第七話:『50』を侵す存在と、未来予知が見た「隠された真価」
プロローグ:揺らぎの中で垣間見た「真のステータス」
全ステータス『50』。
俺、レオン・アスターにとって、それは**『安全装置』であり、最強パーティの『チューニング・ギア』だった。その均一な波動によって、ゼノたちの規格外の力は制御され、カインの予測不能な動きは『完璧な連携』**へと昇華された。
しかし、上級ダンジョン**『嵐の尖塔』で遭遇した魔物、《均衡崩し(バランスブレイカー)》は、その「標準」**そのものを標的にした。
**《均衡崩し》が放つ『不規則な揺らぎ』の波動は、ゼノたちには「極端な不安定」を、そして俺の『50』には「強制的な不規則性」を押し付け、その核となる「安定」**を破壊しようとする。
俺の**『50』の波動**は、これまでにない危機に直面した。
俺は全身全霊で**『50』を維持しようと抵抗する。その極限の負荷の中で、フィリアの未来予知が、俺のステータスに隠された最大の秘密**を垣間見る。
**『50』**は、平凡な数値ではない。それは、この世界のシステムが、**規格外すぎる力を強制的に押さえつけるための『究極の封印』**だったのだ。
フィリアの口から発せられた、俺の真の魔力「999」、そして**筋力「測定不能」**という驚愕の数値。
平凡の仮面の下に隠された、最強を超える真の力が、今、覚醒の時を迎える。
(本編へ続く)
**『嵐の尖塔』の内部は、魔力の密度が異常に高く、体感で全身を風が叩きつけているようだった。しかし、俺の『50の標準波動』によるカインの『チューニング』**が成功したことで、パーティの連携は完璧だった。
「カイン、左前方三メートル! 障壁!」
フィリアの予知が正確に警告する。カインは最速で移動しつつ、俺の**『標準のレール』に乗っているため、フィリアの予知から外れない。彼は予知された岩壁にぶつかる直前、正確に『停止』**し、障壁を回避した。
「レオンの**『チューニング』**のおかげで、未来が鮮明すぎる! これならこのダンジョンのボスも怖くないわ!」フィリアは興奮気味に言った。
その時、ダンジョンの奥から、今まで感じたことのない異質な魔力が迫ってきた。
「待て、ゼノ! これまでと魔物の**『波動』**が違う! 敵は我々の方に向かっている!」
ゼノが身構えた直後、岩盤を突き破って現れたのは、半透明な体を持つ巨大な魔物だった。その魔物からは、極端に**『乱れた』**魔力の波動が放たれている。
「あれは……《均衡崩し(バランスブレイカー)》! なぜこんな浅い階層に!」
ゼノが驚愕の声を上げた。
襲い来る「均一を乱す存在」
《均衡崩し》の特性は、その名の通り、周囲の**『安定した均衡』を崩すことだ。魔物が放つ波動は、レオンの『50の標準波動』とは正反対の、『不規則な揺らぎ』**を強制的に周囲に拡散する。
魔物が俺たちに波動を叩きつけた瞬間、俺の身体に激しい違和感が走った。
「ぐっ……!」
俺の全ステータス『50』が、激しく揺らぎ始めたのだ。
筋力(STR)が50から48へ落ちたかと思えば、すぐに53へと跳ね上がる。魔力(MAG)も45と55の間を行き来し、安定しない。
俺の**『50の標準波動』は、この世界で最も安定しているはずだった。だが、この魔物は、その「安定」そのものを食い破り、「不規則な揺らぎ」**へと変えようとしている。
「レオン、耐えろ! 波動を乱されるな!」ゼノが叫ぶ。
だが、ゼノ自身も異変を感じていた。
「くそっ、俺の力が定まらない! STRが250から200に落ちたかと思えば、次の瞬間には300に跳ね上がる! **『過剰破壊』**が制御不能だ!」
フィリアも顔面蒼白だ。
「私の予知が、ノイズで真っ白に! 魔力も不安定で、強力な魔法が使えない! **『標準』でいたいのに、『極端』**に揺さぶられる!」
《均衡崩し》は、極端なステータスを持つゼノたちには**「極端な不安定」を、均一なステータスを持つ俺には「強制的な不規則性」**を押し付けていた。
