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第18話:嫁殿に新衣装

「・・時に奥方様?」


さて、アラクネ四姉妹が新たにアシハラに加わったが、ふと四姉妹の長女、春織が何かを嫁殿に手渡してきた


「忠義の印と・・・そして我ら姉妹を受け入れてくださったその御心に感謝の意を込めて・・こちらを」


差し出されたソレは丁寧に織り込まれた衣服、しかもただの服じゃなかった。・・おいおい、これは・・・


「・・!・・す、凄い・・これ、巫女服だよね!?」


「はい・・・千姫様より奥方様の話を聞き及び、手土産にと・・・」


嫁殿に手渡されたソレは上等な作りの巫女服だった。へぇ・・・なるほどな、アラクネの・・蜘蛛の糸で作られた絹織物ってやつか。悪くねぇ。うまくいけばアシハラの特産品にも加えられるだろうな


「・・・おいおい、マジかよ。高級品の巫女服じゃねぇかよ、それ」


俺は思わずふっと笑うが、その声に一瞬の驚きと、わずかに鼻息が荒くなる気配が混じってしまう。



「思わずコイツを身に着けた嫁殿を想像しちまったが・・・似合いすぎて、ちょっと笑えねぇな。悪ぃが、しっかり記憶に焼きつけちまった」


「ちょっ!ま、まだ着替えてすらいないのにアンタはもぅ・・・・」


ふと口から出た言葉に嫁殿を見つめる自分の眼差しが、思わずじわりと熱を帯びる



「着替えるって? ・・・いや、待てよ」


そのまま首を傾げる嫁殿の後に回り込み、巫女服を手に取ればその耳元に囁く


「・・・俺が、着せてやろうか? ・・・なぁ、嫁殿」


「なっ!?は、はぁあ!?」


真っ赤になる嫁殿に口元には妖しくも優しい笑みが浮かび、巫女服を手にしたまま、嫁殿の髪を優しくかきあげた。


その様子を春織・夏織・秋織・冬織のアラクネ四姉妹は微笑みつつ、俺たちに優雅に一礼した


「どうやら奥方様、お慕いの殿方からたいそうお熱いご様子でございますね・・ふふ」


「・・・お主ら、余計なことを言うでない。大殿がその気になれば、社が傾くぞ」


「まぁまぁ、お千様~・・ここでふと夏織は考えたのですが~・・ぜひ、大殿に着せていただくのがよろしいかと~」


「え!!?な、何故に!!?」


「ふっふっふ~・・大殿の加護が奥方様に付きやすくなるからなのですよ~・・」


・・ナイスプレーだぞ夏織!これで半ば合法的に嫁殿の着替え手伝う口実ができた!


俺が内心ガッツポーズをしていると秋織も冬織も嬉しそうに声を上げた


「奥方様も、これで夫婦パワー全開ってワケッすよ!」


「・・らぶらぶ、らぶらぶ・・・」


「こ、こらぁ!!この蜘蛛四姉妹ぃ!」



「・・・ふ、ふふっ」


抑えた低音が喉の奥で震え、肩を揺らして笑う。・・やれやれまったく、異世界に来てから退屈しねぇな本当に。


俺は真っ赤になる嫁殿の背後に立ったまま、巫女服を丁寧に手に取ったまま、嫁殿の腰へとそっと手を添える


「おい、嫁殿。こいつらいいセンスしてんな。俺、嫌いじゃねぇよ。特にその"夫婦パワー"ってやつ・・・なぁ?」


「びやっ!?ちょ、ちょいちょいちょい!!アンタどこ触ってんの!?」


「じゃあ、ゆっくり脱いでこうか。・・・・まずは上から、だな?」


嫁殿の首元に指先を添えると、ぞくりとするような優しい手つきで着物の襟に触れる・・おいおい、いいのか?抵抗するなら今のうちだぜ?嫁殿



「・・・こっから先、止めたきゃ今のうちに言いな?」


「と、止める気ないでしょうがアンタはぁ!!」


息がかかるほどの距離で、低く甘い囁きながら指先の動きを止めて、じっと嫁殿の反応を待つ。・・ははっ、なんだよ。やっぱり俺の考えもちゃんとわかってるじゃねぇか


 

