表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おばさんと私

わたしには見えなかった

作者: のどあめ

懲りずに二作目。

拙い作品ですが暇潰しにでも読んで頂けると嬉しいです。

ええ、あれは私が小学生の時だったかしら。ちょうど盆休みで、母の実家に集まったのよ。


祖父母や伯父一家に叔母一家。一族勢ぞろいでね。従姉妹達と祖父の家の広い廊下や庭中走り回って遊んでから、祖母の用意した漬物やスイカをおやつに頂いてね。楽しかったわ。


夕方になって皆で提灯を持ってお墓参りに行ったの。お盆ですからね。


夕闇に浮かぶ白い提灯の灯り。

虫の声。蝋燭の香り。お寺までの道端にはぽつぽつと月見草の黄色い花が咲いていて。どこか別の世界に向かうようだったわ。


帰り道に、伯父が昔のお墓は土葬で。一度火葬にするためにお墓を開いたら木の根っこが絡まって取り出すのが大変だったって話をするから気持ちが悪くなってね。お夕飯も頂けずに祖父の家で休む羽目になったのよ。


父だけ先に帰って 。私は母と一緒に祖父母の家から帰って行ったの。


もう真っ暗だったから。そう、いつもの雑木林を抜けずに○△通り沿いに帰ってきたわ。


そうよ?あの車両が多くて事故が多発する所よ。


え?最近、幽霊が出るって噂があるの?あれだけ事故が多発していればねえ。そういう噂もでるかもね。でも、不謹慎だわ、亡くなられた方に。失礼じゃない・・・


話がそれてる?ごめんなさいね、どうしてもあちこちに話が飛ぶのよね。あなたも悪いのよ、変な話をするから。


で、その通り沿いに母と手を繋いて帰ったのよ。そうよ?あそこは歩道が狭くて。暗いのが怖いから母にくっついて帰ったわ。


それで、あそこのバス亭の交差点で家に向かう細道に入ろうとした時よ。昔、バス亭に小さなコンビニがあってね、そこに置いてある自販機に私、気を取られてたので始めは何が起こったのかわからなかったわ。


「ちょっと!危ない!おばあさん!!」


突然、母が叫びだして車道の方に飛び込もうとしたのよ。


そうよ!あの夜でも車がびゅんびゅん走る所よ。突き刺さるようなクラクションの音に身体が固まったけど。私、必死になって母の身体にしがみついて引き留めたわ。そうしたら母が怒ってね。


「そこにおばあさんがいるのよ!ひかれちゃう!」


私、絶対に離さなかったわ。離したら母が死んじゃうと思って。


信号が変わって。車が交差点に止まりはじめたら。母が言うの。


「確かにあそこに白い着物をきたおばあさんがこちらを向いて立っていたのに。車の前に飛び出そうとするから止めに行こうとしたのよ! おばあさん、どこへ行っちゃったのかしら?」


今でも覚えている。暗闇に照らす車の白い眩むようなヘッドランプの灯り。暗い交差点の向かい側。わたしには何も見えなかった。誰もいなかったのよ。


あの時、母が見たのは何だったのかしら?今でも不思議に思うの。


そう言って、叔母は麦茶を一口飲んだ。


私は言えなかった。今でもバス亭交差点に白い着物を着た老婆の幽霊がでるという噂があることを。

いきなり母親が喚きながら車がびゅんびゅん走る道路に突っ込んで行こうとするのは子どもにとって、かなりの恐怖です。



7/9 誤字報告ありがとうございます!間違ってはいけない箇所での誤字。ご指摘助かります。


お読み頂いた方、評価くださった方、感謝いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