この魔物にとって、俺の**『50』の標準は、最も破壊したい『敵の核』**だったのだ。
俺は歯を食いしばり、全身の力を込めて**『50』を維持**しようとする。
俺の全ステータスは、**『50』という絶対的な数値で「封印」**されているかのように、必死で揺らぎに抵抗する。
「負けるか……! 俺の役割は……安定だ!」
俺が全身全霊で抵抗したその瞬間。
フィリアの鋭い悲鳴が響き渡った。
「レオン! 見えた……! あなたの『50』が、一瞬だけ剥がれた!」
フィリアは魔力の暴走も忘れ、俺を指差した。
「あなたの**『50』は、『平均』じゃない! それは、あなた自身の力が規格外すぎて、システムが『均一に圧縮』した『檻』よ! 今、一瞬だけ見えたわ……あなたの真のステータス**が!」
フィリアの未来予知の特性は、ゼノたちの**『極端な力』も、俺の『均一な力』も、その「波動の裏側」**まで見通す。
彼女が見たのは、**一律『50』**という数値の、遥か裏側に隠された、途方もない数値だった。
「魔力……999! 筋力……測定不能!」
俺の『50』は、平凡の証ではなかった。それは、規格外すぎる力を、この世界のシステムが強制的に『平均化』して封じ込めた結果だったのだ!
俺の『万能職』は、全ての能力を極めすぎたゆえに、全ての数値が**『50』という「均一な檻」**に押し込まれていた。
その真の力が、**《均衡崩し》の不規則な揺らぎによって、一瞬だけ『解放』**されかけたのだ。
俺は、その瞬間的に垣間見えた**『測定不能』の力を、自身の意志で再び『50』**へと押し戻した。
そして、その膨大なエネルギーを、**『50の安定波動』**として《均衡崩し》に叩きつける!
「これで、お前の不規則性を、俺の規格外の安定で打ち消す!」
ドォォン!
**『規格外の安定』と『不規則な不安定』が激突し、爆音と共に《均衡崩し》の半透明な体が、まるでノイズが消えたテレビ画面のように、完全に『均一な粒子』**となって霧散した。
魔物を倒したが、俺の心臓は激しく高鳴っていた。
俺の**『50』。それは、平凡ではなく、『究極の封印』**だった。
俺は、最強のパーティの**『補欠』としてではなく、『規格外の均衡』**として、この世界に存在していたのだ。
ゼノとカインは、フィリアの叫びを聞き、驚愕の表情で俺を見ていた。
俺の「50」の、本当の理由が明かされた瞬間だった。
(続きは次回)
**第七話「『50』を侵す存在と、未来予知が見た『隠された真価』」**をお読みいただき、誠にありがとうございます!
ついに、この物語の最大の謎が明かされました! 主人公レオンの全ステータス『50』は、平凡さの象徴などではありませんでした。それは、彼の規格外すぎる真の力(魔力999、筋力測定不能)を、この世界のシステムが**強制的に『均一な平均』へと封じ込めた『究極の檻』**だったのです!
俺たちの**「最弱の補欠」は、実は「最強を超える封印されし規格外」**だった!
《均衡崩し》の不規則な揺らぎによって、一時的に封印が剥がれかけたレオンの力。その**『規格外の安定』**によって魔物は倒されましたが、ゼノ、フィリア、カインの三人は、その真実を知ってしまいました。
さて、自分のステータスが**『封印』であり、『偽りの平凡』**であったと知ったレオン。そして、その恐ろしいまでの真の力を垣間見た最強パーティのメンバーたち。
次話では、最強の三人からの**「問い」**がレオンに突きつけられます。
「なぜ、君はその力を**『50』**に留め続けているのか?」
そして、ゼノは、レオンの**『真の力』を最大限に活かしつつ、『50の安定性』**を維持するための、**新たな、より危険な「役割」**をレオンに提案します。
レオンの力は、「封印を解くべきなのか、それとも『50』を貫くべきなのか」。物語は、新たな段階へと突入します!
第八話も、ぜひご期待ください!
作者: nice貝




