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第21話:暗雲来りて

さて、俺と嫁殿が異世界【ハイランディア】に召喚されてから数日が経った。最初は荒れ果てていたアシハラの大地も、俺の臣下・・まぁ、嫁殿の式になったモンスター・・妖怪どもの力により少しづつではあるが復興の兆しを見せ始めていた。


「水路の件、どうなってるんだ?」


「へい!大殿のご命令とナガヨシ様のご指示の元、棚田全体に水が行きわたっておりおやすぜ!」



この世界のゴブリン・・小鬼たちも知能は高いらしく、俺が指示した水路の設計、そして新たな〝土地開発〟も丁寧にこなしてくれている。



ーー 製鉄。鍛冶の技術がこのゴブリン共には備わっていると聞いて、俺はすぐに大きな鍛冶施設の建設をゴブリンとオーガ達に指示することにしたのだ。



・・・まぁ、武器作成もおいおい必要になってくると思ってたしな



「・・・ふぅ」


一通りの指示を出し終えた俺は大社の中に作られた縁側に腰を下ろすと煙管に火をつけてのんびりと中庭を眺める。



「ふっ!・・・せいっ!!」


午後の穏やかな木漏れ日が照らす中庭。その中央で新たに臣下に加わったアラクネ姉妹たちが拵えてくれた道着に身を包んだ嫁殿が木刀を手に素振りをしているのが視界に飛び込んできた。


ーー 粗削りながらも、しかし鋭く何かを耐えているような太刀裁き


俺は静かにその様子を見つめながらぽつりと声を漏らした



「ーーー 〝抑えて〟んな。やっぱり」



そう呟き俺は嫁殿の過去をぼんやりと思い出していた



・・・ そもそも、嫁殿が剣道に打ち込むようになったのは自分自身の心を鍛えるためだった。



呪われた狗神筋(いぬがみすじ)の家系である早蕨家(さわらびけ)


周りの人間から向けられる冷たい視線に耐えるために、心を強くするためにと厳格な祖父に頼み込み、嫁殿は必死に剣道に打ち込むようになり、そのまま学生時代は多くの大会で金星を取るくらいの実力者になっていた


そんな嫁殿をそばで見守っていた俺自身、剣道に打ち込みどこか生き生きとした嫁殿を見るのは好きだったし、それが嫁殿のためになるならば構わないか、そう思っていたが



ーーー 大学二年の春の事、それが全て崩れ去ったのだ



同じ大学の先輩である男子生徒が嫁殿の後輩に手を出し、乱暴しようとした現場に嫁殿は一人乗り込んでいったが



・・・自分の内に沸き上がった衝動に負け、相手の男子生徒数人を滅多打ちにして重傷を負わせたのだ



『・・・気づいたら、血の海が出来上がってたんだ・・私、牽制くらいで済ませようと思ってたのに・・なのに・・・』



大学からしばらく自宅謹慎を言いつけられ、一人俺を祀っている神棚の前で嫁殿が弱弱しく呟いていた言葉を思い出す


『・・・私の中にも、獣が居るんだ・・どうしようもない獣・・・私、楽しくてしかたなかったんだ・・・相手を打ちのめすのが・・楽しくて・・・』


壊れかけた、どこか絶望にも似た表情で嫁殿がぎこちなく俺に笑いかけた



・・・ それ以降、嫁殿はあまり剣道に打ち込まなくなった。



今目の前で行われているように、鍛錬として剣を振ることはあるが・・以前のように打ち込むようなことは無くなったのだ



「・・・嫁殿」


俺は立ち上がり、少し休憩を促そうと嫁殿に声をかけようとしたその時だった



「大殿ーー!!」



ふと、慌てたように一匹のゴブリンが大社内に駆け込んできたのだ



「おいおい・・騒がしいじゃねぇか、いきなりどうしたんだ?」



荒い息を吐きながら、一匹のゴブリンは俺と嫁殿を交互に見た後に声を上げる



「お、お助けください!!森の入口で遊んでいた子供たちが・・冒険者どもに襲われておるんです!!」




































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