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異世界転移のバツバツさん  作者: カボチャ
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いつか、あったかもしれない分かれ道

「おー。晴れましたねー、旦那。行楽日和。っていうにはまぁ、変ですが? 炊き出しですし。」


「おう、おかげでこっちゃあ大迷惑よ、っと。おーらノマちゃん鍋追加だ。そっちの釜戸まで運んでくんな。」


「へーい。」



 ぐつぐつでっかいお鍋を前に、ぐるぐるこんこんかき混ぜる。そこへ新たなお鍋が足され、ひょいっと抱えて回れを右に、煮炊きの台へと載っけてドスン。高さは私の身長ほど、腹の周りは二倍もあって、中身はたっぷり麦の粥。あとは脂身と豆も少々入り、塩漬けのそれで味が付く。左様。これぞつい先日に発案された、ご飯で労働力爆釣計画。題して世知辛みの計の一手であるのだ。世知辛え。


 美味しい話には裏がある。裏の道とは蛇の道であり、よって蛇に頼るのが一番良い。と、いうことで呼ばれたサソリの旦那、いまや王女殿下の傘下の一つ、国営裏組織の頭領でござい。王国の闇は深い。次いで救貧の蛇として教会が、箔付けの蛇として貴族が入り、既に結構な大所帯。しかも指揮系統がバラバラであり、鍋もあっちこっちに乱立である。いやまぁね、あって困るもんじゃあ無いけどよもさ。


 そんなガマとナメクジ不在のさなか、教会組を仕切るピンクのアレ。聞くに主体は神殿騎士、そういう団のお方なはずが、何故だか古巣でぶいぶいである。団長さんの目は死んでるけども。一方の貴族組は侯爵家、その若き跡継ぎルミアン君で、こっちはこっちでカッチカチ。メイドのマリベル嬢監督の下、お付きの猫耳ちゃん方もわちゃわちゃとして、光景が実に微笑ましい。ただし進まない作業を除く。



「ひのふのみぃよ。うーっし、まぁこんなもんか。んじゃあノマちゃん。次はあっち、貴族の若様のとこ行ってやんな。こっちは適当にやっとくからよ。」


「はあ。そりゃあまぁ構いませんが、宜しいので? 横の連携とかそういうの。みんな好き勝手にもう動いてますが。」


「コネを作るにゃ目が多い。あてが無えならめんどくせーよ、お偉いさんとの付き合いなんて。あとアレだ、前にぶっ飛ばされた奴が嫌がるんだよ、おめーさんが近くに居るの。」



 言われてひょいと隣を見、焼いた石へ芋を並べるお姉さんが、露骨に嫌そうな顔をぷいっと背けた。彼女の名はウィップさん。以前ぶっ潰したお勤め先で、男女平等ビンタを受けた一人である。私に。いや、そりゃあまぁ嫌がるか。旦那の言い分実に結構。わかりやすくて傷ついちゃって、地味にお目目もシクシクである。なんつって。まぁ別に良いですけどさ、便利に使われてやろうじゃないの。ふへ。


 それを思い切り顔に出し、ニタっと笑ってお鍋も渡し、うろつくわたくしアチラの側へ。さーてこっちはどないなもんじゃ。見る限りで人手は多く、物資も多くて結構なこと、さすが高位貴族家の太っ腹。が、船頭がおらず遊ばせがちで、段取りにどうも無駄がある。理由は明白ルミアン君、自分で仕切ろうとする頑張り過ぎで、空回っているあたり悲しみなのだ。わざとかな、ありゃあマリベル嬢も。



「あー。ちょいとちょいと、横から失礼。ルミアン様、貴方がやるこっちゃありません。そこにいるマリベルさんに、一言『任せる』とお命じください。」


「え? あの、でも……。任されたのは私ですし、いっぱい先頭で頑張らないと……!」


「だーめーです。貴方には優秀な部下が居ます。貴方の仕事はその部下にね、好きに腕を振るいなさいと、その為の権利を与える事です。で、いいですよねえ? そういう感じで?」



