弐
「ねえ……あの転入生、どう思う?」「ん?」
朝のホームルームが終わった後、私は幼馴染みの平田綾子に訊いてみた。
「直江君? 別に普通じゃない? とりあえず見た目は」
「そうかな?」
「女子から見れば面白みに欠けるけど、男子には人気があるみたいよ。ほら」 平田が指差す方を見てみると、直江君の机にはすでに人だかりが出来ていた。 「直江って、どこから来たの?」
「家、どこ?」
「今度ウチ来いよ」
「これからよろしく、直江君」
そんな有象無象にも「こちらこそ、どうぞよろしく」と愛想を振り撒く直江君に違和感を覚える。
「あんた、ああいうのが好みなの?」 茶化しながら訊いてくる平田に僅かな苛立ちを感じ私は「さあ、どうかな」とはぐらかしたが平田には通用しなかった。
「いいんじゃない? 応援するよ」「……もう」
それからの学校生活というもの、毎日直江君を見て直江君の声を聴き、直江君を想い続けた。
授業そっちのけで直江君を眺めていたせいで成績がやや下がってしまったが、そんな些細なことはどうでも良かった。
そして、想い続けて数ヶ月経ったある日の夕暮れ、私はとうとう教室に直江君を呼び出した。
所用を済ませてから教室に向かうと、直江君はすでに居た。自分の席に座り外を眺めている。
「あの、直江君」と話し掛けると直江君はこっちに気付き、笑いかけてくる。
「いい景色だね、ここ」 転入してから数ヶ月、当初の敬語はなくなっていたが、私が感じた違和感はなくなっていなかった。
「夕暮れが好き?」 私は話を続けた。いきなり告白というのは多少緊張する。もしかしたら直江君が気を利かせてくれているのだろうか。
「夕暮れというか、この場所かな。 とても幻想的で昔いた場所では見られなかった。君も大切にするといい」「うん、そうだね」 私がそう言うと、直江君は満足したような笑みを浮かべる。
「それで、俺をここに呼んだ理由を聞かせてほしいんだけど」
「あの……」「ん?」
いざ告白するとなると、やはり緊張する。
「その……」「園?」
「いや、そうでなく、えとですね」「何?」
辛抱強く聞いてくれる直江君に申し訳なくなって私は一気に用件を告げる。
「直江君好きでしゅ付き合ってくだひゃいっ!」
おもいっきり噛んでしまった。これまでの人生で最大の噛みっぷりだ。
「……」直江君は呆けた顔をしている。
「えーっとね……とりあえずもう一回言ってくれる? 真剣な話はその後にしよう」
「そ、そうだね」
私は大きく息を吸い、今度は噛まないようにゆっくり、はっきり、言った。
「直江君、好きです。付き合って下さい」




