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百合ロボ娘VS大怪獣 〜ガールズ・ロボット・ラブ〜  作者: 紫電
第二話「破滅の怪音」音壊怪獣アポカリオン 登場
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天使よ断末魔の音を吹け

 怪獣作品は自由度高いから考えていて楽しいです。

  またも終末を報せるラッパの音が鳴った三浦半島上空に、ユキヒラの乗る一号、リンドウ隊員の乗る二号、アオイ隊員の乗る三号、以上三基のイキシアは線を結べば三角形の点となる場所に滞空中、後は指示を待つのみだ。


「"発射、許可っ!!"」


 防衛軍長官から指示が出た瞬間イキシアは自分たちで作り上げたトライアングルの中心を目掛け、一斉に赤色のレーザーを発射する。


三つの赤い直線は途中で交わって、一見すると何もないが、実は音そのものと化した怪獣がいる場所の真上に到達、そこで真っ赤なレーザーはドーム状に広がって怪獣が潜む空域を隙間ひとつなく包みこんだ。


「よし...!」


 取り敢えず正確に真空状態を作り出すことには成功した、後は怪獣が実体化するのを待つのみだ。


「...っ、来る!」


  リンドウ隊員が空気の変化を察知すると、真っ赤なドームに巨大なヒビが入り...


    "ブオオオオオオンッ!!!!"

  

 遂に巨大な獣の正体を露わにした破壊の音が飛び出してきた、頭の上には黄色い輪っかが浮遊し、背中からは白い翼が広がり、巻き貝の如き肉体のあちらこちらからは、吹奏楽器に似た器官が生えている。

 

「なんて神々しい姿...まるで人類を破滅に導く為に遣わされた天使...!」 

   

  操縦席の中から神聖さすら感じる怪獣を間近で見たリンドウ隊員は、今までとは違った理由で声を震わせた。


「天使でも悪魔でも人類の敵ならば逆に破滅させねばならん、以後怪獣をアポカリオンと呼称する、とにかく攻撃開始だ!」


 モニター越しで見ても計り知れない危うさを感じとった長官は、焦燥感に背中を押されて攻撃命令を出した。


「了解!もう二度と下手くそな演奏できなくしてやるよ!!」


  イキシア三号は、対巨大生物用のガトリングガンを連射する!!


「人々を...破滅させる訳にはいかない... ... ...」


  イキシア二号は、猛毒を含んだミサイルを発射!!


「...冷却レーザー、発射」


  イキシア一号は、冷却レーザーを発射!!


「天国にでも帰りなよ!!」


  そうはいかなかった、アポカリオンは肉体に直撃しても自分にとって脅威にならないガトリングガンは無視し、猛毒ミサイルは、背中から生えたラッパに似た器官から強酸を噴射して迎撃。


冷却レーザーは口吻から吐き出した怪虫で壁を作り、それを盾にして防いだ。


「あいつ、次は何をする気だ!」


 アポカリオンは翼を羽ばたかせると、猛スピードで三浦半島の海水浴場へと着陸した。





「"着陸してから動かないな"」

「"今度は陸地でやろうぜ...久しぶりに怒っちゃったよ...ってこと?"」

「"あんた真面目な様でいて、ときおり呑気だね"」

「"?"」

「"天然かい!"」


  だがリンドウ隊員の考えは案外的を射ていた、アポカリオンは誕生してから今まで自分の感情を昂らせた存在に遭遇したことがないため高揚しているのだ。

   

「"洒落にならない被害出されて怒ってるのは我々人類の方だけどね"」   


 アオイ隊員の乗るイキシア三号も急降下し、吐き出される強酸液の嵐を潜り抜けながらアポカリオンにギリギリまで接近―――強酸液を発射してくる器官と片翼の付け根をレールキャノンで撃ち抜いて肉体から乖離させ、安全圏まで離れてみせた。


「"やはり...アオイ隊員の操縦技術は...天才的ですね"」


 同僚の活躍に感心しつつリンドウ隊員はアポカリオンから数十キロ上空へと移動すると、真上から残った片翼を特殊電磁レーザーで撃ち抜いた。

  

「"貴女も人のことは言えませんよ"」


 などと言いつつユキヒラ隊長もアポカリオンに真正面から接近、不自然な速さで肥大化した拳を振り翳されても、それを躱しつつ脚部に冷却レーザーを直撃させ動きを封じてから距離を取る。


「"さあ、とどめを..."」


 いよいよアポカリオンの最期だと思われたそのとき、満身創痍の全身から超強力な破壊音波が発された。


「"これ以上はまずい、墜落する!!"」


 破壊音波の振動によりイキシアの機体は大きく揺れ、操縦も効かなくなった。


そんなピンチにMINTが陥った時だった、猫鈴猫とその背中にしがみついている香燐が通りかかったのは―――!!


