そんなにラブコメにしたいかお前ら!! ~夏休み1日目-11~
それ気になる、と那美が2つ目のスイカに手をばしながら相槌を打つ。先ほどの会話の流れで、祖父に不思議な力について聞きに来た、と言い出すのかと彰は思った。しかし、小夜狐は急に頬を赤らめることで、彼は何かになぞられたように悪寒が走る。
「それは……。この家に嫁ぐためにー」
かぷっ、と彰は小夜狐の口を手でふさぐ。優作と那美は何してんのよ、とブーブー言い出すが防がないわけにはいかない。いきなり目の前の女の子が「彰の家に嫁にきた」なんて言い出せば、2匹の悪魔にエサを巻くようなものだ。それだけは、絶対に阻止しなければ!
「いや~。実は彼女、普段は海外で生活しててさ。海外と日本を行ったり来たりしてて、俺と同じく親が忙しいみたいでさあ、小さい頃この家に預けられることも多くて。
で、夏休みで久々にこっち遊びに来た際、じいさんにも会いたくなったらしく、うちに寄ってくれたんだよ。そんなタイミングでお前らも来るんだから、ほんとタイミングがいいよなあ」
すさまじくバッドタイミングだがな、と心で突っ込みながら小夜狐の設定をツラツラと作り出していく。小夜狐は彰の手を離して話し出そうとするも、それより先に那美が答える。
「へえ。すごいタイミングで来たわけだ私。流石はイベントマスターの勘」
「ああ、もうそりゃ絶妙というか狙い定めたようなタイミングで来てくれたよ」
「ねえ彰。小夜狐ちゃんはいつまでこっちに?」
「そうだな……。まあ、しばらくはいるかな」
やったね、と言いながら那美が小夜狐に抱き着く。とりあえず急場を凌いだことで、彰は額の汗を拭う。しかし、余計な説明をした彼に対し、妖狐のするどい目つきが全身に突き刺さり続けた。
その一方、那美は小夜狐の顔に頬をスリスリと摺り寄せる。恥ずかしさとイライラを内包した瞳は彰を捉え、今にも火の玉が出てきそうである。
「いや、あきら君。僕が聞きたいのはね、君と小夜狐の関係だよ」
にやり、と優作は口角を上げながら、最も避けたい質問をストライクゾーンど真ん中に投げ込んでくる。今までまったく気にしていない素振りを見せていた那美も、優作の質問をきっかけに恋愛モードのスイッチが入る。彼女は自分が抱きしめていた小夜狐に対し、優作と同じ質問を投げかける。
「よく聞いてくれたわ、那美さん。あたしと彰はね、実は昔からのー」
「幼馴染なんだ!」
彰は小夜狐の声をかき消すように、大きな声で叫んだ。しばらくの間、蝉の声だけが4人を包み込むも、しだいに優作は悔しそうな顔に変わっていく。
「おまえ、こんなにかわいい幼馴染がいるなんて……。やっぱラブコメの主人公だな、お前!」
「うるせえ、やりたきゃお前がやれ!」
「なにを言うんだね。さっきは事故とか言っていたクセに、幼馴染と夏休みに再会するなんて、それだけで映画一本できるじゃないか」
「そんなテンプレ純愛映画、俺は求めてねえ!」
そんなこと言わないの、と那美は小夜狐から離れて彰に詰め寄る。
「小夜狐ちゃん、源造おじいちゃんに会いたいって言ってたけど。本当は彰に会いにきたんじゃないの?」
「んなっ!? へたなフラグ発言するな、おい!」
「わかってないなあ、彰は。小夜狐ちゃんの最大限の照れ隠しを理解してあげないなんて。これはラブコメなんかじゃないわ、本気よ」
那美の加勢に、小夜狐は昨日の「かくれんぼ」のときと同じように目を光らせる。咄嗟に小夜狐はしなを作り、目に涙を溜めると共に手を祈るように握り合わせ、彼女のほうを向く。
「そうなの、那美さん。あたし、どうしても彰さんに会いたくて……。1人でここまで来たの」
「1人で海外から来るなんて! ただの幼馴染じゃできないわよね」
ガシッ、と那美は小夜狐の手を思い切り握る。
「小夜狐ちゃん、あなたって芯の強い人なのね」
「いいえ、那美さんのお陰であたし! 彰さんの前で本心を吐露することができたわ。あたし1人だったら、言うのが怖くて、本当の気持ちなんて……」
「那美さん、なんて固い言い方やめて。今日から那美でいいわよ」
「那美」
「小夜狐ちゃん」
彼女たちのバックに花びらが舞い上がり、少女漫画で運命の出会いを果たした親友という場面のように見えてくる。那美は小夜狐のことを半分思いやる中、もう半分は面白がっているのが伝わってくる。そして、小夜狐も彼女や優作にばれないように、彰にニヤリといやらしい顔を見せつけてくる。
<既成事実、作成か~んりょ~>
「お、おまええええ!」
また頭に届いてきた声に、つい彰はツッコミを入れてしまう。しかし、そんな彼の態度を優作と那美は相手にせず、彰との馴れ初めや出会いについて小夜狐に事情聴取をはじめていた。