 耳に吹き込んでひそひそと、話してひょいっと頭を離し、指示を待つ側へそう告げる。すれば『ま、宜しいでしょう。』と答えが返り、それでようやくに事が回り出した。あとに残されたのはションボリ顔と、それを取り巻く娘が六。ま、何事も経験です。大切なのは学ぶ姿勢……ってちょいと待ち。なんか一人増えてません? 私とクロネコちゃんズで合わせて五、そこへ新顔がもう一人。



「あ……。その、ありがとうございます。ノマさん。駄目ですね、私ってば。いつまでもこんな事ばっかりで。」


「持論ですが、教えを乞う者はすぐに伸びます。物怖じする者は時間こそかかりますが、それでもいずれは伸びていきます。ゆっくりとね、積み重ねてゆけばいいんですよ。で、あの、ところで……。」


「そーよ! ルミアンっ! アンタ派閥の長なんだから、みっともないとこ見せないでよねっ! でなきゃあ甲斐が無いじゃーないのっ!」



 勝ち気やなー。にゃふにゃふを述べる間を割って、一歩踏み出すは新顔さん。あ、この子アレだわ。いつぞや神学校で会った弓士の子。事の経緯は存ぜぬけども、今ここに居るあたり王太子派か。腰まで靡いた金糸の髪に、つり気味の目が印象的で、それがお隣とまたお似合いさん。で、そんなお隣クロネコちゃんが、態度を不興で買わないものか、そこら辺実にドキドキである。んでも意外と平気そう?



「きっししっ! そうやってさぁ、あんま言ってやんなってよぉ、ショット。若様だって頑張ってんだぜ? お昼も夜も、いっぱいな!」


「……ふん。クロ、貴方のそういう下品なところ、別に嫌いってわけじゃあ無いわ。でも、下賎の分際で言葉が過ぎる。ちょっとくらいそうは思わなくって?」


「へっへ、わりーな。で、ついでにその下賎がよ、今日はお手本見せるっつってんのさっ! ほーらチビ共ならべならべぇ!!! メシが欲しけりゃお行儀よくなっ!」 



 頭上に浅底お鍋を掲げ、お玉で打ち鳴らすガンガンガンっ! それを合図にクロネコちゃん、そして一味の者が広場へ踊り、遠巻きの浮浪児をあぶり出す。子供達なりに秩序は出来て、新顔もそこへ歩みを進め、不意に一瞥私へちくり。あ、おっと失礼。あとで挨拶伺いますね。なおそんな今日の開催地、貧民街に合わぬ大きな広場、かつての処刑場跡であるそうで。いいんすかねちょっとお祓いとかは。


 それでも軽くひらひらと、振ったお手々へゆらゆら尻尾、それで振り返されて繋がるお顔。やぁ、やっぱいい子達ですよねぇ少年よ。それを言外にじりじり寄って、赤面をちょいと下からチラリ、どーですか最近調子のほーは。なんせあの子達ってば奴隷の身分、立ち位置が不安この上ない。よってわたくし心配であり、次いで新顔さんの事も気掛かりである。口堅いんでちぃと教えてたもれ?



「……ふむ。少し、おやつれになりましたか? ルミアン様。」


「あ、あはは。最近ですね、その……、なかなか寝かせて貰えなくって……。」


「あらま。んーまっ! ヤーですわねぇこの子達ってば、ちょっと早いんじゃなくってオホホ!」


「あ、いえ……。妾の子でも、先に産んでおけば有利だってそう、クロネコが……。」


「あー。ちょっと聞きたくなかったっすねー、そーいうの。」



 少年少女達の青春に、心の内で盛ったどんぶり飯が、音を立ててべちょりと倒れた。うーむ惜しい。あの勢いなら余裕で三杯は行けそうだった、ってそうじゃねえ。いかん、話がつい明後日の方へ吹っ飛んだ。いま聞きたいお話はそうじゃあ無くて、もうちっとばかしこう生真面目なのだ。断じて宴をたけなわにする場合じゃない。惜しいけど。



