第4話『ノエル、出番です』
小説を書くネタの素を探すために街に出た僕とペトラ。やはり知識は後々必要とのことで観察に入るのだが、突如王城が爆発。逃げ惑う住民達の光景が目の当たりに。一方の僕は呑気に野次馬予備軍となり、逃げる方向と逆に、王城へと嫌がるペトラを押しながら歩いていくのだった。
「自ら厄災に飛び込むバカなんていないよ、普通?!」
「確かに、最初こそ僕は危険を回避して君から離れた」
「何でよ?!」
「しかし、考え直したのさ。僕は小説作家だ。いや、訂正。小説家の卵さ。訂正ーー」
「小説書きたいだけのノベルオタクでしょ!」
「そう、ノベルオタク。そこで一つ、良い小説とはどう書けばいいのか?」
「さっき言ったように、身近に存在する素を拾い集めることでーーまさか……」
「その通り! 爆発した王城にだって素はある! いざ出陣!」
「いやぁああああああああ!」
王城前、一度来たこともあり、おおよそ分かっていたが、城門が閉まりきっていた。爆発による敵襲を考えれば当然のことではあったが、つい好奇心が先に行ってしまった。
しかしながら、異世界にも野次馬というものがやはりいるらしい。城門前には僕と同様、野次馬たちが屯している。爆発は城内で、城の周りは城壁が囲っているため、どんな状況なのかは不明。
「無意味でしたね」
「そんなことはないさ。身近に素は存在するって言ったのは君だよ。こうしてる今も、情報は流れ流れてくるものさ」
この騒動が爆発テロによるものならば、犯人は野次馬に紛れてこの状況を楽しんでいるに違いない。
「何してる?」
「あ、ノエルさん!」
制服姿のノエルがいつの間にか背後に。その何でもそうと言うわけではないが、空想世界のキャラクターという者はなぜ背後から登場したがるのだろうか。
「何って見ての通り野次馬ーーゴフッ?!」
ノエルの無慈悲の腹パンが僕を襲う。
「付いてきて」
「どこへ?」
「城内。ペトラはお留守番」
「了解です!」
なぜペトラじゃなくて僕なのか。弟子だからだろうか。
ノエルは僕に一本の刃を渡した。サバイバルナイフだろうか? 護身刀としてはありがたいのだけれど、僕的には長刀の方が嬉しいんだよね。
そんな不服申し立ての意思が伝わってしまったのか、謎の腹パンが入る。
「行くよ」
「は、はぃ……」
しかし、城門が塞がれている今、どこから入るつもりなのか。
ひとまずはノエルについていく。ノエルが悠々と歩く先は壁。高さはざっと十数メートル。指を引っ掛けて登れそうな溝はなし。魔法や身体強化で跳躍するなら僕には無理な話なのだが。
「ノエル、どうやって城内へーー」
腰にぶら下げているレイピアを引き抜くノエル。
「ノ、ノエルー……」
悠々と歩んでいたノエルの足に力がかかったのを確認したその時には既に、壁との間合いを詰めていたノエル。レイピアによる居合切りが壁を貫き、人一人分ほどの穴を壁に作り出した!
「行くよ」
至って当然のように城壁を壊して、平然とした無表情で侵入宣言をするノエル。野次馬たちがざわめいているのを無視して城内へ。
「ノエル、あの爆発は一体……」
「昨日のアーテル捜索任務で右腕を切り落とした、その逆恨みで王城に爆弾を投擲されたようです」
爆発テロは間違いじゃなかったらしい。城内へ入れたことで状況把握ができるようになった。爆発地点は王城東側二階の一室。ノエルと僕はその爆発地点へと捜索へ。異世界ファンタジーを書くはずなのに、推理小説の要素を拾い集めようとしている気がしてならない。
屋内への扉は閉ざされていた。ノエルが躊躇なくレイピアで強行突破する様は見ているこちらが清々しい。というか、ノエル本人がテロ犯に見えるんだが、それは黙っておかないと腹パンされかねないので。
玄関口、人の気配はなく異様な静けさが辺りを包み込んでいる。荒らされている形跡もなく、爆破テロは単なる憂さ晴らしであって、何も盗まれてないのなら良かったのかもしれない。
長ったらしい廊下も警戒しながら進むものの、一向に敵らしい姿もなく通過する。そして例の爆破された一室前にやってきた。扉が木っ端微塵になって廊下に散らばり、爆炎による焦げ跡ができている。壁に張り付くように隠れ、横目で部屋の確認をした。
直後、ノエルがこちらへと飛び退いた。勢い余って僕とぶつかってしまい、ノエルが僕にのしかかる形で倒れてしまった。まるでお決まりだったかのようなシチュエーションについ、顔が赤くなってしまう。そうか、こういうハプニングも小説に入れていいのかと考えていたら、小銃の連射音が響き、先程ノエルがいた位置を一掃した!
「アーテル?!」
「早く立て」
どこにそんな力があるのか、片手で僕を引き起こして、逃げ道側の廊下へぶん投げた。
「見てて」
「大丈夫?!」
「日常茶飯事だから」
「しねぇえええっ、ノエル!」
絶叫と共に一人の人間が小銃を構えたまま、部屋から飛び出してきた!