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第1話 牢獄

優しい風の音

草木が揺れる音

静かな鳥のさえずり


そんな中、自分は地面に背中を付け、気絶していた事にようやく気付く。

長く閉じていたまぶたを開くが、風に揺れる木の葉の隙間にチラつく空の光のせいでまだぼんやりとしか目が開けられない…


必死に起き上がろうとするが、全く身体が言う事を聞かない…

すると突然、横たわる自分の身体の右側の方から男と女の声が聞こえてくるのを感じた。


女の声『…この男……使え………じきに我々…脅威……の…で…実験……使……。』

男の声『………危険………すか…?』


自分は酷い耳鳴りの中、その男女の会話を必死に聞いていた、そして自分は必死に声を出そうとした、助けてくれと…

そんな中、声が届いたのか男の一人が自分の顔を手で持ち上げ、膝下まで寄せてくれた。

助かった…

そう思った、次の瞬間

男は自分の顔面を無慈悲に殴り…自分は…また…

深い眠りに付いた。




ガタッガタッ…

暗闇の中で鈍く激しく鳴る音が聞こえる…

何かに揺られている、何かに乗っているのだろうか

自分は目を開いた、それでもまだぼんやりとしている…

そんな視界で一瞬だけ自分が置かれている景色が見えた。

自分の両手には鉄で出来た大きな手錠、座る状態で並ばされている同じ手錠で繋がれている貧相な服の人間達、夕暮れ時の色をしたオレンジ色の美しい空、長槍を持ち軽装をしている男数人、自分が乗っている木の車輪を引く馬が二頭、そしてここは森の中


自分は今置かれている状況は全く理解できないが

何とか起き上がろうとした。

その時、長槍の男達が何か話し始めた


『おい、お前達がうるせえから起きちまったじゃねえか、もういっぺん眠らせとけ』


他の男達とは装備の色が少し違う赤い軽装の男が他の男に声を掛けた


『はいよ』


返事をした男は、強く拳を握り…

僕の顔面を殴り…

そして…

僕は気絶した



しばらくして…

キィィィィィィィ…

サビかけの鉄の何かが高い音を鳴らす

虚な精神状態の僕は、その甲高い音に無理矢理目を覚まさせられた…


よく見るとそれは鉄格子、牢屋の中だった

その中に無理矢理投げ飛ばされ、即座に鉄格子のドアが閉められた


『痛い……僕は一体何を…』


未だに頭に鈍痛が響く…

目を開けると、そこはほぼ光の無い真っ暗な空間

鉄格子の窓から見える外の景色は薄暗い夜だった…

僕は一体何がどうなっているのか全く分からない状態だった…


辺りを見渡すと石の壁や上から落ちる水滴、水溜まりなどが視界に入った

そして後ろを向くとー…


『うわぁぁアアッッ!!!』


その後ろには、物凄く長い白髪の小さい老人がポツンと座っている姿があった。


その老人は下を向いたまま一向に動こうとしない…

それどころか一ミリも動く気配がしない…

もう…既に死んでしまっているのであろうか…

その瞬間…


『…脅かせてすまなかったね…そんなつもりは少しも無かった』


いきなり喋り出す老人に、再び驚きそうになった

が…何とかこらえた


白い老人は顔を上げこちらを見た

老人の顔は髭も眉の毛も白く伸びきっていて、目に関してはその長い眉で、全く見えなかった。

何よりも、本当に生きているのか分からないくらい痩せほけていた…

老人が問いかける


『君はどこから来たんだい…?見た所かなり若いそうだけど、ここは何処なんだい?何故私は牢屋に閉じ込められたんだ?』

『いえ、思い出せそうなのですが僕もはっきりと覚えていなくて…おじいさんと同じ状況です…』

『君…酷い顔だね…大丈夫なのかい…?』


自分の顔が酷い…?


僕は水滴で出来た水溜まりに顔を反射させる

!??


僕は驚いた…月の光は弱く、少ししか見えないがはっきりと分かった。

黒い髪の毛に土が着き、目は充血し、顔中に酷く血が付いていて、所々皮がめくれ、信じられない程頬が膨れていた


『可哀想にの…まだ若いのに…』


そして僕は頬の傷を見てある事を思い出す

そうだ、僕は何度も殴られて…気を失って…


思い出した瞬間、じわじわと傷の痛みが湧き上がってくる


『い…痛い…』


僕は涙目になりながら小声で呟いた


自分の記憶が殴られた事を筆頭に段々と思い出してきた


『そうだ、僕は村を襲われて爆発に巻き込まれて気絶したんだ、襲ったのがここの男達だとすると…僕と同じように囚われているかも知れない…妹が…』


何とかして一緒にここから逃げないと…

老人が語りかける


『ここから出るべきじゃ、妹さんがいるのなら尚更な』

『ええ、出ましょう。一緒に何とかしてここから…』

『ハッハッハ…』


老人は乾いたような笑い声をしながらこう嘆いた


『ワシは足手まといになるだけじゃ、ついていくのはやめておくよ。この先、手助けはしてやらなくはないが、それにワシはもう……色々あった…生きたいとは思えんくてな……君に神のご加護ある事を願うよ。』

『…駄目です、ここであったのも何かの縁です、生きる事を諦めず一緒に逃げましょう…!』


老人の口は一瞬固く閉じた、しかしすぐさま僕に問いかけてきた


『…そういえば名前を聞いていなかったの、名前は何て言うんだい?』


自分もすっかり無我夢中で忘れていた


『ああ、失礼しました。僕の名前はミーリンです』

『ワシの名前は……そう、ラース。よろしくの』


数分後、二人は作戦を立て、看守の鍵を盗む計画を実行した




作戦はこうだ、まずラースさんが胸の苦しみを訴え僕が助けを求めて看守をおびき寄せる

おびき寄せた看守が、牢屋の中に入って来てくれれば良かったが…

近寄って来た看守は鉄格子を鉄の棒でおもいっきり叩きつけるだけで中に入って来なかった…

やはりだめかと思ったその時、ラースさんが


『看守さん…水をぉ…水を下さいぃ…』


見てるだけのこちらも苦しくなるような演技で看守に近づくラースさんの姿に僕は少し驚いた

本当に…演技なんですよね…?

しかし…


『その辺の水溜りでも飲んどけ』


看守は無慈悲にその場を立ち去っていった…


『やはりこんな作戦じゃ駄目か…』


そう思っていた矢先、ラースさんは僕にある物を見せて来た


『ホレ…あの大量の鍵輪に付いてあったこの牢の鍵じゃ、多分これで合っている筈じゃ…多分な…』

『…驚いた…何故ここの牢の鍵が分かったんですか?いや、その前に、看守のベルトに固定されていた鍵をどうやって…』

『後で時間があれば教えるよ。それより早く、ここから出るんじゃろ、妹さんがどうなるか分からない、先を急ごう』


僕は疑問を抱きながらもラースさんの言っている事が正しい事を理解し、先を急いだ。


作戦そのニ


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