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第三話:ふぇ・・ふぇん、なんだって??こちとら狗神だっつーの

「うわああああああああああああ!!!!」


兵士の叫び声が玉座の間に木霊する。



右前足の爪ににべったりとこびりついた血液が、鼻を刺激する鉄錆のような香り


そして己の頬に飛び散った血液の生暖かさと、自分の背後にたたずむ俺の本来の姿に嫁殿が口を開く


違う。自分はそんなつもりは無かった


「あ、あんた・・・もしかして」


あぁ、そっか。お前は声や気配はわかってたけど俺の姿をちゃんと見るのは初めてだったか。


ごめんなぁ嫁殿、怖かったよな・・悔しかったよな。けどもう大丈夫だから


ここから先は俺が借りを返してやるからな



「・・・やはり災厄の勇者であったか」


戸惑う三嫁殿にギュスターヴはさらに険しい表情を浮かべると狼狽える兵士達に声を荒げた


「ギネヴィア妃殿下、並びに勇者候補を安全な場所へ!!残る精鋭はあの災厄を討ち取れ!!!」


その声に他の兵士達は一斉に剣や槍を構えて嫁殿・・いいや、俺たちに襲いかかる


「だッ・・・・駄目!!!〝私に寄ったら〟駄目!!逃げて!!」


これ以上の犠牲を増やすわけにはいかないとそう思ったんだろう。こんな奴らに嫁殿がかけてやる情けも優しさも何も無いっつーのに


「この悪魔め!!」


嫁殿の首根っこを咥えて俺の背に乗せ、槍のひと突きを紙一重で避ければの体は姿勢を低くし敵兵の懐に潜り込み


「がッ・・あ゛、ぇ゛」


下段から突き上げた爪の刃先が敵兵の顎から鼻頭までを貫きそのまま肉を切り裂いた


「な、なんだあの動きは・・・まるで人間のような・・」



横に薙いだ剣を爪で受け止め相手の力を利用し転ばせればその喉元に牙を突き刺す。


体の軸を利用し体重をかけた回転斬りのような動きで敵兵の首を数人斬り飛ばす



確かに早蕨の一族は陰陽師の家系ではあったが護身術や剣術も学んではいた。


そのお陰か嫁殿は高校とやらで地区大会、大学では県大会二位を勝ち取るまで強くはなった


そして無論。俺もその剣術やら護身術を祀られながら暇つぶしがてらずっと眺め続けていたことが功を奏し〝武士や侍の真似事〟のような動きはできるようになった




「何なんだこの化け物は!!!」


いつのまにか、俺たちの周りには多くの死体が転がっており足元にはまっ赤な血溜まりが絨毯をじわじわと染めながらその範囲を広くしていた


「く、黒い巨大な狼!?・・ま、魔獣フェンリルか!?」


「し、しかし黒い毛並みのフェンリルなんて見たことも聞いたこともないぞ!?」


俺の実力に恐れおののいた兵士どもが口々に言いあう声が聞こえる。しかしこっちのせかいじゃあ狗神を見たことがねぇのか?さっきからふぇん・・ふぇん・・・ああちくしょう言いづれぇ!!そう少し苛立った時だ


【音声ナビゲートを開始】


突然機械的な声が響くと嫁殿の前に奇妙な文字が空中に浮かび上がった


「!・・・・狗神の呪い・・・」



【狗神の呪い。対象者の身体を強化し魔力や技の威力を極限まで向上。また、光属性魔法や状態異常の効果も無効化。デメリットとして対象者に敵意を向ける者を抹殺対象とみなしソレが人間であればなんであろうと殺戮の限りを尽くすまで収束不能となります】




