第十五話:龍神信仰?女神信仰?・・で?だから?
世界が混沌と闇しか無かった頃、天より落ちた力の源から六匹の龍が産まれた。
暗瞑龍ヴリトラ、陽炎龍アマテラス、聖白龍アルビオン、地皇龍パヤナーク、 水龍妃ヴィヴィアーン、 風紋龍ククルカン
六龍は産まれおちた世界が闇と混沌しか無いことに嘆き、力を合わせて新たな世界を創造する事にした
まず地龍パヤナークが大陸を作り出し、陽炎龍アマテラスが火炎を吐き出し太陽を作り闇を退けた。そして水龍ヴィヴィアーンは雨雲を作り雨を振らせて海や川そして湖を産み出し、風龍ククルカンが風をつくり大気を循環させマナを大陸中に行き渡らせると
大陸中にはいつのまにか多くの命が満ちあふれていた。
そして聖龍アルビオンは命たちに聖なる加護を与え
暗瞑龍ヴリトラは夜を作り出し命の成長を促すために試練を与えた。
やがて国作りを終えた六匹の龍たちは皆〝聖域〟と呼ばれる場所に身を隠し世界の均衡を守り続けている。
・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
『・・・これが、この世界の基礎である・・龍神信仰・・六龍神の神話です。』
アマテラスの言葉に嫁殿は静かに正座したまま真剣に話を聞いていた。
俺もその隣に胡坐をかいてぼんやりと話を聞き、考える。
・・・まぁ、よくある世界創造の話だわな。異世界でも龍っつーのは天地創造、人間の知識じゃ到底かなうわけのない頂上の存在としてあがめられているらしい。
・・・さて、となると問題は女神信仰のほうになるな。
・・大まかな予想はついちゃいるが・・・
すると、アマテラスのそばに控えていたイブキが俺たちを見る。どうやら今度はイブキが語ってくれるらしい。
「・・ならば、女神信仰はワシが語るとするかの」
・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
大陸が出来て数年経ったが、多くの災いが降りかかりはじめた。 疫病、災害、飢饉 多くの命が失われていく中でアーヴァロンに住む人々は度重なる災いにどう対処すべきかわからず女神や龍に祈りを捧げ続けていた
そんなある時のこと。アーヴァロンに〝一人の魔道士〟が訪れて人々にこう問いかけた
「この災厄が試練であると言うならば何故我々人間のみこのような扱いを受けねばならぬのだ。」
さらに魔道士は続ける
「もしや竜達は女神の意思に背き我々人間を滅ぼさんと企んでいるのではないか?その最たる象徴があのヴリトラと言う竜ではないか!」
魔道士のこの言葉をきっかけにヴリトラは災厄を呼ぶ竜として恐れられはじめた。
そしてその災いをはねのける力を女神は人類に与え これを後に《ギフト》と呼んだ。
そして世界が未曾有の危機に陥った時 女神は最後の切り札として〝異世界から勇者〟を召喚した。
そして勇者は〝身の丈よりも大きな聖なる槍〟を携えヴリトラの災いをはね除けたのでした。
・ー・ー・ー・ー・ー・ー
・・・ほら来た。この展開。
俺は口元に笑みを讃えたまま、隣で何かを考えこむ嫁殿に視線を移す
「三雲?・・どうかしたのか?」
イブキの言葉に、嫁殿は少し考えこんだ後、ぽつりと言葉を漏らした
「・・・二人の伝説、食い違いがある。」
「!」
・・・やっぱり嫁殿も気づいたか。まぁ、そりゃあそうだよな。
この女神信仰は意図的に〝龍神は悪である〟と人間に思わせるように語られていた。・・たしかに神っつーのは時に人間に辛く苦しい試練を与えたりする。
・・だが、その試練はけして人間が乗り越えられないような物じゃない。苦しいが、それでも人間の魂を成長させる。そんな意味が込められているのだ
「・・・・やっぱり理を歪めたのは人間側だったか。」
ゆっくりと腕を組み、天井に浮かぶ龍と女神の姿を怒りと冷静さが交錯した瞳で俺は睨む。
「・・・龍たちが世界を生んだ。だが“人間”がそれを恐れ、嫉妬し、勝手に秩序を塗り替えたってわけだ。」
「狗凶・・・・」
「・・・滑稽だな。“神を信じる”と言いながら、実際は“神を殺して”座に着こうとしてる。」
俺がそうつ呟くとアマテラスは小さく頷いた
『その通りです。・・・かの魔導士は人の身にして、神に近づこうとした最初の存在。
やがて魔導士は“偶像の女神を創り出しました。・・・・自身の理想を形にして。』
「偶像って・・・じゃあ・・・」
『はい。人の願望から生まれた偽りの存在。・・・魔導士が作り出した“贖罪の偶像”。
