第3話〜夢で求めるもの
阿部佑樹はS県にある稲穂学園の高等部に通う三年生で、趣味は特撮のウルトラ男とさすらう剣心。
元剣道部の帰宅部で、放課後はクラスメートと駄弁ったり遊んだりと青春を謳歌しているどこにでもいる高校生である。
成績は平均よりやや上、身体能力はそこそこ高く、見た目も一般的な容姿と言える。
家族は両親と妹の4人家族。
普通の高校生で、どこにでもいる学生の一人。
最近の悩みは受験生であること、そして深夜0時を越えると毎晩不思議な夢を見ることだった。
…………。
最初に夢を見始めた時の記憶は、正直曖昧だった。
少なくとも数日前、もしかしたらもっと前から夢を見ていたのかもしれない。
毎回見る夢は少しずつ違うけれど、始まりはいつも同じ。
夢現の中の出来事のように、俺はどこか他人事のように遠くで誰かの声を聞いている…。
(◼️◼️ーーーあれ?◼️◼️って、誰だ……?)
男の声であることは間違いなかった。
ただ話し方の癖や声質は、波紋が広がって消えていくようにすぐに忘れてしまう。
しかし、その声は間違いなく俺のことを呼んでいた。
(ーーーなんで…?)
なんでそんなに必死に俺の名前を呼ぶのか。
まるで、長い時を共に戦った仲間の目を覚まさせようと、必死に声をかけ続けているような。
あと少しでその答えに形が伴う、そんな瞬間。
夢は切り替わって、俺は学校の校舎に一人立っていた。
…………。
「ここ、どこだ?」
妙にリアルな夢だった。
そう、夢の中で、俺はこれが夢だと、明晰夢だと理解していた。
ぐるりと辺りを見渡す。
そこが学校の校舎であることは何となく分かった。
2年以上通った学校の校舎なんだから、間違えようがない。
けれど、現実ではあり得ない光景が広がっていた。
壁に、机に、階段に、あらゆる場所に、多種多様な武器がいくつも置かれている。
自然と立てかけられたものもあれば、飾られるように机の上に置かれた物もあった。
中には刀身の半ばまで壁に突き刺さっているものもある。
でも…
「違う…」
そのどれも、手に持つまでもなく分かってしまう。
これは、自分が、求めているものではない、と。
「どこだ…?」
気が付けば走り出していた。
階段を駆け上がり、渡り廊下を駆け抜けて、とにかく走る。
至る所に置かれた武器たち。
中には後ろ髪引かれる何かを感じるものもあったが、それでも俺は止まることなく進んでいく。
けれど…
「どこに、いるんだ…」
学校の敷地中を走り回り、探して回ったにも関わらず、見つからない。
ーーー……ゴォオオォン……
時計塔の鐘が鳴る。
そしてーーー
…………。
俺はベッドで目を覚ますのだった。




