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第2話『何か、弟子に就いた』

 ただ普通にゲームをしただけ。

 小説執筆とは関係ないけど、普通にゲームをプレイしただけなのに、数分でヒロイン死亡。敵負傷。主人公逮捕。

 理不尽極まりない小説ジェネレーター。こんなもので小説など書けるのだろうか? ネタとしては悪くないが、主人公がスタートから犯罪者って、ここから同展開していくのだろうか?


 帝国巡回軍のノエルという女性に腕を掴まれて連行されたのは町の中心部に位置する城塞。無駄に巨大な石門をくぐって中へ。


「あの、何かしました?」

「……」


 えぇっ?! 無視?! 圧倒的無視! 真横から陰キャのボソボイスを受けておきながら、平然とした無表情で無視を気取りますか?

 わけも分からず、ただなすがまま進んでゆき城内へ。広間のような場所に連れてこられた。一番奥に分かりやすい、まさにこれが帝王だと言わんばかりのオーラを流す一人の人間。王座に座り、肘をついているその様は、小説に絶対入れたくないキャラの一人である。そうだ、こういう憎たらしい偉そうな貴人みたいなキャラを小説にねじ込ませたら嫌でも敵キャラにできそうだ。


「そいつは何だ、ノエル?」


 低く重みのある声。ただの一言に威圧力を持たせてくる忌々しい帝王だ。


「……剣騎」

「ほぅ……お前が自分から弟子を取るとは……男よ、名は?」


 それより先に、弟子について反論させてもらっても宜しくて?


「……僕は、その、名乗る程の者ではない」


 格好つけたが、その通りである。そしてなぜだか、ノエルに腹パンを入れられて撃沈した。


「まぁ、いい。弟子なのだから優しく扱ってやれ、ノエル」

「いやです」


 嫌なのかいっ! っていうか、何で君は反論してるんだ。

 そのままノエルに引っ張られながら、城をあとに。連行されたのは早とちりであったが、弟子とは一体何のことだろうか? いつから僕はノエルの弟子になったんだろう。

 しかし、無駄口を叩くと、


「ノエル、僕みたいな地味キャラなんか弟子にしていいのかい? 関係性はないけどノエルも地味キャラ扱いされかねなーーぐふぁっ?!」


 無慈悲な腹パンが僕を襲う。今更なのだが、痛覚もしっかり再現されているのに驚愕を覚える。


 ノエルに引っ張られ、街中を歩くその姿は人々の注目の的となっていた。ノエルの無表情は相変わらず。次はどこへ連れてくつもりなのかと聞きたいところではあるのだが、無駄口を叩いたことになって腹パンを喰らうのは勘弁だ。なので黙ってついていくことに。

 街中を縦断し、ついに街の外へ。自然豊かで街とは違い、人けもなく閑散としている。時折、動物らしき生き物を目にするが、その姿は現実世界には存在しなさそうな幻想的な生き物ばかりだった。異世界設定だから動物も架空生物なのか。

 進むにつれ森は深くなり、昼間と言うのに夜間のように真っ暗になり始めたが、ノエルは進むことをやめず、ついには獣道までかき分けてまで歩みをやめない。一体この先に何があるのだろうか? そんなことを思っていると暗闇の中にポツリと光が一つ。


「あれは?」

「私の家」

「え?」


 ノエルの家に着いたようだ。しかしなぜ?


「ひょっとして泊めてくれる感じですか?」

「……」




 泊めてくれた! しかもお風呂も入れてくれて、ご飯も作ってくれた!


「いいの?! こんなにおもてなしされて」

「別に」


 良く分からないが良いらしい。やったー! いただきまーすっ!

 卓上に並べられた豪華な食事たち。こんなに美味しそうな食べ物を見たのは初めてと言えるくらいに美味しそうであった。ゲームという事を忘れて食事にかぶりつく。


「っ?! ごはっ!?」


 こんなに不味い飯を食べたのは初めてだった。

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