火傷、ものさし、壺
くくく・・・。今日はなんて清々しい曇り空なんだ。この天気こそ覚醒した我、闇天竜のデビューにふさわしい・・・。
昨日まで普通に生活していた我は、突然の神の神託によって前世の記憶に目覚めさせられた。
生まれ変わった我を見れば浩子やクラスメイトはきっと驚天動地、そして羨望の眼差しを向けるに違いない。今から教室に入るのが楽しみだ・・・。
下駄箱から階段を登り、まるでモーゼのように我のオーラに自然と人が道を作っていく廊下を悠々と通過し、我は教室のドアを開けた。
「諸君!私は帰ってきた!!」
「あ、おはよーゆうちゃん。あれ?その右手包帯ぐるぐるだけどどうしたの?火傷でもした?」
「この右手はだな・・・!封印なのだ・・・!」
「ふーいん?」
「そう・・・!悪しきセイクリッドドラゴンがこの右手に封印されていて、この包帯が解けてしまうと龍が暴れだし、学校を破壊してしまう!」
「・・・。ゆうちゃん大丈夫?」
「そうだな・・・。今はまだフォウルンエンジェルの気配を感じない。この辺りは昨日掃除したし大丈夫だろう」
「今度は何に影響受けたの?」
「・・・。・・・危ない!!まだ残っていたか、フォウルンエンジェル!ここは貴様の居場所ではない!浄化の槍、エクスカリバアアアア!!」
そう言って我は腰のベルト(魔力が上がる)に刺してあったエクスカリバー(ものさし)を窓の外へ勢い良く投げつける。
「フハハハ、これで大丈夫だ。今この学校に結界をはっておいた。フォウルンエンジェルもこれで手出しは出来まい」
「ゆうちゃんそろそろそういう痛いの辞めたほうがいいよ?もう中学二年生にもなるんだから」
「ぐああああああああああ!手が!手がああああ!右手の封印が解けてしまう!!があああ・・・!」
今の戦闘でオーラを消費した我は、右手の封印を保つことが出来なくなってしまった。
封印が弱くなってしまったため、右手の龍が暴れだしてしまった。その暴走を止めることは出来ずに、その腕はぶんぶんと自由に宙を舞う。
ぶんぶん。
ぶんぶん。
ガシャン。
「あっ・・・」
「ゆうちゃん。壺、割っちゃったね」
「はい・・・」
「これに懲りたらヒーローごっこももうやめようね」
「はい・・・」
こうしてセイクリッドドラゴンは二度と現世に姿を現さなくなった。
楽しんでもらえたら何よりです。