「こほん。ま、それはさて置くとしてあちらの彼女、神学生の方とお見受けします。正直ですね、あの子らとの接点は無さそうですが……。そちらもまぁ、すったもんだを為さったもので?」


「え……、あの、はい。……わかります?」


「そうですねぇ。ちょっと穏便なサマは見えないですね。残念ながら。」



 言って予想ご令嬢と奴隷の娘、妙に気心知った仲の背中を見つつ、その知らぬ馴れ初めを催促する。一見して子分ちゃん、その彼女らの嫉妬も無しに、それが認められるに至る事件や如何に? 私とっても気になります。で、聞き出してみればなんとまこの子、あの子らを学校へ捻じ込んだとか、コネと献金全開で。ちょっと傲慢さが見えますね? ふむん。お気に入りへの箔付けですか。


 それはとりあえず胸へ仕舞うとしても、やはり心配なのはアレやコレ。多分起きるであろう軋轢とかで、案の定つけられた難癖により、殴られて沙汰が起きたらしい。クロネコちゃんが。薄汚い獣人風情、それが偉そうに闊歩をするなと。思い上がりを腑抜けて許す、そんな程度じゃ主人が知れる、対立貴族にそう言われたと。残念ではあるがまぁわかる。拙速に過ぎたな少年よ。


 きっと居合わせたならば怒るだろう。そうと思えるだけの贔屓はあって、しかし今一つ肩を持ち辛い。なんせ非のある側は明白なれど、摩擦を持ち込んだのは少年である。そこら辺でこう釈然が。ともあれ抗議しなければそれでよし。そうで無ければ横紙破り、あげつらったそれで責め立てる。そんなとこかな狙いのほどは、心無い者は居るもんだ。ま、とりあえず顔をお上げなさいな。私が……。



「……で、その、あの……。クロネコってば『じょーとーだゴラァっ! てめぇの玉ぁ引きちぎってその臭っせえ口に捻じ込んでやっからよぉ! 覚悟しとけよボケナスがっ!!!』って、思いっきり彼の股間を蹴り上げて……、そのまま四人がかりでベッコベコに……。」 



 私が労って進ぜましょう。それを言いかけて口をパクリと閉じた、目の前で軽く俯き加減、顔を覆った少年がプルプルする。次いで私もお顔を覆い、両の手で隠すそのまた下で、やはり同じようにしてまたプルプルした。すんません。いや、別に私が悪いんじゃあないですけども、それでもなんか、こう、すんません。今度叱っておきますんで。あぁ、でも何を叱ったら良いんだろうか。過剰防衛?


 なおそんな合間にも時代は進み、一杯を干した欠食児童、その子らが麻袋を手に散ってゆく。聞くにゴミを拾って満杯に、それでお代わりが貰えるそうで、まさに一石二鳥とはよく言ったもの。論功行賞様々である。つらい。みんなせっせと働き者だ、私はアホしかやっていない。つらい。いや、そうは言うてもアレですよ。少年の事はほっとけないし、この場の権威第一位だし、何より偉いお貴族様で……。



「って、いやいやいや! 不味くないですかそれ!? 相手だってたぶん名家の方で、それをそんな仕出かしちゃほら、恨まれてこう復讐とかがっ!?」


「あ、大丈夫です。そのあと彼は引き摺られて行きまして、帰ってきた時には『クロネコサマノオコトバハ スベテニユウセンスル』としか言えない身体にされてました。」


「いまどっか大丈夫な要素ありました?」


「あ、あ、いえ。でも! ご安心ください! そんなクロネコ達の横暴にも、毅然と立ち向かえる方が居てくれたんですっ! 私たち神学生の中にっ!」


「なんか攻められる側変わってません?」



 ツッコミ職人の朝は早い。その日の気温、湿度、その他諸々を加味した上で、適切にツッコまなければならないのだ。いかん、こんなこと考えたってもうしんどいや。うふふ。私もう疲れたよ、パトラッシュ。余と一緒に帰ろう。あの懐かしきコロッセオへ……!



