騒々しい朝
オリジナル作品の第2作目です。まだまだ、未熟な所もありますが頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。
「やっばっーい!」
清々しい朝に対し慌ただしく走る少女。走る度に腰まである長い黒髪が暴れる。目に掛けた赤い眼鏡も少し下に下がり気味だ。服装は上下、黒のセーラー服姿で赤いスカーフ。胸の所には最近のピンクのデジカメが紐でぶら下がっている。格好からして学校に向かっているのだろう。しかも遅刻間際。
「もう、最悪!最悪!最悪!」
そう言いながらも住宅街を激走する。そんな彼女に1台の自転車が近付く。
「明美、おっはよ〜。朝から元気だね〜」
「おっ、おはよう。・・・理恵」
全身が酸素を欲している中なんとかを言葉を紡ぐ。唇が渇いてしょうがない。
「てっ、て言うか・・・理恵。あんた・・・随分、余裕、ね」
普通の登校ならこの挨拶は当たり前だがしかし今は遅刻するかしないかの瀬戸際。それなのに理恵は余裕でペダルを漕いでいる。
「これぐらい余裕だよ。本気でいけば余裕で間に合うよ。軽く流しても間に合うけどね」
「あんた・・・それ嫌味!?」
嫌味に聞こえてもしょうがないが実際の所それは事実である。理恵はソフトボール部に所属しており体力には自身がある。
「明美はな〜んで走ってるのかな〜」
「そっ、それは」
「どうせいつもと同じで事件資料の整理とか自分なりに推理してたんでしょ」
「ぐっ」
図星を突かれて呻く。
「別にいいでしょ!将来のための勉強だもん!」
「はいはい、わかってますよ〜。明美はそればっか言って」
「いいじゃない!」
「別にいいよ。いいけどさ、アタシそろそろ行くね」
「あっ・・・」
急に漕ぐスピードを上げられすぐに差が開いてしまう。突然のことに言い返すこともできなかった。
「薄情者!後ろに乗せてってよ!」
理恵は背中越しに片手を振る。
「もぉぉぉーーーお!最悪ぅぅぅーーー!」
少女の心の叫びが口から出て近所に響き渡る。
彼女の名前は前原 明美。この亜暗町、亜暗高校に通う1年生。将来の夢はジャーナリスト。その夢のせいか自分が興味を持ったものに対し調べ、知らないことがあれば納得するまで追求する性格になってしまった。そのための勉強ということで夜中までやっていた過去の凶悪事件特集を見ていてこの有様。
誰もいない廊下を1つの足音が支配する。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
廊下には誰もいない。その代わりに教室の中から生徒の話し声が聞こえる。
(良かった〜、間に合った〜)
話し声が聞こえるということは1時間目には間に合ったということだろう。少し安堵感を感じながらも走るのは止めない。目差すは1―Cである自分の教室。
目に映る1―Cの札。ゆっくりとスピードを緩める。
「やっと・・・着い、た」
そう言って教室の後ろ側の扉を開ける。普段ならあまり気にならないことだが静まり返った教室では注目の的となってしまう。
「・・・あ、れ・・・」
クラス全員の視線が突き刺さる。さらにみんなの視線よりも遥かに鋭いものが明美に突き刺さる。
「前原〜!」
女性の声には明らかに怒りの色が混じっている。
「随分、遅い登校だな〜!」
彼女は橘 美穂子 26歳。数学担当の教師で1―C担任の教師でもある。
「あっ、いや。これは〜・・・」
何かいい言い訳を考えるも何も浮かばない。思考しながも目は動く。そして、1人の女生徒と視線が合う。
(理恵!・・・)
さっきまで一緒にいた理恵が平然とした顔で何事もないように座っている。
(あんたも遅刻ギリギリだったくせに〜!)
