第三話 海軍軍令部長永野修身
話し合いから戻った山本連合艦隊司令長官と宇垣参謀長は、今回の会議に参加しなかった他の参謀に声をかけた。
「これから我々は、彼らの旗艦やまとに行く。これは、決定事項だ。反対するものはいないな。我々が恐れていいてはどうする、いいか司令官たるもの常に先頭に立たねばならない。
連合艦隊司令部の参謀の職についている者は、全員いく。艦隊の指揮は、艦長の矢野に任せる。我々が戻ってくるまで絶対に暴走しないように押さえておけ。
全艦に無線で伝えろ、彼らに絶対に攻撃することが無いようしろと。
それと砲術長、至急陸戦隊50人を用意しろ。我々と共に来てもらうぞ。」
山本の命令によって編制された陸戦隊50人は、急遽やまと行きが決定した。連合艦隊司令部の面々と陸戦隊は、派遣された大鷲三機に分かれ、やまとへ向かうべく乗り込んだ。
山本は、大鷲についている窓から海上自衛隊の艦船を見て、驚ろいていた。素晴らしく整った戦列を組ながら航行する艦船を見たのだ。
そうこうする内に大鷲は、旗艦やまとの後部甲板に着艦した。
改めて見るとやまとは大きかったのだ。先程見せられた写真と同じはずだが、その大きさを体感してみると大きく、感激をした。それは、なんとも言葉で表せないほどだった。
海上自衛隊の旗艦やまとを案内してもらう連合艦隊艦隊司令部の面々は驚きっぱなしだった。
やまとは、我々の戦艦長門よりも約100mも長い事、更にこのやまとは艦の艦首から8割が戦艦部分であり残りの後ろには甲板がついている事などなど、多くの事にみな驚いた。
連合艦隊司令部の面々は、彼らから歴史についての説明を受けた。多くの者は、この事が信じられなかった。日本が負けるとは信じていなかったのだ。だが、皆話を聞けば聞くほど納得せざるを得なくなってしまった。皆本当はこの戦争が厳しいものだとわかっているのだから。
この話を聞いた我々連合艦隊司令部の皆は、連合国に負けないようにする為、彼らの力を借りる為、未来の為、積極的に動こうと決心したのだった。
その頃、一人先に長門に山本長官は、軍令部総長の永野修身海軍大将に暗号を打電した。その内容は、『彼らは、敵ではない。この海域に来てみれば分かる。97式艦上攻撃機で来てください。横須賀に行きそこから護衛の零戦と共に来てください。これは、日本の為です。道中は、鳳翔飛行機の零戦に案内させます。できるだけ早く来てください!』というとものだった。
海軍軍令部でこの文章を受け取った永野は、山本五十六にしてはおかしな文面だと思った。ただ、山本五十六が慌てる程の事態だという事を理解した。そして、日本を攻めてきた艦隊というのは間違いだと言うことも。本来、軍令部総長である永野自ら確認しに現場に出る事は無いが、永野はこの事態に興味を持ち、自ら行く事を決めた。
永野は、横須賀の航空隊に連絡をして97式攻撃機と護衛の零戦用意させ、空母に着艦させる準備をさせ、待機させた。そして、永野は慌てて横須賀に向かった。
永野は、横須賀の飛行場から97式艦上攻撃機に乗り、紀伊半島起き100㎞の海上にいる戦艦長門を目指していると、鳳翔飛行隊の零戦が飛んできた。その機体は、護衛の零戦の前に出てバンクした。しばらく謎の機体について行くと、あるところで高度を下げ始めた。
そうすると、大多数の艦が見えてきた。
案内をしていた機体は、バンクして去っていき、空母に着艦した。
その時、長門の山本五十六長官から無線による連絡があった。
「永野軍令部長、山本です。ここにいる全ての艦船が彼らの船だそうですよ。そして、提案なのですが、彼らの空母に着艦してみませんか。着艦できるという事は鳳翔の戦闘機隊によって確認積みです。