「それがあちらに居らっしゃるショットさん! あ、チェシャー子爵家の方なんですが、彼女ってば凄いんです! 負けずにすんごい大喧嘩して、壁とか椅子とかもうボロボロでっ!」


「はい。」


「それで全員放り出されて! あ、そこはお金で何とかしたんですけれど、それでも収まらなくって決闘だーっ! な、なんて事になっちゃいまして!」


「はい。」


「最後は一対一の殴り合いで! お互い認め合ってお庭の中で! も、桃の木の下で義姉妹の契りをですねっ!」


「あ、すいません。ツッコミどころが渋滞通り越して玉突き起こしましたんで、ちょっと待っていて貰えません?」



 言って目頭ぐにぐに揉んで、美少女チンピラの組へ目を向ける。絶賛お仕事がんばり中。そこへ襲い掛かる刃物の男、ショット嬢に顎を蹴り上げられて、クロネコちゃんの鍋で鮮血が舞う。綺麗にカチ割れて顔面が。次いで子分ちゃん達も動きは早く、ちっちゃなお手々で角材握り、にゃーにゃー集まって咲く立派なお花。おいやべぇ。張飛しか居ねえぞあの桃園。



「ってぇ!? ちょっとアカンですって大変ですよっ!? なんか襲われてます暴漢がうちの子にぃっ!!?」


「ははは! なーに言ってんだノマちゃんよう! 一人助けりゃ十人が来て、十人助けりゃ強盗が来る。教会で教わったとおりじゃねえかっ! おらぁ! やるぞウィップ! こいつら纏めてメシの種だっ!」


「……ッチ。アタシらの顔も知らないような……。ホントにねぇ! 煩わしいったら無いわねまったくっ!!!」



 教えがあまりにも世紀末。しかし食い物と金と女を狙い、事実悪党はどんどこ沸いて、矛先がこちらにも向いてくる。他がやられた隙で自分が得を、こいつら多分にそういう手合いか。とはいえ悪党はお互い様で、質も当方が断然良い。ただの抗争待ったなし。鞭が唸って刃物が舞って、そこへ教会組も割って入り、ゴミ掃除ですねぇ! と確か副団長のトゥイーさんが。どっちが悪だ。悪ってなんだ。


 そうは言っても修羅場は修羅場、固まる少年を保護者へ預け、私もしゃーなしとばかり躍り出る。いや、別に小躍りはしていない。暴力へ付された正当性に、内心昂っていたりとかは多分無い。ともあれゴロツキの掃除は進み、哀れ連中は積み上げられて、なんか用意されていたでっかい檻へ。そして光る白刃が私へも。あ。次いでそれは腕ごと舞って、血すら吹き出ずにボトリと落ちる。お?



「……ふむ。無用であったか? 異邦人。」


「え? あの、いえ。……ありがとうございます?」



 目の前にある犬の面。紅をあしらって模様を描く、それを身につけた女性の影と、手刀の形で振るわれた腕。おおぅなんか強そうな? 気づけば喧騒も仕舞いの際で、傍では子供たちが勝ち鬨をあげ、にゃん! にゃか! にゃーん!!! も雄々しく響く。なんか恥ずかしそうな声が一個混じった。で、そんな影のそのまた後ろ、こわごわと覗く少女が続き、下げた麻袋がズルズルと。あ、ども。


