プロローグ
『異世界ファンタジーが書きたい!』
その一言が始まりだった。
前提で僕は小説家である。語弊だ、小説家になろうとしている一人の学生である。良くいる小説作家まがいの引きこもり、そう断言しておこう。いや、語弊だ。正しくは引きこもるに引きこもれない、半真面目人間である。
今の説明下手が語彙力のなさを垣間見せている。初心ものに多々ある『表現の暴力』があらわとなった。
特に『語弊』という言葉を覚えたからとすぐ使いたがる習性にあり。
そんな語彙力皆無の少年は、異世界ファンタジーが書きたかったのである。
そんな僕に対してか、最近、物書きに優しい、ある商品が出た。それが『小説ジェネレーター』だ。読んで字のごとく、小説が生成できるシステムのようだが、『こんな物で執筆活動なんて無粋だ! 邪道だ!』なんて言う人もいるだろう。だが、遠慮なく使わせてもらう。なぜなら僕はーー
語彙力がない!
才能もない!
ネタすら思いつかない!
という惨状だからだ。
それでも異世界ファンタジー小説が書きたい! そんなところに良い物がやってきたのである。
平日昼間の閑暇に、学校そっちのけでオンラインゲームに勤しむことができた初引きこもりに、頼んでいた物資が届いた。開封し、取り出すと、それはまた想像とはそぐわない形をしていた。てっきり、ジェネレーターとまで言うのならばPCなどの機械関連のものと想像していたが、それは被り物のように見える。
確かに異世界ファンタジーにおいてVRMMOなるものはあるが、まさか小説を書くためだけの機械にそこまで手の込んだデザインをしてるとは。むしろこんなの執筆するのに邪魔じゃないかと不安な面、厨二心を刺激される。
親が侵入し創作活動を中断されないように、籠城の本拠地である寝室に鍵をかける。
さて、ぶっつけ本番! いよいよ『小説ジェネレーター』を起動し、執筆活動に入る。
ベッドに寝転がり、機械を被ってスイッチを入れる。すると、突如真上に一文が表示された。
『ジャンルを選んでください』
なるほど、小説ジャンルか。会社のロゴとかタイトル画面なしに始まったから驚いたが、完全にゲームではなく、あくまで手助けしてくれる機械のようだ。
僕はファンタジーを洗濯、目線の動きや脳波でスクロールやクリックができるらしい。ここ最近、技術力が向上してきてるからね。
ひと通りの設定を終えると、画面が白背景にフェードインし、確実に別世界の、それこそRPGで良く目にする街並みが出現した! 実に良くできたVRMMOだ。
いや、違くないか? 確かに、異世界ファンタジー小説が執筆したいとは言ったものの、VRMMOでRPGするのはまた別では? そう思いつつも、こんな綺麗なグラフィックとリアルな音声で包み込まれた世界を見てしまったら、つい街を徘徊したくなってしまうものだ。
執筆とはまた別ではあるが『小説ジェネレーター』の織り成す異世界を拝見してみることに。まあ、少なからずネタとしては使えそうだからね。そういう意味ではナイスフォロー!