先程、軍令部長を案内した機が着艦した空母に着艦してください。
その空母は、さぬきと言う名前だそうです。
空母さぬきのライトが点灯しているところが滑走路だそうです。先に護衛の零戦から着艦してみてください。彼らの素晴らしい船に着艦して、私と同じように、彼らと話してほしいですね。」
そう山本から言われた永野は、自らの搭乗している97式艦攻の操縦手に着艦を命じ、着艦させた。
何事も起こらずに無事に着艦した97式艦上攻撃機から降りてきた永野軍令部長を迎えたのは、原子力空母さぬきの艦長である瀬戸颯大三等海将だ。彼は、降りてきた永野に言った。
「ようこそ、原子力空母さぬきへ。私は、このさぬきの艦長の瀬戸颯大一等海将です。
あなたには、ここから我々のやまとに向かってもらいます。そこにいる山本五十六長官と話し合いをしてもらう事になっています。
この船に居ても仕方ないので無いので、残りの零戦が着艦次第、そのパイロットと共に向かってください。
機体は、我々が責任を持って預かります。」
「分かった。機体についてはお願いしよう。
で、どうやってその船まで行くのかね。カッターが有るようには見えなかったが。」
「船では、無くあそこで待機している大鷲で移動します。現在零戦が着艦をしているため、何かあると困るので滑走路こら避けています。これから行く船は、あそこに見える一番大きい船でこの艦隊の旗艦やまとです。」
「そうか、あの旗艦の名は、やまとと言うのか。
このさぬきもだが、どの船も素晴らしいな。」
「ありがとうございます軍令部長。丁度、最後の零戦の着艦が終わったみたいですね。全機無事に着艦出来て良かったです。では、あそこに大鷲に乗り込んでください。」
「さっき教えてもらった旗艦は、空母に見えないがね。」
「問題ありません。ともかく山本長官と内の川上一等海将がお待ちになっています。急ぎましょう。」
「了解した。では、行こう。」
そう言って大鷲に乗った。永野と飛んできた零戦の操縦手を乗せた大鷲は、やまとへと飛んでいった。
やまとに着いた永野は、長門から戻ってきた山本と話し合いをした。その話し合いで永野は、驚きつつも今自分が体感した大鷲や降りたった空母さぬきの性能を考えると納得せざるを得なかった。さらに山本か、見せられたとても綺麗なカラー写真や、この歴史の資料などもあったのだから。
その後、川上、神田、長野、山本とも会談をした。これからどうするのかを話し合った。
ここで、二つ問題があった。一つは開戦に賛成した海軍大臣の嶋田繁太郎を説得すること。もう一つは陸軍だ。主戦論を唱える陸軍をどうやって説得するかという難問があったのだ。
永野は、至急大臣と陸軍と話さねばと思った。戦争が始まる前に止めなければいけないからだ。長野は、一度長門行き、暗号で至急嶋田繁太郎海軍大臣と東条英機首相と会談が行えないかと送った。
そして、未来から来た自衛隊についての事を話すから直ぐに話せるように横須賀に来るように伝えた。そして、七時間後には、横須賀に戻るからとも伝えた。
永野と山本は、早く戻るため第一水雷戦隊の巡洋艦阿武隈に移り、護衛第六駆逐隊の四隻と共に横須賀へ向かった。それに自衛隊は、あたご型護衛艦あしがらとつくば型護衛艦みたけを共に行動させた。
海軍大臣嶋田繁太郎と東条首相を信じこませる為に派遣したのだ。もしも信じなかった場合には、各艦に搭載されているヘリコプターでこのやまとまで連れてくるようにと、山本長官とも話し合い決められているのだ。
日本海軍の5隻と海上自衛隊の2隻は、横須賀を目指し艦隊から先行し先を急いぐのだった。