「お姉さま、キス!」

「わかったわ!!」


  香燐は背中から飛び降り青空へと放り出される、猫鈴猫は体勢を瞬時に立て直して、愛しのお姉様の鼻と自分の鼻をくっつけた。


そして空中で巨大化した猫鈴猫はまず優しく掌に包みこんだ香燐を海水浴場付近にある岩場にそっと下ろし墜落するイキシア三機を頭と両腕でキャッチした。

  

「おお、猫鈴猫ちゃん...」

「またしても彼女に...」

「これが話に聞いていた...」


  猫鈴猫はイキシアを砂浜に置くと、接近してきたアポカリオンの懐に前転で潜り込み、強烈なパンチでふっ飛ばして破壊音波を鳴り止ませた。


その際に冷却されていたアポカリオンの脚は砕け散るも、植物みたいにすぐに生えてくる。


(再生力もあるけど生命反応は微弱か、既に弱ってるなんて人間もやるじゃん...じゃ、とどめを!!)

   

 ふらふらと立ち上がるアポカリオンを倒すため、猫鈴猫はアルギュロ・スペシャルをぶっ放そうとしたが...


「にゃっ!?」


 アポカリオンは猫鈴猫でも反応しきれない速度で輪投げの要領で頭上のリングを投げて、彼女の体を拘束してしまった。


(やば...脱出成功率、脱出方法を...0%!?)


  戸惑う猫鈴猫にアポカリオンは容赦ない追撃を食らわせる、拘束されて身動きのとれない猫鈴猫の胸に空の如き青い光線を浴びせたのだ。


挿絵(By みてみん)


「う...ああっ...」

「やばっ、このままじゃ、猫鈴猫がやられる...あ」


 香燐は傍に落ちていた鉤爪ロープに目をやる、イキシアも動けない今、助けられるのは自分しかいない。

 

「おらあああああっ!」

   

 全力ダッシュで香燐は猫鈴猫の傍...を通り抜け、わざわざ、ゆっくりと捕えた獲物に躙り寄るアポカリオンの足元へ。


(なにしてんの、お姉さま...踏み潰されちゃうよ!)


 香燐はロープを上向きに思い切り投げて、猫鈴猫を縛り上げる輪っかに、ロープの先端に備わる鉤爪を引っかけた。


「怪獣だからって人間舐めんじゃないわよこんにゃおおおおおおッ!」

   

 全身全霊でロープを引っ張る香燐、アポカリオンはその光景に気を取られている。


 挿絵(By みてみん)


(脱出成功率が上がった、極僅かでも緩みができたから...勝てる!)


 体内に怪音波を送られて封じられていた機能が使用できるようになったいま、猫鈴猫は全身を発熱させてリングを融かした。


(ナイス、お姉さま!)


 リングから解放された猫鈴猫はアポカリオンにタックルしてよろめかせると、尻尾の付け根と頭部を支えて持ち上げ、砂浜の方へ投げ飛ばす。


「こんにゃああああ!」


  香燐の近くにあった危険は遠ざけられた、いまだ!猫鈴猫はアポカリオンが立ち上がった瞬間に、肘から銀色の光の刃を出して飛び掛かると擦れ違いざまに胴体を両断。


そして肉体を二分割されて崩れ落ちたアポカリオンの上半身、次に残った下半身の順に簡易版アルギュロ・スペシャルを放って爆散させる、猫鈴猫は死体処理も怠らない。





 アポカリオン撃滅の翌日、前々から取材の予定を入れていた神戸コンサート会場に香燐は訪れた。


「...ガラ空きどころか、お客様が一人もいないなんて...」

「そうなんですよ、私も来てみて驚きました」


 戸惑う香燐の背中に、辛気臭い声が浴びせられる。


「こんにちは、本日インタビューを...って感じじゃ、ないですねこれ」


 香燐が振り向くと、演奏者であり本日の取材相手の蒼白な顔があった。


「チケットは完売したんですが今日になって皆様キャンセルされて」

「ま、まあ、予定時間は早まりましたが、取材だけでも...」

「はい...」

   

 彼女には気の毒だが本来の予定より早く仕事が終えられそうで有り難い、内心では土産はなに買おうかと浮かれながら香燐は落ち込む演奏者と待合室へ移動した。


「...しかし理由が知りたい…やり場のない気持ちを抑えたい、一曲聴いていただけますか?」

「...えっ、いいんですか?ありがとうございます!!」

「では早速一曲...」

   

 演奏者は、待合室の隅に置かれていたラッパを手に取って鳴らし始めた。


「あ〜...ラッパかぁ...」

   

 見事な演奏に感嘆しながらも、なるほど客が来ないわけだと納得する香燐であった。

 2話目にしては割とスケールがデカかったかも、まあ怪獣ですからね、はい。

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