まるで本当にそこにいるかのような感覚。五感全てが操られているのだろうか。歩く感覚、雑踏のざわめき、この料理店から香る匂いまでもが本物のような気がする。
期待と好奇心だけが膨張していき、僕の冒険心を駆り立てていた。
もしこれがゲーム、という規格で進められるものならば、僕は主人公役。つまりヒロインやライバル、モンスターなども出現してもおかしくはない! 中毒化の恐れあり。
ありふれた情報量を整理しきれず興奮に陥っている僕。
「あの……」
街中の雑音に隠れそうなほど綺麗で澄んだ女性の声が後からした気がしたので、待ってましたとばかりに期待の眼差しで振り返ると、そこには小さな少女の姿があった。
ヒロイン登場というわけか。ここは一つカッコよく決めなければ。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん? このお兄さんに用かな? 今は一人? 両親は近くにいないのかな? せっかくだから一緒にどこか行くかい?」
確実に不審者だった。ここにきて引きこもりの発想が裏に出てしまったらしい。コミュ症で普段から両親とも一言話すかどうか、学校では口を開くタイミングのないボッチ。そんな僕が見ず知らずの人間に初対面で話しかけられれば、このように不審者になりえてしまう。もっと良い表現があっただろうけど、語彙力のなさがダメ押しした結果と言える。
少女は訝しげな眼差しを僕へ向ける。小さいくせに、頭に乗せているゴーグルは数段大きい、大人サイズのものをつけている。くせっ毛らしくボサボサの茶髪をしていた。
「お嬢ちゃんはやめて。私はペトラ!」
「出会って早々、個人情報を自ら漏洩するマゾヒストに出会ったのは初めてだよ」
「出会って早々、私みたいな幼女に対して奇行に走るぺドフィリアは初めてですよ」
「ぺドフィリアではない! あくまでロリコンのお兄さんとしてやっている!」
「自称ロリコンが一番痛いですよね」
ペドだのロリだのは置いておき、この少女の登場には伏線が置かれているはずだろう。小説上にて、ごく普通の少年が主人公となりヒロインに出会う場合、ほとんどの確率でヒロイン原因の物語で展開される。つまり、この少女が地味キャラの僕なんかに話しかける機会があるとしたら、この後に降りかかる災難や困難への伏線が待ち受けているものだ。
それならば、答えは一つ。
「先程の奇行は全て撤回させてもらうよ。悪いが君に関わってる時間はない、さらばだ」
「え?! ちょっ、どういう意味よ?!」
何も無かったかのようにその場を去ることに。奇行に走ったぺドフィリアとは比べ物にならない紳士たる堂々とした態度で、少女を背後に街並みを臨む。
危険は避けるべき。わざわざ危険に身を置く馬鹿など普通はいない。
悠々と人混みを分けながら歩いていく。
「……こっちへ」
その声は耳元から。驚き左右を見回すが、雑踏に紛れ、声の主は見当たらず。先程のペトラという名前の少女かと考えるが、とっくに人混みに流され消えてしまっている。
なぜだろうか、危険だと思ったのだがつい、声の主に会いたくなってしまった。恐らくの方角へと歩いていき、人の視線から外れて路地へ。そこに一人の人間が壁にもたれかかって待っていた。
「よぉ」
「あ、どーも」
声質的に女性。自分より身長が高いので少し嫌気がさす。フードを被って顔を隠した女性は、関わると危険とサイレンが頭の中で鳴っていた。
逃げる意思はある。しかし、不思議と留まってしまう。違う、語弊だ。それは霊的現象である、金縛りに近い。……それも違う、語弊である。これは吸い込まれる感覚だ。重力で引っ張られる感じ。足を動かそうにも重くて動かず。
「見つけた! 何で逃げるの?!」
背後の声はペトラ。
「邪魔者か、死ね」
目の前の女性の右手から、何か黒いモヤのようなものが飛翔し、真横を通過。背後にいるペトラにヒットし、
「……っ!?」
何かお湯のようなものが自分の体にかかる感覚。水しぶきと破裂の音が響き、数秒後に人の悲鳴がした。
「……は?」
背中に謎の温もり。赤い液体が腕を包んでいるのを確認した。それはどこからどう見ても……。
「ぁあ、あぁ?! っぅあああああああっ?!」
どうも、こんにちわ!
k本的にコミュ症ボッチで非リアな小説作家、星野夜です!
この小説に登場する主人公は、僕自身とは一切関係なく、そのキャラは僕自身ではありません。
恐らく僕似であろうとも、それは僕じゃないはず。
そんなこんなで始まりました。
予定は未定で繰り広げられる物語!
自由気ままに投稿します。