着いていく先
俺の誠意のこもった──相手がどう思ったかは知らないが、お願いに応じてくれたのはその場のリーダーらしき人物だった。
「わかりました。突然のことで皆さん混乱しています。この場は私、ランカ=フォン=ベーリルが預かります。ムラーノ先生、宜しいですね?」
「……は、はい。お任せします」
「では、そこのタオル一枚の貴方、私に着いてきてください」
先生と呼ばれたその人も戸惑っていた様子で、リーダーらしき人物、ランカと名乗った彼女に頷いて着いていくことにした。
「アトリシアさんも着いてきてください」
「え……あ、はいっ」
俺がランカの後に着き、そしてランカの後ろにアトリシアと呼ばれた近くにいた女子が俺を不審そうにチラチラと見ながら着いていく。
授業中だったからか、途中誰とも会わずにいたが、ランカは迷わず真っ直ぐに『校長室』と表記されたネームプレートがぶら下がる部屋の扉の前まで歩き、扉を二度軽くノックして開けて入る。
「失礼します」
礼儀正しくこなすランカの後に続き、背中を丸め不安がるアトリシアと真っ裸と言ってもいい俺も室内に足を踏み入れる。
「何だ、どうした。突然の来訪者だな」
「すみません。校長と話し合いたい件が緊急に出来てしまい、至急お耳に入れようとこうして訪れました」
「なるほどなるほど。いいだろう、その案件とやらを話してみるがいい」
校長と呼ばれ、偉そうな上から目線の物言いをするその人は、高級感のあるチェアを回しこちらを向く──。
「案件というのも、召喚の授業中にこのケーシャ=アトリシアが召喚をしたところ、ここに居る男が現れました。しかも、タオル一枚の、全裸です」
「なるほどなるほど、それはそれは至急な案件だ。素晴らしく素早い対応だ。さすがだね、ランカ=フォン=ベーリルくん」
感心した様な口振りでチェアから降りこっちへ寄ってくる〝校長〟。
「さ、君達ひとまず座りたまへ」
その人は、小学生と見間違える程の背の低さだった。