表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

第二話:どいつもこいつもふざけやがって

「この者を殺しなさい!!!」



『・・・・・あ???』


顔を青ざめ怯えたように叫ぶギネヴィアの言葉に武装した兵士達が槍を構えて取り囲む



「ち、ちょっと!!!ちょっと!!!待ってください!!いきなりなんですか!!殺せってなに!?」


状況が掴めず慌てる嫁殿を他所に近くの兵士達が夜達を庇うように前に出る


「ど、どいてください!!三雲さんが!!」


「勇者殿、お下がりください!皆様を危険に晒す訳には参りません!」


夜の声に兵士達がそう返せば嫁殿に槍を構え攻撃の態勢を取る。


さらにギネヴィアの近くに控えていた赤銅色の鎧を身に纏った男が前に出て剣を抜き放った


「まさか・・・異世界より召喚した勇者候補の中に災厄を呼ぶ存在が紛れ込んで居たとはな」


「さ、災厄!?なに訳わかんないこと言ってんのオジサン!!ちょっと渋めの堅物騎士オーラだからって許されると思ってんのか!」


刀を抱きながら喚く嫁殿に槍を構えていた兵士が声を上げる


「無礼だぞ厄災の勇者!!栄光あるペンドラゴン騎士団騎士団長たるギュスターヴ・アグラヴェイン卿に向かってなんだその態度は!!」


兵士の言葉に赤銅色の騎士、ギュスターヴはため息を吐くと冷たい眼差しを嫁殿に向けたまま説明する


「貴様のステータス情報にあるそのギフトの事だ」


「は!?ギフト!?・・・あ、あぁ、狗神の呪いってやつ?いや、でもこれには深い事情が!!」


「貴様の事情など知らん。修行を積んだ聖騎士や熟練の方術士が100人でやっと浄化できるほどの呪詛値まで持ち合わせている・・・これを災厄の勇者と呼ばずして何であると言うのだ」


ギュスターヴの言葉に嫁殿は顔を青ざめ、そして自分の影を見た後もう一度ギュスターヴを見た



「なにより・・・・その体に纏わり付く禍々しい気配は何だ。」


ギュスターヴの目つきがさらに険しくなり握りしめる剣から殺気が伝わる


--- へぇ、この騎士様とやら俺が見えてるのか


「っ、こ、これはその、・・・わ、私だって好きで憑かれてるわけじゃ!!」


嫁殿の反論に今度は夜達と居た陽葵が慌てて声をかけた


「そ、そーだよ!誤解だよ!みーやんだって好きで取り憑かれてるわけじゃないってアタシたちに話してくれたもん!」


「・・・だとしても見過ごす訳にはゆかん。災厄となる前にここで潰させてもらう」


ギュスターヴはそう言い捨てると剣を構える。が、それを離れた場所で見ていた鈍色の鎧を身に纏った騎士が止めた


「お待ちくださいアグラヴェイン郷!!・・・右も左もわからぬままこの地に召喚された挙句いきなり斬り捨てるのは少々やりすぎであろう!」


「・・・・貴様の出る幕ではないぞジョエル・ランスロット。泉の加護を無くした貴様が私に刃向かうか?」


ギュスターヴの言葉に鈍色の鎧を身に纏った騎士、ランスロットは複雑な顔をし押し黙る。


それを鼻で笑えばギュスターヴは近くの兵士達に声をかけた


「災厄の芽をここで摘む!!あの者を殺せ!!」


その声を皮切りに兵士達が槍や剣を構えてじりじりと三雲ににじり寄った


「っ・・・こちらの話一切無視!?巫山戯んなっつーの!!勝手に異世界に呼ばれてあげく変なステータスだから殺すって何様なんだっつーの!!」


にじり寄ってくる兵士達に向けて刀を抜き放ち嫁殿は声を荒げるが、所詮ただの小娘の戯れ言。兵士達は怯むこと無く一歩、また一歩とにじり寄っていく



「・・・・・なんで」



このまま死ぬ?


訳もわからず呼び出され勝手に災厄になるだのと決めつけられて?


ーーー あぁ、こいつらのこの目


俺はよく知っている。異物を恐れる目、異形な物をさげすむ目


お前らからしちゃあ俺の嫁殿は排除されるべき対象なんだろうが


・・・気に入らねぇ


どいつもこいつもふざけやがって




ー わんわ くびいたいいたいだからね、あたちがばんそーこぺたぺたしたの! ー





『・・・・高い場所から偉そうな面しやがって』



血が滾る。心の奥で・・・いいや、魂の奥底で怒りの感情がふつふつと燃え上がる



【殺せ】



体に張り巡らされた血管、その一本一本がふつふつと爆薬の導火線のようにちりちりと燃えるような感覚が走る



【思い知らせてやればいい。この傲慢な奴等を】 


心臓の奥を何かで逆撫でされたように妙な感覚が湧き上がってくる


【情けも無い・・・思い知らせてやればいい】


静かに、不可視であったはずの俺の身体が黒い煙を立ててその姿を変えていく



「ーーーー 下がってな。嫁殿」


「え?」


巨大な黒い毛で覆われた鋭い黒曜石のような刃に似た俺の爪が横に薙いだその瞬間


蹴り上げられた毬が飛んだかのように兵士の首は宙を舞う。


胴体から切り離されたその顔には恐怖や苦痛の色は無く、一体何が起こったのだと呆けた表情のまま一定時間空中を舞った後に熟れた木の実が地に落ちるかのようにぼとりと音を立てて玉座の前に敷かれた絨毯に転がった


そして、残った胴体もまるで糸を切られた操り人形のようにドン、と膝をつくとその衝撃で頭部があったであろうその場所からはまるで破裂した水道管のように血液が噴き出しさらに絨毯を赤く染めた




「あ・・・・」







【狗神の呪い】効果:対象者の身体を強化し魔力や技の威力を極限まで向上させる。また、光属性魔法や状態異常の効果を無効化する


デメリット:対象者に敵意を向ける者を抹殺対象とみなしソレが人間であればなんであろうと殺戮の限りを尽くすまで収まらなくなる。







「うわああああああああああああ!!!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