その1:早退と総体って変換間違えますよね。
後書き参照
「こちらスネーク、こちらスネーク。ただいまターゲットが教師に体調不良を訴え、教室を後にしていった模様。追跡に移ります」
無線、もとい筆箱を机に置く。いや、一人芝居とか言わないでくださいまじで。傷つきます。
おもむろに立ち上がり教師のもとへ。ここは敢えて堂々と行くべきだろう。
一歩一歩、地面をつかむようにしてしっかりと歩んでいく。あぁ、やめてくれ。そんな尊敬の眼差しで見つめないでくれクラスメイトたちよ。照れるじゃないか。
迫りくるような机たちの圧迫をすり抜け、俺は今ここ、教壇の上に!
「どうした?」
教師がおれに旅立つ準備は出来たかと尋ねている。あんたの心配はいらねぇぜ、せんこう。こちとらもう準備はばっちしきっかし整っとるんでい!
「気分が悪いんで早退していいですか?」
口は正直だった。
「具体的にどこが悪いんだ?」
そんなものは決まってる。
「頭です」
「頭が痛いのか?」
「いいえ。頭が悪いんです。だから早退させてください」
「そうか頭がイタいのか……。よし、わかった。ならこのまま教室で勉強していくとその症状は治るから、そうしなさい」
「ありがとうございます、先生」
よし、何も不備はない。俺は迷わず扉の方へ90度回転し、
「おい、席へ戻れと……」
走ってみた!
「…………」
荷物忘れた!
勢いよく振り返る。そこには潰れたガノン城が……ではなく、そこには教師の魔の手が!どうする俺!
「先生、こんな話を知っていますか?」
「知らん」
「まだ何も話してないのに! 先生……恐ろしい子……」
そうこうしてる間に教師の手が俺の腕を掴みにかかって……え?これ何のフラグっすか?ガチホモはちょっと無理っすよ、俺。
「先生の変態!」
「は? 何を言ってるんだおまえは」
「アイヌ語ではないと思います」
「試しにヒスワリ語を喋ってみろ」
「YO! センセイ! オレ! サヨナラ!」
回れ右でダッシュ。寸でのところでホーミングアームを回避し、廊下へ。階段を模索し、発見。そこまでの最短ルートをわずか0コンマ1秒で計算し、主に経験に従い直線ダッシュ。
「へぶしっ」
こけた。
だがこんなことで終わらないことに定評のあるおれだ。あきらめません、死ぬまでは。
体が地面につくぎりぎりで両腕で体を支え、衝撃を回避。そのままダッシュ。名付けてG走法。やべ、まぶしいくらいにかっこいい。
そのままの勢いで階段を降り、あることに気づく。
「荷物忘れた!」
まぁいいか。明日また来るし。
敢えて体勢は変えずにそのまま走る。すると下駄箱付近に、一瞬忘れかけていたターゲットを発見。おれは迷わず低姿勢で突っ込んでいき、スカートの中に文字通り頭を突っ込んだ。
「ザッツホワイトぐはぁ」
和訳:白ですぐはぁ。
なんかすごく硬くて大きいもので、上から下に叩き落された。え、ちょっとその表現卑猥じゃないですか? やべ、興奮してきた。はぁはぁ。
「あんたねぇ、マゾなのは分かったから叩かれてはぁはぁすんのやめなさいよ、って、痛ぅ……」
おれを見下ろす少女、椎名美紅は左手でこめかみを押さえている。ではお留守になっている右手には何を持っているのかというと……あ、だめだこれ。形容できねぇ。まさかあれで叩かれたわけがないよな。うんうん。とりあえずモザイク入れとこう。
苦しそうに眉間に皺を寄せて佇む美紅が心配になったので、G走法は解除。半無重力装置を起動したみたいに立ち上がり、きめポーズ。
「…………」
きめポーズ。
「…………」
きめ……。
「ごめん、ちょっと今つきあってらんない。本気で頭痛いの」
……。いや、別にショック受けたりしてないし。ただ美紅のことが心配になってみたりしただけだし。本当だし。
「それより、なんであんたがここにいるのよ」
「頭悪いから早退してきた」
「はぁ? あんた馬鹿じゃないの?」
「はい!」
「いや、ごめん。聞いたあたしが馬鹿だったわ」
言ってから美紅はまたこめかみを押さえた。頭が痛いらしいが、二日酔いだろうか?まったく、まだ学生の身分のくせしてけしからん。ここは一つ教鞭を垂れてやらねば。
「美紅」
「何よ」
「お酒は二十歳から!」
さわやか笑顔で、ぐっと親指を立ててみる。
「知ってるわよ」
一蹴された。
「あぁ、もうあんたのせいで余計頭が痛くなったじゃない。そんなへんてこな理由で休んでないで、ちゃんと授業受けてきなさいよ」
「いや、だってお前いねぇと学校つまんねぇし」
今はあれだけど、普段はこれほどいじって楽しいやつはいないからなぁ。
「え?えぇえ!?ちょっ、ちょちょちょちょっ、それって、えうぅ、あーもう。まさかそうくるとは思わなかったわ……」
なんか顔赤らめて俯きがちに髪の毛いじり始めた。ついでにもじもじしている。でも右手にあるのは形容不可物質。モザイクがゆらめいてます。
「え、えぇっと。あぁもう、あんたのせいで熱っぽくなってきちゃったじゃない。責任取りなさいよ責任」
「具体的にどうすりゃいいの?」
そのR指定物質の処理法は。
「あ、あんたもちょうど帰るみたいだし、お、おお送っていきなさいよ!」
