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百合ロボ娘VS大怪獣 〜ガールズ・ロボット・ラブ〜  作者: 紫電
第四話「凶悪怪獣は宇宙の犯罪者」反射怪獣カガビラン登場
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儚き姉妹愛

姉妹百合って、いいよねえ!

挿絵(By みてみん)


 住宅や娯楽施設が密集したエリアを少しぼると見える、発電所よりも高い丘に建つ第一中央病院、ユキヒラ隊長が落ち着かない理由はここにあった。


結椛(ゆいか)、入るよ」

   

 無地のブラウンシャツに黒いジーンズというシンプルなファッションのリンドウ隊員が、三○三号室のドアをノックする。


その手には鮮やかな花、脇には鞄が抱えられている。


「はーい!」


 元気な返事がかえってきたので、リンドウが病室のドアを開けて中に入ると、どことなく彼女に似た、儚げな雰囲気を漂わす少女がベッドの上で手を振っていた。


「お見舞いに来てくれたんだね、お姉ちゃん、嬉しい!」

   

 凛憧 結椛はリンドウ隊員の実妹で、幼少期より体が弱く幾度と入退院を繰り返している。


ユキヒラが落ち着かないのは、実に半年ぶりに妹の見舞いに行くリンドウ隊員が、なぜ全く来てくれなかったのかと辛辣な態度を取られていないかが心配だったからだ。


「私わかるけど、たぶん長くないと思うんだよね」


 ベッドの傍に置いた椅子に腰掛け、今にも泣きそうな表情を浮かべる姉の手の甲に自分の掌を重ね、結椛は笑顔で言った。


「縁起でもないこと言わないで...きっと完治するから...

...」


 いよいよ涙が滲み始めた泣き虫な姉の言葉に、結椛は首を横に振る。


「それまでにお姉ちゃんの活躍するとこを、ニュースや新聞を通してじゃなくて、生で見てみたいんだ」

「駄目だよ、危ないんだから」

「...ごめんね、お姉ちゃん。わたしが病弱で、お金が掛かるばかりに危ないお仕事をさせちゃってさ」


 リンドウ隊員がMINT...の前に防衛軍に入隊したきっかけは妹の医療費が必要だったから、強大な未知の存在と戦わねばならず、殉職者も少なくない上に、優秀なスキルが必要な仕事ゆえに月の給与は平均五十万ほど貰えるので、これしかないと思ったのだ。


「いいんだよ、お陰で素敵な出会いができたから」

「それそれ、友達すらできるか不安だったのに恋人ができちゃうなんて、びっくりしちゃった!」

「こっ、こら...」

「私も...」

  

 結椛の明るい笑顔は悲しみと悔しさが含まれている、別物に変わる。


「私もお姉ちゃんの恋人になりたかったな」

「え?」


 いちばん想いを伝えたいはずの最愛の姉には聞こえないように、今にも消えてしまいそうな儚い告白。


ずっと昔からリンドウ隊員に対し、姉想いの域を超えた恋愛感情を結椛は密かに胸の中に隠していた。


「あいたたたたた!!病院じゃ静かにしないと駄目なんてわかってるけど、こんなに痛いと叫ばずにはいられないわよ!」

「自業自得だよ、怪獣からは身を守れるけどアルコールからは無理だからねー」

「飲みすぎた私が悪いんじゃないわ、酒を飲まずにはいられない程のストレスを与えてくる社会が悪いのよ〜!!」」


 三○三号室の前を、ふたつの影がコミカルな会話で、儚げな雰囲気を破壊しながら通り過ぎていった... ... ...。


「あの声は香燐さんと猫鈴猫ちゃんだよね、よく会うなあ」

「きっと院内のコンビニに行くんじゃないかな、私もちょうど喉が渇いたところだよ」

「いまの体調は大丈夫?歩けそう?」

「へいき!」


 結椛はびょいんと元気にベッドから飛び降りてスリッパを履いた、移動準備完了だ。






「お姉さま、頭も診てもらいなよ」


 じと〜っ。売店で酒を探して血眼になっている香燐に、猫鈴猫は呆れの眼差しを向ける。


「だってアルコールが無いと、入院なんてする羽目になった現実から逃げらんないじゃないのよ〜いたたた!手術あとがぁ!」

「院内の売店やコンビニじゃお酒やビールを販売してない事くらい、お姉さまでも知ってるよね」

「あーあー現実など見えないわ」

「やれやれだよ...っ!あなたは誰!?」


 猫鈴猫はグルンっ!と急速に上半身を半回転させ、背後に立っていた両手をわきわきさせている結椛を睨んだ。


「ひゃっ」

「わわっ...猫鈴猫ちゃん...!」

「なんだ...リンドウ隊員か。この悪戯娘はおおよそあなたの恋人だか妹とみるけど」

「ええ~恋人〜?そう見える〜?」


 両頬をおさえて、もじもじ体を動かして結椛は喜びの気持ちを表現。姉はバツが悪そうに俯く。


猫鈴猫はコイツらに関わると面倒臭い奴らだと判断したのに、香燐が興味を惹かれてる事に気付いて、やれやれと首を傾げ、ため息もどきを吐いた。


   


「そんなっ...大変な事情があるなんてっ...姉妹二人で頑張ってっ...」


 共用スペースに移動して、凛憧姉妹からいきさつを聞いた香燐は、ぐすぐす涙と鼻水を垂らして泣いてしまった。


「珍しい話でもないのによく泣けるよね、大人気ない〜」

「馬鹿ね!人の頑張りに感動して泣けるのは人間ならではの長所なんだから...いたたた!」

「ほら〜泣いたりするから」


 購買で買ったジュースを飲みながら、感動する香燐の様子を見て、結椛はニコニコと明るい顔になる。


「お姉ちゃん!香燐さんって良い人だね」

「うん、ちょっと変わってるけど優しい人だよ」


 妹の楽しそうな顔につられ、リンドウ隊員の表情も柔らかいものとなった。


「わたし変わってんの!?きゃっ!?」

   

 突如、病院全体が激しい揺れに襲われた。平穏で幸せな時間というのは辛く険しい時間と較べると、ごく僅かなもの... ... ...そんな現実を叩きつけるかのように平和を壊す凶悪な獣がやってきた。


病院☓怪獣のシチュエーション、なかなか怖いですよね

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