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私の告白を聞いた直江君はしばらく目を瞑り、それからゆっくりと開けた。

「質問其の一。最初に俺を意識したのはいつ?」

「は、はいっ、貴方が転入してきたその日に……」

「質問其の二。俺をどんな奴だと思ってる?」

「どうって……その」

「皆は俺のことを、ちょっと変わった奴だと思っているらしい。君はどう?」

「……正直に言うと、普通の人とは違うと思う。上手く言えないけど、何て言うか……次元が違うっていうか」

「俺は何も出来ないよ。アニメに出てくるような完璧超人じゃない」

「違うの。そういうのじゃなくて、雰囲気? みたいな」 自分でも何を言っているのか、この違和感をどう言い表せばいいのか分からなかった。

「ふーん……まあいいや。じゃあ、質問其の三。もし俺が、例えば誰かに殺されたりしたら、その時君はどうする?」「え……」

「俺がいなくなった後、途方に暮れた君は一体どうするのかな」「それは……」 この人は一体何を言っているんだ? 自分に告白した人にする質問じゃない。さて、どう答えたものだろう。

「犯人に復讐するよ。おそらく」

「犯人を殺すってことかい?」

「うん、そう」

どうだろう、無難な答えじゃなかろうか。

「なるほど。で、その後は?」「その後?」

その後って何?

「その後は、お墓に行って、線香をあげて……あ、もちろん生涯独身を貫くよ」「うん、なるほどね」

得心できたかのようにうなずく直江君。

「結論から言わせてもらうと、君と俺は合わないと思う。考え方が違いすぎるからね」

「そっか……」

ここで私に、僅かな好奇心が生まれた。

「……じゃあ、直江君はそういう場合どうするの? ただ合わないってだけじゃ納得できないから、直江君の意見も聞きたい」

直江君は、僅かに表情を硬くして話し出した。

「俺はね、恋人を殺した奴は絶対に殺さない。恋人と、恋人を殺した奴を同じ世界になんか送らない。俺なら、犯人に然るべき罰を与えた後すぐに自殺する」「でも、それで恋人は満足するかな」

「そこが俺と君の違いだよね――俺は恋人のために復讐するんじゃない。自分のために復讐するんだよ。いくら恋人だからって、考えている事が全て分かる訳じゃない。人間は、自己満足でしか動けないから」

「自己満足……」

「恋をしようが何をしようが、所詮人間は一人なんだよ。俺と君が恋人になったって、俺はここにしかいない。間違っても君の心の中になんかいない。『あの人の為を思って』なんて、単なる言い訳だ。俺はそう思うけど、今のやりとりではどうやら君は違う考えらしい」

「直江君は、いつもそうやって生きてきたの?」

「そうだよ。物心ついたときからずっと」「嗚呼……」 違和感の正体がようやく分かった気がした。

直江君は、ただ、そういう風に生きてきただけだった。

ずっと一人で、一人だけの世界で生きてきたのだから、私たちと同じわけがない。

「……さて、もうそろそろ帰ろうか。空が暗くなってきた」

「あ、待っ……」

このまま終われば、直江君は今までと同じ日常を過ごし続けるだろう。おそらく命を終えるその時まで。 彼の考えを変える気はない。彼の考えは正しくて、私はそこに惹かれたのだから。ここで私の為すべき事は……?

「待って」「?」

「私は、貴方と一緒にいたい」

「さっきも言ったけど、俺と君の考えが……」

「私に質問したってことは少なくとも最初は断る気がなかったって事だよね」

「俺と考えが同じなら、友達くらいにはなれたかもしれないと思って……」

「貴方の心に誰もいないのならそれでいい。それでも私は貴方と一緒にいたい」「でも……」

「何をしても同じだったら、断る理由は無いよね」

「ううっ」

「心が通じ合わなくても、一緒にいたいの」

とうとう私の言葉に反論出来なくなった直江君は、絞り出すかのように「……分かった」と呟いた。

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