男子高校生にノーブラは反則だぜ!!~夏休み2日目-2~
「ふう、彰ってやっぱりシェフなの? 朝からこんな贅沢なご飯を食べれるなんて」
キッチンテーブルに並んでいるのは、いたって普通のものばかりだ。ベーコン付きの目玉焼きにトマトとレタスのサラダ、そしてみそ汁とご飯、味を変えるために海苔を並べているだけだ。じいちゃんはもう一品ほど多かったが、さすがに毎月支給される生活費ではこの程度が限界である。
「これぐらいは普通だ。ご飯はタイマーしておけば勝手に炊けるし、目玉焼きだってそんな難しいもんじゃない」
「勝手に炊けるですって!? それどんな術なわけ!!」
どうも小夜狐の世界はアナログチックなようであるが、それに関して言及しても仕方ないだろう。
「それよりも、洗濯物はどうなってるんだよ? 呑気に食ってたけど、ちゃんとできてるんだろうな?」
「そろそろ汚れは落とせて、水を絞ってるんじゃないかしら。彰がくれた洗剤のおかげで、みるみるうちに汚れが取れてさ。あれにもびっくりさせられたわよ」
「へいへい、そりゃようござんした。で、洗濯物ができた後は干せるのか?」
「バカにしないでよ。あの長い棒みたいなものに、服を置いてけばいいでしょ」
「置くんじゃない、干すんだ」
「干す? 押すじゃなくて」
「洗濯ものを押してどうなるんだよ!」
ため息を付いた後、俺は小夜狐の首元をつかんで庭へ向かう。引きずられる形で彼女は庭に連行され、そこに置いてある物干し竿の前にやってくる。タライの方を見ると管狐がすでに洗濯を終えており、脱水もしっかりされていた。
丁寧に洗濯されている上に水が切られているところを見ると、小夜狐よりも管狐のほうが優秀に思えてならない。
「すげえ……。完璧だぞ、これ」
「そりゃ~ あたしの管狐ですもの。これぐらいできて当然」
「お前たちの世界では、管狐が家政婦かメイドでもやっているのか? とてもお前が教えたとはー」
「あ~きらくん。朝から粉まみれになる~?」
ボッと小夜狐の周りから青い狐火が現れる。全力で否定すると、笑顔のまま彼女は炎をひっこめた。
「ま、今飼っている管狐は家族にもらったキツネちゃんたちだからね。元々家の仕事もしていたのよ」
「やっぱ仕込まれてたんじゃねえかよ」
「いいでしょ、こうして役立ったんだから!! ほら、洗濯物はどうやって干せばいいわけ?」
人から何かを教えてもらう態度ではないが、俺はそれを口にすることなく洗濯を干すイロハを教えていく。ハンガーや洗濯バサミにいちいちリアクションする姿は小さい子どものようだが、自分の動作を見てすぐに真似されるのも悪いものじゃない。
「……よし、これで全部だな」
小夜狐の飲み込みが早いこともあって、洗濯ものはあっという間に夏の空元に広がった。太陽光をいっぱいに浴びる光景には清々しさを感じるものの、どうしても引っかかるものがあった。引っかかるというよりも、目を滑らしたくなる物体がつられている。
「どうしたのよ、彰。さっきからチラチラ洗濯ものを見て」
「いや……。なんでもねえよ」
「わかった、あたしのパンツが気になって仕方ないんでしょ。何だかんだ言って、彰さんもけっこう好きね」
「あ、あほか!」
確かに気になっているのはパンツだった。黒色のレースパンツは高校生の俺には刺激的で、どうしても目に入ってしまう。しかし、気になっているのはデザインが理由ではない。そのパンツと対になっているはずのものがない。それが余計にパンツへ意識を集中させている。
「小夜狐、お前あれは付けてないのか?」
「うん? あれって?」
俺は「あれ」の名称を言いたくて仕方ない。だが、小夜狐があえて「あれ」の名前を言わないだけで、自分にその単語を言わせようとしている可能性だってある。グイグイ系の彼女ならば、むしろそう考えるほうがいいかもしれない。だが、文明の利器を知らなければ、もしかすれば……。
「小夜狐、これはお前が知らないことを前提として言っておくぞ。パンツを履いてるんならば、その……。普通人間の女性というものは、胸にもパンツと同じような下着を付けるのが一般的であってだな」
「ああ、もしかしてブラジャーのこと?」
「お前! やっぱ知ってて」
「人間になったとき、衣類はサービスとしてセットでもらったのよ。でもあれ、着けることに意味を見いだせないし、着けると窮屈だから止めたの」
その瞬間、俺の全身に稲妻が走る。もし、小夜狐のいうことはすべて事実であれば、彼女は昨日からずっと着けていない。あの制服姿のときも、ベッドで添い寝されて胸をつかんだときも、小夜狐はノーブラ。そして今、目の前にいる彼女はTシャツ一枚という無防備な格好でいる。
「ふう。それにしても日本の夏って熱いのねえ」
まるでタイミングでも合わせたように、小夜狐はTシャツをめくって腹をチラリと見せようとする。その服がひらりと舞い上がり、見えてはいけない2つの丘陵が見えそうになる。俺はすぐに彼女の服の裾をつかみ、腹より上が見えないように隠した。
「なにすんのよ~」
「何もいうな。すぐにブラジャーを着けてこい」
「はあ? あれ熱いんだよ~」
「そんなことどうでもいいから、俺の大事な何かを守りたければ、すぐに着けてきてくれ!!」
小夜狐と生活していると、確実に自分の何かがマヒしていくだろう。俺はそんな気持ちでいっぱいだった。




