうえ、ぬしらがしたじゃ。ノマもなんぞ言うてやれい!」


「えー。それじゃあですね、とりあえずその……。乳房ちぶさ肋骨ろっこつ仕舞しまってしいと……。」



 っぱなしだし。心臓しんぞうぶっちぎったそのあとが。るといたいと苦言くげんていし、それにたいして『てんじゃねー』。そんなかんじの目を向けつつも、むしむすめがバコンと閉じる。胸郭きょうかくを。いいんかそれで? ヒトのこととかまったく言えんが。さておき『それ』も手打てうちであると、んだか以上いじょう文句もんくでず。きた親分おやぶんみなみ親分おやぶんそろったんならばほかいなやは言わず、あーだこーだとやんやはがる。けるなな。おしずかに。



「ひゅひ、ひぃ。どーもすすまんな。尋常じんじょうならざるがうずいておる。」

「かっ! しかしヤマヂチよぅ。銀色ぎんいろのヤツの手前てまえがあるし、りのままではわれらのはじぞ。」

「アチキはノマさましたがうぞー!!!」

「なぁ? わたし本当ほんとうにイヤなんだが?」

けたんだからしょーがあるまい。ふは! それに、地下ちか遺物いぶつには興味きょうみがある。」

「って、いうかっしょ? そもそもなーんで喧嘩けんかしてっけ?」

「みなみの……。ペグがさいだんこわしたから。」

「わ、ワタシじゃないぞ!? 使つかいサマの……! ほらぁ!? だってワタシじゃないし!?」



 ごちゃごちゃ一遍いっぺんしゃべんでねー! だれがなにってっかわっかんねえし、しかもなんかやっつだし。とりあえずぬのほうってやる。みんなでそこにゴソゴソはいる。『ものくわしいダイダラさん』。スーパー究極完全体きゅうきょくかんぜんたい。だいたい当初とうしょ二倍にばいになった、御家おうち天井てんじょう二階にかいくらい。でけぇ。んじゃー、これでよろしいですね? でっかいと邪魔じゃま退いてをもらい、あとはどうする作戦さくせん会議かいぎ。『ちな。』なにか?



地下ちかだろうと迷宮めいきゅうだろうと、此処ここ大地だいちはうちのシマでね、もの。このいぼれののあるうちは、勝手かってつつしんでもらおうかい。」


「では、魔王まおうザガンさま。勝手かってなこちらとらないように、そのへん許可きょかいただけますと?」


「しらん。役所やくしょいって手続てつづきしな。そーいうのは文官ぶんかんまかせてある。」


地上ちじょうシッチャカメッチャカなんですけども。」


「んじゃー! ダメだね!!!」


「そこをどーにか!?」


「だったらちからくでさらっていきなぁ!!!」



 矍鑠かくしゃくとしたヤギつの老婆ろうばきた蛮族ばんぞくデーモンたちの、頂点ちょうてんった魔王まおうさま。それなおかたがそうおっしゃって、カツン! つええる。……さらわれげい? すげー角度かくどでひんがった。はなしが。蛮族ばんぞく組ののこりの五人ごにん、おじょうさんズにもくばせする。もとじょうさんはこうおっしゃるが、そこらへん正味しょうみ実際じっさいどうよ? サタナチアじょうくびり、やとわれ二名にめいかおわせて、魔将ましょうねえさんはあたまかかえ。最後さいご一名いちめいすっくとまえに。


 要塞ようさい守将しゅしょうフレルティじょう。おまごさんである。



「おい、銀色ぎんいろ。いかなお祖母ばあさまとて、勝手かって裁量さいりょう許可きょかせん。だから貴様きさまらがせきうえで、『勝手かって』をしろと。そう言外げんがいおっしゃられるのだ。」