そんな明美の思いも知らずに理恵は満面の笑みを浮かべながらこっちを見てくる。
「前原〜!」
「はっ、はいー!」
理由を求める眼差し。
「うぅぅぅ〜〜〜、すいません。その〜・・・・・・寝坊です」
観念し言い訳を考えるのを止めそのままの理由を言う。
「だろうな」
「分かってたんなら言わせないでくださいよ!」
事実ではあるが寝坊などみんなの前で言うのは恥ずかしい。
「悪い悪い。自覚してないのかと思って」
「自覚くらいしてますよ!」
「だから悪かったって。それより授業の続きをするから前原も席に着きなさい」
渋々ながら自分の席に向かう。明美の席は真ん中の列の一番後ろの席。自分の席に着き教科書、ノート、筆記用具を机に出すも寝不足と走った疲れが一気に明美に襲い掛かってくる。明美は抗うことが出来ずそのまま眠りについてしまった。
それから明美が目を覚ましたのは午前中の授業が終わった後。つまり昼休みにようやく目を覚ました。目を覚ましたというよりも昼休み前のホームルームで橘先生に起こされた。橘先生には呆れられていたが・・・。
寝ていてもお腹は減るものだ。明美は購買部に売っているパンとジュースを買い自分の席へと戻る。明美の向かえには理恵がいた。明美の前の机の向きを変えて机同士をくっつけている。理恵は母親手作りのお弁当を広げている。女の子にしては多いくらいの量。ほぼ男子が食べる量と同じくらいの大きさの弁当箱。そして、それに負けないくらいのご飯とおかずがそこに詰まっていた。
理恵とは席は離れているが昼食時は一緒に食べている。
「理恵!なんで朝乗せてってくれなかったの!?」
朝から思っていたことをやっと言うことができた。
「いいじゃない。たまには運動しなくちゃ」
「朝からあんなに走ったら逆に体に悪いよ!」
「いいじゃん、ダイエットだと思ってさ」
「別に私、ダイエットしたいと思ったことないから」
実際の所、明美のスタイルはまだ未発達の部分もあるが高1にしては良い方だ。
「言うね~、他の女子に言ったら怒るよ」
「はいはい、分かってます~!理恵だって毎日毎日そんなに食べてよく太んないよね」
理恵の弁当と身体を見比べる。理恵もスレンダーではあるがソフトボール部に所属している為、明美とは違い少し締まっている。身長も170㎝近くあるためどこかの雑誌に載っていてもいいようなモデルスタイルで1部の女子に人気がある。
「昔からそういう体質だから」
さらりと答える理恵。女子としては嬉しい限りのスキルである。
「あんたこそそれ他の人に言わない方がいいよ」
「分かってるって」
そう答えて次々に口にご飯を運ぶ。
(ホント、よく食べるわ)
毎度のことながらそう思う。
「それよりもさぁ、なんで午前中起こしてくれなかったの!?」
美味しそうに食べる理恵を見て忘れかけていたもう1つの文句を言う。
「それはもう〜、明美の寝顔が可愛かったから見とれて」
「ちょっ、やめてよ〜。そういうの!」
頬を膨らませて怒っている表現をする。理恵の笑い声が教室に響く。
「アハハハッ、そういえば明美この学校の特待生調べ進んでるの?」
「それは全然進んでないんだよね」
膨れ顔を戻しいつもの表情になる。
「目ぼしい人はいたんだけど全員ハズレ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
特待生。それはどの学校にもいるだろう。野球、テニス・・・と言った運動部がそうだろう。しかし、この学校には特待生しか入れない特別な部活があるらしい。その部活はどういう人達がいるのか。どんな活動をしているのか全てが謎の部活。そんな部活動を興味本意で明美は調べ回っている。
「私達と同じ今年入学した生徒の中にもいるって噂があるけどね」
所詮は噂は噂。それが本当かどうかもわからない。
「でも絶対に見つけてみせる!」
右手で力強く拳を作る。たとえ噂でも明美は明美なりに答えを突き止めたいのだ。
「頑張ってね、明美〜」
「オッケー!そういえば美咲は?」
明美はもう1人の友人の名前を出す。
「美咲?あれっ、言ってなかったけ?」
1年B組 吉田 美咲。教室は違えど2人の大事な友達。明美、理恵、美咲の3人はだいたい3人で行動するほど仲が良い。
「今日は演劇部の方でミーティングしながら食べるって言ってた」
美咲の夢は役者になることである。その夢のために今から演劇部に所属して頑張っている。
「へぇ〜、そうなんだ。入ったばっかりで大変だね、美咲」
「そうだね。なんか近々、映像研究部に頼んで撮影するって話も出てるみたい」
「ふぅ~ん、そうなんだ。よしっ!私も美咲に負けないように頑張らなくっちゃ!」
「頑張ってね、明美」
それから2人は他愛もない話をし昼休みを堪能した。
第1話どうだったでしょうか?まぁ、まだ1話だけなので良くも悪くもこれから次第ですですよね。
良かったら2話目の方も読んでくださるとうれしいです。
ご感想等ありましたら遠慮なさらず送ってきてください。
最後に誤字脱字がありましたら知らせてもらえると有り難いです。