その8 困った!そんな時は? ――助けて、JAえも~ん!
今回は、切っても切れないあいだから。
常日頃なにかとお世話になっている『JAさん』のお話をしてみましょう。
お米だけじゃなくて、農業にたずさわっている方なら少なからず関わりのあるJAさん。
他には『農協さん』と親しみをこめて呼ばれてもいますね。
『ちょきんぎょ』の名称で一気に全国区になりましたJAさんですが、本来は農業に関わる人が集まって営んでいる『協同組合』なんですね。
ちょっと、間違えている方も多いのではないかと思うのですが、JAさんはいわゆる『親方日の丸』、つまり『公務員さん』ではなくて、『組合員さん』であり『職員さん』なのです、念のため。
(『組合員さん』って聞いて、『どこの組の兄さんで?』と返してくれる方が個人的に好きです)
田舎町なら必ずひとつはあるこのJAさん(もしくは農協さん)ですが、本当に、農家にとってはなくてはならない存在です。
まずは、お米の種もみから育苗用の土から、蓮花の種から、肥料から、何から何まで仕入れてくれるのです。
もちろん、戸別訪問して「いついつまでに申し込みして下さい」と封筒で手渡されるのですよ。
この申し込みが期日にせまってもされない場合は、おうちに電話を入れてくれます。
「あの~……去年と同じだけのお申し込みで大丈夫ですか?」
と、たいてい遠慮がちに。
我が家では旦那さんが田んぼの管理を全てしているので、電話を受け取るとあわてて旦那さんに連絡を入れることになります。
JAさんもお仕事というか商売だから当然だろう、という意見もあるでしょうけれど、別に申し込みがなくてもJAさんは損にも得にもならないよね、という申し込み内容であっても「あの~……」とお電話を入れてくれます。
となり近所ところか町内ほぼ100%の割合で兼業農家の地域ですので、忙しさにまぎれて申し込みを忘れがちになってしまう世帯も多いのでしょうけれど、こういうカバーをしてくださるのは、我が地域だけなのでしょうか?
さて、収穫したお米は『ライスセンター』というところに運びこまれます。
大昔だったら、『ほにお』とか『はぜかけ』とか呼ばれていたお米の乾燥作業を、ここで行ってもらうのです。
ちなみに、この時にお米が何俵収穫できたのか、そして等級がいくつだったのか、が判定されます。
農家さんたちが『自分たちのお家で食べる分だけ売らずに残しておきたいわ』というお米のことを『保有米』とよんでいます。
私たちの地域では、ライスセンターで乾燥作業を終えたお米はもみ殻をついて外した、いわゆる『玄米』の状態にして、半俵づつのくくりでこの『保有米』を一度に受けとります。
地域によっては、この保有米の定義はまちまちのようです。
実家のあるお隣の市ではお米を四分の1俵ごとに、白米の状態の袋詰めにして、二ヶ月毎に配達してくれます。
他県では、もみ殻のついた『脱穀だけした状態』で保有米を返してくれるところもあるようですね。
旦那さんの知り合いの方でご実家が九州地方の方がいるのですが、この方法で一気に受けとるのだそうです。
しかしどの方法で保有米をもらうのがいいかは、一概にいえません。
玄米や脱穀しただけの状態でもらうと、保管場所に困ります。
昔ながらの大きなお家で米倉があればいいですが、そうでないと何俵も置いておくのはたいへんです。
玄米ですと食べるたびにお米をつきに行く手間があります。
(米ぬかを取る作業のことを『つく』といいます)
ましてや、脱穀だけですとまずは籾がらをはずす、脱稃とい作業をしなくてはなりません。
でも、玄米や脱穀した状態で保存されたお米は劣化が少ないですし、なによりも自分の好きな分つき米で食べられるというメリットがあります。
分つき米とは、一分、三分、五分、七分、精白米、そして現在は無洗米という、お米の米ぬかや胚芽がどれだけ残っているかを表すものです。
分数が上がるにつれて精米度数はあがっていきますが、そのぶん胚芽などに含まれる、ビタミン、ミネラルなどは当然ながら減っていきます。
でも、精白米にちかいほど、見た目には白くつややかなご飯として炊き上がり、舌触りや食感や味の面で精白米のほうが食べやすいという人があっとうてきに多いと思います。
私たちの地方では、JAさんの支店ごとにこのお米をつくための機械が、ドーン! と設置されているので、そろそろ残り少ないね、となったら軽トラックに半俵つんでつきに行きます。
近年はお米をとがなくてもよい、無洗米での配達をうけつけてくれるところもあります。
実家のある地域では、普通精米とこの無洗米で選べるそうです。
しかし白米の状態で配達してもらえると、お米をつきにいく面倒はありませんが、食べきれなかったりするとドンドンとお米がたまっていってしまいます。
それに、白米の状態での配達ですと、米ぬかを差し引いた分しかもらえないのです。
米ぬかはだいたい10%分差し引かれるので、4分の1俵だと本当は15キロのところが13・5キロで受けとるのです。
(正直なはなし、米ぬかって10%もあるのかしらん……って思うのですが……)
しかし近年の農家さんの車庫や土間には、JAさん仕様の巨大お米専用冷蔵庫というものが完備されていたりもするのでした。
お米の保管に最適な10度に保たれた、米袋がきちんとしまえる巨大冷蔵庫…実は、我が家にもあったりします。
でも本当に、きちんと保存管理したお米は味の劣化が少ないのです。
JAさん仕様のお米専用冷蔵庫、たいへんお世話になってます。
JAさんにお世話になっているのは、何もこういうハード面だけではありません。
このあたりは子供がうまれると、JAさんがすっ飛んできます。
そう、学資保険の勧誘です。
別に学資保険に限ったことじゃなくて、生命保険や建物共済、自動車保険などなど、いろいろなソフト面でもお世話になっています。
地域の文化祭などのポスターなどの張り出しとかにも協力していただいてますし、なんと、子供たちの学区の資源回収はJAさんの施設であるライスセンターの駐車場をお借りして行うのが通例となっています。
地区でお葬式があれば、しきびやお花、会場のセッティングまでこなしてくださいます。
もう本当に、『ゆりかごから墓場まで』お世話になってしまっている感じです。
まさに困ったときのドラ〇もんのようなどんとこいな甘えられる存在、それが田舎のJAさんの姿なのでした。
今日もどこかで『助けて! JAさ~ん!』という声があがるや、軽自動車にのってさっそうとかけつけてくれてる組合員の方がいらっしゃるのでしょう。
がんばってください、JAえもん!
頼りにしてます!
脱穀と脱稃について
脱穀だけで籾がらまではずす工程を指すのですが、今回は文字通り、実を穂からはずした状態でお米を受け取っているので、あえて脱穀と脱稃と、より状態を示す表記としました