体育会系こわい
家でフィットボクシングする方が楽しいよ!
「入会希望で...す?」
怪獣メタボンすら痩せたところを目の当たりにした事で火がついた香燐は、痩せるために近所のジムへ猫鈴猫を連れてやってくると、MINTのメンバーが鍛えている光景を目の当たりにした。
「まだまだですね!二時間では物足りなくなってきました」
両手に二十キロのダンベルを手に、ランニングマシンの上をユキヒラ隊長が走っている。
「おおおおおおお、五百六十回目えええええ!」
若いエネルギーが有り余っているアオイ隊員も、仰向けに転がって、いかにも重そうなバーベルを高速で上下させている。
「あ...ああ...何発目か数え忘れちゃいました...」
では一番か弱く臆病そうな、射撃の名手という特徴のリンドウ隊員は非力なのかと思いきや、サンドバッグをパンチで破裂させており香燐と猫鈴猫の目を丸くさせた。
「...怪獣と戦う職業である以上、厳しい肉体訓練は当たり前なので、どちらかといえば技術担当の内気なリンドウすら強靭な体になるのは、当然か」
香燐は記者らしく、本来の目的であるトレーニング申込みを忘れてメモを取る。
「そして...」
次に香燐が注目したのは、MINTの全員が全員、スポーツジムらしく動きやすい服装なのでハッキリと腹筋が割れているところ。肥満とは縁遠い事が一目でわかる。
「よし、今日はやめときましょう!」
自分の腹をつまんでみた香燐は、急に恥ずかしくなったのか、休憩がてら談笑するMINTに気付かれないようにこっそりとジムを出た。
「まあまあ、メタボンのせいで食料品の値段高騰してるか、嫌でもダイエットになるよ、お姉さま」
「なんたる皮肉...肉?ああ、焼き肉食べたくなったわ!!」
「駄目だこりゃ...」
猫鈴猫はすっかり呆れ果てて、食欲に支配されたお姉様が、例えセイウチみたいになっても愛せるかを考え始めてしまった。
その夜...メタボンの肉片が降り注いだ地域で、怪事件が起きる。
「聞いてくれ、うちの鶏がまったくいなくなって!」
「あんたもかい、私んとこは豚がみんな消えちまっただ!」
育てていた鶏や豚といった家畜が消えてしまったことを報告しに、地域住人らが八百屋の二階に集まっていた。
「泥棒だべかなあ?」
「人の力じゃ無理があるさ」
「じゃあ怪獣か?」
「怪獣は猫鈴猫ちゃんが倒したぞ」
頭を痛めていても仕方ないので、調査はMINTに任せようと、取り敢えず肉屋の店長が電話をかけようとする。
だがMINTへ通報が入ったのは、この日ではなく、なぜか次の朝だった。
「隊長!八百屋が丸々無くなっているとの通報がありました」
「潰れた...?夜逃げ...?じゃあ通報なんてしませんよね、物理的にですか」
「はい、根こそぎ、八百屋さん...建造物ごと無くなったそうです」
このオペレーターと隊長の会話に耳を傾けていたアオイとリンドウは怪獣の仕業に違いないと察し、命令を待たずに調査出動の準備を済ませた。
「確かに根こそぎ八百屋がなくなっていますね」
いざ例の八百屋があった筈の場所に来てみれば、通報通り、跡形もなくなっていた。
「中に居た民間人も行方不明だとか」
「...ん...なんか...変な音がする」
リンドウ隊員が異音に気付いて、穴の中に地下数百メートル先まで照らすライトを向ける。
「怪獣!!メタボンが...います...!」
ライトが照らした巨大な肉付きの良い顔は、痩せる前、最初に現れた時のメタボンの顔そのものだった。
「再生したのかあいつ!とことん人間の食欲を奪っていく怪獣だなあ!!」
「八百屋ごと人間を飲み込んだのですね、特殊ナパーム弾でいまのうちに仕留めましょう」
「了解!」
一度にクジラ数百頭を殺害できる威力をもつ特殊ナパーム弾を三人は穴の中へ放り投げて伏せる、暫くして爆発音が鳴り、激しい揺れが起きた。メタボンの潜む地下深くはいまや灼熱地獄に違いない。
「凍らされたり燃やされたり、災難なやつ、被虐趣味でもあってくれると罪悪感もないんだが」
「いや...災難はまだ続くみたいですよ、我々に対してですが!」
「なんてめんどくさいんだ!年末調整並にめんどくさい!!」
全身のあちこちに小さな火がついたメタボンが、穴から飛び出してきた、さっき少しでもメタボンに同情したことをアオイは後悔した。
「"攻撃!!"」
MINTは怪獣の足元から離れつつ、携帯していたミントガンで銃撃!一撃でビルを粉砕する火力で応戦するがメタボンには効果が無い。
「あちちち!!」
メタボンは自らの脂肪を燃焼させつつ口から火炎を吐きだす、五万度の火炎放射により走っていた路面電車をはじめ公園や交番も炎上・爆発していく。
「くあっ...!!」
怪獣は地団駄を踏み、激しい揺れを起こしてMINTの態勢を崩す、そこで大きく口を開くて鋭い牙を露出して彼女たちを喰らおうと手を伸ばした。
あっ!MINTが食べられる!!