「なんかすごい盛られた特性になってない!?そ、そうだ。アンタ私に憑いてる狗神なんだよね!?なんとかできないの!?」


【ギフトの無効化、消滅させる事は不可能です】


淡々とした声でカラクリの声が返答すれば嫁殿は苛立ったように声を荒げた


「巫山戯んな!!アンタに聞いてないっつーの!!大体私は・・・」


しばらくの沈黙があった後、ナビゲートは淡々と説明をした


【回答。このスキルの原因は三雲様ご自身に憑依しているモノの影響を受けている事にあります】


「っ!!・・・・わたし、の・・・」


【憑依対象のステータスを検索、モニターに表示します】 

驚く嫁殿だったが声が聞こえたのち自分のステータス画面?とやらの横にまた新たなステータス画面が浮かび上がった



名前:【狗神:■■■■■】


危険度ランク:SSS


推定レベル:550


種族:不明。おそらく魔獣種、魔狼種に相当するものと見る



名前の部分は文字化けしており解読は不可能であったが他に表示された数値に嫁殿や夜達を除く他の兵士や騎士たちは表情を青ざめた


「き、危険度ランクSSS!?伝説上のランクじゃなかったのか!?」


「そ、それに推定レベルが550って・・・あの〝魔竜王ヴリトゥラ〟と同格!?」


「馬鹿!!そんなの問題じゃねぇだろ!!やっぱりあの勇者候補は災厄の象徴だったんだ!!」


響めく兵士達を他所に、騎士団長ギュスターヴ・アグラヴェインは握られた剣を両手で強く握ると力を込めた



「・・・・もはや容赦は要らぬようだ。我が部下たちを斬りふせた貴様の罪、女神より授かりせし聖剣が一振り〝セクエンス〟にて滅してくれる!!」


アグラヴェインの声に答えるかのように輝く光の粒子が剣身に集まり始めるとそれはみるみるうちに光り輝く黄金の剣になった


「っ!?」




「魂さえも残らず消し飛ぶが良い!!・・・・〝聖地守護せし黄金の一撃~セクエンス・カリバーン~〟!!!!」



セクエンスから放たれた黄金の斬撃が嫁殿に向かって放たれる。


この聖剣から放たれる高威力の斬撃はどんな強者や魔術を極めた物でも回避する事は不可能とされた究極の一撃である


真正面から食らえば最期、文字通り魂さえも跡形も無く消滅する裁きの一撃とされていた



ーーー まぁ、俺からしたらただの眩しいだけの光の玉だけどな



「ーーーー !?」


その裁きの一撃を、夜の闇のような黒い尾で受け止め霧散させる。


「ば、馬鹿な!!」


「アグラヴェイン団長のセクエンスの一撃が・・・塞がれた!?」


「・・・・畏れを知らぬ人間風情が・・大事な嫁御殿に随分無礼な扱いをするじゃねぇか。」


「う、うわああああああああああああ!!!!」


「無理だ!!逃げろ!!俺たちじゃ敵わねぇ!!」



どうやら俺には敵わないとふんだ兵士達は怯え我先にと玉座の間から逃げ出した。


しかしアグラヴェインはセクエンスを構えたまま目の前の男に殺気を向けるのを止めることはしなかった


「魔獣め・・・・今ここで討ち取ってくれる。」



「俺もここに居る全員消し飛ばしてやりたい所なんだが・・・生憎、嫁御殿の状態も心配なんでねぇ。・・非常に癪じゃああるが・・・とんずらさせてもらうわ。」



俺はそう言うと嫁殿を背に乗せたまま速度と勢いをつけて窓をぶち破り外に飛び出した


「ま、待って!!ストップ!!まだ夜ちゃん達が!!」


「・・・悪いが俺には関係ないね」


嫁殿のわがままを今聞くわけにはいかない。色々とやらなきゃならないことも残ってるんでね。


飛び出した眼下に広がる木々や森を静かに眺めながら俺はふと〝懐かしい匂い〟のほうへと足を向けることにした

























同時刻、ハイランド大陸、ユグドラ国内の町ビャルカン付近にて



「ふむ?・・・・」


草原に寝転がり空を眺めていた狐耳の少女がむくりと起き上がる。その様子に隣で同じく体を丸くしていた一匹の大きな猫が声をかけた



「どうした?同胞よ。何か感じたか?」



「いやなに・・・・・ちと〝懐かしい気配〟がしてのぅ。」



猫の言葉に狐耳の少女はそう言うと小さく笑みを浮かべ、また空を見上げた。





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