その10 田んぼにGO!
みなさんのお宅のお子さんが通う小学校でも、4年生か5年生になると、理科の授業でお米を育てたりするのでしょうか?
私の子供たちの通う小学校でも、5年生になるとバケツを田んぼにみたててお米を育てています。
収穫したお米は、もちろん、家庭科や学活の時間に炊いて美味しくいただきます。
これは子供たちも結構楽しみにしている、学校イベントのひとつになっているんですね。
体験型の生涯学習的な授業って最近は多くなったのかな、という勝手な印象をもっていたのですが、よくよく考えてみたら、私が小学校だったころなんて、在籍している子供のうち80%近くが兼業農家さんだった訳です。
正直、やる意味ないですよね……。
田植えだの、稲刈りだの、どころか、親にねだってトラクターに乗って運転しちゃったりしていた子もいたりとかしました。
今はもちろん、そんなことしたらいけませんよ~(いやいや、昔でもだめですっての)。
おおらかな時代だったんですねえ、としか言えませんね。
さて、お米を半年にわたってお世話して育てていく授業にはなしをもどしましょう。
学年によっては、というかハリキリマンな先生に学級担任を受け持ってもらいますと、自ら営農組合さんに田植えやら稲刈り体験をさせてもらえるようにと交渉してきたりもします。
長男の学年はバケツ田んぼだったのですが、真ん中と三番目の娘たちの学年は、田んぼにGO! の担任の先生でした。
バケツ田んぼのお世話は、とにかくひたすら地味です。
田植えした~! という興奮もありませんし、稲刈りだ~! という興奮もやっぱりありません。
息子は田んぼのお手伝いをした方の子なので、田んぼの作業なんか今更やしなあ、というわけで『やってきたで』とも話してくれませんでした、とほほ……。
そういう意味では娘たちの担任の先生が、田んぼにGO! なタイプの方で良かったなあ、と親心としては思います。
ただし、稲を育ててお米になっていく姿を毎日観察できたり、下級生の子たちに『僕たちも大きくなったらお米を育てるんだ…!という、キラキラ尊敬お目々で見てもらえたりという点では、バケツ田んぼに軍配が上がりますが。
営農組合さんというのは、たとえば、田んぼを保有はしているけれど年を取って農作業をするのがしんどくなった、でも後継者の子供たちは他県住まいだし何しろ作業なんてしたことないからやれるわけないし、でも大事な田んぼを手放すもなんだか……という人に代わって、田んぼの作業を請け負ってくれる組合さんのことです。
(営農組合、という呼称はこのあたりだけかもしれません)
もちろん組合ですので、この界隈に田んぼをもつ村の人たちでお金を出資し合っているわけですが、その組合員さんたちが子供たちにも作業のしやすそうな田んぼを、所有者の方に貸してもらえないかと掛け合ってくださるわけです。
田んぼが決まれば、学校側にOKのお返事がきて、〇月〇日に作業をしましょう、という話になります。
ここでもJAさんの苗箱配達さんががんばってくださいます。
田植えの当日は、どろんこ上等! を前提とした服装でのぞみ、暑いさなかですので水筒とタオルももって行きます。
ちょっとした、半日遠足みたいなかんじなりますね。
田植えの日は帰ってくるなり、営農組合のおじさん方のお話きいてちゃんとできたよ! と真ん中の子も三番目の子も、かすかに日に焼けたてっかてかの鼻のあたまとほっぺたで、得意そうに話してくれました。
(お家のお手伝いしてたからわたしが一番上手だったの! という自慢つきでした)
刈り入れも、コンバインのお話とかを聞いてから、ちゃんと鎌をもって手作業で行ったとのことです。
稲の切りくずはアレルギー性の鼻炎や皮膚炎をおこしたりもするので、長袖長ズボンのジャージ姿で挑みます。
三番目の学年みんなで刈り取ったお米は、ライスセンターに通すのではなく、営農組合の大きな機械にかけてもらい、直ぐに食べられるようにしてもらいました。
ハツシモだけじゃなくて、もち米まで一緒に育てていたそうなんですが、なぜだかいっしょに炊きあげてしまったらしく、ご飯食べた時になんかいつもの味と違ってた! と笑いながら話してくれました。
もしかしたら先生は、子供たちにお餅つきも体験させてあげたいと思ってくださって、もち米も頼んでくれたのかもしれないです。
実際に真ん中の子の代は、おもちにして試食会に出してくださったのですよ。
学校に明日、きな粉持って行きたいんだけど、お母さん、ある? って聞かれて、なにをするつもりなのかしらん? といぶかしんだのを思いだしました。
いやあでも、私も食べてみたいですよ、刈り取りしたばかりのお米を炊いて食べるなんて、なんてまあ、ど贅沢なんでしょうか……。
ちなみに、おかずはシンプルイズベストに『塩』のみだったそうです。
うぅむ、分かってらっしゃるじゃないですか、先生!
最近は田舎でも、こうした経験をする機会が減ってきています。
そんな中で、こうした体験型の学校の授業は子供たちも大いに楽しんでくれているようです。
学校の授業だけじゃなくて、地区の公民館が主催してくださっている体験学習でも、サツマイモの苗植えから収穫、トウモロコシの種植えから収穫、もちろん、田植えと稲刈りもあります。
子供たちのお友達のお家でも、田んぼや畑はあっても、おじいちゃんやおばあちゃんがお世話しているからやったことないよ、という子がほとんどです。
いくら機械化が進んだとはいえ、農作業はたいへんできついもの、という意識があるおじいちゃんやおばあちゃん世代の方は、あんまり子供たちを田んぼに近づけないようにしているのかもしれません。
今の子はアレルギーがあって、農薬や肥料でかぶれたり、花粉でかゆくなったりしたらかわいそうだから……という気持ちもあるかもしれないです。
(実際わたしも、農薬と肥料、稲の切りくずなどでアレルギーを出します)
学校の授業で田植えや稲刈りを体験したあと、田んぼをもっているお家の子はみんな『うちにもあるよ!』と自慢しているそうです。
子供たちは『おじいちゃんやおばあちゃんのお米』のことを、意外と大事に、そして誇らしく思っているものなのですね。
大事に守ってきた田んぼの姿を、いまだに舗装されてない田んぼ道のせいでガタガタゆれる軽トラックの窓から、ながめさせてあげる。
そんな体験だけでもさせてあげたらいいんじゃないかな、と思うのでした。




