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小夜狐さんはいろいろズレている~最凶にして最愛の許嫁?~  作者: 藤咲 流
俺の初恋を「かくれんぼ」に託せというのか
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俺たちは決闘者(デュエリスト)!! ~夏休み前日-10~

  愛玩動物であるネコとは思えない、鋭い視線が彰に向かって飛んでくる。その視線に彰は喉を鳴らしながら唾を飲んだ。



「やっぱ、アクセサリーを贈ってきた女に現を抜かしとるんか!」



 まるで発情期に猫のように毛を逆立てている。ここでひるんでいけない、と思い彰は冷静を装って反論する。



「……小夜狐、もう俺たちに言葉はいらないだろ」



「は?」



「俺たちはお互いの主張を掛け、『かくれんぼ』という名の決闘を行うのだ! いわば俺たちは、自分たちの命よりも重いものを掛けて戦う決闘者! そんな俺たちに、これ以上の言葉は不要だと思わないか?」



 はっきり言ってやったぞ俺、と彰はフッと息を付きながら決めて見せる。しかし、彰流の美学(という名のごまかし)はまったく伝わっておらず、ミケネコになった小夜狐がジト目で見つめてくる。



「な、なんだよ」



「いや……。人間界に降りて久々にさっぶ!! って思ったから」



「うるさい! ほれ、それより早く隠れたらどうだ?」



 それ以上の視線に耐えられず、彰はそそくさと庭につながる大きなベランダ窓を開放する。小夜狐もそれ以上は言及せず、余裕しゃくしゃくの表情を浮かべてピョンと庭に出て行った。



「……あっ。あいつから隠れた合図、どうやって受け取ればいいだ?」



<妖狐を舐めるな、妖狐を>



「おわっ! なんだこれ、頭に直接声が」



<あたしぐらいの妖狐ならば、テレパシーなんてお手の物よ>



「なんというご都合設定……」



<そういうこと言うの自重~。さ、あたしのほうはもう良いわよ。いつでも探しにきなさい、鬼さん>



 小夜狐の声を合図に彰はつっかけを履いて庭に降り立つ。周りを見るも、小夜狐が変化したと思しききものは見当たらず、門を出てから家の周りを一周してみる。しかし、そこには人はおろか動物も見当たらず、夕暮れ時の静かな時間だけが流れていた。



「くそ! やっぱりこのゲーム、無理ゲーじゃねえか?」



 ぼやいてみるが、小夜狐がこれに反応しなかった。本物の妖狐ということもあってか、化けている最中に反応するという失態もしでかさないようだ。もう一周しようと玄関から出発しようとすると、やっと小夜狐が反応して見せる。



<勘の悪い人ね。これじゃ面白味がないわ>



「あほ! こんなのノーヒントで見つけられるか!」



<……仕方ない、隠れているのは家の庭先>



 早速玄関から庭に戻ると、そこにはミケネコが佇んでいた。そのミケネコは小夜狐が化けたものに似ており、彰はジリジリ近づいていく。

 猫は不穏な空気を感じたのか、フーと声を荒げあと一歩でも踏み込んでみろ、と警告するように睨んでくる。彰は前進することを止めず、不敵な笑みを浮かべながらターゲットとの距離を測る。



「ここで!!」



 意を決して彰がミケネコに飛び付くも、あっけなく回避されてしまう。そのまま猫は逃げてしまい、追いかけようとすると小夜狐の声が頭上から響いてくる。



「まったく。こんな調子じゃ明日の朝になっても、あたしを見つけられそうにないわね」



 キョロキョロ辺りを見ると、声は庭に植えてある木のほうから届いてくる。そこには1匹のカラスが枝に止まっており、彰のことを見下ろしていた。目線が合うと、まるで彰のことをバカにするようにアホウ、と泣いて見せる。



「どう、声までカラスの通りでしょ」



 そのカラスは、はっきりと小夜狐の声でしゃべっている。驚きを隠せない彰の前で、声高らかにカラスとなった小夜狐は笑って見せた。



「お前、そんなところに!」



「つまらないわあ。これじゃ、あたしの圧勝で終わりそうね」



「そもそも、この勝負はお前に分があるだろ!」



「お互い命よりも重いものを掛けて戦う決闘者、なんでしょ? 泣き言なんて聞きたくないわ」



 ふふん、と彰に過去の姿でも見せつけるように、今度は彼の声真似をして見せる小夜狐。こいつ、完全におちょくってやがる……。

 腹に据えかねるものを覚えた彰は木に登り、その勢いのままカラスに飛び付く。しかし、カラスとなった小夜狐はひらりと空に舞い上がり、重力に逆らえない彰は木から転落してしまう。



「どう、ここでギブしてもよくってよ?」



 落下してうつ伏せ状態になっている彰の前にカラスが降り立つ。その後、ポンという音と共に煙が身体を包んだと思うと、煙は一瞬で晴れて制服を着た小夜狐の姿が現れる。その顔は余裕そのもので、勝利を確信しているように見える。



「だれが、ギブなんてするかよ」



「ふうん……。でも、このまま勝負してもねえ」



 確かに、このまま続けていても小夜狐を見つけられそうにない。すでに日も暮れ始めており、タイムリミットも徐々に迫りつつあった。



 ーくそ、このまま俺の初恋も燃え尽きちまうのか。



「あきらくん?」



 諦めかけていたそのとき、彰の耳に亜季の声が届いてくる。ついに幻聴が聞こえるまで追い込まれたか、と目を伏して彼女の姿を瞼の裏で眺めようとする。



「あきらくん、なにこんなところで寝てるのよ!」



 確かに聞こえた声に、彰はガバッと上半身を起こす。そこには白いワンピースを着ている亜季が、彰を見下ろす形で立っていた。

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