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森の姉妹達編 プロローグ

1938年10月 スオミ・カレリア地方 

ソビエト人民共和国連邦との国境付近


「リーリャ?洗濯物はよくって?」「はい!ソフィ様」

「ソフィや、ありがとうねえ」「これくらい、なんともないですわ。おばさま!」

二人は農家のエルフだった。人間の老夫婦と一緒にスオミの地で農業を営む、いたって普通のエルフだった。

ブロロロロロロロ。突如として空から聞こえる音にソフィは訝しんだ。

「あら?何の音かしら?」

その平和は一瞬で崩れ去った。

ソ連の地上攻撃機が、彼女らの家と畑と家畜を機関砲を掃射し、爆弾を落とし、老夫婦を殺した事によって。



「次!出血を止める!急いで!」

眼鏡をかけた青色の目をした少女はせわしなく叫んだ。

その耳はエルフ特有のとんがりを見せていた。

負傷した民間人たちをトリアージし、早急に手当てしていた。

「助かる人は出来る限り処置する!輸血液と治癒ポーションを!急いで!」

その手は血と治癒ポーションでぐちゃぐちゃになっていた。

外からは銃声と砲撃音、そして悲鳴が聞こえていた。

「戦える人は戦って!猟銃でもトンカチでも、とにかくなんでもいい!でなきゃ皆殺される!」

ルイザは叫んだ。



少女が一人、空を見ていた。

ぼさぼさの髪に、ソ連製ヘルメットに、ボロボロの服。

緑に光る目の瞳孔は開き、口から涎を垂らし、只ふらふらとしながら空を見ていた。

その耳は長く、整った顔つきからその少女がエルフであることは明らかだった。

「あう……」

その少女の傍らには、無数のソ連兵共の死体の山が積み重なっていた。

あるものは頭を斧でかち割られ、あるものは木の枝で眼孔を抉られ、あるものは銃剣でめった刺ししされていた。血の海であった。

少女の顔と服は、彼らの返り血で濡れていた。



「母さん、嘘だよね……そんな………」

エリンは絶望していた。手を縛られ、目の前で母親が凌辱されているのを見ることしか出来なかった。

あの優しくて強かった母親が頭を撃たれ、その亡骸を無残に甚振られるのを。

『手間かけさせやがってエルフの害獣如きがよ』

『まあいい、死体はどうやってもいいっていわれてるからな、終わったらあのガキも楽しもうぜ』

エリンには分からぬ言葉でソ連兵が邪悪な笑みを浮かべた。母を殺した仇共が。

「殺す……」

『あ?』

「お前ら全員殺してやる!!」

エリンは咄嗟の力で縄を破り短刀を掴み、片方のソ連兵の首を斬った。その顔に返り血が付いた。



「何が起こっている……」

ユーケフィアは旧友とその子供の住む村に狩った獲物の毛皮等を持っていく最中だった。

「何が起こっている?」

その村から火の手が上がり、黒い煙と赤い炎が上がっていた。エルフと人間が暮らす平和な村だった場所が。ユーケフィアの長い耳が、その惨状の音をとらえていた。

「何が……起こっているッ!!」

ユーケフィアの血中アドレナリンが加速し、かつての戦いの記憶が蘇る。

嫌な記憶だ。だがその記憶が彼女を迅速に次の行動に移させた。

すぐに自分の拠点の小屋に戻り、あの大戦の獲物を取り出した。

Gew1895(V)。鉄十字帝国製のボルトアクションライフルを。

「………狩りの時間だ」

その目は緑色に輝いていた。冷徹な殺意を持って。



武装エルフ

Guns Elfs Sisters


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