この怪獣は痩せた方がいい
気楽に見れる話すきですね
「ぶよぶよの肉塊に、丸々と肉ついた頭と豚のような手足が生えたような醜い怪獣が、凄まじい勢いで走り...というか、もはや転がっていた。
「ぎゃああああっ!!」
一見するとコミカルでも怪獣は怪獣だ、自動車を、銭湯を、一軒家を、容赦なく押し潰して甚大な被害を出していく。
だがこの怪獣で一番厄介なのは、街を破壊しているだけでなく、転がった周囲にヌメヌメした液体を飛散させていること、これが凄まじく迷惑だった。
「うわっ、ハンドルが!!」
「滑るっ、今日さえ乗り越えればゴールド免許なのに!!」
飛散した液体の上を車が走ると次々とスリップ、電柱や公衆電話に突っ込んで爆発・炎上、さらにはコントロールを失った車同士でぶつかって連鎖的に...という甚大な事故を発生した。
暫く暴れ回った怪獣は、やがて動きを止め高と思うと破壊した街を見下ろしてキョロキョロと何かを探しはじめる。
「ああっ!ちきしょう、おれの商品が!!」
飲食店を破壊した際に露出した魚や肉を見つけると、怪獣は鷲掴みにして勢いよく口の中へと放り投げはじめる、そんなこんなでイキシアが到着した時には街は悲惨な状態になっていた。
「"あの液体は...汗のようです...隊長..."」
リンドウ隊員の言及した通り、街を中に飛散した液体は怪獣の汗であった。
「"うげえ...なんか脂ぎってるし、肥満体型どころか巨大怪獣の汗とか食欲失せるなあ"」
「"引火の危険性がありますね、下手に攻撃できない...取り敢えず動きだけでも封じましょう"」
ユキヒラ隊長はそう言うとイキシア一号から冷却レーザーを発射、肉塊の如き怪獣の体をあっという間に凍結させて動きを封じた。
「"一旦、帰還します"」
「"了解、私たち来た意味ないなー"」
「"了解...あるよ、意味は...念には念を入れなきゃだから...」
こうして怪獣の動きは停止したのだが、この後は処理方法を考える必要がある。
「凍結した巨大怪獣!粉砕か移動か、処理は防衛軍上層部の指示を待つ状況ーーー」
翌朝、香燐は凍結した怪獣を眺められるビル街の広場に訪れてカメラでバシバシ撮影していた。
「お姉さま、人間って呑気だね」
「ん?ああ...」
猫鈴猫が見ているのは複数の屋台、饅頭、たこ焼き、肉まん、どいつもこいつも凍結している怪獣の姿を模した商品を売っている。
怪獣見物ついでに買っていく客が多数で、どれも売れ行きは好調の模様、怪獣が出した被害を怪獣で回収しているわけだ。
「流行りに乗るのは商売の常識だもの、呑気どころか生きてくために必死なのよ」
「そうなんだ、でもお姉さま、毎日あんなに食べてるんだから記事にするためとか言って買わないでね」
「見透かされてるわ...」
がっくし、猫鈴猫に先手を取られてしまった香燐は肩を落とした。
「むきーっ!こんなに良い匂いが漂ってるのに我慢できるわけないじゃない!!」
だがそれは怪獣にも同じ事が言えた、実は怪獣は凍結状態でも脂肪を消費しながらも生きていたのだが暴れる気はなく食後の睡眠をとっていたにすぎない。
しかしいま、人間たちが出した屋台から流れてきた食べ物の匂いに嗅覚を刺激された事で、全身の皮膚から放熱、まとわりつく氷を溶かして怪獣は覚醒した!!
「きゃっ!怪獣が生き返ったわ!!」
「仮死状態だったんだよ...ていうかさ...なんだか」
グギャアアアスッ、寝起きの咆哮をあげる怪獣の姿は凍結する前とは随分異なっていた。
「めっちゃ痩せてるわね!?」
そう、ブヨブヨのメタボピザ野郎みたいな体型だった怪獣はすっかりスタイル抜群で精悍な顔つきになっていた。
「寒ければ寒いほど脂肪を消費しやすい...並の生物なら死んでる寒さでもあいつにとってはクーラーの効いた部屋程度の感覚なんだ...」
「なるほどその手があったか」
「並の生物なら死んでるっていったじゃん!」
「けどまずいわね、あいつあんなに痩せたって事はかなり空腹なんじゃ...」
実際かなりの空腹に苛立っていた怪獣は、見物に来ていた人間を鷲掴みにしては口を開き、そこへ放り投げ入れていく。
「...まるで刃が立たないな」
猫鈴猫が指先からガトリングガンを連射して怪獣の腕や胸を弾丸を浴びせるも、まったく気にせず食事を続ける。
猫鈴猫が指先からガトリングガンを連射して怪獣の腕や胸を弾丸を浴びせるも、まったく気にせず食事を続ける。
「やっぱり人間も、しっかり食べ物の対象に含まれちゃうわけね!!」
ギョロっ。怪獣の目玉が香燐を睨みつけたので猫鈴猫がその前に両腕を広げて立ちはだかる、猫鈴猫VS怪獣の戦闘開始かと思われたこのタイミングで、再びMINTのイキシアが三機やってきた。
「"頭のかたいおえらいさんめ〜!だから、いまのうちに粉砕する様に頼んだのに"」
「"火炎放射もミサイルも使えないし...怪獣サイズを...粉砕するアイテムなんて直ぐには作れないから...仕方ないよ...」
「"上層部の方々も簡単な仕事ではありませんからね、脂肪を消費したいま、もう一度凍らせれば良いんですよ"」
イキシア一号は、またもや冷却レーザーを怪獣めがけて発射した。
「"あれ…外れた?"」
冷却レーザーを食らう直前、偶然にも空腹によりフラフラとよろけて怪獣は二度目の凍結を免れたのだ、人間を数人食べた程度では腹八分どころか腹六分にも満たなかったようだ。
「"きゃっ!!"」
怪獣の口から、鋭い金属に近い素質を持つ牙が発射されてイキシア一号に損傷を与えた。
「"やりますね、メタボン!"」
「"メタボンって..."」
「"隊長〜!もうあいつメタボンというよりガリベンですよ見た目的に!!"」
緊張感の無い緩い会話が交わされているが、状況はかなり危機的だ。
「お姉様!」
「わかったわ!」
猫鈴猫は香燐の鼻に自分の鼻を密着させることで、その小柄な体を数十倍にも巨大化させた。
「にゃああっ」
飛んでくる金属牙を手刀で全て叩き落とし、猫鈴猫はタックルでメタボンをダウンさせる。
「ふんにゃっ」
メタボンの体が猫鈴猫の両腕に持ちあげられ、空高くへと放り投げられた!!
「"アルギュロ・スペシャル!!"」
空中にてメタボンは必殺の銀色光線を浴びせられたことによって爆発四散、極小サイズ並に細切れにされた肉片は、埃... ... ...と表現するのは如何なものかと思うのでロマンチックにいわせてもらえば、まるで雪のように街へと降り注いだ。
コミカルな怪獣でも被害はやばめ!