「それって後々(あとあと)こっちが不利ふりでは?」


「それもねらいだ。」


「おのれタヌキめ。」



 おまごさん。ツカツカあるいてヒソヒソをする。『ダイダラさん』をすげー警戒けいかいしつつ。しかしこっちもキティーの手前てまえ、あっさり迂闊うかつでハイとは言えぬ。政治(かけひき)というヤツはむずかしいのだ。こっちはいのち恩人おんじんですよ? それに戦力せんりょく一目瞭然いちもくりょうぜん。おわかりか? それをつたえてとヒソヒソかえし、おまごさんのがツカツカもどる。お祖母ばあちゃんのとこでヒソヒソでん本音ほんね建前たてまえおもてき。政治かけひきというヤツは面倒めんどうなのだ。



「はん! ガキみたいなことおいでないよ! それはそれ、これはこれ!」


正論せいろんパンチやめてください。」



 カツン! つえ一緒いっしょにまたえた。ええいごわいばあさんだな! こっちもあまりぐずぐず出来できず、いそがねばならん事情じじょうがあるのに! 具体ぐたいてきには『ダイダラさん』、それとティミーじょうたち人形にんぎょう組が、なんかめんどくせーならぶっころそうぜ! そんなかんじでゆらゆらしとる。事実じじつそうだがひとでなし。またもなんやかめだすまえで、最後さいご一組ひとくみもケリつけたいが。うぬ。くばせる。キティー先生せんせいなんかない?



「まったく……。失礼しつれい! 陛下へいか人族じんぞく、『王国おうこくの』キルエリッヒでございます。」


「あん? つの無しは引っ込んでな。いまは小娘こむすめはお呼びで無いよ。」


「いいえ、いいえ。陛下へいか此度こたびけん、私が一任いちにんをされておりますゆえに。」


「……キサマのいだ? ……みなみつの無しのがねかい。」


御意ぎょいに。」


「……ふん! 面倒めんどうだね。……いいだろう。いいからさっさとさらっていきな。」



 なにがいいのかわからんが。しかし、はなしまとまったようであるらしい。なんかこれって状況じょうきょう変わった? ふむ。そういえば魔王まおうばあちゃん、なんで私らがそもそも来たか、そこの背景はいけいを知らんのか。おまごさんの仕掛しかけた反乱はんらんである。そうと最初さいしょは思ったようだし。よってみなみ王国おうこくかげチラつかせ、人族じんぞく意志いし有りと牽制けんせいする。おばあちゃんは手札てふだを持つが、それをつよくは行使こうしをしづらい。多分たぶんそう。知らんけど。


 んじゃー、これでようやく終わり。人族じんぞく人形にんぎょうもの蛮族ばんぞく意思いし決定けっていぜん完了。いまさらどうこうと文句もんくは出るまい。『お祖母ばあさま! おひとりでなど危険きけんぎます!』『そのとおりです! 陛下へいか! みょう前例ぜんれいこまります!』出てたわ。フレルティじょう魔将ましょう女性じょせい、しかも後者こうしゃ切実せつじつなヤツ。ちなみにサタナチアじょうまわり、自身じしんのそれめでキョロキョロしてる。あ、お友達(フレルティ)がわにくっ付いた。うむ。無難ぶなん



「っち、どいつもこいつも面倒めんどうだね。だったらフレルティ! そこの、辺境へんきょうはくむすめといっしょにな。手前てまえんだ面倒めんどうごとだ、手前てまえ自身じしんでケツくんだよ。」


「ですので陛下へいか! このような前例ぜんれいは……!」


「ウェパル、おまえは後詰ごづめだ。そこのやとわれもん二人ふたりのこす。地上うえつないで、ここに陣地じんち構築こうちくしときな。」


「……しかし!」


二度にどわん。」



 『……御意ぎょいに。』こちらにも、しぼすようなこえわずかにとどいた。こえーなばあさん。将来しょうらいうちのおひめさんもこうなりそうだ。まぁ、さっきのヒソヒソを思ってみるに、まごのほうはみだったようではあるが。なおお友達(サタナチア)は後ろに立って、『え? 私も?』ってキョロキョロ継続けいぞく点数てんすうかせぎにはなるだろし。魔王まおうのおきは恐悦至極きょうえつしごく。そうと思っといてまえいといて。な? 衛生上えいせいじょうで、精神せいしんとかの。