それが、アーヴァロンの女神信仰の正体なのです。』
・・・自作の神に祈り、異界から魂を喰らって勇者を量産してたってわけか。・・・人間ってのは、ほんとどうしようもねぇな。
「・・・奴は今なおこの大陸のどこかに封じられておると聞いた。しかし、奴の魔力だけはアーヴァロンの聖王に宿っておるのじゃ。」
・・・聖王だぁ?・・・
あの召喚の儀式の際にはそんな名前これっぽっちも出てこなかったが・・・
いや、今そんな話はどうでもいいか
「・・・なぁ嫁殿。今ならこの世界に呼ばれた意味がはっきり見えるだろ。アーヴァロンは神でも聖でもねぇ。・・・この世界の“病巣”そのものだ。」
「病巣・・・っ・・・じゃあ、どうすれば・・・」
「だったら俺たちのやることは一つ・・・“異界の神”ごと、喰い破ってやろうぜ。」
炎のように燃える瞳で嫁殿を見つめながら、俺は笑みを浮かべ言葉を返した
「・・・お前と、俺でな。」
「狗凶・・・!・・・待って、たしか召喚された時・・・」
ー 諸悪の根源たる魔龍皇を打つべく力をお貸しください ー
「・・・・ヴリトラ様なにも悪くないじゃん!!」
声を荒げた嫁殿に、アマテラスも深く頷いた。
『・・・そのとおりです。我が姉ヴリトラは心を痛め・・自らをアシハラ国の遥か北方にある山、黒雪山に封じ・・長い眠りについているのです・・・そして、可の女神信仰にて振るわれた聖なる槍・・それは・・・』
「・・・・・異世界から召喚された勇者達の魂で作られている、だろ?」
どうやら俺の問いかけは当たっていたらしく、アマテラスやイブキは静かに頷いた。
「・・・・魂を、“槍”にしただぁ?」
俺の口から語られた事実に、嫁殿はぐっ、と拳を握りしめ、その瞳は炎のように光っていた。抑えていた怒りが、唇の間から唸り声のように漏れだしていく
「フザけんな!!」
「・・・嫁殿・・・・」
床を拳で叩く。その一撃に神殿の柱がわずかに軋む。息を荒げながら吐き出す言葉が、俺には痛々しく見えた
「異界の命を呼び寄せて、英雄として利用して、挙げ句の果てに魂を砕いて武器にするとか・・・そんなモン、正義の名で呼べるかッ!!」
膝が震えながらも、唇を噛みしめながら、嫁殿は声を漏らす
「じゃあ・・・勇者たちは・・・“救われた”んじゃなくて、“喰われた”んだ・・・。」
・・・嫁殿の心にはきっと、引き離されたあのオトモダチが映し出されているのだろう。お前を排除する世の中で、お前を慕ってくれた宝物・・
「・・・・そんなの、誰が許すもんですか……ッ!!」
震える嫁殿の肩を優しく抱き寄せ、俺は言葉をかける
「・・・・嫁殿。泣くな。 “帰れなかった奴ら”の想いは、きっとこの世界のどこかに残ってる。
だったら俺たちが、その想いを“救って”やればいい。」
「っ・・・・それにこのままじゃ、勇者に選ばれた夜ちゃん達が・・」
「確かにそうだな・・・けど・・ダチを助けたいんなら、まだ間に合う。・・・そうだろ?」
瞳を細め、俺は嫁殿から視線をアマテラスに移して、その巨体を見据える
「・・・・なんとか勇者召喚された奴らを、元の世界に戻す方法はないのか?」
俺の言葉にアマテラスは深く息を吐き、尾をゆるやかに地に巻く。その声は暖かく、まるで道しるべのようだった
『・・・残りの六竜、全てに会い神器を得るのです。さすれば・・ヴリトラ姉様も眠りから目覚め、貴方たちを元の世界に帰す門を作り出すことができます・・それに他の龍神の神器があれば、我が姉──暗瞑龍ヴリトラの“封印”は解かれるはず・・彼女の力こそ、この世界の“原初の夜”。・・・夜が戻れば、偽りの光は消え去る。』
・・・・あ?ちょっとまて今なんていった?そなた〝達〟?
「じゃあ・・・神器を集めてその山にいけば・・・ヴリトラ様に会える?」
『……ええ。しかし気をつけなさい。可の聖騎士たちも黙ってはいないはずです・・・・・三雲、そして狗凶・・六竜に会い、印を得て・・そして我が姉の封印を解き、ヴォーディガンの野望を打ち砕いてくださいませんか?』
「よ・・・よし!狗凶!」
嫁殿が期待を込めた眼差しで俺を見つめてくる。あぁ、そうだな。こうなりゃあ・・・やるしかねぇよな。
俺は嫁殿の視線に笑顔を浮かべ煙管を咥えて煙を吐き出して答えを返した
「ーーーーー やなこった。」
「そうだよね!嫌だよね!うんうん・・・・・・・・・・・・はぁああああああああ!!!?」