 どうやら孤児たちもお仕事帰り、再度集まってきていたようで、こちらそれを庇ってくれた在野の方か。ありがとうございますかぶいたお方。ぜひともその礼を言わんとば、倒れ伏しのびた男を退けて、己の分も併せ頭を下げる。そして目に付いた袋の異様。あれ? なんか、不味いかアレは? 膨らみは子供一人分。黒ずんだ染みがまだらに出来て、腐敗臭もツンとこちらへ届く。……何処だ? 旦那は。



「よぅっし、全員ぶち込んだかー? んーじゃ鍵だ鍵。おうウィップ、開ける番号いくつだよコレ?」


「ん? あー、それならアレよ。アタシとアンタが別れた日。」


「捨て身で嫌がらせすんのやめてくんねぇ? ……っと、んだよノマちゃん怖っえぇ顔で?」


「……すみません。あちら、教会の組にいる桃色髪の、もこもこしてる法衣のお方。ちょっと呼んできて頂けませんか? 是非とも火急でお願いします。」



 有無を言わせぬ固い声音。返答はあん? としかめた顔で、次いでその原因へ視線が移り、舌打ちと共に踵が返る。すいません手数おかけします。一方の少女は犬面の足、縋りつくそこで身じろぎもせず、対して私は惑いゆらゆらと。何と言って言葉をかける? 迂闊で傷つける真似は控えるべきか? ああ、そういえばおまけで見知った顔だ。酒場で出くわした夜鷹の子。……っち。今一つ頭が纏まらん。



「……ねぇ。ミィは、何処に捨てたらいい?」



 一瞬大きく目を見開き、それを細く細く引き絞りながら、唇の端を強く噛む。そうこうするうちに気配が寄って、ポンと私の頭へ手が乗ったのち、待ち人はひょいと姿を見せた。桃色の髪の私の馴染み、言わずとも訳はわかるらしい。その彼女、キティーが更にそこから歩みを寄せて、受け取って開く口の中。私からは窺えない。袋は人の陰に隠れて見えず、しかし見たいとは思えなかった。



「……お友達かしら? 貴方の。」


「……わかんない。ミィは乱暴だったから。でも、機嫌のいい時はお話をしてくれた。遠い遠い、南のお話。」


「……そう。……悲しい?」


「……うん。」


「……そう。じゃあ、捨てるなんて言わないであげて? 貴方もどうか、祈ってあげて頂戴ね。」



 声の調子が優しく響き、滑る指先に合わせ光が舞う。私や旦那、少年に使用人、鍋と角材を担ぎ上げる子供たち。演舞はそれら視線を等しく集め、やがて舞い散ってお空へ溶けた。沈痛な、あるいは不思議なものを見たとはしゃぐ声。そこかしこでそれが小さく響き、少女の瞳からは涙が落ちる。あの輝きが魂なのか、それとも演出に過ぎないのかはわからない。しかし願わくば、どうか次の生では健やかに。


 ……実に、耳当たりのよいお美辞である。体裁というものを大切にした、善くあろうとする麗句である。しかしそんなお題目の後ろに隠れ、私の陰はうそぶくのだ。『別に私は悪くない。』『自業自得だ。』『せっかく施してやろうとしたのに。』否定をしたいが否定は出来ぬ、紛れもない己の声。それが顔へ出てはいないだろうか? 知らずそこへ手の平を置き、恥を嫌ってそぅっと隠す。


 ああ、駄目だな。これでは『人から悪く見られてしまう。』気づけば死臭は何処かへ去って、再びに場へ活気が戻り、孤児たちに老人の声音が混じる。騒ぎが過ぎるのを待っていたか? これもまた年の功か。そうして伏せること幾ばくか。恥を恥だと厭えるうちが、まだしもに花である。己をそうと正当化して、ようやっと醜さを飲み下す頃。



 私を指して異邦人と呼んだ、犬面を被る女の姿。それはもう、何処にも無かった。






ちょっとずつシナリオを進めていきます。


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