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百合ロボ娘VS大怪獣 〜ガールズ・ロボット・ラブ〜  作者: 紫電
第三話「灼熱地獄!人が融ける夏!」火煙怪獣ヒサン 登場
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熱中症には気をつけよう

暑い夏にはちょうど良い回かもしれませんね

「暑い...体がソフトクリームみたいに溶けそうです...」


 MINT隊員リンドウは、既にびしょぬれのハンカチで額から溢れる汗を拭いながら弱音を吐いた。


「ただいまの気温は四十度、水分補給は欠かさずにお願いしますね」


 うんざりした顔で温度計を眺めながらも、ユキヒラは隊長らしく冷静に部下へ指示を出す。


「私が発熱したときの最高は四十二度だから...よし勝った!」


 暑い中でも相変わらず元気だが喉の渇きには勝てず、既に何本もスポーツドリンクをガブ飲みしているのはMINTエースパイロットのアオイ隊員だ。

 

「...それ自慢するところじゃ...ないよ」


 MINTの三人は、喧しい蝉の鳴き声を聞きながら茂みに挟まれた砂利道を、麦わら帽子にワンピース、素足で履いたサンダルと如何にも夏といった服装で歩いていた。


挿絵(By みてみん)



 別に彼女らは夏休みに来た訳ではない、明らかに異常な暑さが観測された、東北地方の山奥に存在する寒村・陽都霊へ調査に訪れていたのだ。


「自慢も我慢もこれまでです、見えましたよ」


 心無しか嬉しそうなユキヒラが指差したのは、ボロボロで小さな宿屋だった。


「え〜っ、あそこ扇風機くらいしか無さそうじゃないですか?」

「うふふ、失礼ですね、扇風機はもちろん冷蔵庫くらいはありますよ」

「あちゃあ!そう言えば、あの宿屋は隊長の実家だった」

   

 アオイ隊員はやってしまったなあと言わんばかりに、麦わら帽子をずらしてポリポリと頭をかいた。


そう、この陽都玉村(ひとだまむら)に建つ小さく古びた宿屋こそが、ユキヒラ隊長の産まれた家でもあった。


つまりこれはユキヒラにとって任務を兼ねた里帰りなのだ。


「ただいま戻りましたよ、お母さま」


 ユキヒラが宿屋の暖簾をくぐり扉を開けると、正座をした着物姿の女性が出迎えてくれた。

  

「皆様よくぞいらっしゃいました。わたくし当宿屋の女将であり、ユキヒラの母フユと申し上げます」


 フユはそう言って頭を下げる、この宿屋は数日前から予約済み、実の娘とその部下三名が今回のお客様というわけだ。

 

「これは丁寧にどうも、私はアオイ、いつも隊長には厳しくご指導を...」

「こほん」 

「ああいや、優しく丁寧な教育を受けさせていただき、それはもう楽しく愉快に働かせていただいてます!」


 わざとらしいユキヒラの咳払いにビビって、アオイ隊員は思ってもないことを言う。


「私はリンドウです...あの...隊長とは...」


 恥ずかしがってモジモジするリンドウ隊員の代わりにユキヒラが話そうとするも、フユが先に口を開いて遮った。


「うふふふ、良い仲なのよねあなた達、娘が式を上げる日も近そうだわ」


  微笑むフユの表情をみてリンドウは、確かに娘であるユキヒラの笑顔と似ているなと感じた。


「あっ...はい...ありがとう、ございます?」

「お母さま、私からもお礼を言わせてください」

「まあ、あなたは大人になっても甘えん坊なのねぇ」

 

 ユキヒラは今自分が汗だくなのも忘れて久しぶりに再会した母を抱きしめ、そんな娘の頭をフユは優しく撫でた。

 

「あたたかい...親子愛だね...」

「ああ、親御さんに認めてもらえたのは良いことですがね、ふたりとも寿退社で、残された私一人で怪獣退治なんてのは勘弁願いますからね」


 涙ぐむリンドウ隊員とは違って、アオイ隊員はひとり空気を読まずに白けた感じだ。

  

「安心してください、使命は死ぬまで果たしますよ、アオイ隊員ひとりでは心配ですからね」

「言えてる...」

「ちぇ〜っ!」


 フユは娘と部下のやりとりを何時までも見守っていたかったが、飽くまでも今は仕事の時間だ。


「皆さま暑かったでしょう、さあ、こちらへ」


 女将の仕事としてフユは先ず、ユキヒラたちを客室に案内した。


「お母さま、今日は客としてまたMINTとして調査に来たんです」


 淑やかに茶碗蒸しを食すリンドウはともかく、扇風機を浴びながら出された海鮮料理に遠慮なく齧り付くアオイは忘れていそうだが、今回の主な目的は飽くまでも怪現象についての調査である。


「この異様な暑さの事ですね」


 宿屋の中は風鈴により体感的に、また扇風機で肉体的に涼しくはなっているが、それでも居るだけで汗が止まらないくらい暑い。


「はい、何か心当たりはありませんか?」

「あります...火陽(ひひ)様を封じていた祠が、何者かに破壊されました」

「なんですって!!!」


  アオイ隊員が思わず鯛の骨を喉に引っ掛けてしまう程の勢いで、ユキヒラは大声をあげて立ち上がった。


「どうしたんですか...隊長...」

 

 危うく箸で挟んでいた茶碗蒸しの銀杏を落としかけたリンドウ隊員が、ユキヒラに不安気に尋ねる。


「火陽様はこの村に伝わる、本来は豊作になるように程よく陽を照らして村人を助けていた、太陽を司る神様です」

「怪獣が伝承になったパターンかぁ、結構ありますよねえ」

「或いは伝承が怪獣になったか...」


 必ずと言って良いほど、土着信仰と関係する怪獣は、倒そうとすると村人がクレームを入れてくるため、MINTにとって違った意味で厄介な相手になることは免れない。


なので今回はそのパターンかと、アオイ&リンドウはげんなりしてしまう。


「ですが異様な暑さに村が見舞われた年のこと、火陽様は巨大な姿となり、村を焼き尽くさんとしたのです」

「やっぱりそれは怪獣が成長したとしか思えませんね〜」

「そこで村一番の勇敢な若者が怪獣を封じ込めたのが、あの祠だと言われています」

「そりゃあ随分ありきたりな御伽噺ですなあ」


  警告音に似た電子的な音が、座布団の隣に置かれたユキヒラのバッジが鳴った、本部で待機中のオペレーターからの連絡だ。


「"こちらMINT、ユキヒラです、どうしました?"」

「ゴキブリでも出たんじゃない」

「もう...アオイ隊員...」

「"はい、なるほど、生物反応があるんですね、分かりました、攻撃します"」

 

 そう言うとユキヒラは通信を切り、こちらを見る部下二人に対して深く頷く。


「やっぱり怪獣が出たんですね」

「はい、さあ、皆さんも着替えて...」

「みなさま、その前に少し」


  MINTのメンバーが隊員服に着替えようとしたとき、フユが待ったをかける。


「そんな汗だくでは戦いに集中できないでしょう、先ずは湯に浸かりなさい」

「しかし...!もし怪獣が暴れ始めたら」

「いいから入りなさい」

「えっ?はあ...」


 母親に強く背を押され、ユキヒラは渋々、温泉に入ることにした。

炎属性の怪獣多いよね

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