 んじゃー、です。んじゃー、これで今度こんどこそ! さきわり! みんなの配置はいち全完了ぜんかんりょう! あとは、おにが出るかじゃが出るか。戦闘せんとう要員よういんは多めにいるし、いざ! があったならいてもらおう。わたしのこしてしんがりに。ですんですみやか撤収てっしゅうよう後詰ごづめるのは私も同意どうい。死んだら死ぬヒトの安全あんぜんとかね? バルバラ嬢(オークむすめ)リーナ嬢(ゴブリンむすめ)、それから魔将ましょうウェパル(デーモン)さん。そのへんいい感じでお願いします。



「よろしくなー、魔将ましょうサマ。ついでに領主りょうしゅサマのけんたのんでいいか? うちのさぁ、くちきとか。」


「なんだコイツら。」


「なんでもる、なんでもう、マイドドーモ! リーナゴブリン商会しょうかい予定よていです。うへへ、姉御あねごぉ。地上うえ復興ふっこう資材しざい調達ちょうたつ、ベンキョーをさせていただきまっせ。」


「なんだコイツら!?」



 そんじゃヨロシクお願いします。まかせていいんかちょい不安ふあんだが。まえく。恐々(こわごわ)見る。いよいよとうとう此処ここまで来たが、そうと大人おとなしく『らせて』くれるか? ったらったであとこわい。らなきゃらんであとこわい。やとわれのツライところである。『機械デウス仕掛け(・エクス・)の神(マキーナ)』かー……。げき強引ごういんで終わらせる、演出えんしゅつの為の舞台ぶたい装置そうちてんじて、それはご都合つごう主義しゅぎ。……だれ都合つごう? かぶりった。


 仕様しようなし。えて、くちにも出すまいて。とまれ(ともあれ)くのと決まったもので、やるならさっさで終わらせましょか。だってくのと決めたのだから。のっしのっしとまえに出る。魔王まおうばあちゃんの手を持ちグイと。『では、無礼ぶれいをさせていただきます。』『エスコートの作法さほうっておらん。』『さらうの立て付けはまもりましょうよ。』かまわずるグイグイグイ。一歩いっぽあしを踏み出すごとの、俗世ぞくせとおざける奇妙きみょう感覚かんかく



 ……から、『ころちる』のほうが近いかな。



 それじゃあこれから団子だんごになって、ともにころがってまいりましょう。デーモンおじょうさんお二人ふたりぐみも、おばあちゃんに付いておっかなびっくり。ゼリグとキティーとフルートちゃん、人形にんぎょう化け物蛮族(ばんぞく)ぐみと、あと私。総勢そうぜい二十名の団子だんごである。コッチに来てから長くはないが、大勢おおぜい出会ったもんだなと。だからなー。やっぱりなー。……ほろびにつながらぬ平和へいわしいな。気分よく、私がのうのうとめしための。


 ぞろぞろ一団いちだんが動き出す。のこ三人さんにんに手なんて振って、先頭せんとうに立ったゼリグのほうへ。おばあちゃんの御手おてはもうよいね? うしろ、おまごさんのそっちへあずけた。りのえずはくだんもん、そこの不穏ふおんまでは知ったるもの。すいすいとみなを追い抜いてゆき、ちょうどキティーの真横まよこに付いて、ふと、思い出すアレを話題わだいげる。地上ちじょう部分ぶぶん暫定ざんてい墳墓ふんぼ。そこに立っていた碑文ひぶんのこと。めたよね? 故人こじんは、なんて?






「……ああ、アレね? たったみじか一文いちぶんだけだし、べつに、面白おもしろいようなものじゃあ無かったわよ? ……そう。面白おもしろいようなものじゃあ、ね……。」






『ここから始まりここで終わります。』






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