「OK! じゃぁちょっとポリバケツ持ってくるから待ってて!」
「どこに送りつける気よ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今横を歩いている女子、椎名美紅は、おれの幼稚園からの幼馴染である。
「出会ったのはおれが白馬の王子様として、触手にあれこれやられてて『いやぁん』とか言ってる美紅を助けに来たときでごはぁ」
「変な想像と妄想と、妄想の回想してんじゃないわよ」
殴られました。R指定はいつの間にか消えてました。非常にうれしかったです、まる。
えぇっと、当時の美紅はこんな暴力キャラではなく、知らない人と会うと自分の親の背中に隠れちゃうような人見知りの激しい子で、もちろんおれに対しても最初は怖がっていた。
「だけどおれのハイパーなカリスマ性に気づいた美紅は『あたしをお嫁さんに……いいえ、もう下僕にしてください!』とおれになすりついてきてげぼうぇっ」
「あんたはさっきから何を言ってるの?ぶつぶつぶつぶつ、気持ち悪いわよ。そんなんだから女の子にもてないのよ」
ちょ、今肋骨がミシっとかミシガンとかミシシッピとかそういう音しましたけど? あぁ、聞こえてないですかそうですか。
で、そんな美紅とおれがどうして仲良くなったのかというと、
「ちょっと、伊織」
「ひぃっ」
鉄拳か!? 次は鉄拳が飛んでくるのか!? あ、ちなみにおれ、伊織って言います。ちゃんと男の子です。
「何びびってんのよ。それよりさ、ちょっとそこ寄ってかない?」
どうやら鉄拳到来の危機は去ったようなので、美紅の指差した先を見てみると、
「ファミレス? おまえ頭は大丈夫なのかよ?」
「なに? そんなに死にたいの?」
「へ? いや、いやいやいや。そうじゃくて、頭が痛いのは平気なのかよってこと。早く家に帰った方がいいんじゃないのか?」
「あぁ、そういうこと。えっと、ちょっと喉が渇いてきたなぁって思ってね」
美紅の表情が柔らかくなると同時に、いつのまにか美紅の右手の周りにでき始めていた靄が消える。あ、あぶねぇ……。つうかそんな能力あったんですか……。
「あ、あぁなるほど。OK。行こうぜ。でもほんとうに大丈夫か?」
「大丈夫よ」
よし、そうと決まれば、美紅の機嫌が悪くならないうちにファミレスへ。この道は死地へと続く路地裏があることが判明したので、早く、早く。多少美紅の頭が心配ではあるが。もちろん他意はない。
……っと、あれ?どこまで思い出してたんだっけ? あぁくそ。忘れちまった。
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
ファミレスのドアを開けると店員の声がおれらを迎えた。
「三名様です」
「三名様……ですか?」
「はい。今ここにいるじゃないですか。どうしたんですか? 見えないんですか? ばかなんですか?」
「え、えぇっと……」
「すいません、こいつどうしようもなくアホで友達少なくて、いつも脳内で友達精製してるんですけど、それが幻覚として見えちゃったみたいなんです」
「あ、あぁそうでしたか。そ、それではお席へどうぞ」
あ、これは間違いなくフラグ折れたね。うん。
さて、まぁよく思い出せないから、とにかく小さいころの美紅はかわいかったってことで、
「ロリっ娘最っこぉぉぉぉぅ!」
と叫んでみた。
「…………」
「…………」
がしっ。
だだっ。
ちゃりんちゃりん。
「ま、またのご来店を……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁ、はぁ。んもうっ、あんた馬鹿じゃないの!」
「はい!」
「あぁぁ……。なんか意識が飛びそうだわ、わたし」
ふらふらっとよろめく美紅。酔拳か? 酔拳なのか? よし、それならおれも対抗して。
「うぃー、ひっく。ととととっ、よっと」
酔拳、はじめました。参考はバーチャファ○ターより。
「あぁ、もうファミレスはいいわ……。なんかいますぐ家に帰りたい気分だし。帰るわよ」
「うぃー」
「あんた何してんの?」
「ん? これからラウンド1、ファイッ! じゃないの?」
「はぁ……」
あれ? ちょっと、美紅さん? ため息ついていきなり歩き出してどうしたんすか? ちょっ、いつもより歩くの早くないっすか? ちょっとー。
「うぃー、ひっく」
「いいかげんにやめなさいよ!」
一瞬だけ振り返ったと思ったら、また俊足歩行始めました美紅さん。止まる気はない模様。
まぁとにかく、
「おいてかないでレレレのレー」
美紅が家で休む気になってくれたので良しとしようか。
どうも初めまして。ロリコンです。間違えました。ろりらです。
蜻蛉さんに「ギャグとツンデレ書け」って言われたんで書いてみました。
今受験生なんで更新速度は遅いですが、これからも読んでいただければ幸いです。
あ、近所に受験生がいたら励ましてやってください。
「こないだ散歩してたら水溜りがあって、すべって転んで財布落としたんだよね♪」って。
評価や、感想などいただけるととてもうれしいです。ぜひお願いします。
それではまた次回で。