ようやくの朝
「・・・やっと、朝だ・・・」
いつもと変わらない1日が始まった。明美にとっては待ちに待った朝。長い夜が明けた。
昨日の夜はそのまま家に帰ってきていつヤツが来るのかと全神経を使い待ち構えていた。何者かは明美の家に来ることはなかった。もしかしたら巻いたのか。それとも明美の存在に気づくことがなかったんか・・・。しかし、そのせいで明美は一睡もできなかった。おかげで精神的にも肉体的にもかなり疲れが溜まってしまった。
「おはよう、明美」
と朦朧とする明美の耳に母の声が届く。リビングには新聞を読む父にキッチンで朝食の用意をしている母がいる。弟はというと姿が見えない。どうやらまだ寝ているようだ。
「おはよう、お母さん」
挨拶を交わすも言葉に気力が感じられない。明美はそのまま玄関へと進む。
「明美、朝ご飯食べないの?」
母が心配してくる。
「今日はいい」
「いらないの?それより大丈夫?元気ないけど」
いつもと違う娘にすぐさま言葉を送る。
「大丈夫、だい・・・じょうぶ。いってきます」
やはり言葉に力が込もっていない。
「気を付けてね」
その後、最後の力を絞り出し学校まで向かった。
「明美、大丈夫?目の下の隈ヤバイよ」
「・・・うん、わかってる・・・」
言葉1つ1つにも疲労が聞き取れる。
「ホントどうしたの?」
「いや、ちょっとね。・・・ごめん、マジでヤバイかも保健室行くね」
席から立ち上がるも足取りは覚束ない。いつ倒れてもおかしくない。右へ左へ揺れもう1度右へいく。しかし、今度の揺れは大きかった。倒れるくらいに。
「ちょっと明美!大丈夫!?肩貸そうか?」
倒れる寸での所で理恵に支えられる。
「ありがと、悪いけどお願い」
もう言葉にも力が感じられない。
理恵に保健室に運んでもらう。
「どうしたの!?顔色悪いわよ!?」
保健の先生が驚きの声を上げる。驚くのも当然である。フラフラの状態で顔は蒼白している。誰だってそんな声を出してしまう。
「ちょっと寝不足気味みたいで。ベッド借りてもいいですか?」
「ちょっとどころじゃないでしょ!早く寝かせなさい!」
保健の先生に急かされ理恵は明美をベッドに寝かせる。程なくして明美の寝息が聞こえてくる。
何故、こんなに疲労していながら学校まで来たのか。この時間帯は家に誰もいなくなる。学校には人が沢山いる。何かあれば知らせてくるし家にいるよりは安心できる。その安堵感が明美の心と身体に広まり寝不足と精神の疲労からやっと解放される。
「あたしは教室に戻りますので明美こと宜しくお願いします」
理恵は明美を先生に任せ保健室を後にした。