召喚したら木製の杖
私立ユーガ魔法専門学校魔法科4時限目実践学召喚の儀をやってみよう!ってことでわたし、ケーシャ=アトリシアは出番になって困っていた。
運動はぽんこつ、頭も軒並み、使える魔法は四大元素の基本だけ。しかも初歩の初歩の初心者級。
そんなわたしがクラスの子達に囲まれ、先生に見守られる中魔法陣に入る。
期待されているかと言うと、されてない。失敗するという意味では……期待されてるんだと思う。
バカにされているのはわかっているし、わたしが何をしたところで褒められることはないから、不本意でイヤなんだけど……本当は。
だけど、やらなければやらないで逃げたって思われて癪だ。
「(わたしだって……やればできるんだから!)」
召喚魔法はこれが初めてだ。
授業は二回目なんだけど、前回は熱が出て学校を休んでしまったから、今回が初の挑戦となる。
「……やってやるんだからっ」
小さく呟き、わたしは杖を持って心の準備をする。
「ではアトリシアさん、始めてください」
先生の合図で呪文を唱える。
「我が身に宿る精霊よ、守護せし者を集わせ我と契約せよ」
魔法陣が光り出し、中央が歪み始める。
「フェー・ファータ・ニンファータ、ティークアエダム・ニュンペータ!」
呪文を読み終わると、一気に光が強くなって辺りを包み込む。
──成功した!
わたしは瞬間的にそう思って手応えを感じ、何が出て来るのか不安と期待を混ぜた瞳を向ける。
だというのに……──!
光が止み出てきたのは期待を裏切り不安を加速させた。
「……嘘」
宝箱開けたら古い文献などに出てきた魔法の杖ではなく、木製で作った不格好な杖だった……そんな気分になった。
だって、そこには……──男の人が居たんですから。