シャワールームから
──世界に俺の居場所なんてない。
熱く高まったシャワーを浴びながら考える。
体中は傷だらけ。背は平均的、顔は中性的で頭はそれほど良くない。
趣味といえば毎日の日課にしている筋肉作りだけ。
学校は行ってはいないが、代わりに裏社会で仕事をこなす。
上の命令なら何でもする。
人捜しにペット探し、賭博・変装・潜入でも……上官に命令さえされればそれが例え──人殺しだったとしても、俺はやってのける。
そういう男に育てられてきた。
親は知らない。物心付いた時には親戚と申し出る人達に盥回しにされてきた。
そのたびに引っ越しと転校を繰り返すことになり、いつからかもはや学校さえ行かなくなって、裏で働く大人達の〝仲間〟として裏社会にいた。
理由はそう──生きるため。そのために何でもやる。死に物狂いで働く、動く。
……だけど、どうして自分の手を汚してまでこんなことをするのだろうか。
生きるため?食べ物を得るため?雨風をしのぐ家がほしいため?
──否。わからない。
何で生きているのか、何のために生きているのか……──わからない。
親の行方も生死も知らず、ただ命令され生きる人生は『生きている』と言えるのだろうか?
頭からかぶっていた熱い水のシャワーを止め、犬のように頭を降り水しぶきを飛ばす。
シャワールームから腰にタオルを巻いて出ると──魔女の様な格好をした観衆の中に、俺がいた。