「・・・ふふ、奥方様の耳が真っ赤でございますね」


「んふふ~・・これは“神婚の儀”も秒読みですねぇ~・・・」


「よっしゃぁ~!巫女服準備完了っすー!」


「・・・らぶらぶ・・・らぶらぶ、ふゆの風よりあったかい・・・」


アラクネ四姉妹も俺たちの様子に黄色い声を漏らしながらなにやら黄色い声を上げている。


 

「・・・まったく、どこが亡国復興譚やら。これでは甘味屋の恋愛漫才ではござらぬか・・・」


そうは言っちゃいるがお前も口元ゆるんでるじゃねぇか千姫・・・



「さて・・・どうする、嫁殿? 俺に着せられて、逃げるって選択肢・・・あると思うか?」




・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・・-

・-・-・-・-・-・-・-

・-・-・-


その後、大社に戻った嫁殿はあれよあれよとアラクネ四姉妹の手により巫女服を着させられることになった。


「まぁ・・・よくお似合いでございまする。奥方様・・・」


恥ずかし気に俯く嫁殿に千姫が声をかける。さらにソレに続くようにアラクネ三姉妹も声を上げた


「あぁ・・本当によかった・・・」


「おぉ~・・ステータスも急上昇してます~・・」


「花嫁衣装みたいッすよ!奥方様!」


「・・ぱちぱち・・ぱちぱち・・(拍手してる)」


周囲から上がる声に嫁殿は恥ずかし気に、しかしどこか困ったように俺を見つめてきた


「――ったく、お前ら・・・・盛りすぎじゃねぇか?」


俺の視線に照れて目を逸らす嫁殿の腰に腕を回しながらも、内心はとんでもなく満足そうに口元が緩むのを感じた。



「・・・でも、似合ってんだよなぁ・・・それが腹立つくらいに、ドンピシャで。・・・やっぱ、お前は俺の嫁だ」


「あ、ありがと・・・ん??というかちょっと待って??ステータス上がってるの??」


驚く嫁殿にぽん、と巫女服の袖に軽く口づけを落として俺は笑みを浮かべる


「ステータス? ああ・・・そりゃ爆上がりだろ。俺の加護がついてんだ、当然だろ?・・それとも、せっかくなら“夫婦パワー全開”ってやつ、証明してやろうか? この場で」


「み、見せんわ!!!」


俺の態度に顔を赤らめて怒る嫁殿をアラクネ四姉妹が穏やかな笑顔で見つめ、声を漏らす

 

「奥方様、強くなっていかれますね・・・・まさに“狗神の花嫁”の御姿」


「じーん・・・ちょっと泣きそうですねぇ~・・・」


「こりゃアレっすよ、お祝いにもう一着仕立てなきゃっす!」


「・・・ぱちぱちぱち・・・らぶらぶ加護全開・・・」

 

囃し立てられ何も言えず顔を赤らめたままの嫁殿に俺はわざと甘く低く、耳元で囁く


「おい、嫁殿。――“旦那”って呼んでみ?」


「ファッ!!!?」


「今、お前のすべてが……俺のもんだって、実感させ「大殿ー!!奥方様ー!!」・・・・」


・・・おいコラ、今せっかくいい雰囲気だっただろうが。


じとりと声のした方向を見ればそこには慌てた様子のナギが俺たちを見つめていた



「た、助かった!どうかした?ナギ?」


「行き倒れを見つけたんですけど・・その・・」


「あ?なんだよ・・・」


「・・・・・ち、ちょっと来ていただけますかお二人とも?」




・・・なにやら、厄介ごとの匂いしかしねぇじゃねぇか。












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